この素晴らしい魔道具店副店主に幸福を!   作:白峰 真紀

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 今回は一部独自解釈が入っておりますので注意。あくまで作者の自分の想像ですので、解釈違いが起こるかもしれませんが大目に見てください。


第7話 首無し騎士との一戦

 

 ベルティア襲来から5日後、ユウヤは開店前の準備中だった。その間にギルドの高難易度の依頼を全て受けたのでやることもない。かと言って王都へ向かってクエストを受けるのも魔王軍幹部がいる今は無しだ。

 

 なので今は店員として働いている。相変わらず店に並ぶのはウィズの仕入れた商品ばかりなので、現在の今月の売り上げはお察しの通りだ。それでもユウヤが新人向けの商品をいくつか販売したおかげでいつもよりは増えたが、焼け石に水状態。

 そうして棚に商品を並べていたとき、ふと思う。

 

 

 あれ、魔王軍幹部がいるせいで依頼が無いなら自分が倒せば良いのでは?、と。

 

 

 ここ数年穏やかで平和な街で過ごすのが多かったせいで忘れかけてたが、自分が前にいた世界は常に殺伐とした雰囲気が漂い、いついかなるときも気の抜けない場所だったのだ。

 自分の障害となれば大体戦いで解決をする、そしてその戦いに卑怯もクソもなく、何でもありで勝てればそれで良い、脳筋が当たり前の世界。

 

 自分も一度初心に帰り、熱湯に入っていた頃を思い出そう。

 

 直接の被害は受けてないが、こうして街の近くの依頼が減る間接的被害は受けている。なので倒しに行っても良い。

 

 

 そうと決意すれば早速ウィズに今日は魔王軍幹部と戦いに行くことを伝える。同じ魔王軍幹部として反対するかと思ったが、元々ウィズはなんちゃって幹部。仮面の悪魔以外の幹部がやられても特に思うところはあまり無く、それに加えてベルティアはときどき首を転がして女性の中を覗こうとするセクハラもしていたので気にしていない様子であり、元冒険者を思わせるドライな判断に意外性を感じた。流石は元一流冒険者。

 

 確認も取りいよいよ出発するとき、これを忘れない。

 

 

 「行ってくる」

 「はい。行ってらっしゃい」

 

 

 帰りを待っている人がいる。

 気持ちを奮い立たせ、ベルティアの元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 古城へ入ると、古めかしい濃い匂いが鼻を通って出迎えた。

 そして次の瞬間、無数の気配を感知する。奥からこの前のアンデッドナイト達が無尽蔵に湧いて出て来た。

 挨拶代わりの多勢の軍団を魔法で蹴散らし、最上階にいるであろうベルティアの元へ向かう。

 

 

 

 

 

ー最上階ー

 

 

 「……やっと来たか冒険者ども。あの騎士の鏡のようなクルセイダーにかかった死の宣告を解除するため、俺を倒す準備は出来たのk…………しょ、しょしょしょしょしょ処刑人!?なぜ貴様が!!まさかあの冒険者ども、自分達では勝てないと判断してこいつに頼ってきたのか!?」

 

 

 最上階では王が座っているのをイメージするデカい椅子にベルティアが座っていた。

 だがユウヤの姿を見ると大きく狼狽して訳の分からないことを喋り出す。デジャブだろうか。

 

 「ええい卑怯者め!他人を頼るなど!!」

 「お前、ブーメラン突き刺さってるけどな。あと、別に死の宣告を解除するためにここに来たんじゃない。もうカズマ達は、既に死の宣告を解除してるから来る必要無くなっているぞ」

 「いくら俺の死の宣告を解除しているとはいえ……!………え、解除?解除してるの?」

 

 ユウヤの言葉に呆けた声を上げるベルティア。申し訳ないが声と顔が合っていなくてシュールだ。

 

 

 「あぁ。だからいまボクが来たのは他人を助けるためじゃない。冒険者として、お前を倒しに来た」

 

 腰の鞘から妖刀を引き抜く。ユウヤの雰囲気を感じとったか、ベルティアの顔が引き締まる。

 

