この素晴らしい魔道具店副店主に幸福を!   作:白峰 真紀

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第3話 愛弟子、駆け出しの街へ

 

 ダンジョンから戻ってきた次の日、使われたエリスは8割は取り戻せたため、ユウヤは冒険者ギルドに溜まっている依頼の消費も兼ねて、アクセル近くの依頼を受けようとしていた。

 そしていつも通り冒険者ギルドへ入ったところで、後ろから声をかけられた。

 

 

 「ユウセンセ!ユウセンセじゃないですか!!」

 

 

 振り返ると黒髪ショートに赤い瞳、左目に眼帯を付けて黒マント&赤いミニスカートの格好で、頭にも見えるとんがり帽子を被った、13歳くらいのティーンエイジャーの女の子だった。

 

 「久しぶりだな、めぐみん。元気にしてたか?」

 「はい!勿論!ユウセンセの様なスゴい魔法使いになるため、私も遂に冒険者になりましたよ!!」

 

 彼女はめぐみん。優秀な魔法使いを多く輩出してきた『紅魔族』の者で、ユウヤの愛弟子である。

 

 彼女との出会いは遡ること4年前、偶々紅魔の里を訪れた際、彼女の妹が食べているご飯をジーッと見つめ、それに気づいたユウヤが渡したことが発端だった。

 そこからめぐみんに出会い、紆余曲折あり、彼女自ら弟子になりたいと懇願してきたため、困惑しつつも了承して現在の関係に至る。

 

 「ユウセンセはいま何をされてるんですか?」

 「ボクは今からクエストを受けにいくところだ。エリス稼ぎのためにな」

 「あ、そこで少し頼みたいことが……」

 

 モジモジしてめぐみんが見てくる。特に断る理由もないので耳を傾ける。

 

 「なんだい?」

 「その……私はこれから初めて自分から依頼を受けるのですが……些か不安があるので、引率をお願いしても……」

 「あぁそんなことか。良いよ、別に」

 「本当ですか!ありがとうございます!!では早速行きましょう!!」

 

 楽しみにしてるのか、ユウヤの腕を引っ張ってギルドの受付へ足早に急ぐ。

 

 「あ、ユウヤさん。今日はどの依頼を?」

 「いや、今日は駆け出し冒険者の引率をしようとな。後ろにいる子の」

 「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 「………では、こちらへ依頼をお渡しに……」

 「おい、私に何か言いたいことがあるなら聞こうではないか」

 

 紅魔族特有の名乗りに、ルナは表情を引き攣らせつつも普段通りに依頼受理する。ちなみに提出した依頼は『ジャイアントトード討伐:三日以内に5匹』である。

 

 なおもルナに突っかかるめぐみんの服の首根っこを引っ張り、依頼の場所へ連れて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ジャイアントトードとは。

 始まりの街・アクセル周辺に生息する、カエル型のモンスターであり、世界中でもアクセルの街がある地域にしか生息していない。

 ちなみに全くの余談ではあるが、地球ではオオヒキガエルの英名である。

 

 トードという名前のわりに、見た目はアマガエルやシュレーゲルアオガエルに似ているが、座っている状態で高さが3mを超える程の巨体の持ち主である。体色は緑だけでなく、赤・黄・青・白と多岐にわたる。さらにミズタメガエルのように、湿った土の中に潜って休息するため、水源がない平原で乾かずに生存可能。

 

 毎年春や秋の繁殖期になると、卵を産む前に体力をつけるために、エサを求めて街へやってくる。山羊や牛を一頭丸飲みにする事ができ、繁殖期には家畜の牛を襲い、農家の人や子供が毎年行方不明になるという、見た目に反して意外と凶悪な危険性がある。

 

 ただし、金属が苦手で、金属製の鎧を着た人間を捕食しない。そのため、装備さえしっかりと整えていれば捕食されることはなく、冒険者達には討伐しやすい初心者向けのモンスターである。

 

 

 「……大きいですね。カエル」

 「一応この周辺にしかこの大きさはいないけどな。まぁ、流石にこの大きさにももう慣れたが」

 

 めぐみんは初めて見るのか、物珍しそうに驚いた顔でまじまじと姿を見る。自分も初めて見たときは同じ反応をしたものである。

 

 「ではさっき考えた通り、我が爆裂魔法は最強の攻撃魔法。その分魔法を使うのに準備時間がかかります」

 「だから準備が整うまで、カエル達の足止めをボクがすれば良いんだろう」

 「そうです。ではお願いします!」

 

