【完結】アンチ^2テーゼ・リノヴェーション 作:家葉 テイク
──俺は壁に空いた大穴から施設の外へと飛び出した。『
「『
ゴバッッッッ!!!! と。
先程まで俺がいた地点を光の大顎が呑み込んだ。
『友悟!?』
「あんなの当たるか!! お前はそこで黙って俺の下克上を見てればいいんだよ!!」
──実際、荷電粒子砲はそこまで怖くない。
というか、『
『
となると、そんな回避が容易な攻撃をわざわざ初手に撃って来た理由だ。使い慣れてない? 持久戦狙い? いいや違うな──。
「
「どうかねェ、繊細な女の子の心がズタズタに引き裂かれていく音が聞こえてくるようだがよォ!!」
大穴から顔を出して、椎塚が嘲笑った。
…………悪趣味な野郎め。
長期戦にもつれ込めば御巫が到着する。
そうなればここまで持ち込んで来た椎塚の有利は崩壊するのだから、当然、椎塚は御巫が到着するまでのこの一〇分間で決着をつけたいと思っているはず。
その点で言えば、荷電粒子砲は火力の面で最適解ではある。だが……こうして回避に専念すれば簡単に躱せる以上、実際の効果の面で言えばやや効率が悪いと言わざるを得ない。
では一番意味があるとすれば──『己の最高火力が仲間に牙を剥いている』というシチュエーションを御巫に見せつけるという点だろう。御巫とは、まだ通話を繋いでいる。俺が『
だがそれは同時に、俺が敗北すれば、御巫の心に消えない傷を遺してしまうという意味でもある。
「いや正直焦ったよ。分かり切ってるから白状するが、実際、七夕に死なれたらマジで困るんでなァ。……記憶爆弾の対策を仕込んだのはお前だろ? 日向友悟」
「だったらなんだ。お陰様で今後の警察には『記憶を見るときは部屋を明るくして離れて見てね』って注意書きが入りそうだがよ」
軽口に対するツッコミのように、荷電粒子砲が放たれる。
だが、これは『
「『禍福は糾える縄の如し』ってことだ。お前がいたから、予定よりも早く事態は進み『
椎塚は皮肉げに笑って、
「実際、七夕の『
「ドヤ顏で話してるところ悪いが、地球を割れば全人類滅亡させられるって言ってるのと同じような実現確率の話をしてる自覚あるか?」
ドウッッッ!!!! と。
捻じ込まれるように放たれた荷電粒子砲を躱し、俺は発射点を見遣る。……椎塚の傍らに立つ、御巫そっくりの少女人形。アレが、今の『
俺は『
だが……どうも、向こうもそれを誘っている節がある。真正面から接近すれば、待ってましたと言わんばかりに相手の仕込んでいた策が炸裂しそうだ。だからここは、あえて防戦一方を装って『逃げながら戦う』。時間はこっちの有利でもあるんだ。そのうち向こうが焦れてくる可能性だってある。
俺はそのまま、『
「威勢のいい啖呵を切った割には鬼ごっこかァ!? ガキの遊びじゃねェんだぞオイ!」
ゴバッッッ!!!! と。
俺が『
やっぱり思った通りだった。荷電粒子砲の連発を繰り返したのは、小技の隠れ蓑。そっちを俺に意識させておいて、他の能力で俺の意表を突く作戦だったんだ。
「臨界稼働の発動制限がないってのは確かに強力だが、その利点の本質は『臨界稼働と通常運用の併用ができる』ってとこにあるんだよ。勉強になったか? クソガキ」
そして、移動先が爆裂したことで『
必然、俺は空中で身動きの取れない状態に陥るということで──それは荷電粒子砲の格好の的ということでもある。
「誰に口きいてんだぽっと出野郎。こっちはそいつの助手やってんだぞ」
ドボア!!!! と放たれた極光を、俺は
そもそも俺がさっき『
「『ノックバック』だ!!」
硬質な物体に対してあえて斬れないように斬撃を与えることで、反動で『
これならば、『怪異』を無効化する椎塚であろうとも致命的なダメージを食らわせることができる──が。
「────ッ!!」
ボボン!! と。椎塚のフォローに回った
「…………『音波浮遊』か」
相変わらず宙を浮いている俺を見て、椎塚は思案気に呟いた。
そう。
俺は今、『
高速機動には到底及ばないが、空中で身動きが取れない間のサブ移動くらいには十分使うことができる。
その間に、俺は改めて屋上に『
もちろん、御巫の到着まで鬼ごっこをするなんてしみったれた考えは俺の頭には一ミリもない。
