この素晴らしい魔道具店副店主に幸福を!   作:白峰 真紀

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 ちょーっと今回は展開をだいぶオリジナルに踏み込みました。これ大丈夫かなー。怒られないかなー(汗)

 ちなみに執筆終わりは3月16日。自動車学校に通ってたせいで執筆時間があんまりなかった。


第24話 神は正直クソだが邪神とは気が合う。

 

 クリスマスも過ぎ、年も明けた1月中旬。

 

 冬の寒さは未だに止みそうにない。多くの冒険者達は引きこもってるため、魔道具店を開店しても客はたまに片手で数えられるくらいが来る程度。なお仕入れている商品内容についてはこの際除くとする。

 なので今はクエストを受けるか、家で作業するかのどちらかしかやることがない。現在は家の地下に籠り、一徹して作業を続けている。

 

 「これをここにはめ込めばと……はい完成」

 「お、修理出来たの?」

 「ほら、ついでに機能向上させといたぞ」

 

 ありがとね、とリエスが受け取ると、何かを思い出したのかポケットをゴソゴソと動かして物を取り出す。それは一通の封筒だった。

 

 アイリスからだろうかと裏を見ると、別の人物……いや、邪神だった。

 

 

 

 ───盤外君へ。

 ───1月○日。

 ───私達が出会ったあの場所で。

 

 

 

 手紙にはそう記されていた。

 

 

 読んだあと、ユウヤはウィズ魔道具店の店主と店員に数日出かけてくると伝えた。聞いた店員がなるべく早く帰ってこいと念入りに圧をかけてきており、途中で店主が新商品を仕入れてきた等と話しながら近づいて来ていたのはここでは除外する。

 

 地味に5ヶ月ぶりとなる邪神との出会いを、ユウヤは楽しみにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 当日、ユウヤは朝一の馬車でアクセルの街から旅立った。指定された場所は意外と遠いので。窓から外の景色を覗くと、辺り一面に雪景色が広がっている。

 アクセルを出て2日が過ぎた頃、徐々に速度が落ちていき、やがて完全に馬車が止まる。ここまで走り続けてくれた運転手と馬に礼を言い、目的地へと移動する。

 

 目的地は温泉の街ドリス。

 そこは水と温泉の都アルカンレティアと並ぶ有名な温泉街だ。ちなみに温泉が広いのはアルカンレティアの方だが、観光客の数は圧倒的にドリスの方が多い。その理由は魔王軍すら手を出さない平和な地域と称されるほど治安が良い事もあるが、一番の理由は察しの通りだ。

 ユウヤ自身はどちらも好きだが、気分が落ちないのはドリスの方なので、そちらを訪れる回数が多い。

 

 そうして歩くこと20分、ドリスへ到着した。街のあちこちからは白い湯煙が空へ昇っており、温泉特有のいい匂いが漂っている。また、観光地なだけあって温泉宿が多く、沢山の人が浴衣を着て歩いている。

 

 ここだけ見れば日本の温泉街と大差がない。おそらくあの機動要塞デストロイヤーを作った科学者と同じく、どこかの日本人が広めたのだろう。異世界でも和風な雰囲気の街の温泉へ入れることにユウヤは感謝していた。

 先を見ると、旨そうな饅頭屋が目に入った。ここまで甘い物を食べていなかったので、体が糖分を欲しがっている。取りあえず5個は食べて、残りはウィズやめぐみんへのお土産として持って帰ろうとお店へ寄った。

 

 

 

 

 

 

 町を観光する事一時間、ドリスの奥の方へと近づいてきた。周りには見るからに高そうな宿がずらりと並んでいるが、ユウヤは目もくれず先へ先へと進んでいく。

 やがて柵で遮られた行き止まりが見えると、一番奥の建物の壁と柵の隙間へ方向転換する。ところどころに蜘蛛の巣が張っており、路地裏特有の濃い臭いが香る中で前へ進むと、柵が1ヵ所穴が空いて別の道が出来ている場所が目に映る。そこを曲がって数分後、白い煙が立ち上り温かい空気を肌で感じたと思えば、すぐに道幅が広くなって正面に本当の目的地が見える。

 

 それは和風な町の雰囲気とよく合う少し古びた外見の純和風住宅であり、横には町の住民達ですら知らない、秘伝の天然露天風呂が湧いている。

 玄関前の鍵を開けてスライドドアを開き、中の和室に入る。

 

 

 「あら、もう来たの。久しぶりね。盤外君」

 「そっちこそ随分と早いな。ウォルバク」

 

 

 そこにいるは赤毛のショートカットヘアで猫科のような縦長の瞳孔をした黄色い瞳を持ち、ダクネス以上に抜群なスタイルを誇る美女。その正体を魔王軍幹部の魔法使いにして怠惰と暴虐を司る邪神、ウォルバクが茶菓子を食べて座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「へぇ。そっちでも大きく変化があったのか」

