この素晴らしい魔道具店副店主に幸福を!   作:白峰 真紀

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 クリスマスと言えばやっぱこのネタでしょ!って事で入れました。後悔はしません。(知らん人はググってみな。あれ、ウィキにも載ってるから)

 今回は結構長めです。


第23話 クリスマスパーティー

 

 12月中盤。冬の寒さが一層強くなり、厚着して外へ出ることが多くなった。

 

 だがそんな寒さを物ともせず、クエストを受けに来る冒険者達がここに。

 

 「はぁ……冬場はロクなクエストがない……」

 「何を言う。もう一度良く見てみろカズマ。そうそうたる髙難易度クエストが並んでいるではないか」

 「見えてるよ。だから「ロクなもんがない」って言ってんだ!俺はもっと楽なクエストがいいんだよ!!」

 「白狼の大群の討伐、氷を吐くドラゴンの討伐……どれも一筋縄ではいかなさそうね」

 「冬場は強いモンスター達以外は冬眠してしまいますからね。まぁ!爆裂魔法の力試しには打ってつけの季節とも言えますが」

 

 そんな会話をしていると、隣から手が伸びて紙を手に取る。

 

 「……これは嫌だな」

 「ユウセンセじゃないですか!今日も来ていたんですね!」

 「あぁ。冬を越すための資金を集めて色々買ったんだが、残った金をウィズがガラクタに使ったから絶賛金欠中で……」

 「……お前も相変わらずだいぶ苦労してんだな……」

 「全くだよ。ウィズはたとえ周りが火の中水の中土の中でも、その対処よりも余計なモノを仕入れて来るほど商才の無さは筋金入りだから」

 「そんなに!?」

 

 ユウヤがウィズへの不満を愚痴っていると、そこで冒険へ出るのが面倒臭くなった水の女神が騒ぎだした。

 

 「もういや!もうすぐクリスマスのシーズンなんだし、パーっと家でクリスマスパーティーでもやりましょうよ!」

 「くりすます………?なんですか、それ」

 「私もそんな言葉は聞いたことないが……」

 

 二人が首を傾げると、クリスマスについて水の女神とユウヤが説明する。

 

 「クリスマスってのはね、カズマがいた故郷で行われてた風習よ。年末近くになると、チキンやケーキを食べたり、みんなでプレゼントを交換し合ったりするお祭りなの!」

 「さらに、クリスマスの前日には『サンタ』という人が煙突から家の中へ忍び込むんだ」

 「ど、泥棒ですか!?」

 

 ギョッと驚くめぐみんの言葉を違う違う、と否定する。

 

 「いい子にプレゼントを配っていく、いいおじさんだ。寝てる間に、枕元にプレゼントを置いておくんだ」

 「プレゼント……良いですね!今日はクエストはお休みして、クリスマスパーティーをしましょう!」

 「それじゃ決まりね!クリスマスパーティーに向けて、早速準備を────」

 

 水の女神が手を上げて言ったそのとき。

 

 

 「俺は嫌だぞ」

 

 

 まさかのカズマが拒否を示した。

 

 「ええっ!?ちょっとカズマさん、どうしてよ!?」

 「前にバニルを倒したときの懸賞金等も含め、貯えもまだあったと思うが……」

 「金が問題なわけじゃない。クリスマスなんてお祝いするわけないだろ!!」

 「意味が分からないんですけど。何をそうクリスマスを毛嫌いする理由があるのかしら?」

 「理由だって?フッ、そんなの簡単だ……」

 

 困惑しつつも理由を聞くと、彼らしい正直な言葉を述べた。

 

 「クリスマスを楽しめるのはリア充だけ!こちとら毎年部屋に篭ってゲーム三昧ええ平常運転ですよ!ちょっと外に出たら流れているクリスマスソングが精神攻撃仕掛けてくるし!この世界にクリスマスが無くてせいせいしてたところだ!」

 「か、カズマ。一体何を言ってるんだ?」

 「分からなくていいんだよ!何を好き好んでクリスマスパーティーなんかを!?うちにサンタさんは要りません!パーティーもしません!!」

 

 怨念籠った言葉をネチネチと語り、様子に引いて全員一歩離れていた。相当問題が根深いようである。

 

 「カズマが何を言ってるのかほとんど分かりませんでしたが……」

 「あれだ。『モテない男子の恨み言』ってやつだよ」

 「「なるほど」」

 

