……シンオウ地方、か。
分かっていたけどヒスイとは違う。
ミオシティに足を着ける。
クチバシティとはまた違う。
運河により二つに分断された港街、か。
中々見ない光景だろう。
特徴的な建物は船着場は勿論、ミオジムとミオ図書館だろうな。
……で、だ。
何処に行けばいいんだ?
地理はある程度把握してるがなんの役にも立たないし…場所すら分からない。…3000年も生きてりゃ記憶なんてあって無いようなもんだけどな。
「210番道路。…と言っても分かりませんよね。…紅蓮の湿地と言えばいいですか?」
紅蓮の湿地? …ああ、テンガン山東麓の湿地帯。…ズイの遺跡とリッシ湖がある…。
あーはいはいこの時代ならズイタウン付近か。
ポケモン廃人御用達の孵化厳選ロードがある場所ね。
ロクな覚え方をしてないな。
こういうくだらない知識と記憶は無駄に覚えてんだよなぁ。
仕事でズイの遺跡に行ったことがある。
中に入ったがなーにも居なかったけどな。
帰りに足を沼に突っ込んじまって沈みかけたっけな……ポケモンも凶暴な奴ばっかでさ。逃げれないのを良いことに襲われた時は…大変だったわなぁ。
ポケモンは怖い生き物よ。
とりまその210番道路に行きゃいいんだよな?ミオシティからだと結構かかりそうだが……。
「その前にミオ図書館に行きましょう。見せたいものがあります」
…見せたいもの?
うわー嫌な予感がする。
クッソ楽しそうな顔をしてんだよ。
予想するならシンオウの歴史。…要するにヒスイのことだろう?
ウォロと同じく当事者だぜ?
経験してんだからわざわざ見る必要もないだろう。
気が進まないがウォロに手を引かれ強引にミオ図書館に連れられる。
大きな図書館、とは言えずこじんまりとしているが綺麗で立派な内装をしていた。
「アナタは一度自分のことを知るべきです」
椅子に座らされウォロは本棚に向かう。
自分のことを知るって意味わからんて……。
もう知りましたよ。
カロスで英雄なんて言われてることは…。
俺が英雄なんてとんだお笑いだっての。
ただ医者が棚ぼたで成り上がっただけやんけ。
最後はバッドエンド。その後は適当にその場繋ぎの人生送ってただけなんよ。
「これでいいでしょう」
分厚い本持ってきて広げて見せてきた。…んー…
はるか昔に一人の男がいました。
その男は薬師でありシンオウの民を助けていました。
……男は一人の少女を見つけました。
その少女はある村によって追放されてしまい彷徨っていたところ男の家の近くまで来ていたのです。
男は少女を家に招き入れました。
少女に暖かい食事と心地よい寝床を与えました。泣きながら食事をとる少女から男は話を聞きます。
どうやら巷で噂になっている厄災の元凶として少女は村から迫害を受けてしまっていたのです。その村は男も知っており薬師として行ったことがありました。
男には分かりました。この少女は厄災とはなんの関係もないと。ですが、男にはどうしようもありませんでした。
……だから男は言いました。頑張ったね、と。ただひとことそう言ったのです。
少女は泣き出してしまい男に抱きつきました。男は受け止め何も言わずに抱きしめ返したのです。
……おいウォロ。これって……。
「まだ続きがありますよ」
もう…いいって。先が分かるって…。
これ以上俺の心に追い打ちをかけたいのか?
お前の寿命が長いのって実は悪魔だからってことはない?