 「去年はベルティアに加え、バニルの二人も幹部がやられたからね。一体何が起こってるのかと魔王城ではてんやわんやよ」

 

 現在、二人で軽く一息ついて雑談中である。時々菓子を摘まみつつ。方やアクセル一の魔法使い。方や魔王軍幹部一の魔法使い。立場こそ違えど同じ魔法使いで一番の優秀者故に気が合うのか、二人の会話は尽きることなく続いていた。そして2人は宗教を司る邪神と、その宗教の最高責任者の聖職者の関係である。

 ユウヤは前世の経験からあまり神への好感度が高くない。が、アクシズ悪質教によって神の権利を勝手に剥奪され、邪神となった彼女にはどことなくシンパシーを感じたのか同調し、仲を深め始めた。やがて彼女の宗教の教徒になり、そんな彼を認めて彼女は最高責任者の聖職者に任命した。ユウヤにとってウォルバクとは、ウィズとはまた違う大切な関係である。

 

 ……だが、そんな2人の一番共通の関係は。

 

 

 「ウィズがまたポンコツ商品を仕入れて店の売り上げが落ちたし、貯蓄もついでに大きく減ってもう大惨事だよ………」

 「こっちもハンスが貯蔵庫の食料を勝手に食べて中を毒だらけにしてダメにするし、セレナが募金と言いながら魔王様からお金むしり取って資金が減るしで補うための苦労が増えて増えて………」

 「「ハァ……」」

 

 

 2人ともお互いに性格がマトモ寄りなためか、屈指の苦労人である事だ。

 

 

 忘れがちかもしれないが、ユウヤはアクセルの中でも温厚な性格で普段の行いはかなり常識的である。戦闘の際には多少荒くもなるが、それも他人への迷惑は一切起こっていない。なので問題行動は全くと言っていいほどない。

 

 そしてウォルバクは怠惰と暴虐を司る邪神である故か、ウィズを除いた魔王軍幹部の中でも温厚。そして魔王軍一の真面目で常識的な性格。故に、他の血の気が強い魔王軍幹部の行動には魔王共々振り回されている。

 

 

 「なぁ、ボク達の負担が年々増えてる気がするんだけど……」

 「えぇ。私も最近あなたから貰った薬を服用する機会が増えてるわ。私、怠惰を司る神のはずなのに真逆な事になってるわ……」

 「ボクは最近バニルが正式にウチの店の店員になってくれたおかげで、一人ひとりの負担が和らいだけど大変なのは変わらないんだよな……」

 「そっちはまだいいわよ。こっちなんて人手のほとんどが魔物だから町へ行って買い物なんて出来ないし、私も顔を見られるといけないからフード被ったり、人通りの少ない険しい道を歩いたりして、とにかく接触を避けるよう意識を集中させなきゃいけなくて気を遣うのよ……」

 

 次々と愚痴が出る度に、ウォルバクの顔はブラック企業に勤める、連日残業中の社畜に近い表情へと変化していく。いくら何でも負担がかけすぎだと表情筋が上に引きつった気がした。

 

 「……取りあえずご飯食べるか?ボクが全部作るから休んでていいよ」

 「えぇ……お願いするわ…」

 

 その日は海の幸、マグロを使った鉄火丼を作った。ウォルバクは「最近簡易の食事ばかりだったから久々に美味しいご飯を食べたわ……」と虚しげに食べており、いつも十分に栄養の採れていない貧乏リッチー店主と同類の臭いを感じ取った。自業自得なあちらと違い、他人の不始末を代わりに片付けているウォルバクの方が余計に悲しさが滲み出ている。気付けば肩を擦って慰め、彼女の虚しげな顔が少し和らいだ気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 脱衣場で服を脱ぎ、タオル1枚の状態になると持参のシャンプーとボディソープで体を洗う。勿論流した水は飛び散らないよう徹底している。

 身体を洗い終えると外の露天風呂へ向かい、湯に浸かること20分後。ひたひた足音を立て、同じく体を洗い終えたウォルバクも距離を20cmほど空けて入ってきた。

 

 「やっぱりここが一番ね。色んな温泉に入ってきたけど、この温泉が一番疲れが取れてる気がするわ」

 「そうか?たまに温泉の掃除するの忘れるときもあるし、衛生面はそこまで徹底出来てないけど」

 「あなたの人や物問わず復元する魔法のおかげで、温泉の質をすぐ元に戻せるから些細な問題みたいなものでしょう。温泉を経営してる人達が泣くわよ」

 「流石にそのためにポンポンあの魔法を使わないよ。……実際使ったけど」

 「やっぱり使ってるじゃない」

 

 一応掃除をしてから使っているし、自分の体力も消耗するから楽ではないと話すが、それでもズルいわ、と羨望の眼差しは向いたままだった。

 