 「こらそこ!それで納得してんじゃねぇ!!」

 

 ユウヤの説明でポンと手を叩いて納得したこの世界の二人に、カズマは大きくツッコんだ。だが間違いとも言えないため、徐々に勢いがしおれていったのはすぐあとの事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で、どうするの?カズマ行っちゃったけど」

 

 結局カズマはその後、冬の間はコタツで引きこもる、そのための準備と言って買い物へ行ってしまった。完全な引きニートだ。

 

 「私は居た方がより盛り上がると思いますので、参加して欲しいのですが……」

 「既にやかましい女神(笑)が隣にいるのにか?……ちょっ、掴もうとするな!」

 

 ユウヤに掴んで襲いかかろうとする水の女神とのじゃれ合いが始まる。やがて全く攻撃を与えられない事に気付くと、諦めてめぐみんの方へ向く。

 

 「仕方ないわね。カズマの事が気にかかってしょうがないめぐみんのためにも、この女神アクアがなんとかしてやろうじゃないの!」

 「なんとかって……アクア、一体どうするつもりなのですか?」

 「ちょっと私に考えがあるのよ。ただし、私だけじゃ無理ね……ダクネスに一肌脱いで貰うわよ?ついでにあのリッチーにも一肌脱いで貰おうかしら。カズマさんが喜びそうだしね」

 「カズマが喜ぶ……一体何をさせる気だ!?」

 

 そしてユウヤの方へも振り向くと。

 

 「それじゃ、ユウはクリスマスパーティーのための食事を作ってちょうだい!代金はユウ持ちでお願いね!!」

 「作るのは良いけど………代金全額負担はキツい。半額は持って貰いたい」

 「あらあら、貴方達アンデッドを私の温情で見逃してあげてるのよ?私の寛大な心に感謝して、ここは一つ奢るべきでしょう?」

 「それには感謝してるけど……ウィズの店への風評被害や店内の商品浄化による営業妨害で、こちらの赤字を増やしたのをお忘れか?嘘だと言うなら借金紙見せてやるぞ」

 「ごめんなさい」

 

 すぐさま綺麗な土下座を披露する水の女神。その姿にタメ息が出るのは仕方のない事だと思う。

 

 その後話し合った結果、こちら4割あちら6割ということで落ち着いた。水の女神はごねていたが、仲間の二人に借金を増やすつもりかと説得され、渋々了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ー数日後、カズマ達の屋敷の中ー

 

 

 「おーいどうしたお前ら!さっさとパーティーするぞ!!」

 

 あれだけ嫌がっていた先日の態度は何処へ行ったのか、手のひらを返してクリスマスパーティーをしようと言い出した。

 

 「全く……調子が良いというか何というか」

 「あからさまに態度を変えてこの喜びよう……チョロいな」

 

 そんなカズマの様子にめぐみんとユウヤ生徒と先生は苦笑を漏らしていた。

 

 

 何故急にクリスマスパーティーを開こうと気が変わったのか。それは……。

 

 

 「サンタコスをしたダクネスとウィズを見ただけで気が変わるとは……」

 

 

 サンタにコスプレしたダクネスとウィズが来たからである。その格好を目にした瞬間、顔が赤くなったかと思えばすぐにニヤニヤと笑みを浮かべたのは本人以外全員気がついていたが、みんな優しいので何も言わなかった。(一人はむしろ興奮していたが)

 

 「流石、街で一番のセクハラ男と言われるだけあるな」

 「カズマの前で言わないでくださいよ。せっかく気分が良いんですから」

 「分かってるさ。クリスマスは楽しいパーティーだから、一人だけ仲間外れなんて勿体ない。さ、ボク達も準備しよう」

 

 カズマから渡されたメモを手に取り、めぐみんと、たまには外へ連れ出した方が良いだろうと思い、ついでにウィズも連れて買い物へと出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うわ、街がスゴいクリスマスムードだ」

 「どこもかしこも見たこともない物が飾られていますね。それに、街の灯りが色とりどりに光っててカラフルです」

 

 外へ出ると、いつもの街がクリスマスムード一色に陥っていた。あらゆる建物にクリスマスのリースやガーランドが飾られており、まさにTHE・クリスマスと呼ぶに相応しい雰囲気だ。

