ソロモン海。
日本より南南東、遠くオセアニアに属する海域。
オーストラリア大陸上部を掠める様に浮く群島周辺を指す。
かつて古代イスラエルの財宝を求めた冒険者が砂金を発見し、かのソロモン王の遺産だとしてこの群島をソロモン諸島と名付けた。
周辺の浅く入り組んだ海域もまた、その名をもってソロモン海と称される。
これは国元から遠い遠い泊地の話。
前線の拡大に伴い置き去られた、かつての軍事拠点。
より良い拠点の獲得で手空きになった、やっつけ仕事に
砲声遠く、波間から油の虹が消えて久しい――
そんなばしょのおはなし。
「いやぁ、ここは本っ当に暇だな」
「すごい今更ですよね、それ」
「つーか提督ぅ。最近なんもしてないよね」
「いや、俺だけじゃなくて全員だろ」
「そんなことないクマ。クマはいろいろ忙しいクマ」
「あ、わたし知ってるわ!おさかなとってた!」
「電もみたのです」
「昨日のお夕食にって貰ったおっきなアカムツは、それだったのですね」
「まぐろの刺身、あれは美味かったな」
「一メートルくらいのカンパチとか沢山ありましたよね。え、でも一人でとったんですか?」
「ふふふ~ん。それがクマの実力だクマ」
「というか、不知火が書類を片付けてる脇で騒がないでもらえませんか」
「ほんと邪魔だわアンタ達。遊ぶんなら外で遊んでなさい。酸素魚雷で殴るわよ」
『ごめんなさい(クマ・なのです)』
ばたばたと、『くまー』だの『なのです』だの騒ぐ連中は居なくなった。
叢雲は呆れてため息を吐いた。
「……ま、いいわ。アレはアレで元気なんだし」
「ええ、不知火もそう思います」
隣のボロデスクでペンを動かす少女も、サラサラと紙面にインクを伸ばしつつ相槌を打った。
叢雲は何とはなしに、揺れる相方の淡い桃色の毛先を見つめる。
「ここに来てまだ半年。正直ここまでボロいと暮らせないんじゃないかって不安だったけど、なんとかなるものね」
四苦八苦の苦労を思い起こせば、なにやら感慨深いものも湧いてくる。まだたったの半年なのに。
「アタシがアイツ付きになって、
仰け反る。舟を漕ぐと背もたれが軋んだ。
クモの巣と、動物の顔に似た雨漏りの染みが視界に入った。
「――不知火は」
ふ、と零れるような声だった。
「不知火は、今が奇跡に思えます」
相変わらずの薄い表情で、筆も止めず、紙面から顔も視線も上げないでの言葉。けれど叢雲には、だからこそ彼女の言葉が素直な本心なのだと解った。
「奇跡などクソくらえですが」
「あいっかわらずアンタも口悪いわね」
叢雲は思わず苦笑した。
よっ、と反動をつけて座り直す。
「さ、仕事仕事。アイツが余計な気を回す前に片付けちゃいましょ」
「いえ、不知火は終わりました。間宮、いただきです」
「うそ!?」