for you...«彼女が彼にできること»   作:巡朗

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ドラム缶の正しい使い方

◇◆◇◆◇

 

 

 

「…………」

 

 

 

今日が土曜日ということもあってか、町の大通りを流れゆく人たちは絶え間ない。

友達同士。カップル。そして、親子連れ…。

わきあいあいとした雰囲気を漂わせながら、1組、また1組と流れの中に溶けていく。

木陰のベンチでほおづえをつきながら、あたしはぼんやりとその様子を眺めていた。

 

 

 

 

 

『お嬢様。たった今旦那様からお電話が……』

 

 

 

 

 

おはようというあいさつの後、1番に鮫島の口から発せられた言葉がそれだった。

その内容は、言われなくても大体想像はついていた。

要は仕事の関係で問題が起こって、急にこっちに帰ってこられなくなったということ。

 

 

『そう…』

 

 

あたしはそう短くつぶやいただけで、怒るとか、そういった感情的な行動をとることはなかった。

もちろん残念ではあるし、どうしてって気持ちもないわけじゃないけれど、パパたちだって好きでそうなったわけじゃない。パパたちの仕事が大変なことくらい少しは分かっているつもりだし…。

 

 

(……こういうとき、ほかの家の子だったらどうしているのかしらね…)

 

 

聞き分けよく受け入れるのか、納得がいかないとダダをこねるのか。

 

 

「……まぁ、周りがどうとかカンケーないんだけどね」

 

 

そんな簡単に無茶が通るほど甘くはない。

むしろ、子供のわがままを簡単に認めてしまうような親だったら、それこそ問題があると思う。

ただ……

 

 

「……そろそろ行こうかな」

 

 

パパもママもすごく忙しい立場だから、あたしはできるだけ迷惑をかけないようにがんばってきた。

わがままを言ったことも、記憶しているかぎりでは1度もない。

パパたちをずっと見てきて、気付いたら自然とそうふるまうように育っていたあたし。

だけどときどき、これで本当によかったのかなって思うことがある。

ちょっとだけわがままを言ってみても……あたしの気持ちを正直に伝えてみてもよかったんじゃないかなって。

 

 

「あら?アリサちゃんじゃない」

 

 

ベンチから立ち上がったところで、聞きなじんだ声。

 

 

「桃子さん。こんにちは」

 

 

なのはのお母さん――――桃子さんだった。

片手にはふくらんだ中くらいのビニール袋をひとつ。

やわらかい笑顔につられて、あたしもほんのりと笑みを浮かべた。

 

 

「こんにちは。こんなところに1人でどうしたの?なのはが今日すずかちゃんの家に遊びに行くって言っていたから、てっきりアリサちゃんも一緒なのかと思ってたんだけど」

 

 

桃子さんの言葉をなかば予想していただけに、あたしはあいまいな笑みを返すしかできなかった。

あたしがここにいるのは、すずかの家には行かないことにしたからだ。

朝のとき、もちろん考えなかったわけじゃないけれど、正直なところ、今日はみんなと一緒に楽しく遊べるような気分じゃなかったし。

 

 

「あはは…そういえばなのはから聞きました。おとといの話。桃子さんもひどいことされたって聞きましたけど、大丈夫ですか?」

 

 

あまりこの話題を続けたくはなかったから、ちょっと強引ではあるけど、ちがう話題をこっちからふってみる。もちろん心配だった気持ちもあるし、ふきんしんだけど少し興味もあったから。

きょとんとしたあとに、桃子さんはゆっくりとあたしに微笑みかけてから口を開いてくれた。

 

 

「ふふ…ありがとう。おかげさまで私はこの通り大丈夫よ。お店の方も食器とかが何枚か割れただけでお客様が怪我をされるようなこともなかったわ。それに――――――――」

 

 

桃子さんが心の底から安心したような表情を浮かべた。

 

 

「なのはが無事でいてくれたしね」

 

 

かがやく笑顔は、降ってくる太陽の光をはじいてちらすようでとても素敵だった。

本当になのはのことを大切に思っている。

離れて暮らしているからといって愛情を感じていないと言うつもりはないけれど、こうして自分以外の子が深い愛情を受けているのを見るのは、ちょっとくすぐったい反面、なんだか複雑な感じがした。