 

 「皆さんスゴい楽しそうですね。私もクリスマスまで待ちきれなくなってしまいそうです」

 「その気持ちはクリスマスまで取っておいてくれ。当日はボクがスペシャル料理を作るぞ」

 「ユウセンセのスペシャル料理!どんな美味しい料理が食べられるのか、私、いまから楽しみです!」

 「あぁ。楽しみにしといてくれ。それじゃ、頼まれてた買い物しようか」

 

 執っていたメモを手がかりに、あちこち店を回って買い物を済ませた。飾り付けのためのオーナメントや、サンタ衣装を作るための布、などを買った。

 

 

 「結構買いましたね。もう袋がパンパンです」

 「クリスマスはパーティーだからな。それで料理が増えたり飾り付けをしたりと色々やることがある。その分必要な物も多くなるんだ」

 「でも、今日に多くの買い物をしたおかげで、必要なものはだいぶ減りましたよ。あとはクリスマス料理の材料の購入や、クリスマスの前日に注文していたシュワシュワを取りに行くくらいですね」

 「普段はあまり飲まないが、こんなときくらいはシュワシュワ飲むか。シャンパン代わりにと思えば雰囲気もバッチリだ」

 「私もいい加減シュワシュワを飲みたいです……!………ところでユウセンセ。クリスマスにはサンタが家にやってくるそうですが、どうすれば貰えるのですか?」

 「直前に特にする事はないが……まぁ、良い子にす──」

 

 

 

 「チキンやケーキを食べて、水の女神アクアを称えましょう!称えれば称えるほど、サンタからは豪華なプレゼントが貰えるわ!」

 

 

 

 ………教えようとしたところで、広場から大きな声で間違ったクリスマスプレゼントの貰い方を伝えているのが聞こえた。

 

 

 「………言っておくが聞こえてきたのは嘘だ。いつも良い子にしていれば貰えるぞ。だから直前にする事はないな」

 「そうなんですね。ところで、さっきの声は……」

 「十中八九アクアだ。クリスマスを利用してアクシズ教徒を増やそうって魂胆が見え見えだ」

 「あ、アクア様……」

 

 別にクリスマスを広げるのは良いが、間違った解釈を伝えないで欲しい。でないとめちゃめちゃになって収集が付かなくなる。

 

 

 「うわ~ん!ヤダヤダヤダ~!このケーキ買って帰るの~!」

 「我が儘言わないの!良い子にしてないと、サンタさんがあなたをアクシズ教徒にしちゃうわよ?」

 「ひっ!?ご、ゴメンなさい。僕、いい子になります……」

 

 「「「…………………」」」

 

 

 ……既に手遅れかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 なお、あとで小さい頃からこれを聞いていれば、成長して問題を起こす人が減るだけでなく、アクシズ教徒の人数も減ることでみんなハッピーになれるということに気づいた。

 

 アクシズ教徒のヤバさを教祖の女神自身が教えてくれるとは、随分と優しいなと彼女に感謝したユウヤだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ークリスマスパーティー前日ー

 

 

 「そうだ!ツリー!クリスマスツリーがねぇ!」

 

 全員で屋敷の中を飾り付けしていると、何か足りないと悩んでいたカズマがそう言った。(ちなみにユウヤに呼び出され、リエスも一緒に手伝っている)

 

 「そう言えば確かに無いわね。クリスマスと言ったら、ツリーも絶対に必要だものねぇ」

 「あの、ユウセンセ。クリスマスツリーとはなんですか?」

 「クリスマスの必須アイテムだ。プレゼントや靴下とか、色んな飾りをモミの木に付けるんだよ」

 「飾り付けられたモミの木……。トレントの上位種『エルダートレント』の事ですか?」

 「イメージはそれで合ってる」

 「ん?トレントって木のモンスターだよな?飾りを付けたりとかするもんなのか?」

 

 カズマの疑問に周囲この世界に住み慣れた住民達が次々と話して答えていく。

 

 「飾り付けなんて、そんな生易しいものではない……宝石だろうと生き物だろうと、気に入ったものを身に纏う習性を持っている」

 「飾りというか、贄みたいなものだな。今までも、何人もの冒険者達がその身に飾り付けられて息絶えてる」

 「出た出た、そういう展開ね。『クリスマスツリー』というより、これじゃあ『苦しみますツリー』だろ……みたいな」

 

