Melty Blood Another   作:Unknown37564

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 放課後、俺は有彦を呼び出して公園で話をすることになった。

 

「……それで、なんだよ」

 

 有彦はぶすっとした顔で、腕を組みながらぶっきらぼうに言った。

 

「……ごめん。今まで、お前の気遣いを台無しにしてきた」

 

 俺は深々と頭を下げた。

 はぁ、と有彦のため息が聞こえると、俺は頭を上げて有彦の様子を伺った。

 

「あのな、どこまで上から目線なんだよお前は」

 

 俺を睨みながら、有彦は近寄ってきた。

 

「そもそも、俺が弓塚探さないかって提案したの、何でかわかるか?」

 

「弓塚の事が心配だったからだろ?」

 

「ほら、これだ。何もわかってねえ」

 

 呆れ果てた様子でまた有彦はため息をついた。

 

「お前、弓塚の失踪から落ち込んだ顔するようになってたんだぞ」

 

 有彦の指摘を受けて、俺は目を見開いて驚く。

 俺ってそんなに顔に出る(たち)だったのか。

 

「だから、お前を心配して俺は弓塚探そうぜって言ったんだ。俺達が前に進んでいく為にも」

 

 もうかなりの距離まで有彦は俺に近づいてきていた。

 

「俺だってニュースぐらい見てる。弓塚の一家が、車で事故ったって事ぐらい知ってんだよ。さつきだけが行方不明だって言われたって、あの事故状況みたら望みが薄いってのは誰だって分かる事だ」

 

 それまで悪戯仲間だった友人の真剣に怒る顔に、俺は怯んだ。

 

「それでも、ほんの少しでも望みがあるなら、友人として気にしてるんじゃねえかなと思ったんだ。だっていうのに……お前と来たら、今忙しい、余裕が無いとか言ってよ。何か悩んでる事があるなら聞くって言ったよな?お前、"悪い、話すことはできない"ってよ」

 

 有彦は俺の襟を掴んで、睨みつけてきた。

 

「俺はお前の事、何も知らねえ。けどよ──だから友人になって、悩み分け合って、悲しみを乗り越えて生きてくんじゃねえのかよ!」

 

 有彦は、怒りと悲しみの入り混じった顔をしていた。その瞳には、薄っすらと涙が浮かんでいる。

──なんていう事だ。俺は、大切だと思っていた友人を、大切にしたいがあまりに傷つけていたんだ。

 

「ごめん。本当にごめん」

 

 有彦は胸ぐらを掴んでいた手を、ゆっくりと離して言った。

 

「謝んなら話せ!お前の抱えてるもん全部!俺に!」

 

 激しい言動とは逆の優しい行動に、俺は思わず胸が詰まるような思いになった。

 

「──わかった。全部話す。長くなるから、座るか」

 

 俺はベンチの方に手を差し出す。

 有彦と俺は、ベンチに腰を掛けて、それから話し始めた。

 

 

 ひとしきり全て話し終えると、腕を組んで聞いていた有彦は一つ息を吐いて、質問した。

 

「……弓塚、生きてんのか」

 

 ──おかしい。俺の話した事は、普通の人からしたら荒唐無稽な、妄想話のような出来事ばかりだったのに、有彦はそれを自然と受け入れて弓塚の安否を尋ねてきた。

 しかし、それだけ弓塚の安否を気にしているのかもしれないと思い、まずはそれに答えるべきだと考えた。

 

「ああ、実はすぐ近くにいる」

 

 俺は大きく、ゆっくりと二回拍手した。

 すると、公園の入口の垣根から、パーカーを被ったさつきが出てきた。

 

「……ども、久しぶり。乾くん」

 

 居心地が悪そうな、気まずそうな。そんな感じに手を挙げて弓塚は挨拶した。

 有彦は驚きからしばらく口を開けてぽかんとした後、手で顔を覆って言った。

 

「……お前らほんっと、水くせえよ……」

 

 そして有彦はまた、大きくため息をついて顔を上げ、言った。

 

「よし、とにかくわかった。その上でだ。俺も隠してた事がある」

 

 有彦はベンチを立って、俺にも手を出して立つように促してきた。

 手を取って、俺は聞いた。

 

「なんだ?どこかに行くのか?」

 

「俺の家にいくんだが、大丈夫だよな。勿論、実家じゃなくてアパートの方な」

 

「あ、ああ。今のところ何かするでもないから大丈夫だ」

 

