目的の場所へとたどり着く。
距離はあったが思ったほど疲れることはなかった。
…昼夜戦場駆け回ってたんだよな。
旅も足を使い、ヒスイ時代も薬草を取るために崖登りとかしていたし。
うん、この程度散歩にしかならんかったよ。
ズイタウン北方面。…カンナギタウンに繋がる道路。
リアルで廃人ロードを歩いた時はなんかこう…込み上げる何かがあった。…ひでんのくすりをコダック達に使ったぐらいの思い出しかないけど。
……霧凄くない?
前方はおろか足元すらマトモに見えないんけど?
「問題ありません。こちらです」
腕を掴まれ誘導される。さっきから足が躓きそうになるし岩にぶつかってんよ。死なないからって痛覚消えてるわけじゃねえからね?
グチグチ吐露してると霧が少しずつ晴れていく。……薄暗い森の中。舗装された道はなく草木を踏みつけできあがったけもの道が奥へと続いていた。
現代に置いては珍しい不便な土地だろう。だが懐かしく感じてしまうなにか、があった。
更に奥地へ進むと開けた場所に出る。
木々の隙間から太陽が覗き照明として役割を果たしている。……森林浴には良さそうだな。
様々なポケモンが日向ぼっこをしている光景を眺めつつポツンと立った庵…を見つめる。
「…相変わらずボロ屋ですが一人増えたところで問題ないでしょう」
紹介先なのにボロクソに言うやんけ。
ウォロは手を離し…テーブルと椅子が置かれている。椅子に座りカップを手に持った女性の前で足を止めた。
「お久しぶりですコギトさん。…まだ息災の様でして」
「そういうお主も息災じゃろうて。…客人か。……ほう……これはこれは…噂には聞いておったが…中々の色男ではないか」
黒い帽子に黒いドレス。
銀髪銀眼の美少……見える手は傷一つない。白くきめ細やかで…上流階級の貴族を思わせる。
老獪な口調はミステリアスな雰囲気を醸し出している。……建前は終わりにしよう。
美女の座る椅子、肘を付けたテーブル、手に持つティーカップに置かれたティーポット…ソーサー。
……そのどれもが全て
………アンタ……
鋭く美女を…コギトと呼ばれた女性を見る。
「…流石はカロスの英雄……と、言えばいいかのう? 他にもありそうじゃが…感謝するぞ。…お務めを終え…変わらず悠久の時を過ごすのかと思えば楽しみが増えるとは……またヒスイの様に薬師をやるのじゃろう? 仕事場には適さぬが住むのに問題はなかろう」
…邪悪な笑み(当社比)を浮かべ庵へ入っていく…コギトを見送る。
おいこらテメェウォロこの野郎。
……あの女絶対にヤバい奴だろ。
次元が違う。…何もかもが不透明。
…謎という言葉が最も似合う女性。
数百年振りに脳が警笛を鳴らしたぞ。
しかも…あれほどの芸術品。…並の貴族では手に触れただけで腕を切り落とされるかへし折られてたぞ。…比喩じゃなくてガチで…上流階級のみが許される……代物。
王が似たようなものを使っていたが……。
それぐらいに価値があるものだ。
贋作の可能性もあるが……ほぼ間違いなく真作と見ていい。
「まさかコギトさんが許すとは思いませんでした。てっきり追い返されるかと…英雄様々ですね」
……はい?
お前…提供できるとか抜かしといて実はワンチャン狙ってたってことか?
「コギトさんはアナタに対して興味を持っていましたからね。…医者としてもヒスイで知らぬ者はいませんでしたし」
そいや…薬師だってこと知ってたな。
「シンオウ悲恋物語…ありますよね」
…ああ……この先忘れられないぐらいに記憶の奥底にヘドロようにへばりついているよ。
「あれを書いたのはコギトさんです」
……は?……は?は?は?…はぁぁ!?!?
「思う所があったんじゃないですかね。彼女はコギトさんのお務めを果たしてくれた恩人ともいえる存在です。…ジブンもそうでしたしね」
それを言われると…な。
……つまり俺はその黒歴史を世に広めてくれやがりました女性と暮らすってことでOK?
「昔みたいにヒスイ…シンオウ中駆け回って寝る時は此処に帰ればいいだけです。良いじゃないですか見てくれは美女ですよ?」
悪魔のような笑顔で言われても説得力ねえよ!
