3000年前?……懐かしいなぁ(遠い目)   作:モカチップ

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第6話

「………………」

 

 …………はは…っ。

 

「ふむ、このまま何時間も黙っていてもいいのだがな。……私は」

 

 うん、ガチで一時間は黙っている。

 時は金なりとか言ってられねえもん…この空間ばかりは沈黙が正解だ。そのまま試験に行って逃げたいです。

 

 てか言葉ではそう言ってても痺れを切らしてますよね?拳をキツく握られてますし背後に鬼が見えてんですけど? 

 

 いやコトブキシティからマサゴタウンのポケモン研究所まで大人しく着いてきた俺が言うのもなんだけど暴力で吐かせる一本手前でしょこれ? 

 

 逃げようと思った。最初は思ったさ…。

 無理だもん…とてもじゃないが引き剥がしてトンズラこけるわけないじゃない。

 

 これでも人の心は待っているつもり…だよ?(?)

 

 よしんば逃げられたとして…ナナカマド博士の先祖譲りの相撲でぶちのめされるかコウキくんが繰り出していたヒコザルに燃やされるの二択。

 

 …いや三択、か…ウォロも逃がす気はなかったみたいでよ。

 リオルにはっけいの構えをさせてスタンバっていたからな。ふざけんな!三人に勝てるわけねえだろ!!いいかげんにしろ!!

 

「これ以上黙っているならヒカリくんの親御さんを呼ばなければならないだろう」

 

 それがイッチャンやばいんよ。……今はヒカリちゃんと呼ばせていただくとして反応から…色々と察せられてはいる。が、親は不味い。

 

 どっちにしても…この時代で俺との接点も関係もないんだ。親目線で見りゃさ? …どこの誰かも知らぬ馬の骨と可愛い娘が関係を持っているかもしれないと思うわけよ。

 

 しかも盛大に泣かせた事前情報付き! 

 初対面初印象がマイナス吹っ切れた史上最低最悪の男だぞ? 

 

 やべぇ…やべぇよ。……実は…ヒスイの時代からの知り合いなんですよー?えへへー! なんて言ってみ? いつ終わるかも分からん生涯を精神病院の隔離病棟で過ごす事になる。

 

 それだけは勘弁願いたい。

 でも…どうしようもなくね? 

 

 ウォロとコギトに嵌められただけぞ? 

 ノコノコとコトブキシティに誘導された挙句に時間の調整にワザと買い物を頼んで綺麗に進んでいったよね。

 

 完全にしてやられた。

 

 意図せぬ再会(再放送)に思考を持っていかれたが…気になる点があるんよ。

 

 …ヒカリちゃんは主人公じゃない。

 連行されてる間にコウキくんと会話したんだ。

 

 意地でも離さんとしがみついたヒカリちゃんを心配そうに見ていたから…後は無言が辛かったから情報収集も兼ねて色々と聞いてみたのが本音。…目が点になった。

 

 幼なじみとナナカマド博士の研究所に行くために草むらに入ろうとした所で調査帰りのナナカマド博士と出会い、ヒコザルを貰いました。

 

 幼なじみが伝説のポケモンを捕まえると言い出し伝説のポケモンがいるシンジ湖にいったら謎の男と会いました、ね。…アカギのことだよな。……で、来たのは良いけどポケモン以外何も持ってなくて何も出来ず…ね。

 

 罰金ボーイは相変わらずだな。

 

 …再度ナナカマド博士に会いに行くことになり……流れでポケモン図鑑を貰って、ヒカリちゃんにポケモンセンターやフレンドリィショップ等の施設の利用方法、ポケモンの捕獲方法を教えてもらった、と。

 

 コトブキシティまで案内してもらい。…国際警察と名乗る変な人とも出会った。…国際警察…か。その後はポケモン図鑑を埋めながらポケモンバトル。

 

 …初めてのバッジを手に入れコトブキシティを通ったらナナカマド博士とヒカリちゃんがギンガ団を名乗る集団に絡まれていて一緒に倒して追い払った。

 

 ……そこに俺がログインして…このザマってわけよね。やっぱログアウトできないとか何処ぞのデスゲームかよ。

 

 コウキくんは本当に驚いたらしい…明るく優しく捕獲方法も丁寧に教えてくれて…頼れるお姉さんのイメージが強く残っていたみたいで。

 

 それが…なぁ……いきなり男にしがみついて泣きだしましたわ、うん。当然の反応なのよ。

 

 ただ、ね。…俺は聞き逃さなかった。

 捕獲の際にポケモンの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って…言っていたことを。

 

 でもポケモンの前で前転とかしてた?って聞いたら…え?前転…? とコウキくん困惑してたんだよね……えー、どっち…? 

 

 うん、分かんねえわ。

 …ヒスイから戻ってきた、もしくは俺と同じ記憶を引き継ぎ転生をしたのか……。

 

 それとも俺の想像つかないことが起きている可能性もあるわけだろう? 

 

 どっちだろうと根元は変わらないけどさぁ。

 

 そうそうコウキくんは次のバッジを求めてハクタイシティを目指していったよ。

 

 餞別にヒカリちゃんをひっつけたままショップに突っ込んだ時に買ったキズぐすりを少々渡しといた。…話をして少しだけ心が穏やかになれたからね。そのお礼として。

 

 そん時に店員のお姉さんに心はキズぐすりでは癒せませんよとガチトーンで言われた時の心のキズは消えなかったけどね、はい。

 

 …だから…もう少しだけ此処にいて欲しかったなぁ……イタッ…。腕に爪を立てられる。

 

 ……ヒカリちゃんだ。

 落ち着きは取り戻している。…顔には涙の跡がくっきりと残っていた。

 

 未だに握り締めている服は伸び切っていて収縮機能は失われている。…顔を埋めていた部分は涙が染み込み湿気帯びて肌に張り付いていた。

 

 しかし…主人公じゃなくて…ナナカマド博士の助手、か。…これってさぁ? 服装からダイパのマイナーチェンジであるプラチナの物語、だろ? 