 

 

「…本当に、あの人には感謝してもしきれないわ」

 

「あの人……それって、お店でさわいでた男の人をやっつけちゃったっていう人ですか?」

 

 

あたしの発言にうなずく。

 

 

「ちょっとおかしな話だけど、お店で騒ぎが起こってしまったことに少し関係もしているんだけどね」

 

 

えっ?とあたしが気の抜けた返事を返すと、桃子さんはぽつりぽつりと語ってくれた。

さわいだ男の人はもともとカップルのお客さんとしてお店に来ていたみたいで、いっしょに来ていた女の人が例の男の人に見入ってしまったことからケンカになって、そこから例の事件にまで大きくなってしまったみたい。

 

 

「でもあの感じだと、いつか他のお店で同じようなことになっていたでしょうね。そう考えると騒ぎになったのが、あの人がちょうど居合わせてくれた翠屋でよかったかもしれないわ。相手の人はすごく体格がよかったから、他の所だったらもっと大変なことになっていたかもしれないもの…」

 

 

くもりのない微笑みだった。

 

 

「……桃子さんは、すごいですね」

 

 

おせじとか抜きで、本当にそう思う。

自分のお店でよかっただなんて、誰にでも言えるようなことじゃない。

同年代のほかの子たちと比べて自分は大人なほうなんだって思うこともあったりするけど、やっぱりあたしはまだ子供なんだって感じさせられる。

 

 

「うふふ…私なんて、全然すごくなんてないわよ?止めに入った時なんて怖くて怖くて仕方なかったもの」

 

 

クスリと笑みをこぼす桃子さん。

それはどこか子供のようなあどけなさを残していて、あたしがこんなことを言うのはどうかと思うけど、とてもかわいかった。

 

 

「それじゃあそろそろ私はお店に戻るわね。あんまり士郎さんを待たせちゃっても悪いから」

 

「はい」

 

「ふぅ…結局会えないで終わっちゃった」

 

「え?」

 

「一昨日助けてくれた人。やっぱりそう簡単には見つからないものね…。結構目を引くような人だったから、もしかしたら会えるんじゃないかって思ってたんだけど」

 

「あの…よかったらあたしも探すの手伝いましょうか?」

 

「えっ?」

 

 

桃子さんは目を丸めて、すぐにふっと表情をくずした。

 

 

「ありがとう。どうしてもってときには、お願いしちゃうわね」

 

 

つまり今は大丈夫ってことみたい。

桃子さんも必死で探している感じではなかったから、その言葉に素直にうなずいて返した。

 

 

「ふふ…それじゃあまたね、アリサちゃん」

 

 

またいつでもお店に遊びに来てね。

そう、最後に優しい笑顔を向けてくれた桃子さんのうしろ姿が、少しずつ小さくなっていく。

桃子さんみたいな大人になりたいって素直に思う。

なのはが大人になったら、桃子さんみたいな感じになるのかな。

あたしもいつかは大人になって、子どももできて…。

 

 

「――――――――その時は……」

 

 

さみしい思いはさせたくない、かな……。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

駅の近くまできたあたりでふと、あたしは周辺に視線をめぐらせる。

 

 

(いま、だれかに見られていたような気がしたんだけど……)

 

 

だけど、べつに変な人とかは見当たらない。

場所が場所なせいか人もたくさんいるし、停めてある車も多い。

まぁ、気のせいならいいんだけど…。

こうして周りを見わたすと、大きな旅行カバンを持ち歩いている人もそれなりにいるみたいだった。

この海鳴市には海や山、温泉だってある。

観光地としての魅力は十分。

 

 

「旅行か……」

 

 

家族で旅行に行ったことなんてほとんどない。

そもそも家に長くいることだってパパたちにはむずかしいんだから…。

ふらりふらりと駅のとなりに建てられた交番の前を通りすぎようとしたとき、ぴたっとあたしの足が止まった。

 

 

「……」

 

 

