この素晴らしい魔道具店副店主に幸福を!   作:白峰 真紀

9 / 27

 一週間も経たないうちに気付けばUAが1400も超えてました。ありがとうございます。


第8話 ヒュドラ討伐と面倒臭い同郷

 

 「見てくださいユウヤさん!また新しい商品を購入してきました!!」

 

 一週間後、店に来るとウィズが調子良くそんなことを言ってきた。まぁあの日の様子から予想はしていたが。

 

 「で、何を買ってきたの?」

 「聞いてください!こちらです!!」

 「…車輪?それにしては小さいような……」

 

 そうして持ってきたのはフレームが緑色の小さな車輪だった。パッと見ると子供の持つオモチャだ。

 

 「これはフェ・ルーレと呼ばれる車輪型のマジックアイテムです!!これは良い性能ですよ!たとえレベルや強さが上の相手でも関係なく『ズコーン!!』と転ばせることが出来るんです!!スゴくないですか!」

 「確かにどんな相手でも効くのは強い……で、問題点は?」

 「…実は空中にいると効果がなくて……あと対象はランダムです」

 

 ハッキリと言って使えない。正直ネタ性能だ。普通の冒険者達は誰も欲しがらないので、これも全く売れないだろう。

 

 が、ユウヤは違った。

 

 「じゃあ4個買うよ。値段は?」

 「買ってくれるんですね!ありがとうございます!!4個でお値段1400万エリスです!!」

 

 かなり高いが、構わず財布から1400万エリスちょうど引き出すと上に置く。ウィズはニコニコ顔で受け取ると、袋に入れて商品を渡す。

 

 

 「やっぱりユウヤさんは私の商品の良さを分かってくれますね。いっつも私の事をポンコツだの間抜けだの生き遅れリッチーだの罵倒するバニルさんに見せたいです」

 「ポンコツやちょっとだけ間抜けなのは合ってると思うけどね」

 「何か言いました?」

 「いや何も」

 

 ジロリと睨むウィズが可愛かったが、色々詰められるのを誤魔化すように話を切り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「依頼の数は回復したのか」

 

 魔王軍幹部討伐から一週間も経ち、ギルドの掲示板はいつものようにはみ出すくらい紙が貼られている。

 今日はヒュドラ討伐の紙を手に取り、依頼を受けに行く。とそのとき。

 

 

 「ねぇ、私いまから売られにいく、希少種のモンスターの気分なんですけど……」

 

 

 鋼鉄製のオリに閉じ込められた、水の女神がいた。

 

 

 「…これは……」

 「おお、ユウか。そっちもこれから依頼か?」

 「あぁ、そうだけど……これは一体?」

 

 そんなユウヤの疑問にカズマが答える。

 

 

 今から受ける依頼が湖の浄化で、その際にモンスターが邪魔をしにくる可能性がある。だが、自分達では力になれるか分からないので、安全に浄化できるように頑丈な鎖を巻き付けた鋼鉄製のオリの中に入れて浄化する。とのことだった。

 ずっと水の中に居るのも苦痛じゃないのかと思ったが、本人曰く一日閉じ込められても呼吸に困らず、不快に感じることもないとのこと。流石は女神。

 

 

 「そっちはどんな依頼を受けるんだ?」

 「ヒュドラの討伐。複数首が生えたモンスターで、首を切っても再生する厄介な特性を持っている」

 「めちゃくちゃ強いじゃねぇかソイツ!で、それをソロで討伐すると?どんだけ強いんだよお前……あーぁ、俺もそんくらい強いチート能力欲しかった………」

 「止めておけ止めておけ。むしろ自分はこんなチート能力より、そんな楽しい仲間がいるカズマの方が羨ましいな」

 「嫌味か!?こっちとしては全然楽しくねーよ!!むしろ苦痛だよ!!特にこの駄女神のせいで!!」

 

 それに水の女神が「はぁ!?」と騒ぎ出す。立ちあがろうとしてオリの天井に頭をぶつけて悶えつつ、カズマの方へ向くと。

 

 「ちょっとカズマ!!さっき聞き捨てならない言葉聞いたんですけど!!私は女神なのよ!?どんなチート能力よりも上の存在なんですけど!!誤って!!」

 「今のところいっつもいっつも酒場で酒飲んで借金してばっかじゃねぇかお前!!そんだけ言うなら活躍して見せろよこの借金女神が!!」

 「わああああー!!言った!!カズマが酷いこと言った!!なら今から見せてあげるわよこの女神の私の力を!!だから早く私を連れて行きなさいよ!!」

 

