最初だけカズマ視点。その次からはユウヤ視点です。
魔王軍幹部、バニルを倒した。
仮面を付けて乗っ取ったダクネスごと、めぐみんの爆裂魔法を食らって消滅した。
ダクネスも大怪我を負ったが、それでも心臓は動いており、あいつの固さに改めて感心した。
そしてバニルを倒した日から一週間後。
俺達はその称賛として、賞金2億エリスを与えられた。(領主の屋敷の弁償分から引かれて七千万になったけど)
なお、表彰の際にダクネスの本名が大声でバレ、皆にララティーナララティーナと連呼されて顔を赤くし、周りの奴らは愉悦の笑みを浮かべていた。
だけど、素直に喜べはしなかった。宴会ムードのギルドを宴会の女神であるアクア、そしてめぐみんに任せると、俺とダクネスは今から行かなきゃならない場所へ向かう。魔王軍幹部、バニルを倒した事を報告しなければいけない相手がいるのだ。
確かバニルは言っていた。
この街の友人達に会いに来た、と。
その友人達は、働けば働くほど貧乏になる特技を持つリッチーと、人間とアンデッドのどっち付かずな半端者で……と。
そのリッチーとは、同じく魔王軍の幹部であるウィズの事であり、そして半端者とは魔道具店副店主のユウの事だろう。
つまり俺達は、ウィズとユウの古い友人を倒してしまった。
アクアを狙っていた訳だし、冒険者という職業上仕方のない事とはいえ、今回はいまいちスカッとしない討伐だった。
俺達はあまり人通りの多くない、路地裏のとある一角。ウィズ魔道具店と看板が掛けられた店の前に立っていた。横を見ると、屋根のないユウの地上の家が建っている。もうあと少しで完成しそうな状態だ。
「カズマ。今回の事は私からウィズやユウに報告しよう。ほんの一時だったが、体を共有し暴れ回った仲だ。そして、人をからかうところは頂けないが、そこまで悪い奴でもなかったと思える。……なぜだか執拗にアクアを目の敵にしていたが。それに、エリス様に仕えるクルセイダーとしてこんな事を言ってはいけないのだろうが……まぁ、嫌いな奴ではなかったよ」
ダクネスが、遠い目をしながらそんな事を言ってきた。
「……お前、共に暴れ回った仲だとか言ったな。やっぱあの時、結構ノリノリで冒険者達を打ち倒してたんだろ」
「ち、違うぞ?というか、そんな事はどうだって良いだろう!」
ともあれ、俺達は玄関のドアを押し開けて店内に。
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃい」
そんなのんびりとした声を聞き、二人がどんな顔をするだろうと想像し、俺は胸が苦しくなる。下手すればユウに殺されるかもしれない。
───と、店内に入った俺は、ウィズ魔道具店のエプロンを身に付けた、新顔の店員に気がついた。
その店員は大柄であり、そして口元を大きく歪めると、とても愛想良く。
「へいらっしゃい!店の前で何やら恥ずかしいセリフを吐いて遠い目をしていた娘よ、汝に一つ言いたい事がある。まぁ嫌いな奴ではなかったよとの事だが、我々悪魔には性別がないのでそんな恥ずかしい告白を受けてもどうにもできず……おっと、これは大変な羞恥の悪感情、美味である!」
仮面を被った店員が大声で喋り、当たり前の様にそこにいた。
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「どうした?膝を抱えてうずくまって?よもや我輩が滅んだとでも思ったか!?フハハハハハハハハ!」
バニルが更に追い討ちを掛けると、店の床に三角座りをし、膝に顔を埋めて赤くして震えるダクネスの頭の上から湯気が出始めた。どうやらダクネスは物理攻撃よりも精神攻撃に弱いらしい。
彼女の肩をポンポンとカズマが叩いている間に、奥からウィズとユウヤが顔を出す。
「あらカズマさん、いらっしゃいませ!聞きましたよ、バニルさんを倒してスパイ容疑が完全に晴れたとか!おめでとうございます、これであとは私達への借金だけですね!」
「ま、バニルはお金稼ぎに関しては凄いからな。……お、その小切手はバニル討伐報酬のお金か?」
「あ、あぁ。宴会のあとで残った金額分を幾らか返すよ……」
嬉々として言ってくるウィズとユウヤに、カズマは片手を上げて制止しながら。
「いや、バニルを倒して疑いが完全に晴れたのは良いんだ。良いんだがコイツ一体何なんだ?どうして爆裂魔法を食らってもピンピンしてんの?リエスみたいに存在自体が反則じゃねーの?無傷ってどういう事なんだよ」
その問いかけに、バニルは心外だとでも言うかの様に。
「何を言うか。我輩をあの得体のしれない不気味な奴と一緒にするでない。それに、あんな物を食らえば流石の我輩とて無傷でおられるわけがなかろう。ほれ、この仮面を良く見るがよい」
そう言いながら、自らの仮面の額の部分を指差した。
「爆裂魔法で我輩の残機が一人減ったので、今は二代目バニルという事だ」
「なめんな!!」
即答して殴りかかろうとするカズマを、ウィズがまぁまぁと宥める。
「バニルさんは前々から魔王軍の幹部を辞めたがっていたんですよ。そのためにユウヤさんが色々と案を出して、遂にカズマさん達のおかげで一度滅ぶ事が出来ました。そして、夢のために再び蘇りました。今のバニルさんは、既に魔王城の結界の管理をしていないので、とても無害なはずですよ?」
「む、無害……無害か?………ん?いやちょっと待て。ウィズ、今なんて言った?その、ユウが色々案を出したって」
その疑問にユウヤがさらっと。
