艦これ ~ソロモン海特参号泊地~   作:羽屯 十一

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帰投

 

 

 おつかれさまでしたーーーー!!!

 

『がっちゃん』と鉄板曲げて溶接したジョッキがぶつかり合う。

 ぐいっと各々(おのおの)あおって―――ぷはぁっと無数の空コップが掲げられた。

 板間に干し草を被せ、ござを敷いた座敷風の大部屋、そこには特参号の全艦娘が集まっていた。長テーブルが並べられ、各員自分のクッションやら座布団を持ち寄り好きな場所に座っている。目の前にはテーブルいっぱいに肉と野菜と魚、そして大人に嬉しい大瓶と子供が喜ぶペットボトルが並び、目と舌を大いに楽しませていた。

 昨日未明、最後の巡視艦隊が帰投した。そのお祝いだった。

 

「いやぁ~久しぶりに動くとコレがうまいねぇ~♪」

「そーそー。これがあるからって感じよね~」

 隼鷹に足柄は肩を組んでぱかぱか空けていた。まるきり流し込んでいる。

 周りは苦笑しながらも文句は付けていない。自分達が深酒で壊れるほどヤワでない事を知っている為でもあるし、何より飲んでてくれれば料理に箸がいかない。つまり取り分が増えるという事だ。

 さっさと目の前から自分の好みを食い尽くした駆逐艦が周りをうろちょろし、「おさけくさーい」とか言いながらもっしもっしと摘み食いに精を出している。大酒飲み共はそこへゲラゲラ笑いながら、ワザと酒臭い息を吐きかけては、ちびっ子たちに叩かれて喜んでいた。

 対面には高雄に愛宕、麻耶に鳥海の重巡四姉妹が座っている。

 やっぱり頬を染めてお酒を楽しんでいたが、鼻をこする駆逐艦を撫でてやりながら口を開けた可愛らしい雛鳥に甘味を分けてやったりしていた。

 

 一方で軽巡組はわりと最初の場所から動いていない。

 美味いおかずと一緒に白米を噛み締め、日頃味わえない美味を少しでもと口を動かしている。

 もっともやはり性格はでていて、球磨型姉妹や長良あたりは自分のを食べるのに集中している。逆に由良や名取、阿賀野型姉妹の方は隣近所とお喋りしながら味わっていた。

 さらに言うなら、極一部の(やから)は酔っちゃったーとか言いながら意中の相手に絡みついている。もう近づくと危険なので周りがあからさまにひと席分空いているのが良く分かった。

 

 

 

 彼はそんなバカ騒ぎを厨房から見ていた。

 柱に寄りかかり、たまにコップを煽り串焼きを頬張りながら。

 偶々配膳を手伝ったついでに少し休憩しているだけなのだが、まるで騒がしい空気から隔離されたような、客観的な気分が酒精に鈍った頭にあった。

「はい、提督」

 ぴとり。いい塩梅に温められた茶碗が頬に触れた。

 お、と振り返れば割烹姿の鳳翔がお疲れ様ですと微笑んでいた。

 同じく厨房で腕を奮っていた間宮と伊良湖も、たすきを解きながら寄ってきた。

 それぞれお疲れ様と労い合い、煎豆茶をすする。

 ふわりと香ばしい湯気が鼻先をくすぐり、なんとなくほっとした。先程まで僅かに感じていた疎外感は、もう微塵もなかった。

 彼は小さく笑った。

 鳳翔と間宮は確かに多くの娘達にとり母親のようなものである。が、まさかいい年した己が同じように気を使われるなど、ましてそれで実に救われているなど。感謝感謝の想いである。

 そういえばいい機会だ。以前より考えていた事があった。

「慰安旅行、ですか?」

「うーん、嬉しいですけど」

「私と間宮さんと鳳翔さんの三人でですか」

 頷いた。

 飯炊きだけでもこの人数分となれば大事になる。しかも特参号指定から全く楽になっていないのは彼女達くらいであった。となれば慰安の一つもせねばバチが当たるだろう。

 ついでにこれを期に他の連中にも、手伝い程度でない炊事を覚えてもらいたいという願いもある。

「うまい飯食って、広々した温泉入って、散歩したり景色見たりしてのんびりすればいい。一回じゃない。もっとそういう機会があるべきだと思うんだがな」

「皆で行くならそれもいいでしょうけれど、私達だけというのは」

 しかし鳳翔は断った。

 嬉し困りの笑いが少し申し訳なさ気で、でもしっかりと首を横に振る。

「私はすこーし勿体無いけどなぁ」

 逆に伊良湖はチラリと舌を出して言った。

 

 当然か。冗談めかしているが頑丈な彼女達基準でも疲れると、他の艦娘から小耳に挟んだ事もある。

 加えて本土や補給線の整った大型泊地では加工済みの食材がほとんどだが、ここではそれらも一から処理しなければならない。配膳や皿洗いは当然として燃料や水の用意が他の持ち回りにしても、たった三人でこなすのはやはり重労働だ。大人が二人丸まって入りそうな鍋など幾つもかき混ぜるのは達人の彼女等でも艤装を装着しなければならない。

「やっぱり下処理あたりなら任せないか」

「嬉しいんですけれど、美味しいものを食べていただきたいですし」

「んん、実に嬉しい言葉なんだがなぁ」

「こればっかりは、諦めて下さいね」

 プロ意識もあろうが、それ以上に騒ぎに向けた優しい眼差しが心の内を示していた。

 ここまで言われたら食い下がれない。

 苦労をかける、と頭を下げた。

「代わり要る物があったら道具から設備、人手まで全部用意しよう。いつでも言ってくれ、すぐ揃える」

「ありがとうございます」

 鳳翔はくすりとわらった。

 

 

 

 

 

 




ちっと遅くなりました。
年末年始、ちょこっとした空き時間が地味に無くて進まないです。
田舎って親類縁者がポツポツ来たりして、いつになったら終わるのやらと思ったりw

最後になりましたが
新年明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。
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