TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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本編には関係ないお話なので、ハーメルン限定エピソードにします。


間話 燃焼少女と秘密の約束

 

 

私の名前は北条(ほうじょう)センカ。

魔法少女バーニングインテンスとして、日々街を守っている。

 

魔法少女になった理由は単純。

私って、皆からチヤホヤされるのが大好きなんだよね。

 

だから勉強も人一倍頑張るし、運動も欠かさない!

褒められるの大好きだから。それが1番かな。

 

あと、昔から憧れがあったんだよね、街を守るヒーローってやつにさ。

 

けど、最近ちょっと大変になってきてるんだよね。というのも……。

 

「まさか幹部クラスが出てくるなんてね〜。そろそろうちら厳しくなってきてない?」

 

そう呟くのは、私と一緒に魔法少女として活動してる南根(みなみね)柚月(ゆづき)だ。柚月とは元々そんなに仲が良かったわけじゃないんだけど、魔法少女として絡むようになってから仲良くなって、今じゃ学校でも一緒にいるくらいだ。

 

「この前は、あの魔法少女……エンシェントカラミティっていうのに助けてもらったけど、協力してもらえそうになかったし……戦力バランスが……」

 

次に話したのは、恩智寧 魅夜(おちね みや)。こちらも私と同様に魔法少女として活動している少女で、元々仲良くはなかったんだけど、魔法少女として一緒に活動するうちに仲良くなった少女だ。

とはいっても、魅夜ちゃんはどこか壁を作る癖みたいなのがあるみたいで、そのせいで柚月ほど仲が深まったわけじゃないんだけどね。

 

「……んじゃ〜街を守るのやめる? ほら、コスプレ界隈にお邪魔させてもらって、そこで変身して個人で楽しむってのはどうかな?」

 

「………えーと……」

 

2人が私の方を見る。

やっぱり、あの幹部クラスの敵と戦ったことから、魔法少女として街を守ることに、2人は抵抗を感じはじめているのかもしれない。

 

『みゅー………』

 

2人の様子を見て、ラブリーが不安そうな顔をする。

そっか、ラブリーが私達に力を与えたのも、街を守ってもらうためだもんね。

 

でも、2人がやりたくないことを無理矢理やらせるのも良くないと思うしな〜。

 

「………うん。ちょっと今すぐ結論は出せないかな。勿論私は街を守るために戦い続けるつもりだけど、2人に無理強いするつもりはないから。だから、私なりに幹部への対策は考えておくね!」

 

そう言って、私は2人との会話を終える。

 

………できれば私は、2人と一緒に街を守りたいし、それがベストだと思ってる。けど、それを強制するのは、2人の負担になる。

 

そして、2人が街を守ることを渋っている理由……それは、幹部の存在なんだろうと思う。

 

今までは、怪人を倒すだけで良かった。けど、その怪人の裏にいる……悪の組織『ワ・ルーイ』の幹部である男との戦闘。それを経たことで、2人は改めて、自分たちは巨大な悪と戦っているのだと再認識するに至ったのだろう。

 

「2人が安心して戦えるようになればなぁ……」

 

怪人と戦ってる時は、2人とも、自分の意志で戦ってるって言ってくれてた。勿論、私は心を読めるわけじゃないし、2人のことを完全に理解しているというわけでもないから、実際にどう思っているのかは分からないんだけど。

 

でも、少なくとも、戦いたくないって表に出すことはなかった。

……戦いたくないと、そういう意志を表示しているのは、怪人よりも強い敵と戦うことになったから。

街を守る戦いに、不安が残る要素が出てきたから。

 

なら、その不安をとり除ければ。

 

2人はもう一度、私と戦ってくれるのかもしれない…。

 

けど……。

 

「2人は、それでいいのかな。………本当に、私と戦うことに納得してくれてるのかな」

 

『みゅー………』

 

……もし2人が、心の奥底で戦いたくないって思ってるのなら、無理強いしたくはないしね。

 

……うーん、どちらにせよ…。

 

「この前私を助けてくれた、エンシェントカラミティ、あの子に協力を頼むのが、1番丸い気がする」

 

魔法少女エンシェントカラミティ。

ラブリーとは別の妖精と契約している、私達以外の魔法少女。

 

彼女なら、幹部を相手にすることもできるし、仲間になれば、2人の不安は確実に取り除けるはず。

 

それに、もし2人が本当は戦いたくないって場合でも、エンシェントカラミティを仲間に引き込むことで、街を守る活動も継続できる。

 

「よし、そうと決まれば!」

 

エンシェントカラミティは、私達と同じ学校に通っていると言っていた。彼女の雰囲気は覚えてる。どことなく大人びていて、優雅で、それでいて……。

 

「やったー! 83点! 結構高くない? ねーねー、西織さんは何点だったの〜?」

 

「おめでとうございます。南さんは前回63点でしたから、かなり努力されたみたいですね。ご立派です」

 

あれ、この口調、どこかで聞いたことあるような……。

 

「それで、西織さんは?」

 

「……97点です」

 

