【完結】アンチ^2テーゼ・リノヴェーション 作:家葉 テイク
「そもそもだよ! 『怪異』を封入しなくたって、人工タンパク質のスーツを作って着れば伝承師の弱点問題も解決して
なんとも厄介な熱視線を送り始めた
人工タンパク質による機体作成技術は
現に今俺達が当たり前の様に利用している端末ドローンなんかは、部品の大部分を人工タンパク質で構成している。同じように『怪異』を封入しない人工タンパク質製のスーツを別口で用意しておいて、本命の
「あー、それがそうもいかないんだよね。昔はそういうのもあったんだけど、『外付け』っていう対策が流行ってね」
「……『外付け』?」
俺が復唱すると、
「さっき
「え……一つだけど」
「じゃあもう一つ質問。
………………そういえば何でだろう。
これは、俺の最初の発言にも通ずる疑問だ。
俺はスーツ型が強すぎて機体の形式が固定されがちという現在の伝承師環境に対して『「怪異」を封入しないただのスーツ型機体を作ればいい』と言ったが、それは別に『スーツ型の
何故、俺はわざわざ『「怪異」を封入しない』という前提を勝手に追加したのか。
…………。
……何となくだが、既に「怪異」を持っているのに別の「怪異」に手を出すという状況に、忌避感を覚えていたから……?
別にそういう理論があるという確信があるわけじゃないが、
「……一つしか扱えなかったから。それ以上扱ったら、悪影響が発生する?」
「正解。
「一人の人間に扱える
「それで、『外付け』か」
「そ。人工筋肉のスーツは、『
あー……。そういうことか。
「この『外付け』は、スーツに既に
『防護服を着込んだくらいじゃ貫通しちゃうしね。
そういう理屈なら、『怪異』を封入しない
というか、もし暴走のリスクがなかったとしてもスーツ型の機体はおいそれと用いれないだろう。たとえば自爆するような調整をされた
納得して腑に落ちた気分になっていると、ふと
「…………何だ?」
「いや、疑問に思わないのかなーって」
…………何が? どうして俺に対して親切にしてくれるのかってこととか? それはかなり疑問に思っている部分ではあるが……。
「ほら。
「あっ!!!!」
そうじゃん! さっきは疑いもしなかったけど、よくよく考えたら野良『怪異』とは話が違う可能性だって全然あったんだ。『伝承師が制御を握っているから制御を奪えませんでした』……ってオチになる可能性だって、低くはない。
「実を言うとね、
「確かに……」
制御を奪ってうっかり暴走させちゃったら、その時は
……って、『神憑き』の力がどういうものか見定める? それってまるで、『神憑き』の力に色々と種類があるみたいだけども……。
「『神憑き』の
「制御強度、か……」
言われて、俺は握り拳に視線を落としてみる。
衝撃を加えた『怪異』や
「あ、一応言っておくと、今
「そっすか……。……あ、そうなのか」
「敬語」
「言い直してもダメなのかよ」
本当に判定厳しいな。
「でも、『神憑き』としての能力は伝承師としてやっていくなら絶対に武器になる。だから、今すぐじゃなくてもいいけど実験は怠らないように」
「おう、分かった」
「よし。じゃあぼちぼち向こうも落ち着いただろうし、
「依頼完了ってメールで済ませるもんじゃないんだ」
意外そうに言った俺に、
「わたしも普段はそうしてるんだけどね。でも今回は、
「なるほどな。助かるよ。色んな意味で」
これからバイトをし続ける限り、おそらく何度となくお世話になるだろうしな。ベストなのは、お世話にならないことなのだが……。
『わたしってば気が利くでしょ?』みたいに威張れないことで胸を張るダメ女を横目に車に乗り込もうとした、その瞬間だった。まるで地震の直前の猫みたいに、
ボバッッッッッ!!!!!!!! と。
俺たちの頭上。地上から五メートル程度の距離で、突如爆裂が発生した。
「──ッ、な!?」
学ランのポケットに手を突っ込み、咄嗟に
「大丈夫、これはわたしの機能。『
いつになく真剣な
爆発反応装甲……ということは、攻撃に反応して自動で爆発を発生させるのか。『炎』を光や電気にまで変換できるなら、爆発としても扱えるのは当然の帰結。自動発動の発想はなかったが……そりゃ最強を自称するならそれくらいはやるか。
「────聞きしに勝る堅牢さだな、……
宵闇に差し掛かった街並みの中で。
一人の屈強な男が、コインパーキングの中に足を踏み入れていた。
黒髪を刈り上げた骨太な印象の顔つき。全身を軍人か何かと錯覚するような灰色の都市迷彩風のつなぎを身に纏っている。
……見た感じ、近くに『
「だが……、目つきが変わっているぞ。…………
ニヤリ、と。
男は嗜虐的な色の滲んだ笑みを、
その事実が何故か、妙に不愉快だった。
だが。
俺がそれに対して何か言う前に、一つの断絶があった。
それは、女の一言だった。
「敬語」
聞き慣れた一単語の指摘。
ただそれだけで、その場がそいつによって支配された。──言葉の主だった
「馴れ馴れしいな。わたし、上から目線な男とかダメなんだよね」
「随分と回る口だ。……だが、これを見ても同じことが言えるか?」
ぴちょん、という音がする。
次いで、夕陽に照らされた風景が不自然に
──視線を上に向けると、そこには小さめのビルほどの大きさの『水の塊』が聳え立ち、斜陽を遮っていた。
「…………勘弁してよ。その水ぶちまけたら、この車ダメになりそうなんだけど。幾らすると思ってんの?」
「車の心配なら後で良い。優先順位は……、お前を壊す方が先だ」
直後、都市迷彩の男は横殴りに腕を振る。
それは、液体という次元を超えていた。大量の水が、コインパーキングの塀や地面を抉りながら俺達を呑み込まんと迫って来る。
ボバボバボボボボババババババッッ!!!! と、凄絶な爆発音が連続した。
音そのものが暴力として機能するような地獄の中で、俺は両手で耳を塞ぎながらも辛うじて戦闘の様子を見ていた。
大量の水が弾かれる中で、逆にくっきりと浮かぶ空間があった。
……『半径五メートル』。
数十秒ほど、爆発音は連続していただろうか。
潮が引くみたいに爆発音が消えた頃には、
コインパーキングの設備は爆発でめくれ上がり水に流され捻じ曲がっているし、周辺一帯は謎の白い物質で覆われている。辛うじて半径五メートル内にあった
その惨状を一瞥して、
「喜びなよ。この被害額はアンタの財布で補填するから」
「追い剥ぎの予告に……どう喜べと?」
「分かんない? ユーモアのセンスがないなぁ。会話のスキルもバトルの腕の一つだよ」
「
──その一言を皮切りに。
本格的に、『戦闘』が始まった。