 

 ……コウキくんに聞いたストーリーの流れから違うんすよねえ。赤いギャラドスを探しに行く下りは消えて早すぎるアカギとの出会いと…国際警察…。

 

 知らねえことが多過ぎるよ。

 ただ国際警察には要注意だ。…一度巻き込まれたことがある。…コードネームはえっと…ハンサムだっけか。

 

 …あん時は新人で若い熱血漢でありながら聡明さを兼ね備えた優秀な刑事だった。顔もハンサムだったしね。

 

 あれから数十年は経っているとして……ハンサムくんは今も刑事として活動してるのかねえ。

 

「……大丈夫かね」

 

「…は、い。…その………彼は…先生、なんです」

 

「先生…だと?」

 

 更に強く服を握り締めるヒカリちゃん。

 ヒカリちゃんは潤ませた瞳で見上げて…目配せをした。

 

 ()()…か。

 ……合わせればいいってことかい。

 

 ヒカリちゃんはたどたどしく言葉を繋げていく。…小さい頃にお世話になったお医者さん、で恩人と。…そう言ってくれた。

 

 ……()()()()()()()()()…なのに…突然目の前から消えた…。ん? …待ってもろていい? 

 後者は分かる…ただ前者には覚えがない。

 

 生きすぎてボケたかなぁ?…そんな事してねえよな?…空気みたいに壁に背を預け後方腕組みしているウォロさんよ? 

 

 ……知らないですよね…?…よね? 

 というかどうやって研究所に入り込んだんだよ。ナナカマド博士も研究員も気づいてないし…実は忍者の末裔だったりします? 

 

 イチョウ商会は悪魔の忍者集団だった? 

 ウォロを筆頭にポケモンバトル強かったし…ガチでそうかもしれん。

 

 ……ほんま笑顔だよな。愉悦が滲み出てるぞウォロくん。

 

「…だから……だから…」

 

「もういい。…私は何も知らなかった。助手をして貰いながらヒカリくんの辛い気持ちに気づけなかったこと…申し訳なく思う。…故に」

 

 カッと目をガン開き睨みあげるナナカマド博士。目で人を殺せる眼力出してるよ…森の中でサザンドラと対峙した時並みに命の危機を感じていますよ。

 

「よく考えることだ。…もし貴様がヒカリくんの思いを踏みにじる様なことをしたら……疲れているだろう。今日はもう家に帰りなさい。……親御さんにも話を通しておく」

 

 ……分かりました。

 もう後に退けないからな…。よく考えたらこれ以外も…あー……ははっ…。

 

「……ありがとうございます、博士」

 

 …俺も一度戻らなきゃいけない。

 ずっと荷物持ちっぱなしだよ。…腕が疲れてきたし……ああ、持ってくれるの? ありがとう…優し…ァ……。

 

「つもる話もあると思いますのでジブンが持って帰っておきますよ。……アフターはここまでです。では、二人ともごゆっくり!」

 

 荷物を全部ひったくりウィンクしながら研究所から出ていくウォロ。……やられたっ…! 

 

 ナナカマド博士は()()()()()?…いやしかし…と顎に手を当て、研究員はウォロが出ていって初めて気づいたようだった。

 

「…ぁ……」

 

 身体からヒカリちゃんの腕が解けていく。

 

 慌てて追いかけ外に出る。

 ……クソッ!いな……。

 

「言い忘れていたことがありました」

 

 うわっ!?…後ろか。

 ……なんだよ。

 

「ヒカリさんは初対面時……名前も知らないジブンに対して……()()()()()、と呼んでくれましたよ」

 

 ん……ということは…。

 結局なんも分かんねえだろよ!! 

 

 ぬか喜びをさせやが…もういねえ! 

 

 …背中が暖かい。後ろから綺麗な両腕が伸びて絡みついていた。

 

「……おいていかないで」

 

 くぐもった彼女の声が振動として身体中を響かせていく。…身体が動かない。…足枷をはめられたかのように…指先一つ、動かせない。

 

 背中を押され初めて動かすことができる。

 ……行先はひとつの民家。押し込まれて…母親、妹を紹介され…流し流され……。

 

 ……ベッドの中。アルコールの臭いと…甘ったるい匂いが混ざり合い頭痛を起こしている。カーテンの隙間から朝日が差し込む。…隣には頭だけだして眠るヒカリちゃん…()()()()()()、ですね。

 

 うん、メンタルケアも仕事の内……。大丈夫…衣類の乱れは…ない、判定で良いはず。

 

 ……俺が上裸になってるだけ。セーフ!…セーフです!………ベッドの外に投げ出されているのは…寝間着…っすかね……? 

 

 とてもファンシーで可愛らしいこと…でして……はい。…チラッと布団を捲り…速攻で被せた。

 

 落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け…大丈夫、何も無かった……! 

 

 ……なにも!!!な‪”‬かった……!! 

 

「…ふぁ……ぁ…」

 

 ショウちゃんが目を覚ます。…数秒を見つめあい顔を真っ赤にさせ…顔を布団に引っ込める。…布団越しから…夢じゃない…ちゃんといる…と涙声が聞こえる。

 

 ……とりま…さぁ。

 ウォロを一度本気でぶん殴りたいです。いやヒスイマルマインを顔面にダンクシュートさせてくれマジで。

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