Melty Blood Another   作:Unknown37564

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【第五章】踊れ、汝ら人形の如く
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 自宅の居間で、宗玄の爺さんと俺が茶を啜りながら談話していたが、俺は血の気が引いた。

 

 都古ちゃんが、失踪した。

 

 爺さん曰く、事の発端はちょっとした友人との言い争いだった。

 

「何が原因だったのかは聞いておらなんだが、先に手を出したのは相手の方だったようだ。しかし、お嬢ちゃんも手を出してしまった。子供の手習いとはいえ拳法は拳法。結構重い怪我をさせてしまったらしくてのぉ」

 

 俺達"出来る人間"の鉄則。格闘技を習ってない者には、手を上げない。小学生の、まだ思春期を迎えたばかりの女の子には酷な話だったかもしれない。

 

「傷害事件にはなってないのか?」

 

「そこは問題ないらしい。この一件でお嬢ちゃんが塞ぎ込んでしまったようで、学校を休んだという。だが昨日、家からいなくなったと」

 

 爺さんは俺を見ながら、腕を組んで言うのを渋る。一つ間をおいてうん、と覚悟を決めた顔で爺さんは口を開いた。

 

「……お前さんの話が出ていたらしいんじゃよ」

 

「……は? 俺?」

 

 小学生の子たちの間で、一体なんで俺の話が出てくるのだろうか。

 

「理由はわからんし、わしも、両家の親もよくわかっておらんようだ」

 

 はぁ、と深い溜息をついて爺さんは茶を呷る。

 俺の話が出てる以上、無関係ではいられなくなってしまった。それに、漠然と嫌な予感もする。タタリの件だ。今の夜の街で問題を起こした小学生が一人出歩くのは、猛獣の檻に入るのと同じだ。

 俺も爺さんに釣られるようにして、深い溜息を零した。

 

「はぁ……今、噂になるような事はまずい」

 

「そうじゃ、お前さんから聞いていた例の件。あれもあって伝えておこうとな。あの子に手ほどきをしたのはわしじゃからの」

 

 予め爺さんにはタタリの件については概要だけ説明をしておいてあった。いざという時の保険でもある。戦力としてあてにしてる訳では無いが、万が一の時に爺さんの判断で動けるようにする為だ。

 それにしても、よもやこのような形でその伏線が機能するとは。連絡してなかった事を考えると手遅れになっていたと思うと、背筋がぞっとする。

 

「どうか、あの子のために捜索を協力してくれんだろうか」

 

 爺さんは手をついて頭を下げる。俺はその姿に心臓がぎゅっと潰されるような感覚がした。

 

「やめてくれ爺さん! 俺とあんたの中だ! それに、都古ちゃんの事は俺だって気になるし、頼まれなくたってやるさ」

 

 俺は爺さんに頭を上げるように、爺さんの肩を掴んで持ち上げて顔を見る。

 深く刻み込まれた皺。大きく刀傷のついた目。白髪のまわってしまった眉。そして、たくさんの悲しみを乗り越えたであろう瞳に、俺が映ってる。

 (おとこ)ならこうでありたいと思わせる精悍な顔つきが、俺の前に悲しみを浮かべていた。

 

「……あの子を見ているとな、孫が出来たような気になってしまってな。つい本気で指導してしまったんじゃ。あの子は根気よぉく、一途に食らいついてのぉ。それがどうにも、嬉しくて……」

 

「ああ、都古ちゃんは良い子だ。だから俺に任せてくれ」

 

「ただいまー。あれ、お客様?」

 

 俺が爺さんを眺めてると、玄関の開く音が聞こえる。シオンとさつきが買い出しから帰ってきたようだ。さつきが日除けの為のパーカーを外しながら入る。

 爺さんが少し警戒した様子で二人を見る。そういえば、爺さんには二人を紹介していなかった。

 

「爺さん。例の輸血パックを頼んでた件の二人だよ。今さっき挨拶したのが弓塚さつきで、紫髪のがシオン・エルトナム・アトラシア」

 

「おお、こりゃまためんこい娘たちじゃな。お前さんホントにジゴロじゃのぉ。ここに朱鷺恵を寄越すのも躊躇われるわい」

 

 朱鷺恵さんの名前を出されて俺はぎょっと目を見開く。

 

「志貴。朱鷺恵さんという方と何かあったのですか?明らかに動揺した眼をしてましたが」

 

「えー、志貴くん?」

 

「おやおや、色男は大変じゃなぁ~」

 

 少しいたずらっぽい顔をした三人に、俺は大きなため息をついた。

 

 

 

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