ここいらでちょいと番外編をひとつまみ。
今回は過去編。かーなーり短いですけどごめんなさい。
「いらっしゃいませー!!」
初めはただのお客さんだった。
「何をお探しでしょうか?」
「ここに魔道具店があるって聞いたんですよ。どんな商品があるのか見に来ました。良いものがあれば購入しようと考えています」
「本当ですか!?待ってて下さい!今すぐ私のおすすめ商品を持ってきます!!」
「…え、ええっと……よろしく頼みます………勢い強いな…」
この魔道具店に訪れてきた、新たなお客さんという認識だった。
「これとかどうでしょうか?ロン・ロン・エ・ロンという名前の商品なのですが、体の一部を伸縮出来る様になります!伸ばして鞭のように振るって攻撃することが出来ますよ!!」
「………へ、へぇ。ちなみに使う上で欠点とかはあるんですか?」
「鎧などは一切伸びないので、耐久度は元の体のままなことや、服などは脱がないと破れてしまうことでしょうか」
「すみません。それはちょっと……」
「ええっ?残念です……」
やっぱりいつものお客さん達と同じで、全然商品を買ってくれないと思っていた。
「よし、これ買います。全部」
でも違った。
「ええっ!?ぜ、全部ですか!?」
「はい。値段は張るけど、これは良い商品ですね。気に入りましたよ。全部でいくらですか?」
「え、ええっと……ぜ、全部で500万エリスです!」
「へぇ……ま、そのくらいですか。はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます!久々に商品が売れました!」
彼は久々に商品を購入してくれたお客さんだった。
「久々って……あの、ここって何が売ってるんですか?」
「少々待って下さい。……例えば衝撃を与えると爆発するポーションや、蓋を開けると爆発する瓶、温めると爆発するポーションに、割れると毒が蔓延する瓶などがあります」
「ここって何か裏社会で流通してる商品を扱っているお店だったりします?」
「違います!駆け出しの街にある、ちゃんとした普通の魔道具店ですよ!!」
「駆け出しの街に、こんな危険物はないはずなんだけどなぁ………」
そのあとも、お客さんと当たりさわりのないお喋りが続いた。彼も口調が少し崩れ、親しげな雰囲気を醸し出して話してくれた。人と何気ない事でこんなに喋るのは、本当に久々で楽しかった。
「へぇ~~~~。ウィズさん、リッチーなんだ」
「あ、え、や、そ、その………」
「誤魔化しても無駄だよ。もうバッチリここに聞いちゃったから」
途中、お喋りに夢中で気を抜いてしまい、うっかりと私がリッチーであることを漏らしてしまった。
「あ、あの!ど、どうか見逃して………!!」
「大丈夫だって。他の人にバラしたりしないから」
「えっ?」
「確かに貴方はリッチーだ。でも、人間を滅ぼそうと考えているなら、今頃みんなやられてる。そうしないのは、ウィズさんがむやみに人間と争わず、平和で暮らしたいって考えてるから。そうじゃない?」
「……えぇ。私は人に危害を加えませんし、なるべく仲良くしたいと思っています」
「なら大丈夫。ボクとウィズさんだけの秘密って事で。誰にも言いふらしたりしませんから」
「あ、ありがとうございます!」
でも彼は秘密にしてくれると約束してくれた。リッチーと知っても、あまり表情を変えなかったのは意外だったが、それ以上に友好的でいたいと言ってくれた人間は彼が初めてであり、とても嬉しかった。
「でもウィズさん。ボクだったから良かったけど、他の人達だったらどうなるか分からなかったよ?次は気を抜かずに、うっかりバラす事がないようにね」
「うっ………だ、大丈夫ですよ!次からはちゃんとしますから!!」
「頼むよ本当に」
今までで私が秘密をうっかり漏らす、そんなことは無かったのに。
私は知らず知らずのうちに求めていたのかもしれない。アンデッドや他のモンスター達とではなく、人間と会話が出来るのが。彼の雰囲気に大丈夫だと安堵感を覚えるあまり、警戒心が緩んでしまい、無意識に正体を打ち明けてしまった。
……まぁ、こんなことは当時の私はよく理解することが出来なかったが。
「では、ボクはここで。また来ます」
「はい!また新しい商品を仕入れてきますので、楽しみにしててください!」
彼は「また」来ると言っていた。
次はどんな魔道具を仕入れよう。どれが気に入ってくれるのか。考えれば考えるほど楽しみで仕方がない。
これが私、ウィズと後の副店主、イセイユウヤの最初の出会いと出来事であり、リッチーになってから初めての友人だった。
過去編はどうしても短くなりがち。
ちなみに、彼が買ったのは槍、サイ、フェンシング剣、ムチ、手裏剣、ヌンチャクに変化出来るが、変化させたあとで移動の際は体が踊り出す副作用付きのバトンです。(しかも武器毎に踊りが違う)