 カズマは呆れつつも、次はユウヤ達にエルダートレントの情報を聞いた。

 

 「エルダートレントっていうのは、簡単に言えばトレント達を束ねるボスよ」

 「トレントは最も綺麗な見た目をした者が群れのボスとなる習性がある。ゆえに、下克上されまいとしたボスが、気に入ったものなら人間であろうと装飾にしてしまうことがあるとか……」

 「トレント達は特に綺麗な装飾品や宝石に目がない。珍しい装飾品を狙って、集団で村や街を襲うことで知られているな」

 「飾り付けのため、街一つが壊滅に追い込まれた事があるとか聞きます」

 「飾り付け合った姿を競う光景は、さながらファッションショーのようだと形容されることがあります」

 「人間を飾ったファッションショー…………物騒極まりないな」

 

 トレント達の恐ろしい特性について、聞けば聞くほどカズマの顔色が悪くなり始めた。

 

 「最終的に飾り付けられた人間がどうなるのか……聞きたい?」

 「やだ、なんか怖いから聞きたくない………!」

 

 首を振って断った。隣を見れば、普段は怖いもの知らずなクセに、いざ目の前にすると怖がる小心者なめぐみんも少し怯えていた。背中を擦ると、少し顔色が戻る。

 

 「全く……迷惑なモンスターだな」

 「でもまぁ気にすることないわよ。みんな話に聞いただけで実物は見てないんだし」

 「おい、そのフラグみたいな発言はやめろ!俺が求めてるのはそんな変なツリーじゃないから!!」

 

 カズマは大声で否定しているが、昔のちょうどクリスマスシーズンの時期に別の街で滞在していたとき、エルダートレントが装飾のために襲ってきた事があったのだ。勿論撃退して街への被害は抑えたが。なので、トレント達が襲来する可能性は十分にあるのだ。安心は出来ない。

 一緒にいたウィズもあのときを思い出しているのか、二人で微妙な表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ークリスマスパーティー当日ー

 

 

 「フフッ。これでカズマさんやアクア様が喜びますね」

 「あの二人は料理よりも酒を飲みたがるからな。なるべく多めに買っておいても損はないだろう」

 

 ウィズと注文していたシュワシュワ瓶を三つ買ったあと、屋敷へと戻る途中だった。はしゃいでいた子供が前方不注意で大人にぶつかってしまい、謝ると。

 

 「いやいや気にすんな!メリークリスマースだ!」

 「おい大丈夫か?痛いの痛いのメリークリスマース!!」

 

 と、言って気にしていない様子だった。

 

 

 「アクア様の事前の宣伝のおかげで、随分と自然に浸透してきてますね。………元の意味から随分かけ離れてる気もしますけどね。アハハ……」

 「あの人はなんと言って伝えたんだ……」

 

 困ったときはメリークリスマス。そんなスローガンの元、アクセルの街はクリスマスムードに包まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それじゃ、今日はクリスマス。てことで特別メニューだ。腕にかけて作ろうか」

 

 キッチンへ向かい、準備していた食材を手に取って料理を始める。

 

 

 

 

 「出来たぞー!」

 

 

 一時間後、ユウヤから声がかかり、全員一緒に食卓へ向かう。

 

 「さーて!いよいよパーティーの始まりだ!チキン!ケーキ!チキン!ケーキ!チk…………?」

 「?カズマさん、急にスンと落ち着いちゃってどうしt……の……?」

 「どうした二人とも。そんなに首を曲げて」

 

 先に着いたカズマと、その次に早く着いたアクアの二人とも同じ角度首を傾げる。

 

 「いや待て待て待て。どういうことだこの食卓は」

 「どうしたのですか?目の前のご馳走に何か不満でもあるのですか?」

 「いや料理に関しては問題無いんだよ。どれも美味しそうだし。でも……これクリスマスパーティーの料理か?」

 

 困惑する彼の前に広がる料理は、日本で見るクリスマス料理と全く異なっていた。ケーキは一般的なショートケーキではなくブッシュ・ド・ノエルであり、前菜枠でガーリックバター風味のエスカルゴ、さらにローストビーフが並んでいる。

 

 だが何より一番ツッコミたいのが。

 

 

