…着いたのか。
肩をポキポキと鳴らし飛行機の窓から外を眺める。
空港の周りにはビル群がそびえ立っている。
…カントー地方が誇る大都会ヤマブキシティ。
やまぶきはきんいろ…かがやくいろ、か。
行き当たりばったりで来たけど…滞在には向いてなさそうだよな、これ。
飛行機を降りて空港へ。
生活必需品しか入っていない旅行カバンを持ち外に出る。
……小腹が空いたから適当に飯でも食べ…。
「いけ!カイロス!」
「頑張って!ガーディ!」
ポケモンバトルをしている。
飛びかかるガーディをハサミで受け止めるカイロス。
弾き飛ばしたガーディに突っ込むカイロスにひのこを放つが勢いは殺せずハサミで打ち上げられる。
空中ではなにもできないガーディの着地点にはハサミを開いたカイロスが待っていた。
「ガーディ…!」
「…がうっ!」
ガーディがトレーナーの呼び声に答えるがごとく…真下のカイロスに向けて再度ひのこを放つ。…驚くカイロスにひのこが降り掛かる。
「カイロス!?」
怯んだカイロスに向けて頭を向けたまま…落ちた。…ゴンッと音が響き…目を回し仰向けに倒れるカイロス。
…同じく…なんとか立ち上がるが…力尽きるガーディ。……勝敗は引き分け、か。
面白いバトルだった。
ガーディとカイロスを戻し握手を交わすトレーナーを見つつ…改めて飯屋を探し…。
肩がぶつかる。
やべ…余所見して人とぶつかった。
すみません。
「いえいえこちらこそ余所見をしてしまいました」
爽やかイケメンが笑みを浮かべ見下ろしていた。…2m一歩手前ぐらいか。綺麗な金髪にキャップを被りその顔はどこかで…声も聞き覚えが……。
「…え?」
イケメンが目を見開く。……ん?
?????????
…あ、いや…見たことがあるなんてもんじゃねえ。実際会ったことがあるし…なんなら……!!
だとしたらなんで生きてる!?
お前もこっち側の人種なん!?
「これも巡り合わせ…という奴、ですか」
なに笑ってんだこいつ。
こちとら頭がぐるぐるドッカンしかけてんだぞ?
…幽霊とかじゃないよな?
……うん、生きてるわ。
イケメン元い…
「やめてください」
速攻で振り払われた。
いやー…幽霊だと思ってさ。
…死んでなおアルセウスを追い求めて亡霊と化したのかと…。
だとしたらヤマブキシティにいる訳ないか。
「それはこちらのセリフです。…アナタがまだ生きているとは思いもしませんでしたよ。…相変わらず憎たらしい顔をしていますね」
何が憎たらしい顔だ。
お前の顔芸の方が遥かに憎たらしかったろ。
……互い様ってわけだ。
あれから…170年くらい、か。
このイケメンはウォロ。…昔のシンオウ地方。…ヒスイ地方と呼ばれていた時代。
イチョウ商会と呼ばれる別の地方からやってきてヒスイ地方の各地で商いをしていた組織。そのメンバーの一人がウォロ。
…俺も各地を渡り歩き流れ着いたのがヒスイ地方で…一時期…医者として活動していたんだ。そん時に出会ったのがウォロだった。
ビジネス的な関係って奴か。
ウォロを通じてイチョウ商会から医療器具や医療品を取引してもらい。
主にコンゴウ団とシンジュ団っていう組織…というよりは派閥か?
相手に仕事をしていて……しかもコンゴウ団とシンジュ団って仲が悪いのなんの。
お互いにシンオウさまって存在を信仰しているらしかったんだけど…話を聞くにどうやらコンゴウ団は時を司る神ディアルガを、シンジュ団は空間を司る神パルキアをシンオウさまとして崇めていたらしいんよ。
…そこはアルセウスではないんだな。分かるよ…あれは神じゃない邪神だ。…詳しくは知らないけどゲームをやってた友達がそう言ってた。
話は戻るけど…ある日を境にシンジュ団のリーダーが俺をシンジュ団専属の医者にしたいと言い始めたのが始まりさね。
それを聞いてコンゴウ団が黙っているはずもなく……ポケモン大会が開催されましたよね。
お陰様であの時は死ぬほど疲れた…死ねないけど。…てか驚いた事一つあった。
初めは気づかなかったけどシンジュ団のメンバーにシレッと…サブウェイマスターの片割れが紛れ込んでいた。…ノボリだよな?
ビックリ所じゃねえよ。なんでヒスイ地方に貴方がいるんですかねえ? と思い聞いてみたらあら不思議。
気がついたら記憶喪失で立ち尽くしてたところシンジュ団に拾われたんだとさ。…しかもかなり年月が経っていたのか…顎髭まで生やしちゃってて…。
ポケモンバトルも強く…キャプテンを任されているんだとか。…キャプテン? 見た目はキャプテンだよな。
…確かヒスイ地方において不思議な加護を受けた特別なポケモンをお世話する係みたいなものとかなんとか。
アローラ地方のキャプテンとは違うんだな。
…多分、ぬしポケモンみたいなものだよな。
もしかしたら繋がりとかあるかもしれない。
てか…ほぼ確実に原因……ウルトラホールよな。
なんて…思いつつ…話を戻して、もちろん専属の件は却下した。患者は選ばない主義なのでな。
それから数年経った辺りか。コンゴウ団とシンジュ団のリーダーが新しくなったり…ヒスイにまた人が流れ着き…コトブキムラって町を作り上げギンガ団を設立した。
ギンガ団?…え?こんな昔からあるん?と驚いたが…どうやら俺の知るギンガ団とは違った。
詳しく分かんないけど…悪の組織ではないんだとな。…ああ、医療班にスカウトされたりもしたけどこちらもキッチリお断りした。
相変わらずのほほんと医者生活してたら…テンガン山の真上に時空の裂け目とやらが現れたり…ノボリに続いて現代の少女が時空の裂け目から落ちてきたり…その少女がギンガ団の団員になったりと…色々あったよなぁ。
時空の裂け目とか知らんのだけど…ウルトラホールみたいなものでしょう。
基本不干渉だったが…少女がギンガ団から追放された時にちょっとした手助けをしたくらいか。…ウォロが連れてきやがったから仕方なく…だけど。
そん時に初めて少女を見たが…うん?君はダイパの主人公?…名前はヒカリではなくショウだし…先祖かーと納得しかけたけどあのウルトラホールみたいなのから来たわけで…。
??????
