「えー、では会議を始めます。お題は今週の当泊地正面海域の掃討作戦」
拍手。と気の抜けた声にまばらな拍手が返った。
「じゃあいつも通りでいい?」
『はーい』『うぃー』
広い部屋に詰めた150余名、だらけ切った連中がだらけ切った様子で返事する。
中には暑いのか半分下着になって葉っぱのうちわで扇いでる豪の者までいた。その様子は会議でも何でもない。本土でやろうものなら提督が上位者に顔の形が変わるまで殴られるだろう。……が、まぁ占領海域の維持以外全く、まっっったく期待されていない特参号泊地ではこんなものであった。
「いつもどおりで四個艦隊六隻編成。内訳は会議後に編成表を確認するように。西から、ニュージョージア諸島を第一艦隊、サンタ・イサベル島を第二艦隊、当ガダルカナル島及びマライタ島を第三艦隊、サン・クリストバル島を第四艦隊。最後に、手隙の空母にはまたレンネル島まで彩雲を飛ばしてもらう。見つけたら叩け、ただし石橋を叩いてから。そんなところだな」
藁半紙片手に壁にピン留めした海図を叩く。
諸島というだけあってそれなりに入り組んだ島々が描かれていた。北北西から南南東へ伸びる複数の島と周囲に散らばる小島、水深もまちまち。精密な音響探査図があるとはいえ、座礁の危険が常に付きまとう面倒な海域だ。
WWⅡ時代にはそこが利点でもあったが、もはやそういう時代ではない。埋め立てやらメガフロートやら、やりようは幾らでもある時代だ。
何よりこちらも相手も船じゃあない。
それはさておき、言い終わるか終わらない内からもう騒がしくなった。
「提督さん、私と翔鶴ねぇでレンネル島やるよ!」
「あ、まって瑞鶴。まだ編成も確認してないのに」
やら
「だるいわー。てーとくー、寝てちゃダメ?」
「北上さん私の部屋行きましょ」
だの
「第一は嫌よね。ニュージョージア(あそこ)って浅瀬が多いから前に擦っちゃって」
「む、私もだ」
おい、擦ったって舷側?まさか腹?聞いてねぇぞ。
「提督よ、カタパルトの調子は万全じゃ。万事吾輩に任せるが良い」
おう利根、第四はお前が旗艦だ。東は任せたぞ。
更には編成表見に食堂までダッシュしたチビ連中が戻ってきてもう大騒ぎ。
落ち着いているのは戦艦勢と一部の空母くらいだ。もっともビッグなんちゃら二名は聞き捨てならんこと言ってたが。前に鋼材が減ってたのはお前らが犯人か。
とにかく、こうなってしまえばなかなか収まりがつかない。
空母で一番古株の鳳翔と視線が合う。苦笑いが揃った。日ノ本初の航空母艦の名を持つ彼女は和装の似合う優しげな女性だ。その人柄は優しく強い母親と言えば大よそ表せてしまう、そうは居ない人格者である。
彼女が手を叩いて注意を集めた。
「はいはい、みんな怪我だけはしないようにしっかり準備しましょうね」
『はーい』といい返事。
彼女の言うことだけはどの娘たちもしっかり聞く。伊達に多くの泊地で“お艦”と呼ばれていない。
最後に自分からも注意だけはしておこう。
「駆逐と軽巡は対潜装備を忘れるな。重巡は20センチと高角砲、防空を一、雷装は二の次に回せ。空母は十分な艦戦と彩雲を。燃料は二単位余裕もっとけ。戦艦は……まあ言わんでも分かるな?適切に動け」
各々クラスは違えど、出征の顔付きだけは同じ。心配は要るまい。
「では解散。通信装備の妖精だけは忘れるなよ」