「すごーい! 流石西織さん! けど、あれだね、西織さん頭がいいけど、このクラスには学年1位いないって先生言ってたよ。学年1位って、一体誰なんだろうね?」

 

魔法少女には、『夢幻の魔』という魔法がかかっていて、基本的に変身前の姿と変身後の姿が一致しないようになっている。けど、エンシェントカラミティは……。

 

「確か、“私が怪人に襲われたところで、すぐさま返り討ちにできますし、正体を隠す必要性が感じられません”とか言って、『夢幻の魔』は自分から外してるんだっけ」

 

西織さん、と呼ばれた少女の声には、どこか聞き覚えがあるし。

もしかしたら……。

 

「失礼しまーす!」

 

私は教室の扉を開け、西織さんと思われる人物を探す。

教室中を見渡すと、知らない顔が並ぶ中、たった1人だけ、見覚えのある顔があった。

 

……その顔は、私が戦場で見たものと一致していて……。

 

「西織さん、ちょっといい?」

 

見つけた。

彼女が、エンシェントカラミティだ!

 

 

 

 

 

 

 

「それで、どうしたんですか? 突然呼び出しなんてして」

 

「いや〜ちょっとね……話したいことがあって」

 

私は、隠れていたラブリーに合図して、西織さんに姿を見せるように促す。

ラブリーの姿を認識した西織さんは、目を見開き、やがて西織さんの隣には、同じように妖精が出現し始めて…。

 

「なるほど。先日私が助けた魔法少女の内の1人ですか?」

 

「うん、そうだよ。あの時はありがとう。それと……私の名前は北条センカ。魔法少女バーニングインテンスとして、この街を守るために活動してるんだ」

 

間違いない。やっぱり彼女が、魔法少女エンシェントカラミティで間違いなさそうだ。

 

「私は西織妖愛と言います」

 

『オレはスマイル! よろしく!』

 

「別名は魔法少女エンシェントカラミティ、と言いますけど……要件は?」

 

「…あのね。西織さんには、私と一緒に街を守るために協力して欲しいの。………この前、幹部クラスの敵が出てきたでしょ? あいつと出会ってから、私と一緒に街を守ってくれてる2人が、少し不安を感じてるみたいで」

 

私は素直に、現状を告げる。一度私達のことを助けてくれた彼女のことだ。きっと今回だって…。

 

「対価は?」

 

「へ?」

 

「………協力して欲しいというのなら、協力します。ですが、対価はないのでしょうか? まさか、タダ働きしろと?」

 

『あーあ、始まった』

 

………読めなかった。

まさか、対価を要求されるなんて、これっぽっちも。

 

私は、街を守るのが好きだし、チヤホヤされるのが好きだから、喜んで魔法少女をやってる。

 

けど、魔法少女だからといって、皆が皆そうとは限らない。

 

何かしらのメリットがないと、動かない人もいる。

それを、失念していた。

 

……けど、大丈夫だ。

 

私の家は、結構な金持ちだ。

お小遣いも、かなりの量をもらっている。

 

そして、そのお小遣いは、ほとんど貯金している!

 

「お金! こう見えても私、北条財閥のお嬢様だから。私の仲間として、一緒に街を守ってくれたら、報酬として給料をあげるよ!」

 

「お金はバイトでも稼げますからね〜」

 

『バイトしたことないだろ』

 

「じゃあ、並のバイトより多く出すよ!」

 

「不定期の労働は好まないです」

 

『わがままお嬢様か!』

 

「……うっ……け、けど、街を守るためにも……さ……」

 

「お断りします♪」

 

にっこりと、西織さんは私に向けて、笑顔を浮かべながら、はっきりと拒絶の意思を示す。

 

「それでは」

 

「っあ、待って!」

 

西織さんはそのまま、もう話すことはないと言わんばかりに、私の前から去ろうとする。私は、彼女の後を追いかける。

……すると、その時。

 

「……あ、待って、落とし物!」

 

彼女のスカートについているポケットから、一枚の紙切れが落ちる様子が見えた。

私はそれを拾い上げ、彼女に届けようとした……。

 

その、紙切れには……。

 

「………18点……?」

 

数学のテストの答案。それも、おそろしく低い点数が、赤字で表記されたもの。

それが、西織さんのポケットから落ちた紙で……。

 

名前のところを見ても、確かに西織妖愛と、綺麗な文字で綴られていて…。

 

「……み、見ましたか?」

 

「…へ?」

 

「こ、この紙、見たんですか…?」

 

青褪めた顔で、西織さんは私に尋ねてくる。ということは、やっぱり……。

 

「ごめん、見ちゃった」

 

「あああああ!!!」

 

西織さんの顔が、真っ赤に染まる。

綺麗で、優雅で、美人で、どこかミステリアスだった彼女が、可愛らしく頬を赤らめている様子は、私にとって衝撃的で…。

 

「に、西織さん、もしかして、勉強苦手…?」

 

「……う、うぅ……」

 

『おっ、妖愛の馬鹿がバレた!』

 

「黙っててください……」

 