 よし、と有彦はさつきを見て言う。

 

「ついでに、ハンバーガーでも買っていこうぜ。勿論、こいつの奢りで」

 

 有彦は俺の肩を叩いて言った。

 

「いいね!また前みたいに!」

 

 弓塚も笑顔でそれに答えた。

 それで彼らの機嫌が取れるなら安いものかと思っていた俺は、この後後悔する事になった。

 

 

 ハンバーガーショップに来た。

 来たは良いものの、俺は絶句させられていた。

 既に注文はバーガーが三十個、フライドポテトが十個注文されていた。

 

「あ、俺は飲み物コーラで、二つお願いします」

 

「私はオレンジジュースでお願いします」

 

「か、かしこまりました」

 

 店員が引きつった笑顔で対応している。その後ろでバーガーを作っている店員たちが俺たちを見て睨みつけていた。

 おいおい待て待て、君たちどれだけ食べるつもりなんだ。

 俺はバーガー一個とポテトを少し食べれば満足だぞ。そんなに食べれないぞ。

 とはいえ、弓塚の普段の食べっぷりを思えば、もしかしたらこれぐらい簡単に食べ切れるのかもしれないと思った。

 とはいえ、残すことになったら勿体無いので一応有彦に確認を取ることにした。

 

「おいおい、買うのは大丈夫だけどこんなに食べ切れるのか?」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。ウチによく食べるのが一人いるから」

 

 よく食べるのが、一人?つまり、アパートには誰かがいるという事だ。

 

「そ、そうか。それならいいんだが」

 

「お客様、お会計二万円になります」

 

 に、二万円……ハンバーガーでこんな会計、始めて見たぞ……。

 

「か、カードでお願いします……」

 

 久我峰経由でクレジットカードを作っておいて本当に良かったと、心底ほっとした。

 

 

 そうして俺達は有彦のアパートについた。二階建ての小さなアパートである。

 階段を上がって、廊下の中央の部屋で、有彦は鍵を開けた。

 部屋を確認してから、俺達に言った。

 

「入ってくれ」

 

 そのまま完全にドアを開ききった。

 

「お、おじゃましまーす。乾くんの家、始めてだ」

 

 俺は一度有彦の家に来たことがあったが、そういえばさつきは始めてだったな。

 

「お邪魔します」

 

 俺もさつきに続いて入った。

 いわゆる1K(ワンキッチン)の間取りで、入口から伸びる廊下に小さい台所とトイレと風呂への扉があり、そこから奥へ畳の和室が続いていた。畳の和室には収納の襖が一つあり、中央に折りたたみの座卓がある。

 確か寝る時にはこの座卓を畳んで壁に寄せるのだとか。そして、服などは襖の押入れに入れているらしい。

 有彦の性格は大雑把なのだが、以外にも部屋はきれいにしているなと感心した事を始めてきた時に思ったものであった。

 俺達は座卓の方へ座った。

 

「それじゃあ、本題に入る──おい、出てきていいぞ、"ななこ"」

 

 有彦がそういうと、俺達の背後の襖がすーっと開く音が聞こえた。

 驚いて後ろを振り返ると、そこには金髪の少女が出てきた。

 彼女のとんがり耳を見て、ああこれは普通ではないと思った。

 

「はぁ、全く。来客があるなら言ってくださいよ」

 

「悪い悪い、その代わりほれ、飯」

 

「あ、やったあ!お腹空いてたんですよぉ」

 

 有彦は、ななこと呼んだ少女にバーガーを差し出す。

 

「お、おいおいマジか有彦……とうとうお前、こんな小さい女の子と……」

 

「ちげえよ馬鹿!どう見たって人間じゃねえの分かるだろうが!」

 

 俺と有彦のやり取りに、さつきとななこは失笑する。

 

「ますたぁもそんな風なやり取りできるんですねぇ~」

 

「おいおい、お前こんな小さい子にマスター呼びって、ついに焼きが回ったのか?」

 

「ちげえっつの!おい、ななこ!説明してやれ!」

 

 ななこはハンバーガーにかぶりつこうとしていた途中だったが、やれやれと食べるのを中断した。

 

「始めまして。ななこです。もしかしたら知ってるかもしれませんが、教会所属の武装"第七聖典"です。私のマスターはシエルになります」

 

 シエルの名を聞いて、俺とさつきは驚愕した。

 世界は、思っていたよりも狭いようである。

 

 

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