むしろこれは、一〇分以内に『
真正面から接近すれば、おそらく椎塚が用意しているであろうカウンターによって手痛いしっぺ返しを食うのは目に見えている。
であれば、認知の範囲外から接近すれば、向こうは『用意していたカウンター』ではなく『その場で考えた対抗策』を使わざるを得なくなる。
戦場から準備された戦略性を取り払って、アドリブ勝負に持ち込んでやろうっていう魂胆である。まずはその為に────
『 』
ズガガガガガガガガ!!!! と。
『
音がするということはこちらの居場所を伝えるということでもあるが、これは問題ない。……っていうのも、そもそも椎塚は研究所の設備を破壊されることを嫌ってたからな。
そもそも俺達の目の前に現れたのも、御巫が施設全体を焼き払おうとしたからだし。その時も、『これ以上素体を焼かれたら敵わない』みたいなことを言ってたもんな。椎塚からしたら
「ゆーうーごくゥーん!! あっそびーましょーお!!」
必然、椎塚は慌ててこちらへ向かって来る。俺が接近するのは、
『追っている』という自認を持っている瞬間、相手が想定するのは追う対象の背中のみ。その瞬間、追っている俺自身は
「あやとりしようぜ!! ほら、糸だよ!!」
『 』
ギュオ!! と、『
──その一瞬が欲しかった!!!!
『 』『 』『 』『 』『 』『 』『 』『 』
ドパパパパパパパパパ!!!! と。
……黄泉を歩いていた時、御巫は言った。『
そして、まるで行き過ぎたアレルギー反応によってくしゃみが止まらなくなるみたいに、放ち続ける超音波にいちいち反応して、小爆発が繰り返される。
「爆発自体は、問題ないだろうよ。『
だが。
「果たして建物の崩落はどうかな?」
『
その状況でさらに連続した小爆発を受ければ、当然後に待ち受けているのは──床の崩落だ。
ガゴン!! と。
小爆発の中心で、何かが崩壊する音が響いた。
それだけじゃない。崩壊した建物は、小爆発によって乱雑に弾き飛ばされ、それがさらに爆発を生むという循環で、周辺では瓦礫がまるで嵐の様に吹き荒れた。──『最強』が『最強』である限り、その連鎖を止めることはできない。
そして椎塚が溜まらずそれを止めたならば──その瞬間、『
フ──と。
ふいに、爆発が停止した。
『 』
瞬時に俺は、狙いすまして『
爆炎が消えたその向こうで、椎塚と目が合った。
直後、紫電が迸る。
…………!! コイツ、研究所内だってのに、設備とかガン無視して電撃を飛ばしてきやがった……!!!! ……いやそうか、『
電撃に貫かれつつも、俺は『
「デフォルト設定の穴を突いて来たようだがなァ、『最強』ってのは棒立ちのまま殴られ続けるサンドバッグじゃねェ。挑戦者に対して対応するから最強なんだ。分かるか?」
……! 『爆発反応装甲』の設定を変更したのか……! 機体による攻撃さえ届かなければいいんだから、『問答』を反応対象外に設定したって実害がある訳じゃない。当然の理屈だ。
「残念だったな。ところで電撃の感想聞いてもいいか? 大分シビれたんじゃねェの?」
「…………生憎だが、肩凝りは解れなかったよ。まだちょっと弱かったかもな」
………………保険の為に、『
完璧に緩和はできなかったが、それでもダメージはそれほど大きくない。でなければ、さっきの一撃で死んでいたかもしれないからな。
だが……。
「強がるなよ。薄氷の上を歩いてようやく生き延びてるようなそのザマだ。いつ足を踏み外すかってびくびくしてんじゃねェの?」
「その顏」
そう言って、俺は椎塚を指差す。
椎塚の頬には、先ほどの爆発と瓦礫の嵐で着いたと思しき傷が一筋。
確かに『
俺は嘲笑うように言ってやる。戦況の指摘というよりは、目の前の男の神経を逆撫でするように。
「そういえばさっき、御巫のことを『真っ向勝負で傷をつけるなんざ無理』とか言ってたな。で、お前の横にいるそれはなんだ? 木偶人形だっけ?」
「……典型的な負け犬の台詞だな。戦力差がありすぎると、かすり傷一つで誇っちまうらしい」
言葉の応酬。俺達はお互いに、笑みを浮かべる。
目の前の男をぶち殺すという確殺の意思を込めて──次の攻防が始まった。