 ユウヤは金属バットを持って遠くのカエル達へ向かう。普段ならば妖狐や魔法を使用するのだが、ジャイアントトード相手だと強すぎる故に倒してしまう。なので、さっき金属変化メタルコンバートで即興で作った金属バットを使用してジャイアントトードを適当に痛めつけている。ちなみにジャイアントトードには打撃系攻撃は効かないのだが、ユウヤは金属バット叩くことで起こる、副産物の振動をメインとして攻撃しているため、カエルに攻撃が効いている。

 

 

 そうしてある程度の数を痛めつけて瀕死にさせて横へ転がしたあと、めぐみんの周囲の空気がビリビリと震え出した。

 魔法の呪文を詠唱するめぐみんの声が大きくなり、めぐみんのこめかみに一筋の汗が伝う。

 

 「見ていてくださいユウセンセ。私も、貴方のように最も威力のある、究極の攻撃魔法を手に入れました」

 

 杖の先に光が灯った。膨大な光をギュッとした様な、とても眩しいが小さな光。

 彼女の紅い瞳が鮮やかに輝き、カッと見開く。

 

 

 

 「では刮目してご覧ください──────『エクスプロージョン』ッ!」

 

 

 

 平原に一筋の閃光が走り抜ける。

 めぐみんの杖の先から放たれたその光は、遠く、瀕死のジャイアントトード達に吸い込まれる様に突き刺さったその直後、凶悪な魔法の効果が現れた。

 

 目をも眩む強烈な光、そして辺りの空気を震わせる轟音と共に、ジャイアントトードは爆裂四散した。

 凄まじい爆風が全身を伝い、やがて爆煙が晴れると、ジャイアントトードがいた場所には二十メートル以上のクレーターが出来ており、ジャイアントトードの痕跡は何一つ残っておらず、その凄まじさを語っていた。

 

 

 「やはりエクスプロージョンは偉大だな……ってめぐみん!?」

 

 爆裂魔法の威力に浸っていると、ドサっと崩れ落ちる音が聞こえる。そこには、地面に倒れ伏しためぐみんがいた。どうしたのかと尋ねると。

 

 「フッ……我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔法もまた絶大。……要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。というか、センセはよく爆裂魔法を撃ったあとでも平然と強力な魔法を撃てますね……」

 「ボクのエクスプロージョンはちょっと特殊だからな。中級魔法程度の魔力消費量で撃てるんだ。だから魔力をそこまで消費せず、連発出来る」

 「や、やっぱりズルいです……少ない魔力量で爆裂魔法を何度も撃てるなんて……」

 

 その説明に悔しそうな、だが爆裂魔法を撃てたことによるスッキリとした表情を浮かべるめぐみん。それにユウヤは微笑し、彼女を背中に背負う。

 

 「ところで、他の攻撃魔法は取ってるのか?」

 「取ってませんよ。私は爆裂魔法しか愛せないんです。私にはそれ以外、覚える価値のある攻撃魔法なんてありません」

 「完全に一発屋だなめぐみん」

 

 彼女のセンセになって以降、分かってたことではあるが、やはりこれ爆裂魔法しか使えない関係上、一点特化の一発屋にしかならない所は少し残念である。本人が傷つくため絶対に言わないが。

 

 「ま、とりあえずお疲れ様。それじゃあ帰ろうか」

 「お、おんぶありがとうございます………」

 

 

 ……と、そこでその場を離れようと歩き出した瞬間、3匹のカエルが地中からのそりと這い出てきた。

 

 「あちゃ〜……地中にいたカエル達が衝撃で目覚めちゃったか」

 「ちょ、そんな呑気な………!どうするんですか!?おんぶしたままじゃ先生も攻撃出来ないですよ!」

 「まぁまぁそんなに慌てなさんな。ちゃんと対策はしてある」

 

 そう言ってユウヤは足のかかとを強く踏む。すると、靴のかかとから大きな刺が出現した。

 

 「それじゃ、ちょっと大きく動くから、振り落とされないようにしっかりと掴まってて!」

 「は、はい!」

 

 ユウヤはジャンプすると、カエル達へ向かっていき、かかとの刺を当てるように、ボレーシュートタイプの空中回し蹴りでカエルに攻撃する。それを連続して繰り出すと、周りにカエルはいなくなっていた。

