【ペルソナ5 ザ・ドリーム】ラスボスが天使だとそそるものがあるよね。よし、とことん曇らせてあげよう(クソデカ善意)   作:プレイアデス

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邂逅 4月18日

夢と現実、精神と物質の狭間。

心の海、深層世界という性質を反映してか、青く染まる空間。

 

 先ほどから、心に驚くほど繊細に入り込んでくる、この声は....? 

(しかし、ここがよくある教室であるというのには、酷く違和感を覚える。)

 

 洗練された空気を感じながら、木製の椅子に座り、そのまま眠っていた体を起こすと、ようやく意識が鮮明としてくる。

(教室の後方、窓際の席で机に突っ伏していた体を起こし、意識がだんだんとはっきりしてくる。)

 

ここは、一体....?

 

 

「お目覚めですかな?」

 

!!

 

いつの間にか、目の前に老人が座っていた。そばには、銀髪で、満月のような眼をした女性が瀟洒に立っている。

 

「礼拝中に居眠りとは...感心しない。しかし、あなたは仮にも学徒...これを機に学ぶことだ」

「『ここはどこだ?』」

「夢と現実。精神と物質の狭間にある空間にある場所。本来は、何かの形で契約を結んだもののみが訪れる部屋。私の名は『イゴール』。『ベルベットルーム』の主を務めております」

 

老人は肘をつき、両の手を顔の前で交差させ、思案する人のような格好で告げる。

 

「私は、主であらせられるイゴール様の従者、『ディオーネ』。以後お見知りおきを、わが学徒」

 

女性は毅然として告げる。

 

ここはどうやら、自分の知る世界ではないようだ。

 

「『なぜ教室?』」

 

「この部屋のありようは、貴方様ご自身の心のありよう。よほど、信徒としての意識がお高いとお見受けする」

「それでいながら、貴方はまさしく『信徒』。知識に貪欲である人間らしいあり方。現実と共にここでも学びを得れば、その身に降りかかる困難以上に大成できるはず...」

 

「『困難...』」

 

「元来、人には自身より一回り大きな試練が付きもの。貴方様の巡り合うそれらは、いささか他の者より大きい。しかしそれは、同時に貴方様を『理想の自分』に近づける糧ともなる」

「人生に苦難は付き物。これは切っても切り離せない。故に、貴方という信徒には、私達がその手助けを致しましょう。ほんの少しの、教えを」

 

「『意味が分からない...』」

 

「...どうやら、現実であなたが意識を取り戻そうとしている様子。ではまた、貴方様が確かな契約を結ばれるその時に、お会いしましょう」

「確かな契約。それが宿題だ」

 

 

意識が遠のいていく。

 

同時に、なぜこの空間に誘われることになったのか、記憶が過る。

 

 

 

下北沢の在園高校と言えば、同学区の克己高校と肩を並べる有数の私立高である。

僕はそこに通う2年生。部活動はしていない。得意科目は国語。コンゴトモヨロシク。

 

「はい、じゃあ今日の授業終わり!挨拶してー!」

 

「「「ありがとうございましたー」」」

 

今日も学校が終わった。しかし、新学期から元気のいいことだ。

 

つつがない。教師の声を聞き取り...まあ大体が教科書を諳んじて、そこに体験談や自慢話を混ぜるだけだが...ノートを作る。

この前の試験では学年10位以内だった。大した努力はしていない。一日2、3時間程度机に向かうだけの作業だった。

 

最近、人生とはこんなものだっただろうかと思いに耽ることがある。別に自分が万能だとか、全能感にあふれて思う訳ではない。

要領よく過ごすだけで将来が開ける。才能さえあれば。努力さえすれば。なんのカタルシスもなく。人生はドラマではなく。

 

子供っぽく正義のヒーローとか、悪のカリスマとかに憧れたこともあったのだ。今でも番組を見たりはする。

ただ、良くも悪くも要領がいいとしか言いようのないこの人生、そんなものにはこの社会では到底なれないことは理解している。

 

だから、今日のこれはある意味で必然で、ある意味で運命なのだ。

 

 

僕の足は自然な足取りである場所を目指す。

今の自分の思考はおそらく日々に疲れたが故だろう。高校生だもの、様々な要因でつい深い思考に陥ることはある。

そんなわけで。

 

「失礼します...2-Cの――です。その....体調があまり、優れないようで。一応、診ていただくことはできますか」

 

少し尾を引く喋り。しかし辛そうにしてはいけない。大丈夫だという空元気を見せることが大事だ。

予想通り、というか毎度のことなのだが、養護教諭は心配するそぶりを見せた。

 

「ああ、大丈夫かい?君、ここのところ頻繁に来てるみたいだし...保健室じゃなくて、一度どこかちゃんとしたところで見てもらった方が...」

「いえ。...先生に心配してもらうほどのことじゃありません。きっと新しいクラスだから、気疲れでもしてるんです」

 

少し休めれば、いいんです。そういうと、本人が言うならばと渋々引き下がったようだった。

...僕は余計な心配をさせてまでここにいる必要があるのだろうか。いや、もうやってしまったことだ、せっかくなら、休もう。

 

