【完結】アンチ^2テーゼ・リノヴェーション 作:家葉 テイク
人口は一〇万人程度。
何を隠そう俺も、ちょうど今朝にはこの街から
「ただ、人と物が大量に出入りするってことは、その分セキュリティも甘くなるってことでねぇ」
未だ明るい倉庫街を歩きながら、
時刻は午後五時。真夏というにはまだ日が短い季節だが、それでもこのくらいの時間帯ではまだ日も傾き切ってはいない。ただ、眩しい太陽の下でからりと笑う
ちなみに、車は市内のコインパーキングに停めて来た。あまり近いところに停車すると潜入に来たのがバレバレなので、少し離れたところにだ。
「たま~に、悪さをする連中が出て来るのよ」
悪さをする……という言い方だといかにも軽い印象だが、やっているのは未認可の
──『怪異』が文明の動力になるという
もはやこの街においてその
これは想像になるが、そういう社会状況を鑑みれば、『県外』に未認可の
だから、未認可
…………とはいえ。
「物流センターがどういう運営形態か知らんけど、企業が運営してるもんなんじゃないのか? そんな汚職企業みたいなのがポンポン出て来てるってこと?」
「流石にそこまでじゃないね。
「へー…………」
そりゃあ確かに、悪さをする連中が出て来やすいだろうな。
そして物流センター側が特に対策してないってことは、なんか根深い事情もありそうだ。そうやって悪さをするヤツを黙認する代わりに、何らかの見返りを求める、みたいな感じで。
……あんまり思考を巡らせても愉快な話じゃないな。この件については、深入りしないでおこう。
「一番影響力が高いのはダブルスリーナイン社系だけど、最近は
「なんか真っ当な社会情勢の話が
「お~?
ダメ女、とは言わないでおいた。仮にも雇い主である。ご機嫌を損ねたら困るのは俺だ。
ちょっと楽しそうにこちらを追及してくる
「で、今回未認可の
「ん。ナオライっていう昔ながらの貿易商だね。経営難にあえいだ結果、未認可の
「ナオライなら俺も聞いたことあるぞ。ガキの頃に見た動画で広告が流れてたよな」
だいたい、五年くらい前だったか。
ナオライナ~オラ~イ♪ ってな感じの特徴的なメロディの動画広告が耳に残るから、よく覚えてる。そういえば、ここ数年は全く見ていなかったが……。経営難になってたのか。
「諸行無常ってヤツだね。今の時代、
「全体的に世知辛いなー……」
『結構あるんだよねーそういうの』と、
そんなにいるのか、悪い伝承師。しかしこう……悪い異能の使い手が個人で悪さをするんじゃなくて、その異能でやることが企業を乗っ取って金儲けというのも、物語に語られるような体制が崩壊した今のこの混沌とした社会情勢って感じだよな……。悲しいことに。
少し侘びしい気持ちになっていると、
「ほら。三〇年前の
「ああ……それは知ってる。その影響で、旧来の企業による業界再編が活発になってるって話をニュース系のチャンネルで見たことある」
「そそ。
『
歳旦重工やニイナメロジスティクスをはじめ、様々な業種が経営協力をして、まるで鰯が群れを成して巨大な魚群を形作るみたいに『一つの巨大な企業』を形作った複合企業体……だったか。
存在感で言えばダブルスリーナイン社がダントツではあるものの、『
「それでも、世界的なシェアはダブルスリーナイン社がダントツで確保してるっていうんだから凄いよねぇ。すっかり『
「ダブルスリーナイン社もだいぶ手広くやってるよな。
「警備とか物流とか通信とか色々だよ。噂だと、旧来の『神憑き』の名家をも取り込んでるって話だけど」
「ってことは一応『神憑き』の素質持ちの俺も頑張ればワンチャン就職できたりしないかね? 別に名家とかではないけど」
「夢見るのも良いけど、まずは手に職つけなくちゃね~」
「ソデスネ……」
「あ、敬語出てるよ。わたし堅苦しいの嫌い」
「判定厳しくない?」
そんなことを話していると、目の前に目当ての倉庫──
三階建ての倉庫を眺めながら、
「落ち着ける場所に着いたら端末ドローンに監視カメラの情報を送るから、その場に待機しつつそれ見て何か異常があり次第わたしに連絡入れること。とりあえず初仕事の内容はそれだけね」
「ん? 待てよ。連絡入れるって、そっちは単独行動か? いや、そうじゃないか。
「なに、怖いの?」
「怖いも何も、見つかったらアウトな状況だろ!」
大前提、ハッキングしてセキュリティを無効化して忍び込むんだよ、俺達は!
何かの拍子に見つかったら、詰むだろ! バイトにできるのは話し相手までで、単独行動で別のミッションをこなすなんてできません!
「だいじょーぶだいじょーぶ。ちゃんと見つかりづらいところに置いていくから。っていうか、わたしについて行く方が危険だと思うけどね。現物抑えに行くわけだし」
「俺、この世には貴方より辛い思いをしている人もいるのだからっていう言い回しはその人の辛さに目を向けていない不誠実なロジックだと思うんだ」
「奇遇だね。わたしも全く同感だよ」
クソったれ!! 欠片も響かねえ!!!!
「此処でぐだるよりも、さっさと行動して帰ることを考えてた方がいいと思うよ? まだ物流センターの外とはいえ、見つかるリスクが全くないとは言えないしね」
「生殺与奪権を握られるってこんな気分なんだな。改めてさっさと
ぼやいてみたものの、
給与については最大限交渉しよう。振袖の裾から見え隠れするボディスーツに覆われた