 

 

 「フィー……」

 

 

 そしてかかとを再び強く踏むと、刺が引っ込んだ。

 

 「か、カッコいいです!!いつのまにそんなことを!?やっぱりセンセはスゴいです!!」

 「どんな状況でも対応出来る様に対策するのが冒険者だ。ボクは用意周到なんだよ」

 

 その後、ジャイアントトード達を台車に乗せて運び、そのまま冒険者ギルドへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「ところで、ユウセンセは今はどんな冒険をしているんですか?」

 

 冒険者ギルドで依頼完了の手続きをしたあと、めぐみんの服が汚れていたため、ユウヤは公共風呂に連れて行った。当然代金はユウヤ持ちで払った。

 

 「どんな、と言われても……これと言って目立ったものはないぞ」

 「ユウセンセにとってはその言い草でも、私からすればスゴいものが多いんですよ。ですから教えてください」

 「別に良いが……じゃあこの前潜ったダンジョンの話でもしよう」

 

 そうして話し始める。

 ダンジョンの階層にいる大ボス達との戦闘。

 いつも通りの魔法や技が使えずに苦戦したこと。

 周りの地形や小技の組み合わせを活かして倒したこと。

 

 そんなことを話した。途中、風呂から上がったばかりで体が熱かったせいか、めぐみんの額から汗が一筋流れていた。

 

 「とまぁこんな所だな。やっぱりダンジョンってのは封鎖された空間だから、爆裂魔法なんぞ撃つと耐えきれなくて崩壊する。だから思いっきり戦えないのが難点だな」

 「……話聞いてる限り、これでも手加減してるってユウセンセはどれだけ力を持ってるんですか……!」

 

 めぐみんはキラキラとした目でユウヤを見る。そんな憧れの顔を向けられるのは何度もあって慣れてきたが、それでもちょっとだけ気恥ずかしいのか、頬が薄赤くなる。

 

 「そ、そういえばこの前ゆんゆんから手紙を受け取ったんだが、そのゆんゆんはどうした?」

 「あの子はいつの間にそんなことを……一から詳しく説明すると結構かかりますが、それでも良いですか?」

 「良いよ。ついでに、めぐみんもここまで来るまで何があったか話してくれるか?ボクもよく知りたいし」

 「分かりました。では、それは私が里を旅立ったときのことでした……」

 

 

 そこからめぐみんの話は、聞けば聞くほど凸凹で苦労していたことが分かる。

 里を出たあと、アクシズ教の教徒達と出会ってその奔放さに振り回されたり、別のパーティに一時的に加入してクエストをこなす途中、次々と悪魔が襲いかかってきたりと、色々と疲れる出来事が多く発生していた。

 

 「特に2回目の悪魔を退治する際はかなり危なかったです。危うくゆんゆんに手柄を盗られるところでした」

 「お前達紅魔族って、ほんと美味しいところは逃すまいと必死だよな」

 

 その諦めの悪さなんかはもっと別の場面で活躍してほしいと思う。

 

 

 話を聞いたあと、外では日も暮れてきたため、体調に気をつける様注意を促して別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「……どうした。そんな暗い表情して」

 「あ、ユウセンセ…」

 

 あれから1週間後、めぐみんは机に顔を伏して気落ちしていた。何があったのだろうか。

 

 「その……以前大活躍した私を見て、勧誘するパーティがいると思ってずっとここに居座っているのですが……何故か未だに声を掛けられず、一人の状態なんです」

 

 聞いてみれば自分の実力を決して疑わない、自惚れとも取れる言葉が出てきた。

 どれだけ活躍したのかは分からないが、声が掛けられないのは当然だとユウヤは思う。

 

 爆裂魔法を操るアークウィザードと聞けば、確かに一見すると強い。

 だが実態はそうでもない。まず、彼女は爆裂魔法以外の攻撃魔法は使えないのだ。爆裂魔法は威力が大きすぎるが故、密閉された場所などでは使うことが出来ない。さらに爆裂魔法を使ったあと、動けなくなるため運ぶ手間も掛かる。

 ハッキリと言ってメリットよりもデメリットの方が多い。だから誰も声をかけないのだろう。

 

 厳しくない?と思うかもしれないが、めぐみんは弟子だ。戦闘に関して甘えた言葉は使わない。一歩間違えれば死ぬ可能性も大いにあるため。だが、本人の道を否定する様なことはしない。それが良いというなら、何も言わず応援する。ユウヤは放任主義なのだ。

