紙面を指が滑る。
半紙をめくり先を追う。
ふと、視線が外を向いた。
しゃおらぁ いくぜぇ!
歪んだ古ガラスの向こう、炎天下のグラウンドで威勢と共に白球が青空を射抜いた。
(元気なものね)
視線が再び落ちる。
南国のいささか強い日差しも、廃品のようなガラスを通せば読書に宜しい。薄緑のガラス瓶を通したように和らいだ光が、紙面の白をやんわり照らす。
この島に来てずいぶん自由な時間が増えた。
砲と魚雷を抱えて駆け回る時間がほとんど無くなり、代わり生活に駆け回る時間ができた。
悪くない、と思う。
(いえ、素敵なことなのでしょうね)
メリハリが無くなり、楽しい、嬉しい出来事が増えた。
提督が背負っていた責任が割れ砕け、失敗すると雨漏りしたりといった責任を預かる事になった。
指が
失敗が怖いのはどちらも同じで、上が悪いと毒づけなくなった分、今が厳しいと思う娘もいるだろう。でも普通の人間の生活はそういうものなのらしい。
人同士の戦争では上位者が責任を預かる意味は大きかっただろうと思う。
同時に、深海棲艦との戦いではそれよりは小さいのでは、と。
相手が同族でない。
明確な敵である。
生きるために排除しなければならない。
そのために生まれてきた。
知らず大義という大仰な名分に守られていた。
指が
未だ軍属に違いはないけれど、限りなく放置されている。
この環境は、言わば
動かなくなった者に与えられた終の住処。
この人数には広いけれど、艦としてみるなら手狭もいいところ。
役目も半年で二回はぐれが出た程度。
案外こうして鈍らせることが本営なりの除装なのかしら。
「なんて、、、ふふっ」
アーーーー!
「え?」
部屋の壁が突然爆発した。
飛び散った木片が身体を叩き、鋭い痛みを与えた。
人間ならひどい怪我を負っただろう。
「、、、、、、」
気に入っている長い黒髪も木屑まみれでぐしゃぐしゃ。
床を見ると白いボールが。
外で球技に使っていたもので、焼いて叩いて丸くした鉄に厚く布を巻いて縛った物だったはず。
木屑を払い落とし壁にできた穴から外を覗けば、『やっべぇ』だの『わ、私の計算では』だの言ってる大型艦艇が慌てていた。どこをどう計算間違いすればこうなるのか不思議でならない。――あら、そういえばどこまで考えていたかしら?
「ふふ、、、私馬鹿みたい」
――もうすこし、簡単に考えていいのかもしれないわね。
「まぁ、それとこれとは別なのだけれど」
ふふふと笑いながら備え付けの消化バケツを箒で何度も力一杯ひっぱたく。ガランガラン、とてもやかましく鳴り響いた。箒を放り出し、椅子に座ってもう一度本を開いた。
直に大勢駆けつけるだろう。
それまで、新しく楽しい騒ぎが始まるまでは、もうすこし趣味が楽しめそう。
“戦艦棲姫”
13年秋のイベント『決戦!鉄底海峡を抜けて!』にて最終目標として登場した。
モデルは大和級二番艦『武蔵』
それまでの深海棲艦を大きく超えた重装甲・高タフネス・超火力を備えた、正にアイアンボトムサウンドの主。重雷装艦の一撃を耐え、長門級改型を一撃で大破させる戦闘力で数多の艦隊を撤退に追い込んだ。
14年春、作戦名『索敵機、発艦始め!』にて再び現れた。
最終目標である陸上基地型棲艦『離島棲鬼』、その護衛として。
生半には沈まず、攻撃を次々吸い込み離島棲鬼を守る様から、吸引力の変わらないただ一つの旗艦ガード『ダイソン』と異名がつけられた。
14年夏。作戦名『AL作戦/MI作戦』
陽動のアリューシャン列島攻略作戦と、あのミッドウェー海戦を元にした作戦。やはり最終目標の護衛として登場。
しかし誰もが目を疑った。
まさかまさかの二隻編成、ダブルダイソン。
14年秋の中規模作戦『渾(こん)作戦』では第三海域で海域旗艦を勤め。
そしてこの15年冬のイベント、連合軍によるトラック泊地強襲を元にした『迎撃!トラック泊地強襲』
最深部第五海域、敵任務部隊 旗艦艦隊 旗艦『戦艦水鬼』が現れた。
アイオワ級ニュージャージーがモデルだろうと推察され、その能力は戦艦棲姫の純発展系。昼戦夜戦、陣形不利、問わず砲撃火力はシステム上限に到達し、装甲は確認された全ての艦艇を優越する。
更に戦艦棲姫が二隻護衛に着いていた。
冗談だと思いたいトリプルダイソン。
しかも一機は新型。
鼻水が出そうだ、、、