 

 「……ほう、この俺をか。正直すぐに逃げ出したい気分だが、貴様は絶対に逃しはせんだろう。ならば俺も覚悟を決めよう」

 

 ベルティアも大剣を抜き、臨戦体勢に入る。

 

 

 「だが一つ聞きたい。お前はハイウィザードで魔法が得意なはずだ。なのに今は剣を抜いている。わざわざ自分の得意分野で勝負をしないのは何故だ?」

 「決まっている。お前は元々騎士だったんだろう?デュラハンとなった今も剣で戦っている。勝負をするなら、騎士らしく剣で決闘した方が良いと思っただけだ。その方がお前も良いだろ」

 「……フフフフフ。フハハハハハハハハハハハ!!そうか!妙なところで律儀なのだな処刑人!!そこまで言うなら俺もアイテッ!?」

 

 何がおかしかったのか、大笑いをするベルティア。途中首を落としてしまったが、すぐに拾って向き合う。

 

 

 「……そこまで言うなら俺も全力を尽くそう!!俺は魔王軍幹部筆頭、デュラハンのベルティアだ!!処刑人、お前の名は!?」

 「……ユウヤ。伊青悠也だ」

 「ユウヤか!!覚えたぞ貴様の名!!では始めよう!いざ尋常に……勝負!!」

 

 

 片手に持った顔の紅魔族のような紅の目には戦意を高めて視線を向け、片方の大剣を持ちながら駆け出して行く。

 ユウヤも妖刀をゆっくりと前に向け、威厳を現すように空を斬るとすぐに立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 戦いから数分、ベルティアは高揚に満ちていた。

 

 

 「(こんなに決闘が楽しいと思ったのはいつぶりだ。なぜ俺は忘れていた?……懐かしいな。人間だった頃が)」

 

 

 

 

 

 人間時代、ベルティアは騎士だった。幼い頃から剣の実力を磨き、成長したときには誰もが目を見張るくらいの実力を持っていた。

 王都で騎士団に入り、優秀な活躍を見せたベルティアは騎士団長に任命された。

 仲間もでき、パーティーを組んで協力し、モンスター達と戦った。

 そんな真っ当な騎士としての日々を送っていた。

 

 

 ……だがそんな日々も突如終わる

 

 

 「王都騎士団団長ベルティア!!こちらへ来てもらおうか!!」

 

 

 訳が分からなかった。

 自分は何も悪事を起こしていない。確かに少しセクハラ紛いの行動をしていたが、それでも騎士として違反になるような事はしていない。

 

 そう訴えるも願い下げられ、牢に入れられた。

 

 やがて10日が経った頃、裁判にかけられた。王都にある金を奪ったという罪にかけられていた。

 

 様々な人物の証言が重なる。批判するような物もあれば、弁護するような物もある。

 そして同じパーティーメンバーであり後輩騎士からの証言が入る。大丈夫、必ず助けるとでも言う目を向けていた。

 パーティーを組んで良かった。心からそう思えた。

 

 

 ……いつの間に裏切られているとも知らずに。

 

 

 「はい。確かに俺は見ました。ベルティア団長が夜に出て行くのを」

 

 

 そう、証言した。

 

 

 驚愕した。夜に出てはいたが、外には出ていない。それは見てたはずなのに。

 

 見ると、嘲り笑うような目線に変わっていた。

 それを見て分かって()()()()ことがある。

 

 

 ──あぁ、自分は裏切られたのだな────と。

 

 

 その証言が決定的となり、裁判は一気に決着が付いた。判定は─────

 

 

 「王都騎士団団長ベルティア!!死罪だ!!」

 

 

 

 

 ────処刑台に立っていた。

 

 

 民衆は嘲笑するような目線を向けてくる。

 だがそんなモノは一切目に映っていなかった。裏切られたことへのショックに何も考えられずにいたからだ。

 

 そしていよいよ処刑されようとしたそのとき、仲間だった者が目に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────信じてくれてありがと。お疲れ様でした♪

 

 

 

 

 

 

 

 読みとらえた次の瞬間、首が切り落とされる。

 段々と意識が無くなっていく中、最後見た表情がボンヤリと頭に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───────────────────憎い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いい憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い────!!