矛盾しないのか?…まぁなんやかんやお話したりして…この子ならいっかとショウちゃんが居たであろう現代の話をしたら思っきり食いついてきてさ。
……勘違いもされてたな。多分タイムスリップしたと思われていただろう。…今考えたら10ちょっとの少女が過去の見知らぬ地方に放り出されりゃ…心細いわ怖いわで最悪行き倒れるわけよ。
この世界では10歳で成人扱いだけど…俺は成人扱いなんてできなかったね。
…頑張ったなって…柄にもなく褒めたらさ。もうガチ泣きよ……ガっと抱き着いて…泣きじゃくって…。
……メンタルケアも仕事の内、かぁ。
と一週間は一緒に過ごしたけっか。
その後のことは知らんけど…解決して無事にギンガ団にも戻ることができたとわざわざお礼を言いにきてこれで終わりだなぁ、と思ってた。
……暇さえあれば来るようになった。
わざわざお喋りしにだぜ? …それも現代の話を中心に。…会話に飢えてんのかぁ。
うん、違うね…なんかスキンシップも増えてきたところで……あ、懐かれたんだと気づいた。
仕事でコンゴウ団やシンジュ団んとこに行く時も着いてきてたしなぁ。…ショウちゃん英雄みたいな扱いを受けてたよな。
…事件解決の後は…ショウちゃん自身の為にプレート集めをしてたな。…アルセウスのタイプを変更するまな板。
わざわざ…近況報告に来てくれたからね。
……俺に言ってどうするん? とは思ったけど……飼い主に久しぶりにあった大型犬みたいに突っ込んできまして……ありがとうBOTと化すだけに留めておいた。
そのせいで巻き込まれた。
……やりのはしらだったか…ショウちゃんに着いてきて欲しいと言われて……何度も断ってきたし一回ぐらいはいいやろと重い腰をあげて…。
俺とショウちゃんと…何故かウォロのチグハグ三人組でやりのはしらに行ったら…ウォロが豹変。見事な顔芸を見せてくれた。
ウォロの本性がアルセウスガチ恋勢だった件について。
ショウちゃんが集めたプレートを寄越せとバトルをしかけショウちゃんも迎え撃つ。……それを遠目に眺める俺ね。
いやポケモン持ってねえし…治療した野生のポケモンがちょこちょこ住み着いたりはしてたが俺のポケモンじゃなかったし何もできないのよね。
…バトルはショウちゃんが勝った…と思ったらさ。…まさかのギラティナが登場よ。え?二連戦なの?
流石にフェアじゃないよなぁ?
隙を見て手早くショウちゃんのポケモン達を治療。…もしもの為にかいふくのくすりを持ってきといて良かったよ。
…ギラティナを倒したと思ったら今度はオリジンフォルム…三連戦とかやばすぎだろ。
ギリギリだったけどショウちゃんがなんとか倒して……なんか笛? が変な笛に進化したり…ウォロはショウちゃんがアルセウスと会うのを見たくないとか意味わからん理由つけて立ち去ったり。
ショウちゃんが変な笛を吹いたけど…何も起きなかった。……んで…何時もの日常へと戻った。
その後は頃合を見てヒスイ地方から出ていった。…これ以上留まると…面倒そうだったし…色々と勘ぐられそうだったから。
せめてショウちゃんぐらいには別れを告げたかったなぁと…軽く後悔はしている。
「…あれから大変だったらしいですよ」
大変だった…?
「アナタが姿をくらましたことを知った彼女はヒスイ中を探し回ったとか…果てにはヒスイから飛び出そうともしたらしいです」
ん????
……なんで…?
「詳しくは知りませんが……アナタの家に行ったらもぬけの殻。彼女は酷く動揺し朝から晩までアナタを探し続け最後には心身共に疲弊してしまい…倒れ、一週間は眠っていましたよ。…寝言ではアナタの名前を呼び…置いていかないで…1人にしないで…と魘されていました」
詳し過ぎ……るっ!?
目に火花が散る。頬に痛みが走り……ウォロに本気でぶん殴られたのが分かった……。
口の中が鉄の味で広がっていく。
……唇を切ったのか。
「これでチャラにしてあげます」
……ありがとう。
冗談言え…ない、な。
軽く後悔?……酷く後悔したよ。
…お腹、空いたな。
「折角の再会です。ジブンの行きつけに案内しますよ」
……助かる。
「紹介料は頂きますがね」
…分かった。ウォロの分も奢る…これでいいだろ?…無視かよ。
歩き出すウォロの隣を歩く。
思いがけない再会?…かどうかは別として…。
俺って…本当に……置いていかれる気持ち、分かっていたつもりだった……。
…生徒たちにまたお話をする約束をしていた……簡単に破った。
……今だから分かる。…過去の記憶を辿っても…ロクな別れ方をしてないと。
…誰か俺を殺してくれないかな。
この時だけマジでそう思った。