俺の言葉を無視してページをめくっていくウォロ。
それから男と少女の生活が始まりました。
初めは少女も遠慮がちでした。
ある日、男は少女を外へ連れ出しました。
その場所は一本の松の木がある浜辺でした。
ここは男のお気に入りの場所で時々一人で来ては綺麗な海を眺めていたのです。
少女に言いました。
ここに来るととても穏やかになれると。
男は少女の隣に座り日が昇るまで海を眺めました。
次の日から少女は笑顔になりました。
男は変わりません。いつものように薬師としてかけるだけです。
村に行き民を助ける。それだけです。
…また少し時が経ち、男の家に村の人達がやってきます。
そして村の人は少女を見ると頭を下げ謝罪をしたのです。少女は驚きました。
自分を迫害した村の人達が謝っているのです。…その時に少女は知りました。
男が村に行くたびに少女の無実を訴えていたことを。村の人達も少女にした過ちに気づいたのです。
男は言いました。これで君は村に戻り生活することができる、と。村の人達も言いました。
謝ってゆるされるものではない。…この先この罪を償っていきたいと。
はれて少女は村に戻ることができました。
……少女は複雑でした。男と一緒に住んで幸せになっていたのです。
男に恋をしていました。ですが男が少女の為にここまでしてくれた事を考えて村に戻りました。
男との生活が終わってしまい少女は悲しみました。少女は一人でした。両親もおらず親族もいません。村でも一人でした。
だから寂しさを紛らわすために男の家に通い詰めました。…男の家に行くといつも笑顔で迎え入れてくれます。
それが少女には嬉しかったのです。
ひとりじゃない。そう感じられたのです。
この時に少女は男に対して本当の愛を知りました。男の為ならなんでもしてあげたい。そう思えるくらいに愛していたのです。
毎日必ず男の家に行きます。
男が仕事でいない時は男の家で帰ってくるまで待ち続けます。
これが少女にとって幸せでした。
そしていつものように少女は男の家に行きます。……ですが男はいませんでした。
それどころかもの一つありません。
もぬけの殻だったのです。少女は戸惑いました。
まるで初めからここに男がいなかったと錯覚してしまうほど…何もなかったのです。
少女は家から飛び出しました。
村に戻り村の人達に男のことを尋ねました。
ですが誰も行方を知りませんでした。
少女は村を飛び出しました。野を駆け、山を駆け、谷を駆け、湖を駆け、海を駆け。
シンオウ中を駆け回りました。
男は見つかりませんでした。
それでも少女は男を探し…。
……力尽きてしまいました。
少女は目を覚まします。
村にある自分の家でした。
少女を助けた村の人は安息の息を漏らしました。ですが…少女は男を探す為に立ち上がります。
村の人達は少女を止めました。
男はもういない。シンオウの地を去ってしまったと言いました。
少女は泣き崩れてしました。
…少女は思いました。男のいない日々に意味は無い。
男だけが少女に光を、幸せを、与えてくれました。
ですがもう男は二度と少女の前に現れないでしょう。
愛した男がいないことに少女は絶望してしまったのです。
少女は村を飛び出し男の家にいきました。
男の家で夜まで過ごしました。
少女は…男に教えてもらった一本の松の木がある浜辺にいきます。…手には麻縄が握られていました。
少女は……その麻縄を松の木にかけました。
そして………。
ストップ!ストップ!!
なにこれ!?脚色どころじゃねえだろ!?
捏造しまくりだろ!?この先絶対エグいだろ!!
「……因みにこの場所に心当たりは?」
あるっちゃあるよ。…俺が住処にしてた群青の海岸。そこの隅っこに一本の松の木が生えた場所がある。
ショウちゃんを気分転換させるつもりで連れ出した時に教えたよ。そこから見える海が綺麗でさぁ……ポケモンも少なくて安全だったしよ。
「因みに…その松の木は首吊り松と呼ばれているそうですよ」
そーですよねぇ!分かってたよこんちくしょうが!!……これを書いたやつはとんでもなく性根が捻れてやがる。
…悲恋物語とやらにも登場してるとは……俺も有名になってんだなぁ(白目)
てかこの少女って……
「下手すれば彼女も同じ末路を辿っていたかもしれません」
それは流石に……ない…だろ…。
そこまで依存? される理由はなかっただろうし……んだよ、なんでそんな可哀想な奴を見る目をしてんだ。
「馬鹿は死ななきゃ治らないといいますがアナタは一生治りませんね。…医者なのに」
うっせ! よけーなお世話だ!
……はぁ……胸糞悪ぃな。
この男のモデルが俺ってのが…もう。
「そういえば…この悲恋物語を熱心に読んでいた子がいたんですよ」
へえ…それはまたマニアックなご趣味でして…。
「…その子は…彼女にそっくりでした。顔はもちろん、少し話したこともありますが性格…何もかもが彼女と合致したんですよね」
…ショウちゃんに似てる?
そんな馬鹿なことある?だとしたら子孫かドッペルゲンガー……ぁ……。
……名前とか、分かります…?
「ええ、名前は…
ぁ……スゥー…。
いや…まさか?…流石に……ないよな…?
「時期的にポケモントレーナーになっていてもおかしくはない…どうしました?」
いや?…早く210番道路に行きたいなーって…!
ウォロの知り合いと会うのも楽しみだしさー!この話はここまでにして早く行こうぜー!
「……?そうしましょうか。ああ、忘れてました。最近
ミッ゚
「どうしました?変な声を上げて…」
な、ななな、なんでも…ないっすよ?
あはは……。
………いやいや、そんな事ないよな?
そんなとんでも展開は、ねえ?
俺自身がとんでも存在だから否定できない!
大丈夫大丈夫…!
さっさとウォロに案内してもらおう!そうしよう…!
…そう遠くない未来。
忘れた頃に色々とツケが回ってくることを俺はまだ知らない。
あー……はーい!今からヒスイマルマインに自爆特攻しまーす!