掲示板にはられた1枚のポスター。

その上に大きく『痴漢防止週間』と書かれている。

ポスターには、男の人が後ろから行為におよんでいる場面がななめ後ろから描かれていた。

されている側の人はまゆ毛を八の字にしながらこちらを向いている。

目は、なぜか笑っていた。

困っている気持ちを伝えたいんだろうけれど、目が山なりににっこりとしているせいか、そのかんじんな困っているという心情がすがすがしいくらいに伝わってこない。

「困ってますよ?ほんとですよ?」

という説得力をみじんも感じさせない言葉が今にも聞こえてきそう。

そしてどういうわけか、されているのは男の人だった。

このポスターを描いた人は、同性を愛することになにか思い入れでもあるんだろうか。

別に同性愛を否定するつもりはまったくないけれど、なにもここでその気持ちを爆発させなくても…。

そして何より問題なのは、なんでこのポスターが選ばれてしまったのか…。

海鳴市の未来に、少しばかりの不安を抱かずにはいられなくなる。

 

 

「……」

 

 

思わずめまいがしたあたしは、そのまま視線を下に持っていく。

 

 

『著作 金欠鬼 様』

 

 

「……」

 

「おや、お嬢ちゃん。そのポスターに興味があるのかい?」

 

 

警察官のおじさんが気さくな笑みをあたしに向けてくれた。

 

 

「全然ありません」

 

 

自分でもおどろくほどの即答だった。

きょとんと目を丸めるおじさんに一礼して、あたしはその場をあとにする。

いつの間にか、あたしの中に居座っていたもやもやが少しだけ消えていて、それだけはあのポスターに感謝しようと思う。

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

 

足の向くまま、ただ流れに身をまかせてたどりついたのは、海辺にたたずむ倉庫街。

さびついて変色したその建物たちは、今も使われているのか分からないくらいに傷んでいるようだった。

普段なら絶対に近寄らないこの場所は今、辺りが暗がりに包まれつつあることもあってすごく不気味だ。

無意識とはいえ、何でこんなところにきちゃったんだろ…。

 

 

(早く家に帰ろう…)

 

 

今は人工的に作られた光が恋しい。

少しでも早くこの場から去ろうと、体を180度回転させて――――――――

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

 

一瞬、あたしは息が詰まりかけた。

あたしの視線の先――――――――10メートルくらい離れたところに、一台の大きな黒い車が停まっていた。

あたしがここに来たときには見かけなかった。

いやな汗が背中を伝い落ちていく。

 

 

(あの車…駅前でも見かけたような……)

 

 

駅の近くに停まっていたたくさんの車の中に、目の前の車と同じものがあった気がする。

すごく目立つ車なので記憶に残っていた。

ぐうぜん……だよね?

あたしは自分に言い聞かせるように胸に手を当てる。

どちらにしても、このうす暗く人気(ひとけ)のない状況であんな車が近くにいるなんて、悪い予感しかしない。

 

 

「…っ」

 

 

どうしよう…。

街にもどるためにはあの車の横を通りすぎないといけない。

でも、あたしの心臓がどくんどくんと、うったえかけるように叫びつづける。

本能的に。

「それは危険だ」と。

かといって、後ろに逃げれば街からも住宅地からも離れることになって、かえって危険かもしれない。

それに、逃げ切れるかだって……

 

 

「…っ」

 

 

考えて。考えて。そしてあたしは、建物と建物の間に向かって全力で走った。

後ろから、バタンバタンと、車のドアを乱暴に開閉する音が聞こえる。

 

 

(やっぱり……!!)

 

 

あたしの中の恐怖が急加速する。

ドカドカと聞こえる、大人の足音。

 

 

(隠れなくちゃ…!!)

 

 

たえられなくなったあたしは、とっさにたまたま扉が開いていた倉庫に逃げ込んで、おくのごちゃごちゃといろんなものが積み上がった物の後ろにうずくまった。

抱え込んだ足がガクガクと震える。

 

怖い…!

 

怖い…っ!!

 

助けて…!!

 

だれか……助けて……っ!!!

 

 

(そうだ……ケータイ……!!)