 

 

 

 

 そこでベルティアは()()で誰かを憎んだ。

 

 

 

 

 その深い怨念が原因だろうか。

 

 

 

 

 動かなくなった。誰もがそう思ったそのとき、ピクリと指先が動いた。

 

 1人がそれに気づいたと思うと、体が動き始めた。もう首はない。誰から見ても死んでいる状態なのに。

 動揺の最中、胴体が近くの冒険者から剣を奪うと、その場で斬り倒した。

 突然の出来事に一同はパニックになる。そして落ちた自分の首をもう片方の腕で拾うと

 

 

 「殺してやる……お前ら全員!!殺してやる!!」

 

 

 その日、その場にいた人々は全て斬殺された。特に仲間だった年下の騎士は酷い惨状で死体になっていた。

 

 その場でただ一人生き残った市民はのちにこう述べる。

 

 

 

────────────デュラハン・ベルティアの悲劇、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「(……その後、当てもなく街を訪れては冒険者達を襲っていたところに魔王様に出会い、魔王軍幹部となったのだったな……フッ、何故俺は今になってそんなことを………走馬灯か?)」

 

 

 ほんの数秒、過去に浸っている中で戦況はベルティアが徐々に劣勢になっていた。

 

 ユウヤの剣技は本物の騎士であるベルティアからしても見事なものだった。知らない者が見ればソードマスターと言われても違和感がないだろう。だが実際ユウヤの本職は大魔法使い(ハイウィザード)

 魔法も剣技も達人レベル。物理攻撃も強い魔法使いとはどんな化け物だ、とベルティアは心の中で苦笑する。

 

 おそらくこれ以上やっても自分は勝てないだろう。

 ならばせめて最後まで抗おう。そう思って大剣に大きく力を込める。

 

 

 「闇の一突き(ダーク・スラッシュ)!!」

 

 

 大きく剣を振りかざすと、黒い刃を飛ばした。

 

 

 長らく使っていなかった人間時代の自分の剣技と、デュラハン時代に獲得した力を組み合わせた大技だ。

 

 「(これでどうだ。少しは効いてくれ)」

 

 実力差から限りなく淡く、それでも万が一を期待して思う。

 

 

 「……『 光狐(みこ)』」

 

 

 光の刃が大技を難なく受け止めて相殺し、こちらへ──────

 

 

 「(……あぁ、やはり俺は────)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光狐でベルティアを斬った。確かな手ごたえがあった。

 

 そう思い、やがて霧が晴れると、倒れて床に横たわるベルティアの姿があった。近くに首もある。

 そして所々湯気が出始めていた。あと1分もすれば消滅するだろう。

 

 

 「結局勝てなかったか……ハハッ、悔しいが俺の負けか」

 

 

 そんなベルティアは自嘲するように笑う。

 

 

 「アンデッドナイト達を仕向けたり、死の宣告など楽な方向へ逃げて自分を鍛えることを怠った結果がこのザマか……もう少し、体を磨こうと意識すべきだったな」

 「いや、確かにお前は強かった。剣の腕も騎士に見合う実力だった」

 「だがお前には負けた。結果が全てだ。……お前は強い」

 

 

 すると、自分を認めるような言葉を述べる。そんなことを思ってもいなかったユウヤは驚いた。

 

 

 「……恨んでないのか?ボクを」

 「恨む?ハッ、むしろ感謝している。魔王軍幹部としてでなく、騎士としての俺と決闘をし、決着をつけてくれたのだ。おかげで気高き気持ちを思い出すことが出来た。これで恨むなど騎士の風上にも置けん」