 「……すみません、こんなに騒いでしまって。あの2人も、ユウセンセみたいにいつも冷静になって行動してほしいです」

 「いつの間にかほったらかしで喧嘩しているな。全くもう少し周りを見てほしいが」

 

 短気で売られた喧嘩は必ず買うのが紅魔族と宣うめぐみん弟子と、ドM性癖で周りをドン引きさせるダクネスが言っても説得力がないなぁと思ったが口には出さず、一言告げてその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒュドラはかつて地上で大暴れしたモンスターだ。そのときは当時の勇者がチート能力で倒し、封印したとされている。

 

 が、その封印は時間と共に弱くなり、運悪く今年になって封印が解かれ復活した。

 

 

 目撃した冒険者達のパーティによれば、洞窟の最下層で突如魔法陣が出現して光に包まれたと思った次の瞬間、大きなモンスターが出現して自分達に攻撃してきた。途中仲間が次々やられ、最後には2人だけ生き残ったらしい。魔導カメラで撮った死体の写真を見ると、半身が焼け焦げていたり、顔の一部が溶けて中身が見えるグロい状態だった。

 

 ヒュドラの特徴は、それぞれが色の違う六つの頭と長い首、鋭く生えた牙に各首毎に色が異なる眼の巨大な蛇の姿をしている。首ごとに様々な攻撃を仕掛け、更に幾ら頭を潰しても復活する脅威の再生能力がある。

 

 

 取り敢えず冒険者ギルドからの情報はそれくらいだ。現在件の洞窟へ入り、途中襲ってくるモンスター達を軽く一蹴して最下層へ向かっている。

 

 

 「そろそろ最下層か」

 

 

 下へ続く階段を降りて最下層へ近づくにつれ、モンスターの鳴き声がだんだんと大きくなって聞こえてくる。

 そして最下層へ到着すると。

 

 

 『クルゥァァアアン!!』

 

 

 音色のように聞こえる不思議な叫び声をあげて、6対の鋭い眼光が射抜くように向かう。壮絶な殺気と共に赤、青、黄、緑、白、黒と各々違う色をした首のヒュドラがお出ましになった。

 臆さず見つめ返すと、赤の頭がガパッと口を開き、火炎放射を放った。もはや炎の壁と差し支えない規模の勢いで急速に迫って来るも、ユウヤは怖気つくことなくその場を動かず。

 

 

 「…I'm on itさあやろう

 

 

 腰の鞘から妖狐を取り出して『水狐(すいこ)』にすると、火炎放射を一刀両断する。それを合図に戦闘が開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「『ハイドロ』」

 

 

 手始めとして、先ほどのお返しと言わんばかりに水の砲弾を次々に発射する。ヒュドラは避けるが、そのうちの一発が赤の頭に当たり、威力を高めていたこともあって顔半分が大きく削れた。

 が、白の頭が叫んで白い光を発生させ、赤の頭の周囲を包み込むと、再生して元に戻った。

 

 

 「回復も使えるのか」

 

 

 今度は緑の頭が風のブレス、黄の頭が雷を放つ。

 猛烈な突風と高速の光を地面を蹴って壁を走り、テレポートで回避と同時に近づくと、炎狐で次々と頭を切り落とす。そして次に白の頭を狙おうとしたそのとき、黒の頭が黒いブレスを放った。咄嗟にテレポートで回避して距離を取ると、その隙に白の首が叫び、切った他の頭が再生する。黒いブレスが当たった場所はドロッと溶け、液体となって泡立っている。

 

 

 「赤は火、青は水、黄は光、緑は風、白は再生、黒は毒ってところか。んで白の頭がやられると再生能力を失うから、他の頭が必死に守り、その間にやられた他の頭を回復させると。……面倒臭いな」

 

 

 現状そう分析した。ぶっちゃけ倒すだけならテレポートからの『サムタ・エクスプロージョンズ』でいけるのだが、あいにくそれだとこの洞窟が攻撃に耐えきれないので、他の方法に変える必要がある。

 どうしたものか、とヒュドラの火炎弾、水流弾、光弾、突風弾、毒弾等の様々な攻撃を避け、度々反撃しつつ考えていく。

 