 

 とはいえ、落ち込んでいる弟子を放っておける訳にはいかない。そこで、何とか拾ってくれそうな内容のパーティ募集張り紙を掲示板から探し始める。

 

 

 【魔法使いとプリースト募集中。現在のメンバーは、ソードマスター、ランサー、盗賊の三名です。魔王討伐を真剣に目指しています。やる気さえあれば初心者でも大歓迎。僕達と一緒に世界を救いませんか?】

 

 【パーティーメンバー募集中。当方、クルセイダーと盗賊の二人組。募集要員は、鬼畜な性癖を持つダメ人間。募集要員は前衛職一名、後衛職二名。良識あるマトモな人を求めています】

 

 

 ……うん(諦め)。

 

 

 前者は頭お花畑もので嫌な予感がするし、後者は上から消された文章からロクな人物ではないことが窺える。という訳で却下。

 

 もっとマシな募集要項はないのかと思って探したところ、ふと一つの募集を見つける。

 

 

 【パーティーメンバー募集中!!※上級職のみ。当方、へなちょこ最弱職が一名。超優秀な美人アークプリーストが一名】

 

 

 ……ハッキリ言ってこっちもおかしいっちゃおかしいのだが、普通の内容ではすぐに彼女の欠点が判明し、パーティから追い出されることが確定だ。ちょっと条件が高めのおかしな文章の募集張り紙の方が長続きするだろう。この張り紙も少し嫌な予感しかしないのだが、ぶっちゃけこれくらいしか良いものがないため、背に腹はかえられない。なのでこれを持って彼女の元へ戻った。

 

 

 「ほら、これとかどうだ?」

 「……あの、センセはこれを見てどう思いましたか?」

 「かなr……ちょっとおかしいなと思ったな」

 「いまかなりって言いかけましたよね?じゃあなんで私にこれを推奨するんですか?」

 

 ご尤もな発言である。が、

 

 「一つ聞くが、前に普通の文章で書かれた募集要項で入ったパーティは追い出されたんだろ?なら、他の普通のパーティ達が拾ってくれると思うか?」

 

 フイッと横を向いて顔を逸らすめぐみん。それは図星と言って差し支えないだろう。

 

 「で、少しイカれた文章の募集張り紙の方が、拾って長く続きそうだと思ったんでな。だからそれを持ってきた」

 「それは私が普通じゃないっていうことですか?……ちょっとこっちを向いてください!目を逸らさないでくださいよ!!」

 

 肩を掴んでブンブンと振り回す。そんな彼女をまぁまぁと宥める。

 

 「言っておくが、これでもまだマシだったからな。他のやつなんてもっとヤベーイ!のあったぞ」

 「これ以上にヤバいって……分かりました。ハッキリと言って胸騒ぎがするのですが、これ以上一人のままでいるのも嫌ですしこのパーティに加入しようと思います」

 「あぁ、頑張れよ。爆裂魔法、極めてボクを超えてみろ」

 「はい!絶対に追い抜いて見せます!ですので心して待っててください!!」

 

 そう言うと、マントを翻して去っていった。その姿は絵になっており、一瞬大魔法使いの姿を彷彿させる。

 

 いつか彼女は世界一の大魔法使いになるだろう。そう思えた。

 

 

 

 

 

 ……なお後日分かった事であるが、あの募集張り紙を出していたのは前に助けたあのジャージ男と水の女神の2人だった。

 

 

 不運で頭が悪いアークプリーストの女神。

 威力の高い爆裂魔法しか使えない一発屋のアークウィザード。

 運は高く頭もそこそこ良いが最弱職の冒険者。

 

 

 ……既にこの時点でパーティがネタ感満載だが、何故だが更に混沌カオス化しそうな予感がする。

 

 これから苦労するであろう、リーダーの最弱職のジャージ男へ同情の目線を向けた。

 

 





 ・おまけ


 「あ、お帰りなさいユウヤs」
 「禁止令三日追加だ」
 「!?」
 ↑悪魔を退治する際、ゆんゆんにポンコツポーションを渡したことがバレたため。









 実はこの話、急遽入れた話なんですよね。めぐみんがユウヤの愛弟子っていう設定を書いてる途中で思いついたので、その内容を詳しく表すために書き始めました。
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