「あぁ。バニルがあそこのダンジョンに住み込んでたのはボクの提案。あそこで何か行動起こせば問題になってギルドでも話題になる。んでいつかその噂を嗅ぎ付けて、大物を倒しにめぐみんが来るからそこで爆裂魔法で倒してもらおうって考e………うぉっ!?ちょ、急に掴むなって!」
「元凶はお前かぁああああああ!!」
カズマがユウヤの服を掴み、ブンブンと振り出す。後ろからポンポンと宥める様にウィズが肩を叩き、落ち着くまで数分かかった。
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その後、バニルがカズマに幾つ意味深な言葉をかけたり、商売の協力を持ち出したりしてカズマ達は帰っていった。
そしてユウヤに呼ばれて影から飛び出したリエスも手伝い、店で各々作業をしていたときだった。
「……店主よ。これは一体なんだ?」
バニルが不審げな表情をして聞いてきた。手に取っているのは、人差し指にスッポリとハマりそうな大きさの小さな指輪だった。
「あぁ!それはこの前仕入れた新商品ですよ!」
「……で、これにはどんな効果があるの?」
「例えば、気分どんよりしているとついつい後ろ向きな発言をして更に気が滅入ってしまう事ってありますよね?この指輪はそんな人達の救世主!後ろ向きな発言をしないよう、矯正してくれるんです!」
「なるほどね。思考が前向きになるような魔法がかけられてるのか……」
ユウヤがそのように口に出して考えてると、ウィズは違いますよ、と首を横に振り。
「マイナスの感情を含む言葉を発すると、爆発する魔法がかかっているんです。『つらい』とか『寂しい』とか、そんな言葉に反応して───」
───と、そのときだった。近くの指輪が白く輝いたかと思うと、ボォン!と音を立てて爆発した。
「「………」」
「コホッ……煙臭!」
「ケホッ、ケホッ……まあこんな感じで爆発してしまうので、身に付けている際は、自然と発言に気をつける様になります。どうです?スゴいでしょう!」
「「………」」
「あれ?ユウヤさん、バニルさん、どうして何も反応してくれないんですか?そんなに睨まれると『怖い』のですが───『ボォン!』」
と、そこでまた指輪が爆発した。
「きゃう………!?ケホッ、ケホッ」
「ま~た爆発したよ……あ~煙臭い」
「こ、このように、何度も爆発を繰り返すうちに、体に刻み込まれた恐怖によって後ろ向きな発言が抑制されるんです!いつも前向きな気持ちになれるなんて、素晴らしいアイテムだと思いませんか?」
自慢するかのようにそんな事を話すウィズに二人は。
「ふむ。我輩はたった今、重要な事を理解したぞ」
「あぁ、ボクもだ。その指輪は商品としてはガラクタなこと」
「そして、やはり汝はポンコツ店主であるということだ!」
「あぁユウヤさん!バニルさん!そんなことを言っては───『ボォォン!』」
また、指輪が爆発した。(三度目)
「フハハハハハハ!悪口も、マイナス感情を含む言葉にカウントされるとは、良く出来ているではないか!」
「でもこれ、店には置けないだろ」
「そ、そんな……絶対に絶対に売れます!ユウヤさん達に分かってもらえないなんて、何だか『悲しく』なってきました。『ボォォォン!』」
……爆発。(四回目)
「……ケホッ。アハハ……今のはわざとではないんですけど……」
「これで分かったであろう?この指輪を店に置くわけにはいかないとな」
「うぅ……分かりました」
指輪が入った箱を手に取り、奥へと運んでいく。
「……ふん。爆発で散らかった店の片付けは我輩がやっておく」
「それ、店の奥じゃなくて人目の付かない倉庫の方にしまっておいてね」
「はぁー……絶対に売れるのに……」
「指輪の箱を運びながら喋るでない。また爆発するぞ」
「そんな、大丈夫ですよ。さっきはついうっかり言ってしまいましたけど──『ボォォォォン!』わっ!?『ボォォォォン!』『ボォォォォン!』」
…………(五回目)。
「ああああああ!!言ったそばから…………!!!」
「あー!!せっかく並べた商品がぁ!!」
「……我輩が仕入れたポーションまで巻き添えを食らったではないか!!」
「ボクの仕入れた腕輪まで………」
驚いたウィズがうっかり箱を落とし、それによって中から指輪がはみ出して散らばり、爆発した影響で様々な場所に被害が出ていた。
「でも私、さっきは後ろ向きな事言ってませんよ?一体どうして……」
「……ウィズが『さっきつい』とか言ったからじゃないのか。『ボォン!』」
六回目の爆発が起こると、リエスが並べていた棚が壊れてグチャグチャになる。
「さ、更に被害がぁ……」
「被害拡大してる……」
……と、そこでバニルが目を赤く光らせ、殺人光線ポーズを取る。
「あの……バニルさん……?どうして殺人光線の構えを取っているんですか………?」
「売れると踏んで我輩が大量に仕入れた高級ポーションが全て台無し……。汝というやつは……店の赤字を増やすことしか出来んのか?」
「すみませんすみません!!悪気はなかったんです!!だから殺人光線は───」
「問答無用!!『バニル式殺人光線』!!」
「ふぁぁぁあああああああ!!!」
「……ほら、片付けてまた並べ直すぞ」
「うん……」
店内の後片付けはその後、深夜まで続き。
半透明になったウィズが元に戻るまで三日かかった。
名探偵プリキュア面白れ~。
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