TS魔法少女は光堕ちしたい!!   作:布団から出られない

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4章 女幹部は目的を抱え、最期に笑う
86洗脳幹部は花を摘む


 

 

「…く、クソっ……! 聞いてないぞ……聖歌ちゃんの正体が、魔法少女だったなんて…!」

 

ピュアのアジトに、男の声が響く。

……いや、もはや性別すらも判別できない。

 

声の主は、頭は薔薇のような花で構成されていて、手足は茨でできており、到底人間と形容できる容姿をしていなかった。

 

「無様だね、ピュア。人間への擬態すらままならないとは」

 

薔薇の花を頭に持った者の正体は、ピュアだった。ピュアは元々、人間の男性へと容姿を擬態していた。しかし、魔法少女シャイニングシンガーから受けた攻撃により、その擬態を維持することすら難しいほどの大怪我を負ってしまっていたのだ。

 

そんな彼に、その指摘を行った、その男は…。

 

「………何で……いるんだ…?」

 

「……そんなに私がここにいることが不思議かね?」

 

ボロボロの体で車椅子に座り、頭部は顔も判別できないくらいに傷がついていて、特に頭頂部、頭の部分は包帯でぐるぐる巻きにされている、とても痛々しい容姿をしている、男。

 

「まさか……俺は用済みだと?」

 

「……まあ、そうなるね。君は余計なことをし過ぎた。私の計画の邪魔になりかねない。……私が作った洗脳装置を使って、勝手なことをされては困るのさ」

 

「……俺は十分あんたに協力したよ。千夜ちゃんが欲しくなっちゃって、つい勝手な行動をしてしまったことは謝る。けどさ、俺は役に立ってるはずだ」

 

洗脳装置の作成者であり、ピュアが協力している男。

その男の、名は…。

 

「……あんたも幹部なんだから分かるだろ? マインドライフさんよ。周りの幹部を出し抜くのは、少々難しいんだ。先輩は言わずもがな、イコルの目からも逃れなきゃいけない」

 

元幹部、マインドライフ。

光千夜を洗脳装置にかけ、組織の手駒にすることに成功した、マッドサイエンティスト。

それが、車椅子に乗っている男の、正体だった。

 

「何か勘違いをしているようだね。私は別に、君を協力者だとは思っていない。ただ、利用しただけに過ぎないからね。……棘のある花は、協力者足り得ない。モルモットにすらなり得ない、君は無価値だ」

 

「………無価値だって…? 自分の手は汚さずに、よく言えたもんだ。トーレストを利用する提案だって、あんたがしたもんだろ? そもそも、聖歌ちゃんが魔法少女だったなんて聞いてなかった。聞いてたら、こんな無様な姿には……」

 

「……今何と?」

 

「だから、聖歌ちゃんが魔法少女だったなんて聞いてないって……」

 

ピュアの言葉に、マインドライフは驚きの表情を浮かべる。

もっとも、彼の顔は醜く崩れており、他者から見て表情が窺えるような状態ではなかったのだが。

 

「……なるほどね。中々良い情報を聞けた。………なるほど、光聖歌が、ねぇ。……まさか、既に魔法少女だったとは……流石に予想がつかなかったね」

 

「既に…?」

 

「………ああ、そうだよ。元より私は、光聖歌を魔法少女として覚醒させるつもりだった」

 

その言葉に、ピュアは驚く。

言われてみれば確かに、光千夜や夏場夕音が魔法少女に覚醒しているのだから、同じ血を持つ光聖歌が魔法少女の素質を持っていてもおかしくはない、という理屈は理解できる。のだが、ピュアは光聖歌がシャイニングシンガーに変身するまで、その可能性を失念していた。

 

しかし、マインドライフは、初めから理解していたのだ。

光聖歌に、魔法少女の素質が備わっていることを。

 

そして、光聖歌を拉致し、光千夜の時と同様に洗脳することで、自身の手駒に加えようとしたのだと、ピュアは、マインドライフの思考を、そう読み取った。

 

しかし、その結論だと、不可解な点がある。それは…。

 

「……なら、何で俺のアジトにある洗脳装置を壊したんだ? 聖歌ちゃんを味方にしたいなら、洗脳装置で洗脳しちゃった方が早かったじゃないか」

 

マインドライフは、ピュアのアジトに置いていた洗脳装置を、破壊しているのだ。

 

「ピュア、分かっていないね。君は、その洗脳装置で誰を洗脳しようとした?……君に洗脳装置を預け、放置していると、気付けば君は魔法少女を洗脳し、私物化するだろうからね。だって、君はハナから、私に協力するつもりなんてないのだから。……君は、光聖歌も、私のためではなく、自分のために使うつもりだったんじゃないかな?」