 

 そんなこんなで5分が経過し、また軽く反撃していると、目にヒュドラのある部分が映る。

 それを瞬時に理解し、自分の攻撃手段と組み合わせて考えると閃いた。これなら洞窟を壊さず倒せる。

 

 早速行動に移す。ユウヤは妖狐を『闇狐(あんこ)』にし、テンペストで洞窟内を縦横無尽に駆け回る。

 ヒュドラは様々な属性の攻撃するも、素早く動くユウヤに中々攻撃が当たらない。そして黒の頭が単発の毒弾から黒いブレスに強化して放った。

 

 

 「『闇吸収(ドレイン)』」

 

 

 だが、ユウヤは闇狐の能力『闇吸収ドレイン』を発動すると、なんとブレスを吸収した。突然のことにヒュドラは驚き、その隙をついてユウヤはヒュドラの後ろへ回ると、先程見えたある部分へ闇狐を突き刺した。

 

 

 「返すぞ……倍にしてな」

 

 『クルルアアアアアアアアアアアァァァァァンン!!!』

 

 

 強烈な痛みがヒュドラに走る。すぐさま白の頭が再生しようとするも、ユウヤがそれを見逃さずに迫ってくる。他の頭が防御しようと動こうとするが、体が異常状態となって傷ついているため、動きが遅くなる。そしてそのまま白の頭は切り落とされた。

 再生能力を持つ白の頭が切り落とされたことにより、ヒュドラはダメージを回復出来ずにだんだんと弱っていった。それでも悪あがきとして攻撃するが、ユウヤには全て避けられる。

 

 

 「なんでこんな事がって思ってるね。まぁこれは独り言だけど……さっきボクに刺された場所、仮説になるがそこはお前がかつての勇者に攻撃されたところだ。どういう原理かは知らないが、それは白の頭でも癒えずに残り続けていた。そこを20倍以上強化したお前の毒を纏った刀で攻撃しただけだよ。以上」

 

 

 他の頭が次々と切り落とされ、最後の一頭になる。

 一頭は恐怖していた。自分はこんな化け物に喧嘩を売っていたのか、と気づいた頃にはもう遅く、

 

 

 「あと、これでもボクは手加減してた。次があれば地上で戦わせろよ。思った以上に面倒臭かったからさ」

 

 

 視界が反転し、やがてすぐ目の前が真っ黒に染まった。

 

 

 ヒュドラ、討伐完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「君は一体どういうつもりだい!?」

 「ちょ、痛いって!!」

 

 

 道中で昼食を取ってギルドへの帰還し、その報酬を貰って魔道具店へ向かう途中、またカズマ達が絡まれていた。

 あの墓場事件以降、奇妙な縁があるカズマ達が少しほっとけない。全員困ったような顔をしていたので、助け舟にいく。

 

 

 「どうした、カズマ」

 「ユ、ユウ!!助けてくれ!!」

 「なっ、ユウヤ!?何故ここに!」

 「…………キョウヤか」

 

 その顔を見た瞬間、ユウヤの顔が嫌そうに歪む。そこにいたのはあまり好意的ではない人物だった。

 

 「知り合いか?ユウ」

 「昔、パーティに誘われたな。見れば分かるが、ボクとしては態度や言動が不快で、あまり関わりたくないと思っている人だ」

 「あぁ、そういう……」

 「おい、その言い方は無いだろう!!僕はただ魔王を倒すために、君の力が必要だと思って勧誘しただけじゃないか!」

 「お前、ボクがそこまで乗り気じゃないのに、強引に迫って来てただろうが。それがウザいんだよ」

 「う、ウザ……」

 

 何故かショックを受けていた。いい気味だ。いつも隣にいる2人の女が五月蝿いが無視する。

 

 

 「だ、だが僕はめげない。君達、僕達のパーティに入らないかい?ユウヤももう一度考えを改めてくれ。もう馬小屋では寝させないし、高級な装備品も買ってあげよう。というか、パーティ編成的にもバランス取れてていいじゃないか。ソードマスターの僕に、ランサーとクルセイダー。そして、盗賊にアークウィザードにハイウィザードにアクア様。まるであつらえたみたいにピッタリなパーティ編成じゃないか!」

 

 