 「……別に、ただのボクの気分だ。そんなつもりはない」

 「だが俺は感謝している。騎士として俺は死ぬことが出来る。ありがとな。お前なら、魔王様すらすぐに倒せるかもしれんな」

 「そんな疲れることはしたくないな。自分はのんびりと過ごす方が好きだ」

 「そんだけの実力持ってんのに冷めてんなぁ……ハァ」

 

 

 吐き捨てるようにため息をつく。気づけば胴体はもう首元寸前まで消えかかっていた。もうあと十秒も経たないうちに消えるだろう。

 

 最後に一つ、問いかける。

 

 

 

 「お前……いや、ユウヤ。何のためにいつまで戦いを続ける?」

 

 

 

 それに間を挟まず、すぐ答える。

 

 

 

 「大切な人を守るために、生きてる限りずっと」

 

 

 

 「……そうか。夢物語のようだが、妙に納得だ。ならこの世界で生き続けろ。俺は先に堕ちていく」

 

 

 

 激励と取れる言葉を残し、ベルティアは清々しい表情を浮かべ、消滅した。

 

 

 何もなくなったあと、懐から冒険者カードの討伐欄を確認すると新たな文字が表示された。

 

 

 魔王軍幹部デュラハン、と。

 

 

 

 

 「……おやすみ。騎士ベルティア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冒険者ギルドへ帰還し、受付へ冒険者カードを見せると、応対した受付嬢のルナは驚きと納得の半々の表情をしていた。

 

 

 そして魔王軍幹部を倒した功績として懸賞金が配られた。その額なんと3億。

 予想以上の金額に驚くも、すぐホクホク顔で受け取った。これだけあればしばらくは経営が黒字になる。

 

 そんな浮ついた気持ちも飲み込み、店へ戻ってドアを開ける。

 

 

 「あ、おかえりなさい、ユウヤさん。勝ったんですね。大丈夫だとは思ってましたが、無事帰ってきて良かったです」

 「ただいま、ウィズ。倒してきたよ。魔王軍幹部ベルティア」

 「疲れてお腹空いていると思ったので、今日は私が腕をかけて料理しますよ」

 「自分も食材切るくらいは出来るけど」

 「たまには全部私に任せてください。でないと私が納得出来ません」

 「……そうか。ならお願いするよ」

 「はい!」

 

 頬を膨らませて見てくるウィズにユウヤは微笑し、それに任せてくださいとフンと胸を張る。大きく揺れたナニカに目が行ったのは内緒だ。

 

 

 

 夕食は久々にウィズが一人で作った料理が机一面に広がった。

 取り敢えず手始めにハンバーグを手につける。

 

 (うん、やっぱり美味しい。家族以外で深い関係を持った人が作った料理を食べるのはいつぶりだろうか………)

 

 

 「美味いね」

 「ほんとですか?良かったです」

 「他の人が作った料理も温かみがあっていいね。また食べたいと思うと同時にちょっと申し訳ない気持ちになる」

 「いつも私はそんな気持ちなんですよ。手伝ってもないのに、こんなに美味しい料理を食べていいのかなぁって。また頼ってください」

 

 それにユウヤは改めて考える。

 無理させないようにと自分だけで完結していたが、任せすぎるのもあちらにとっては悪いことだ。ならもう少し手を借りた方が良い。

 

 

 「そうだね。たまには交代で料理作るか」

 「えぇ、そうしてください。私もそちらの方が嬉しいです」

 

 その後、ユウヤ達は軽く談笑しながらたくさんの料理を味わった。

 

 そしてベルティア討伐の懸賞金を渡すと、「これで買えなかった新商品が……!」みたいなことを言っていた。

 買ってもどうせほとんど売れないのは分かってるが、せめて自分が欲しくなるような商品が良いなと思うのだった。

 

 





 ベルティアってウィズやバニル除く魔王軍幹部の中ではわりと好きな方なんですよね。

 まぁその二人を除く魔王軍幹部の中で自分の一番好きなのはウォルバクさんですけど。

 この2人ってなんか憎めない。


 次話から2日、もしくは3日に1話投稿の頻度にします。言い忘れてましたが朝6時に投稿しますよ。

 評価と感想待ってます。

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