「ジブンは言葉通り場所を提供しました」
確かにその通りですよねえ!!
…商人より詐欺師の方が向いてるぞ。
「お褒めの言葉として受け取っておきます」
……消えろ。俺からぶっ飛ばされん内に……あーうそうそ! うそでーす! うそだから!!
俺を一人にしないでくれよー頼むよー。
「分かりましたからしがみつかないでください。…アフターとして町の案内ぐらいはしてあげますから」
助かるよ。当然ちゃ当然だけどかなり変わっているからなぁ。……やるにしても場所の把握をしないと仕事はできたもんじゃないし。
うーん……行くとしたら…。
「
…コトブキシティか。うん、そうしよう。
「遠出するなら買ってきて欲しいものがある」
…いつの間に……。
……コギトさんですよね。先程は無礼な行いをしてしまい申し訳ございませんでした。
片膝を地に着けカロス式で敬意を示す。
もう何千年もしてないが何故か……こう、しっくりきた。
「わし相手に膝を着けるでない堅苦しい。呼び名も…コギトで良い。お主と対して歳も変わらぬ。敬語も不要じゃ…それで買ってきて欲しいものがあるんじゃよ」
差し出された紙片を受け取る。
メモ用紙できのみと食材…茶葉。生活必需品が少々。
「では頼んだぞ」
柔らかい笑みを浮かべ庵へと戻っていく。
…分かった。
ウォロ…行こう。…ウォロ?
「……ええ、行きましょうか」
どうした? …驚くような事があったのか?
「コギトさんのあの様な顔を初めて見たので…少し驚きました。…気をつけてください」
……まぁな。
色々と謎な部分が多いし警戒はするさ。
寝込みを襲う様なことはしないだろうし…これでも元兵士。遅れは取らな……ウォロ?
「……ワザとなのか分からなくなりますね。ふふっ…」
憐れみの目線をウォロに送られながら森を出た。…なんでそんな顔をされなきゃいかんのか。含み笑いが怖いんすけど?
コトブキシティまでそれが続いた。
ヤマブキシティには劣るが立派な都会だよな。
シンオウ地方随一の大都市なんだっけか。
……コトブキムラの面影は全くないわな。
小規模だがトレーナーズスクールにテレビ局のテレビコトブキ。…シンオウ地方で付けてない人は基本いない…であろうポケッチを作った会社ポケッチカンパニー。
キャンペーンとやらでイベントに強制参加させられた挙句ポケッチを渡された……いらねえ。…ウォロに押し付けようと思ったらどっか行っちまったし。
頼まれた物は買い終えているから最後にフレンドリィショップできずくすりを買い……。
…ん? 騒がしいな。
奇抜なスーツにオカッパ頭の男女が逃げていく。
あれ…ギンガ団のしたっぱじゃね?
て、ことは……っと……。
「きゃっ」
少女の小さな悲鳴。
ぶつかった。…ヤマブキシティでもよそ見してぶつかった、よな。
しかも聞き覚えがある。…似てるだけだと錯覚したかったりする。
少女は反動で尻もちを着くようなことはなく…身体にしがみつくような形になっていた。
「大丈夫か?」
「大丈夫?」
連れであろう年配の男性、と男の子。
うわぁ…面影があるぅ……。
「すみませ……ぁ… 」
眼下には少女の上目遣い。
白いニット帽から見える黒く長い髪。桃色の暖房着を着込んでいる。
少女は言葉を噤み目を見開く。
……瞳から涙を溢れさせていき次第に決壊。涙は頬を伝い顎へ…首へと止めどなく流れ落ちていく。
こ、これは……どっち、だ?セーフ?…アウト…ですか?
アウトですねぇ!!……ウォロ!!これどうなってんの!?
戸惑うことしかできず辺りを見渡すとウォロを見つけた。…建物の陰に隠れニッコリ笑顔のサムズアップ……お前知ってたよなぁ!?…てかコギトも分かっててやっただろぉ!?
二人が怪訝そうに俺を見てんだけど!?
……
「…っ……ぇぐ…」
胸に顔を押し付けて泣いてんよー? どうすんの?
これどっち!?
誰か俺にじばくかだいばくはつを覚えているポケモンを貸してくれませんか?……お願いだから…。