 ……ドン引きだ。話聞いてないレベルで好き勝手言っている。キョウヤ自身はおそらくそんな気持ちはないのだが、側から見たら自分の金と力でパーティの仲を切り裂こうとするヤバい人だ。ご都合解釈が過ぎる。

 

 

 「……スマン。ボクは別に今の生活は嫌いじゃないし、楽しいと思ってるから断らせてもらう」

 「ちょっとヤバいんですけど。あの人本気で引くぐらいヤバいんですけど。ていうか勝手に話進めててナルシストも入ってる系で、怖いんですけど」

 「どうしよう、あの男は何だか生理的に受け付けない。攻めるより守るのが大好き派な私だが、アイツだけは何だか無性に殴りたい」

 「唱えていいですか?あの苦労知らずのスカしたエリート顔に爆裂魔法、唱えてもいいですか?」

 

 

 ユウヤに加えて女性陣も嫌悪感丸出しだった。水の女神に至っては鳥肌まで立っている。相当気持ち悪いんだろう。

 

 「えっと…… 俺の仲間とユウは満場一致であなたのパーティーには行きたくないみたいです。ではこれで………」

 

 そうしてカズマはオリを引いてその場を離れようとする。

 

 

 

 …………………

 

 

 

 ……が、キョウヤが邪魔をする。しつこくてだんだんイライラしてきた。

 

 「……退いてくれます?」

 「女神様がこんな扱いを受けていることに僕は納得いかない。勝負しろ。君はアクア様は持ってこれる『物』として指定したんだろう?僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったら何でも一つ、言う事を聞こうじゃないか」

 「よし分かった!じゃあ行くぞ!!」

 

 

 そのかけ声と共に、カズマは左手をワキワキさせ、すぐさま右手で小剣を引き抜いて斬りかかる。それにミツルギは動揺するも、流石は高ステータス冒険者。咄嗟に(おそらく)魔剣を抜いて防ごうとする。

 が、カズマの方が一枚上手だった。

 

 

 「『スティール』!」

 

 「「「はっ?」」」

 

 

 スティールを発動させて見事キョウヤから魔剣を奪い取り、そのまま小剣で頭を叩いて気絶させた。勝負はカズマの勝ちだ。

 

 

 

 その後、ミツルギの仲間の2人の女が卑怯者だの最低だの罵倒するが、ユウヤからしてみれば、本当の戦闘では合図なんてなくすぐ攻撃が始まるのだから、バカ正直に勝負しようとしてすぐ対応出来なかったキョウヤが悪いと思う。

 そんな2人はカズマが男女平等暴力行使発言をして追い払った。女性陣は軽く引いていたが。

 

 

 いなくなったところでユウヤはカズマ達と別れ、魔道具店へ帰宅する。しばらくキョウヤには会いたくないと思いつつ。

 

 

 

 

 

 ………と、思っていたユウヤの思いは1時間後に粉砕された。

 

 

 ウィズと商品について話していると、魔道具店にキョウヤがやってきたのだ。焦った様子で。

 嫌々ながら聞くと、カズマ達と別れたあとの事を話す。

 

 曰く気絶後、目覚めると魔剣が無いことに気づき、カズマに魔剣を返して欲しいと頭を下げたが、既に売却済みでもう持っていなかった。なので現在仲間と共に売却された魔剣を探しているという。

 

 

 ……くっだらね。

 

 

 ユウヤはそんな感想しか出てこなかった。完全に自業自得だ。

 ウィズも根っこのところは冒険者なので、同情は一切していなかった。

 ユウヤがドライな対応で対処すると、キョウヤは店から急いで出ていった。次来るときは客として来て欲しい。

 

 

 正直、このまま魔剣が見つからなければあいつも少しは大人しくなるだろう、と邪な考えを抱くが、それはそれで高ステータスの冒険者の数が減って依頼の進みが滞るので、やめておいた方が良いかと思った。

 

 キョウヤとのやり取りでストレスが溜まったので、今日はウィズも誘って外食にした。何故かウィズは怯えられてしまったが。何の誤解かは分からないが、結局付いて来て一緒に食べる内に和らいでいく。ちなみにお代は割り勘で払った。

 

 





 ユウヤは機嫌が悪いと大体外食に行くのがお決まりになってます。


 評価と感想待ってます。 ……というか何でもいいから感想欲しい……(乞食)。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。