 「なんでサーモン!?普通クリスマスって言ったらクリスマスチキンだろ!!」

 

 

 そう。チキンが一つも並んでおらず、代わりにサーモン料理がズラリと並んでいた。想像と全く違い、見慣れない光景に困惑していると、ユウヤがニコニコと笑って説明する。

 

 「なーに言ってんだカズマ。クリスマスと言えばサーモンだ。クリスマスにはシャケを食えって風習を知らないのか?」

 「知らねぇし初めて聞いたわそんな事!というかチキン料理は!?」

 「ない。そんなものは一つもない」

 「なんでだよ!い、今から全力でチキン買いに行くからそれでチキn「断る」………なんでだy……うおっ!?」

 

 会話の途中で言葉をぶったぎり、カズマの目の前へ近づいてくる。鼻先が当たりそうなところまで迫って止まると、言葉を発す。

 

 

 「いいか。クリスマスにはシャケだ。ボクは普段はチキンもシャケも両方好きだが、クリスマスになると話は別だ。クリスマスにチキン?それは邪道だ。クリスマスにはシャケ。これしかない。だがらボクの目の届く範囲で今日一日中チキンを見せるな。見せたら即刻没収する。分かったか?」

 

 「は、はい……」

 

 普段見ないユウヤの強引な姿に圧倒され、素直に従ってしまった。その光景を目にした他の者達は、この食事中にユウヤの機嫌を損ねないようにしようと固く誓った。

 

 

 

 その後すぐにウィズが宥めて落ち着かせると、全員パーティーの食事にありついた。料理の味は絶品であり、自然と笑みが溢れていた。

 

 

 「美味しいです!料理の腕も一流とは、流石ユウセンセです!」

 「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しい」

 「あぁ……久々にタンパク質が取れます……スゴく美味しいですよユウヤさん……」

 「……もっと食べていいぞ。遠慮しなくていい」

 「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

 「(……あの、ウィズの食生活は一体どうなっているのですか?タンパク質が久々とか言ってますけど……)」

 「(普段はボクがお裾分けに行くが、赤字を出したときには軽い前菜だけを渡してるな。赤字でマトモな食材もないから、ほとんどそれだけで過ごしている。反省も込めてやってるんだが……まぁ、結局治らずに5年も経ったんだけどな……)」

 「(ユ、ユウセンセ……)」

 

 

 「うんま!このドライフルーツが入ったパン良いぞ!」

 「カズマさんカズマさん!このローストビーフも柔らかくて歯ごたえ良いわよ!!」

 「お、良いなそれ!あと見ろよ!いつもより高価なシュワシュワもあるぜ!」

 「カズマさんそれ取って!早く早く!飲みましょうよ!!」

 「分かった分かった!………それじゃあ!」

 「「乾杯!!」」

 

 各々が和気藹々としながらパーティーを楽しむ中。

 

 

 「……なぁ皆………放置プレイは嬉しいのだが……ここまで声をかけて貰えないと流石に寂しいのだが……」

 

 

 唯一筋肉クルセイダーだけ会話に混ざれず余ってしまい、ボッチになってしまった。それからダクネスにみんな気づいたのは、飲み食いが終わった数十分後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「ここで冒険者を動かして……こうです!」

 「ではここで隠れていたアークウィザードを動かしてと」

 「あああああ!我が軍が!」

 

 食事のあと、ユウヤとめぐみんはボードゲームを興じる。そしてめぐみんの陣地は絶賛大ピンチである。

 ちなみに水の女神達は雑談中、カズマは疲れたのか風呂へ入っている。

 

 「ううっ、今回こそいけたと思ったのに……」

 「まだまだ周りが見えてないな。って事で王手。ボクの勝ち」

 「ユウはスゴいな。私達の中でボードゲームが一番強いめぐみんを圧倒して倒している。強い……」

 「てか、カズマ遅いな。もう3ゲーム目終わったぞ。………ん?なんか悲鳴が聞こえたような……」

 「な、何かあったのでしょうか……。『助けてくれ』と言っているように聞こえましたが……」

 

 心配する二人だが、いつも一緒にいる三人は動じることなく。

 

 「またお風呂で石鹸踏んで転んじゃったりしてるんじゃないかしら?」

 「うちは放任主義かつ甘やかさない主義なのですよ」

 「その割に自分自身には甘い気がするぞ。………おい二人とも、目をそらすんじゃない。こっち見ろ」

 「何故か庭から声が聞こえるな……。あの男、庭に出たのか?風呂上がりに何をやっているんだ」

 