「ま、まあ得意不得意ってあるよね! それに、調子が悪い時もあるし! ほら、風邪とかインフルエンザとか! 西織さん、魔法少女としても活動してるしね! そういうこともあるよね〜」

 

西織さん、点数を見られてものすごくショックを受けているみたいだから、フォローを入れておく。けど、彼女の頬は赤いままで……。

 

「ごめん西織さん! 内緒にしとくから、ね?」

 

「そ、それを理由に私に協力を取り付けるんですか‥?」

 

声を震わせながら、弱々しく彼女は私にそう問うてくる。

どうやら、弱みにされると思ったらしい。

けど、そんなことしたら可哀想だし、何より私は、自分の意志で協力してくれるのが嬉しいのであって……。嫌々で協力してもらうのは、私の求めることではない。

 

だから…。

 

「ううん。これを弱みにしようなんて、全く思ってないよ。……その、勝手に答案見ちゃったのは、ごめん」

 

「……なら、貴方も点数を告げてください」

 

「へ?」

 

「貴方の点数を、私に教えてください。そしたら、おあいこにします」

 

……えーと。

 

どうしよう。

私の点数、言っちゃってもいいのかな。

 

でも、私の点数って……。

 

「どうしたんですか? 人に言えないほど低い点数だったんですか? もしかして、1桁、とか……」

 

「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

 

「なら言ってください。私は点数を晒して、恥ずかしい思いをしてるんです」

 

………言っちゃっていいのかなあ…。

余計傷付けちゃうような気がしなくもないけど。

 

でも、言わないと西織さんが落ち着かないっていうのなら、仕方ないのかな。

 

「……私の数学の点数は、100点だよ」

 

「……は……? ひゃく……てん……?」

 

『ひょえー! 100点っていうのは満点ってわけか?』

 

「う、うん」

 

「本当ですか? い、いえ、だって、数学の問題では、100点を取らせないために、先生が超難しい100点阻止問題を入れているはずじゃ……」

 

あー。確かに難しめの問題が入ってたりすることもあるし、ちょっと苦戦したりはするけど……。

 

「今回のテストは100点だったんだ。……えと、まあ、得意な問題だったしさ…」

 

「す、数学の天才ですか……!?」

 

いや、別に天才ではないんだけど。

だって私、新しい公式を生み出したりとか、そういうのできないし。

本当の天才って、そういう人達のことを言うんだろうから。

 

「と、とにかく、西織さんの点数は見なかったことにするから! そんなに心配しなくても……」

 

「他の……教科は…?」

 

「へ?」

 

「他の教科は、何点、なんですか…?」

 

ど、どうしよう……。

 

言ってもいいんだけど、私って……。

 

「教えてください。無理にとは言いません。ですが……」

 

「………わかった。他の教科だけど……」

 

自慢みたいで、あんまり好きじゃないんだけど。

悪いことじゃないし、まあいいのかな。

 

「全部100点だよ」

 

「……オール……ひゃくてん………」

 

小さい頃から英才教育を受けてきたし、私が金持ちの家系に生まれたから成し得たことというか。

 

……実力とか、そういうわけじゃないんだよね。

私は、勉強ができたらチヤホヤされるから、それが良くて頑張ってたってだけだし。

 

結局は、家の教育が良かっただけだとも思うから。

 

だから、そんなに威張ることじゃないのかなぁ、とも思う。西織さんだって、私の家庭に生まれれば、きっと同じようになってたんじゃないかなって思うし。

 

「………えて………さい……」

 

「え?」

 

「教えて……ください……」

 

西織さんが、頭を下げながら、言う。

その声は、とても切実で、か弱く聞こえて。

 

「私に勉強を、教えてください……何でも、しますから……」

 

……西織さんの必死な頼み事。

断れるわけ、ないよね。

 

「……うん、勿論! 私でよければ、いくらでも教えるよ!」

 

「……ほ、本当ですか?」

 

「うん! 私、西織さんとも仲良くなりたいなって思ったし」

 

エンシェントカラミティとしてではなく、西織妖愛としての彼女と接してみたいと、純粋にそう思った。

余裕綽々で飄々としている彼女の弱い姿に、ギャップを感じたのかもしれない。

 

「………魔法少女としての私の力、好きなだけ使ってください。……その、お金では、返せそうにないので……体を売るのは嫌ですし……」

 

「か、体売るって、何言ってるの西織さん!? それに、別に私は対価なんて……」

 

「労働に対しては、対価を支払うべきです。まして、私の成績は、お世辞にも高いとはいえません……。むしろ、最低レベルで低い点数です。それに勉強を教えると言うのですから、それくらいはしないと」

 

「………わかった。けど、嫌なら無理にやらなくてもいいからね?」

 

「……はい。それじゃあ、よろしくお願いしますね、先生」

 

「せ……! ………うん、わかった。私が、西織さんを……ううん、妖愛の成績を、しっかり伸ばしてあげる!」

 

そんなこんなで、私と西織さんは秘密の約束を交わすことになった。

放課後に2人きりで勉強会を行って、段々距離も縮まり、やがて互いに名前で呼び合うような関係になるんだけど。

 

それはまた、別のお話、かな。

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