 「てかなんでボク達(タオルは巻いてるけど)裸で一緒に温泉入ってるんだっけ」

 「そ、それ言わないで頂戴!仕方ないでしょう!今の私は正式に神を剥奪されて邪神になっているせいで、聖者のあなたに力を与えるためにはありのままの姿でないと十分に出来ないのよ!」

 「ボクは紳士だ。裸を見て興奮し、襲いかかるバカな事はしないから安心してくれ」

 「あなたなら私も信頼して聖者を任せられると思って任命したから、そこは疑ってないわよ。……た、ただアレが少し恥ずかしくて………

 「?ウォルバク……?」

 「な、なんでもないわ!……ほら、やるから近づいて!」

 「はいはい………ん」

 

 体と体が触れそうな程に目の前へ近づいて顔を上げると彼女も顔を寄せ、彼の背中に腕を回して絡める。そしてそのまま──────

 

 

 

 

 

 

 ─────キスをした。

 

 

 

 

 

 

 ………もう一度状況を見てみよう。

 

 

 2人は体を寄せている。バスタオル1枚の状態でもうガッツリ体を抱きしめており、上は接吻している。

 

 

 …………接吻している。(2度目)

 

 

 勘違いしないで欲しいが、これはただしたくてしているのでない。まず2人の関係には恋愛要素は全く無い。彼女から彼への感情は分からないが、彼から彼女への恋愛感情は皆無である。

 そもそも女性に事情もなくキスをするのは、彼の中の呪いが黙っていない。暴れ出す事間違いなし。

 

 今は邪神である彼女から、聖者である彼に力を分け与えているのだ。普通は頭に手を当てて与えるのが一般的だが、彼女は神の権利を剥奪されているため、それでは半分どころか四分の一すら与えられない。

 なので、邪神の彼女が聖者の彼を抱きしめてキスをすることにした。これならより大きく触れられるため、十分に分け与えることが出来るのだ。ユウヤがウォルバクへ会いに行く理由の半分がこれである。宗教の最高責任者として、教祖の女神からの信仰心から力を得るために。

 

 キスを続けて5分後、ウォルバクは口を離して少し距離をとる。その際、透明なだ液が糸のように口と口を結んで引き、やがて落ちた。

 

 「終わったわ」

 「ありがとう。悪い、いつもいつもこんな事を」

 「大丈夫よ。す、少し恥ずかしいけど……さっきも言ったけど、盤外君は信頼出来るから。だからするのは嫌じゃないわ」

 

 温泉の湯温と恥ずかしさから顔を赤らめてウォルバクは答える。それにユウヤは安心感が溜まっていく気がした。

 

 「………なぁウォルバク」

 「なに?」

 「お互い頑張ろうな。仕事や同業の後始末」

 「私、あと3回もあれば限界になりそう………」

 「つ、次は言ってくれれば手伝うから。ほら神託とか使えばすぐ行くよ」

 

 彼女は働かせ過ぎだと思う。自分は他の助けの手があるが、彼女の場合は事情が事情で助けはほとんどない。このまま続けばいつか本当に壊れそうな気しかないので、同情して手伝いたいと思うのは常識人の感覚として当然だ。

 良いの?と言いたげな表情を浮かべた彼女に頷くと、お願いね、と小指を差し出した。同じく小指で結び、指切りして約束する。これで彼女の負担が軽減される事を願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 次の日、朝食を食べて入浴後、また今度とウォルバクと別れた。

 

 ドリスで最も栄えている中央へ戻ると、馬車がある広場へ出る。そこで馬車を一台取って乗り込む。数時間後、ガコンと少し揺れて動き出した。ボンヤリと窓から周りの景色を眺めつつ、ユウヤはあることを思う。

 

 

 「今回も興奮を抑えられてよかった」と。

 

 

 実はキスの際、毎回毎回ウォルバクの体とガッツリ触れるため、内心では物凄い羞恥心と興奮が溢れ出てきた。アレが立ちそうになったが、「抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろetc…………」と必死に心の中で念じたおかげで何とか沈められた。

 

 彼女の前であんなことを言った手前、欲情しては人間としての知性を損なう気がしたので全力全開で我慢した。これからどこまで理性を保てるかと若干の不安を抱き、慣れない事に頭を働かせたからかやがてウトウトと眠りへとついた。

 

 

 

 

 ………なお同時刻、店ではポンコツリッチー店主のせいで借金が2億5000エリスも増えて大悪魔店員がキレていた事を知るのはそれから2日後の事であるが、ここでは除かせて貰う。

 

 





 ちなみにあのシーンについては「剥奪された邪神と正式な神の違いって書きたいな………」って考えたのがキッカケです。言っておきますが、今の彼らの間に恋愛関係はありませんよ。


 一応第13話で言っていた通り、ユウヤは女性との関わりで「そういった」ものは溜まります。なので女性と触れて体が接触したときに、感じて気にはなります。

 (作者的には)ユウヤはどこか達観して物事を見ているけど、中身は普通の男性と変わらない一面はある人物だと解釈してますね。


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