 とそのとき、庭から大きな叫び声が聞こえた。

 

 

 「殺されるー!!」

 

 

 「こ、殺されるって物騒な事を仰ってますよ!?」

 「ん?窓の外に何か───」

 「あれって……え、えぇ!?トレントの群れ!?」

 

 窓の外を覗くと、トレント達の群れがワラワラと集合していた。顔が少し怖いのもあって中々に恐怖だ。

 

 「あの大きいのは、エルダートレントでは!?」

 「取りあえず外に出るぞ。様子を伺うべきだ」

 

 ユウヤの言葉に頷くと、全員で外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「オォォォォ………!コイツ、キレイ!!カラダニ、飾ル!!」

 「のわぁぁぁぁ!お、降ろしてくれぇええ!!」

 

 

 外では、エルダートレントが結構な高さまでカズマを持ち上げていた。

 

 

 「カズマさん、一体どうしちゃったの!?まるでクリスマスツリーのてっぺんの星じゃない!」

 「風呂の窓を開けたら、急にコイツらが来て……。ってそんなのどうでもいいから早く助けてくれー!!」

 

 こんなときにノリツッコミとは。案外大丈夫ではないだろうか。

 

 「おいユウ!なんだその顔!言っとくけど全然大丈夫じゃねぇからな!」

 

 「ドウダァ!?キレイカァ!?」

 「キレイ~……」

 「サイコ~……」

 

 「上位種のエルダートレントを称えているのか……」

 「なんだかファッションリーダーみたいね……今年の冬は、バスタオルの男を飾ってライバルに差をつけろ、ってことかしら?」

 「ですが、エルダートレントは綺麗な装飾品を好むのでは?どうしてカズマを飾っているのでしょう?」

 

 めぐみんの疑問の言葉に、ユウヤはある考えが浮かぶ。

 

 「……もしかして、お風呂で体を洗ったばかりだからか?」

 「つ、つまり、綺麗な宝石が狙われるのと同じように、綺麗なカズマさんが狙われたということですか!?」

 

 二人はそう答えたが、水の女神は違ったのかフルフルと首を振り、別の考えを話した。

 

 「いいえ、あれは恐らく……ほぼ全裸のカズマさんに、逆に飾らない美しさを感じたのよ」

 「それ、結局は全裸のカズマが美しいから拐われたって事だろ。……ダメだ。ボクには理解が追い付かん」

 「私もです。トレントって独特な美徳センスを持っているんですね……」

 「おい!話してないでいいから助けてくれよ!冬空の下タオル1枚で凍死しちまいそうなんだが!?」

 

 先程よりも震えた声で助けを求めており、流石に助けるかとユウヤは動き出す。ウィズに耳打ちしたあと、ユウヤは飛び上がり、彼女はトレント達に手を向け。

 

 

 「カズマさんを離しなさい!『カースド·クリスタルプリズン』ッ!」

 

 まずはトレント達を凍らせて動きを封じる。その隙に、カズマはエルダートレントから抜け出し、離れた場所へ移動する。

 それを確認したあと。

 

 

 「『無式……烈光斬』」

 

 

 ユウヤの一太刀がトレント達を襲い、葬り去る。唯一エルダートレントだけはまだ生き残っていた。

 

 「さ、さぁ残るはお前だけだエルダートレント!お前のおかげで、人生最大の湯冷めを味わったぜ!これでトドメだ!『狙撃』!」

 「オォォォォン……」

 

 最後にカズマの矢を喰らい、ついにエルダートレントが倒された。動かなくなったエルダートレントは、やがて普通の木に戻った。

 

 「エルダートレントが普通の木に戻ったようだな」

 「飾りにされた恨みを晴らしたわね、カズマさん」

 「あぁ。……ヘックショ!」

 「鼻水出ていますよカズマ。まぁ、タオル1枚でずっと外にいましたからね。風邪をひかないうちに、早く屋敷の中へ入りましょう」

 

 

 「……あの、ユウヤさん。どうして木を担いでいるんですか?」

 