 

 

家に連絡して助けを――――――――――――

 

 

 

 

 

ガッッ!!!

 

 

 

 

 

「ひっ――――――――んぐっ…!!!」

 

 

見上げた瞬間、あたしは口をふさがれて、ケータイをにぎっていた手をひねり上げられた。

地面に落としてしまったそれを、別の男の人がけりとばしてしまった。

 

 

「へっ……かくれんぼはもう終わりか?」

 

 

いやらしい笑みをうかべて、太った中年男があたしをのぞきこんだ。

人数は3人。

目の前の男以外に、中途半端にひげを生やした薄汚れた中年の男がもう1人と、目と顔が細長い30代くらいの冷たそうな感じがする男。

 

 

「んぐっ!!むぐうぅぅぅ!!」

 

「ぐっ!このっ…!!」

 

 

 

ジャキ……

 

 

 

「大人しくしろガキ」

 

 

目の前に()()を見せつけられて、体がこおりついた。

テレビとか、マンガの中でしか見たことがない鉄のかたまり。

その引き金に指をかけられて、あたしは死ぬかもしれないという大きく、現実的な恐怖に取りつかれてしまう。

がちがちと歯が音を立てて、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

 

 

「…間違いねえな。あのでっかい屋敷のガキだ」

 

「バニングス家だ。大富豪の」

 

「へへ…なるほどな」

 

 

太った男がねっとりとした視線でわたしをなめまわす。

 

 

「このガキを餌にすれば、俺たちゃその富豪の仲間入りができるかもしんねっつう訳だ…へへへ」

 

「おい。まずはこいつを裸にしろ」

 

「は!?お前ロリコンかよ!!」

 

 

ケタケタときたない男が笑う。

あたしはただ、ふるえながらそれを見ていることしかできない。

怖くて…体が動かない……。

 

 

「脅迫に使える。この写真をばら撒かれたくなかったらってな」

 

 

こごえるような目で、細顔の男があたしをみて、ニタリと口のはじっこをつりあげた。

 

 

「へ…まあ確かに、でかくなったらかなりいい女になりそうだよ―――――――なッッ!!」

 

 

 

ダンッッ!!

 

 

 

「んっ!!ぐぅっ!!」

 

 

 

チャキ…

 

 

 

「騒ぐんじゃねえぞ?」

 

「んぐぅ…!」

 

 

床にたたきつけられたあたしに、太い腕が2本せまってくる。

 

 

 

ビリリィィッ!!

 

 

ブチイィィッ!!

 

 

 

「…っ」

 

 

あたしの服が、スカートが、男の手によって乱暴にやぶかれて、ぬがされていく。

怖くて、はずかしくて、もう…死にたくなる。

そしてあたしは、上半身がはだかでパンツ1枚の姿にさせられてしまった…。

涙だけが、ただぽろぽろと流れ続ける。

 

 

「なあ…脅迫に使うやつ撮ったらコイツ、使()()()()いいか」

 

 

太った男が、きたなく笑う。

 

 

「お前の方がロリコンじゃないか」

 

「最近ご無沙汰だったからよ。なかなか可愛らしいガキだし、()()()の面倒をみてもらおうと思ってな」

 

 

そういって男が、下腹部をぽんぽんとたたく。

自然と目が開いた。

よくは分からないけど、きっとひどいことをするつもりだ。

それだけは分かった。

 

 

「お、いいねぇ。じゃあ俺も試しにやってみっかなぁ」

 

 

つられて、うすよごれた男の方もいやらしい笑みを向けてきた。

 

 

()()のはいいが、人質としての価値がなくなるまで使い込むなよ」

 

 

若い男の声に「分かってる」と気分よさげに返事をして、男のいかつい手があたしのパンツをつかんで、ずりおろした。

 

 

「へへ…」

 

 

あたしのパンツを、男がはなれたところに放り投げた。

ぎゅっと閉じた両目からは、かれてしまうんじゃないかというくらいにしずくがこぼれていく。

どうしてこんなことになっちゃったの…?