「あ、ごめんね、一応名前、記入してもらっていいかな?すぐ帰っちゃうからさ、まだやってないでしょ?」

「...それも、そうですね。はい」

 

『睦月 雅』(むつき みやび) これが、『僕』の名前。これが、僕。

 

「...へえ、ミヤビ...くん?なんだか柔らかい名前だね。俺なんてショージって、ザ・男ってのだから。障子紙みたいに弱いのは...否定しないけど」

「そうなんですね」

「...冗談だよ?」

「はい」

「はぁ、ベッドへどうぞ」

「ありがとうございます」

 

ちょっとした問答のあとにベッドへ案内される。

あまり気の利いたコメントはできない。コミュニケーション能力にはまだ粗がある。でもこれは天性のものだ。要領の良さでもカバーしきれない。

 

保健室のベッドは固い。修学旅行で寝る敷布団みたいだ。もしくは二段ベッド。

何とはなしに、スマホを開く。SNSは情報が濁流のように押し寄せてくるので、こういった時には見ない。

単純なパズルゲームなどが、この場合は好ましい。えーと、どれにしようか。

 

「ん?」

 

見慣れたホーム画面に、見慣れないアイコン。

赤黒い、何か、大樹のような....。

 

「あ」

 

タップミス。まあすぐにホームに戻れば....。

 

「あれ、急に、眠く....」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

「ん、起きたかい?スマホ持ったまま寝ると体に良くないよ~?」

「...あ、はい。すみません」

 

どうやらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 

しかし、あの妙に青い部屋と長鼻の老人は一体....。

 

「雅君、そろそろ最終下校時刻だ。俺としては別にいいけど、早く帰らないといろいろ面倒だぞ」

「もうそんな時間ですか。...帰ります。失礼しました」

 

窓の外を見ると、もう暗くなっていた。季節もそろそろ変わって、また寒くなるのだろうか。

季節の変わり目というのはなにかと事が荒立つものだ。学生なら、なんだろう、定期考査とかか。荒立つというよりは焦心に駆られる感じだが。

 

下北沢にある高校から家までの距離は、電車で数駅ほど。日比谷線にはお世話になっている。

最寄駅から自宅までの帰路というのはなんだか不思議なものだ。ここらから一気に肩の力が一段階抜けるというか、気が落ち着く感覚を覚える。

 

僕の自宅はそこそこの大きさの一軒家で、そこに両親と僕の三人で暮らしている。

 

「...ただいま」

 

声はリビングの方まで届いただろうが、声を返す人は誰もいない。

当たり前だ、今は海外旅行中なのだから。僕の一人暮らしの練習も兼ねて、また結婚二十周年とかでヨーロッパの方まで行っている。磁器婚だっけか。

 

独り暮らしの練習と言えば聞こえはいいが、その実やれているところはせいぜいが誤魔化しようのない掃除くらいのもので、食事に関してはあまり充実させていないのが現状である。

 

「一つ数百円、簡単なレンジ操作であっという間にご家庭の味...随分安売りなことで」

 

キタムラ食品から発売されている冷凍食品。冷凍食品『らしい』クセもあまりないため、最近の栄養源はだいたいこれらとゼリー飲料。

ゼリー飲料はどこぞのサプリ会社が販売しているマイナーながらも根強いファン層を持つ影の人気商品だ。つまり僕もその一人ということだな。

 

...初めのころ、それこそ両親が長期の旅行に行き数日後まではチラシに目を通しスーパーに通い、無駄にある料理道具で無駄なテンションで料理をした。

片付け自体はそこまで苦ではなかったが、食費を計算したら労力とは何なのかと思った。コストは同じでも労力が違う。しかもそのコストも努力して減らしたものなのに、ふと寄った店で食べるだけで自炊と同じくらいのクオリティと値段なのだ。つまりはそういうことなのだ。

 

「そーじー、おそーじー。ふふんがふーん」

 

歌を歌うと気分が前向きになるのは子供の時だけで、成長していくとその時見た客観的な自分が寂しすぎて逆に気分が下がるデータが僕から報告されている。ソースは僕という奴。

 

「パジャマでお邪魔」

 

「ろくな番組ないなぁ、全部平成のオマージュじゃん」

 

「...寝れねー」

 

なんとか保健室での摩訶不思議アドベンチャーを忘却しようとしたのだが、振り払えるはずもなく。

あそこまで青い部屋は初めてだった。色合いから想像はしづらいが、教室、なのだろうか。どこか水族館のトンネルドームにも似た配色だった。初めて訪れる場所なのに、どこか、ずっと訪れるのを待ち望んでいた気さえする。

 

「このアプリ、だよな...」

 

動画サービスや音楽アプリ、入れているだけの勉強アプリなどが立ち並ぶ中、ひっそりと、しかし異様な雰囲気のあるアイコンが並んでいる。赤黒い色をした大樹のようなアイコンだ。

 

 アプリを起動すれば、何かわかるかもしれない。

 

「いやいや...」

 

提供元がよくわからないアプリなんて起動する気になれない。長押しして削除し、一旦の平穏を得る。まあ、今日はもう遅い。もう寝ようか...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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