 カズマ達が屋敷へ入ったのを見計らったあと。

 ユウヤは元はエルダートレントだった木の根を伐ったり、枝や木の太さを伐って大きさを小さくし、担いで屋敷へ持っていこうとしていた。

 

 理由はこれがとある手段に使えそうだったからである。とある物がまだ無かったし、これならピッタリだと考えたため、屋敷へ運んでいた。

 

 「……あ、扉が開けられない。ウィズ、開いてくれるか?」

 「や、屋敷に持っていくんですね……分かりました。何を考えてるのか思い付きませんが、お手伝いはします」

 

 道中、周りに当たらないようウィズが声をかけてくれたおかげで、傷付けることなくリビングへと運ぶことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「ちょっとあんた達、エルダートレントだった木を運んで来たの?運んで来た所悪いけど、元々モンスターだったのはうちには必要ありません!今すぐ外へ戻して来て頂戴!」

 

 リビングの端に置くと、ソファに座っていた水の女神が文句を言う。まぁ当然だ。部屋の中にさっきまでモンスター木を置こうなんてのは拒否したがるだろう。

 だがそこは話が上手いユウヤ。

 

 「なるほど!それなら良いわ!早速準備しましょう!」

 

 あれこれを簡単に説明すると、水の女神はすぐに納得してくれた。近くにいためぐみん達も準備に取りかかる。

 

 見えやすいドア近くに木を移動したあと、途中で風呂から上がったカズマも含めて一緒に行動に移した。

 

 

 

 「完成だわ!良い出来映えじゃない!それにしても、動かなくなったエルダートレントが、飾り付けするだけでクリスマスツリーになるなんて」

 「じっとしていると、中々綺麗に見えますね」

 

 エルダートレントだった木は、全員で飾り付けをしたことでクリスマスツリーへと早変わりしていた。

 

 そう。これが持ってきた理由。普通の木に戻ったエルダートレントを見て薪にでもしようか頭を悩ませていると、ふと一つの考えが頭をよぎる。

 

 

 あ、これもしかしてクリスマスツリーに出来るのでは?、と。

 

 

 実際、提案するとクリスマスを知っている二人はそれだ!と賛成してくれた。そしてツリーへの飾り付けを手伝い、出来上がったクリスマスツリーを見ると綺麗だった。

 

 「ツリーがあるだけで全然ムードが違うな」

 「あぁ。キラキラしていてとても美しい」

 「皆さーん!準備が出来ましたよー!」

 

 そこで、テーブルで一人で準備をしていたウィズが全員を呼ぶ。先には作っておいたブッシュ・ド・ノエルと、色々な種類の飲み物のビンとグラスが置かれていた。

 

 「やっと来たわね!さぁまだまだ楽しい時間はこれからよ!みんなグラスを持ちなさい!」

 「アクア、そう騒がないで下さい。シュワシュワは逃げませんよ」

 「さて、クリスマスツリーも手に入った事だし、ここからまだまだ楽しもう。カズマ、乾杯の合図を頼む」

 

 言われたカズマは一歩前に出て、グラスを持った手を上げる。

 

 

 「みんなお疲れ!思わぬトラブルもいっぱいあったけど、ツリーも手に入ったんだ。まだまだ今夜も目一杯楽しもうぜ……乾杯!」

 「「「「「乾杯!」」」」」

 

 チリンとグラス同士を合わせて乾杯する。

 

 

 そしてシュワシュワをグラスに注いで口に運び、喉を通した。酒特有の匂いが香るが、悪くないなと気分が少し高揚する。

 

 更に自分で作ったブッシュ・ド・ノエルを切り分け、一切れを貰って食べる。チョコとクリームの甘味がスポンジとよく合っている。我ながら良い出来だ。

 

 

 ふと隣を見ると、ウィズが黙々とブッシュ・ド・ノエルを食べていた。あんなに美味しく食べてくれるのを見れば、上手くできて良かったとホッとする。

 

 目線が合うと、ウィズは顔を赤くしてサッと反らして別の方向を向いてしまう。が、モグモグと口を動かしているのが後ろ姿でも目に見えており、彼女の背中をジッと見つめる、その状態が数分は続いた。

 

 





 この話を執筆当時2月22日、熱が出ました(ちなみに幼稚園生以来)。頭痛いし腹も曲げると痛い。

 今までで一番長くなったわ。1万字越えるとは。


 評価と感想待ってます。

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