あたしはきっとこいつらに、一生忘れられないキズをつけられる。

心にも、体にも…。

やだ……いやだよ………そんなの………。

やめてよ……。

だれか助けてよ……。

お願いだから……だれか………

 

 

 

(だれでもいいから――――――――助けてよぉ…!!)

 

 

 

 

 

 

 

「がはあぁぁ――――――――――――ッッ!!!」

 

 

 

 

 

「なんだ―――――――――ぐぶうぅぅッッ!!!」

 

 

 

 

 

ぐわんぐわんと鈍い音が、建物の中にひびきわたる。

 

 

「なっ……!?」

 

 

目の前の太った男の顔がこわばっているのが見えた。

 

 

(………?いったい…なにが……)

 

 

男の向いている方をあたしも見てみる。

そこには―――――――

 

 

「あ……」

 

 

解放されていた口から、声がもれでた。

目の前に広がるのは、はなれたところにたおれていてぴくりとも動かない他の男2人と、妙にへこんだドラム缶が2つ転がっていた。

 

 

(どういうこと……?)

 

 

 

 

 

 

 

「 ここなら静かに眠る事が出来ると踏んでいたんだがな 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

面白い奴を見つけた。

騒々しい空間に辟易して立ち去る筈が、無意識の内に俺の足は止まっていた。

 

 

 

『――――――――――――待ってください』

 

 

 

俺に宛てた言葉で無い事は解っていた。

されど俺が足を止めたのは、生きた年月が二桁にも届かぬ様なガキがあの男にその言葉を放ったことにある。

神経を研ぎ澄ませて窺っていると、ガキはあの男に対して全く引き下がる事は無かった。

寧ろ、ガキの方が攻めの姿勢を見せていたと言っていいだろう。

何だ……あのガキは…。

 

 

 

『――――――――お母さんに謝れッ!!!』

 

 

 

「――――――――…」

 

 

気付けば俺はあの空間に戻り、突き飛ばされたガキを受け止めていた。

俺の中で、直に訊く気が湧き起こった。

何故そこまでするのか。

何故そこまで出来るのか。

何が奴をそれ程までに駆り立てるのか…。

(ゴミ)(はら)ってやったところで、俺は奴に訊いた。

何故自ら対処する道を選んだのかと。

その矮小な体躯で勝てると思っていたのかと。

 

 

 

 

 

『――――――――――――…止めなきゃいけないと思ったから……わたしだってこのお店の一員だからっ!だから……』

 

 

 

 

 

刹那、奴の双眸の向こうに、あの男の面影を視た。

奴の言葉の節々に感じた強い意志――――――(ほう)(ふつ)させる……あの男の事を。

まさかあの程度のガキとあの男の姿が重なって視えるとは考えもしなかった。

何故だろうな。

悪くない。

あの男と似通った奴に遇う事が出来たからだろうか…。

ならば何故あの男と似通った奴に遇った程度で俺は……。

やはり俺には解らないな。

たかが『人間の器』を持ったぐらいでは…。

 

 

「……」

 

 

――――――――――――…何故俺は、人間の器を持ったんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

「んぐっ!!むぐうぅぅぅ!!」

 

「ぐっ!このっ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

廃屋(こんな処)にまた塵が現れるとは予想外だった。

軽く視線を流した先には、女のガキ1人に迫る男3人。

随分と滑稽な絵面だ。

人間共の(いさかい)いなど興味は無い。

場所を変えて寝床にすれば済む事だ。

本来ならば、な……

 

 

「――――――――…ちっ……」

 

 

だが何故だろうな。

今は面倒事を持ち込んだ奴らを破壊してやらねば気が済まんようだ。

これも俺が人間の姿となってしまった故か。

まさか、先程までの『時間』を遮られた為だとでもいうのか…。

 

 

 

「なあ…脅迫に使うやつ撮ったらコイツ、使()()()()いいか」

 

 

 

まあいい。

今は下衆な事ばかり口走る塵共を逸早く片付けるだけだ。

そうして俺は、目の前に群れ成す錆びついた容器に狙いを定めた――――――――…。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 




金欠鬼様。お名前を(勝手に)拝借させていただきました。
ありがとうございました。
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