 

「……うぐっ……」

 

「図星か。……それに、私だって洗脳装置を壊したかったわけじゃない。アレは、そう何度も量産できるような代物じゃあないからね。……ただ、仕方なかった。他の幹部にあの洗脳装置の存在が知られては、壊さざるを得ないだろう?」

 

確かに、それもそうだ。実際、ピュアは光千夜を洗脳しようとした事実を、魔法少女スターチススクラッチによって、他の幹部にバラされてしまっている。

 

そうなると、洗脳装置は、没収されるか、破壊されるか、どちらかの二択となるだろう。

破壊されるだけならまだしも、没収された場合は、他の幹部に魔法少女を洗脳する機会を与えてしまうことになる。

 

それは好ましくない。故に、マインドライフは自らの手で、洗脳装置を破壊するという結論に至ったのだろう。

 

「………けど、本当に俺を殺していいのか? ……向こうはイコルとも手を組み出した。俺との協力関係がなくなれば、困るのはあんたじゃないのか?」

 

今のピュアは、弱っている。

シャイニングシンガーの魔法によって。

だからこそ、目の前のマインドライフに、用済みだと判断されるわけにはいかない。

 

今の状態では、容易に彼に敗北してしまうのだから。

 

「……君は足手纏いだ。私の計画を邪魔し、崩壊させかねない。………真に怖いのは、有能な敵よりも、無能な味方、というからね。………残念ながら、君の役目は、ここで終了だ」

 

言って、マインドライフは魔法を放つ。

 

「『闇の炎』」

 

瞬間、幹部ピュアの体が、漆黒の炎に包まれ、焼かれ始める。

 

「……く……これ……千夜ちゃんのと……同じ……」

 

「……元々は私の魔法だよ。魔法少女ブラックルーイがその魔法を扱えるのは、私がその魔法を彼女に植え付けたからさ。……そんなことにも気付けないなんて、やはり君はとても残念な奴だったみたいだね」

 

『闇の炎』。それは、ブラックルーイも使用している魔法だった。

しかし、その起源は、幹部マインドライフにあったのだ。

 

彼女が扱う『闇の炎』は、幹部マインドライフに後天的に植え付けられたことによって使用が可能になった魔法であり、彼女生来の魔法ではない。

 

そして…。

 

「……だから君は、オクトロアに出し抜かれていることにも気付けないのかな? そう考えると納得だよ」

 

「……なん……だと……」

 

ピュアは、自身の体が炎に焼かれつつも、マインドライフの話に耳を傾ける。

 

「……ブラックルーイが扱う魔法には、『ブラッドテンタクル』というものがあるだろう? 血肉を触手へと変換し、それを行使する魔法だ」

 

「…そ……うか……先輩と……おな……じ……」

 

「そうだよ。オクトロアも、同じ魔法を扱う。……オクトロアは、私をも出し抜いて、既にブラックルーイに自身の魔法を植え付けていたんだよ。私の洗脳は、完璧だった。けど、奴も何かしらの介入を行っていた。……そう気づいた時には、もう遅かったんだけどね」

 

ブラックルーイ生来の魔法ではないのは、『ブラッドテンタクル』もだった。

 

「おまえ……ら……ちよちゃんに……なに……して……」

 

「……そうか、君の執着は、純粋な愛だったようだね。……けど、君も結局は同じだ。勝手に自分の理想を押し付けて、自分の都合が良いように動くように強制して…………私達と何も変わらない」

 

燃え盛るピュアを、ゴミを見るような目で見つめながら、マインドライフは言葉を続けて言い放つ。

 

「けど、私は、自身のやっていることの凄惨さを、人道のなさを、理解している。……理解しながら、私は私自身のためにつき動いている。……そこが、私と君の、決定的な違いだよ」

 

「ふざ……けるな……おまえに……ちよちゃん……は……わたさ……な……」

 

黒焦げになりながらも、必死にピュアは訴えかける。しかし、その言葉がそれ以上続くことは、もはやなかった。

 

「……心配しなくても良い。……私は別に、彼女に危害を加えるつもりはないからね…。そう……」

 

マインドライフは、ぐちゃぐちゃに崩れた顔を、決意に満ちた表情へと変えながら、独り言のように言う。

 

「私の計画において、必要に駆られない限りは、ね」

 

それだけ言って、マインドライフは、ピュアのアジトから立ち去る。

 

その場に残されたのは。

無惨にも焼け焦げた花々の、黒焦げの残骸のみだった。

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