3000年前?……懐かしいなぁ(遠い目)   作:モカチップ

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第8話

 ピチュー?ピカチュウ?の治療が何故か有名?になって一週間くらい。あのブリーダーが噂を広めてくれたらしい。

 

 …仕事には困らなくなったが一日に十数件の依頼が舞い込んでくるわポケモンセンター協会とやらのお役員まで来やがって散々な日々だったぞ。

 

 その時に知ったが俺が調合した薬の数々はそもそも表に出回ってない代物だったらしく安価で効き目バッチリと協会からすれば喉から手が出るほどの代物だったらしい。

 

 調合書と版権を買わせて欲しい言われたけど別に薬を真似る分には構わないし調合書?そんなの手元にあるわけないだろ。

 

 頭ん中で記憶してるわ。

 ヒスイから出る際にその他諸々置いていったから土に帰ってるか掘り起こされているかのどちらかだろうよ。

 

 挙句には社員にならないかと言われたが断ったしショウちゃんが間に入ってくれた。…ショウちゃんがシンオウの上位トレーナーだからか大人しく引き下がってくれたよ。

 

 その時にショウちゃんから価格変更を提案をされたがこの金額でやるって決めた以上は変更しない。ショウちゃんは渋々と言った形で引き下がってくれました。

 

 ヒスイの頃を超える仕事量に心身共に疲弊し一週間まるまる休業を入れてその1日目。

 

 場所は暗い森の中。ランタンの灯りだけが頼り。

 名はハクタイの森。元は黒曜の原野の…どの辺だ?…記憶だと森林地帯全体か?

 

 ポケモンの生息区域は多少の変化はしている、か。……うん、なんで俺はハクタイの森を散策しているんだろうか。

 

 しかも一人で護衛無し。真夜中の森なんて超危険地帯を歩いているんだろうねえ?トレーナーは誰一人居らんぜ?

 

 もちろん理由があるから行動しているんだ。

 時間帯の問題でショウちゃんはお留守番。流石にマズイ。本当にもう笑えない所まで行ってるし今更ではあるけど!!

 

 その代わりショウちゃんからポケモン貸しますよ!ってカブリアスとかハガネール渡されそうになった時はビビり散らかしました。

 

 明らかに通常個体より逞しいガタイしてはるもん。デカすぎんだろ……俺の言うこと絶対に聞かなくね?ヤケに人懐こい感じはしたけどさ。

 

 特にカブリアス。俺やウォロを軽く越えて王とタメ張れるくらいにタッパがデカイくせにメスだしスキンシップがハグなのは頭がバグるし特性がさめはだのせいで全身擦り傷だらけになったかんな?

 

 離れた場所であーあ…みたいな顔でハガネールが見てたかんな?おん?ショウちゃんは平気だったよ。…もうそんなもんだって諦めている。

 

 私だと思って大切にしてくださいとか言われても常時スリップダメージは勘弁してくれってことなの。屁理屈捏ねてお断りしました。

 

 ……代償がちとなぁ。

 添い寝らしい。…ははは、添い寝で済めば苦労しない。最早帰るよりお泊まりの割合の方が多いからな?

 

 ウォロとコギトは高みの見物で根掘り葉掘り聞いてくるわ暇があればスロットやりに行ってるわで俗世に染まり過ぎだろ。

 

 適応力が高過ぎる。

 流石は古代シンオウ人。でもコギトは…まだ確証がないか。…もしかしたら俺や王よりも遥に……ガチで何者なんだ。

 

 数千年生きてる筈のに…次元が違うと思い知らされる。

 これが杞憂ならいい、勘違いでもいい…勘違いじゃなくとも…問題さえ無ければどうでもいい。様子見しかできねえ。

 

 しかしこの時間帯。野生のポケモンが姿を現すことは基本ないし偶にヤミカラスの鳴き声や視界にムウマがチラつくぐらいだ。

 

 ムウマはゴーストタイプのポケモンで当然だが夜行性。夜中に活動し人間を驚かせては、恐怖心を吸収し自らの栄養素にしている。

 

 立派な栄養補給。しかしタチの悪いムウマは驚かすことが大好きな悪戯好きで心霊耐性が無い者は失神は当たり前で下手すりゃ心配停止まで逝く者もいる。

 

 ある意味傍迷惑なポケモンだ。

 ……ゴーストタイプに寿命の概念がない。俺よりも長生きな奴がいてもおかしくないんだ…が。

 

 人の周りをうろちょろしているムウマ。

 さっきからずっと着いてくんだよなコイツ。

 

 …もしかして生まれたばかりか?だとしたら説明がつく。何をしたら良いのか分からず…とりあえず俺に着いてきているんだろう。

 

 ムウマには群れる習慣がない。けど全てのムウマが群れないわけじゃないからなんとも言えない。どのポケモンにも言えるが個体によってかなり変わってくる。

 

 特にゴーストタイプはマジで専門外なんだよな。治療の概念が無いに等しいし扱いもひっじょーに困る。

 

 最悪無駄に多い生命力を勝手に吸わせりゃ元気になるからなこいつら。過去に弱ったヒトモシに生命力を分け与えたら小規模の爆発が起きたっけか。俺と周辺が焼け野原になったよ。

 

 これを教訓にヒトモシには触れないようにしている。ランプラーやシャンデラもその限りではない。…が生命力欲しさにゴーストタイプが寄ってくることがある。

 

 現に生まれたてのムウマが…コイツは本当に何も知らなそうな顔してんな。おーい!ムウマさんよ。

 

 声をかけると慌てだすムウマ。

 ……もしかしてバレてないとでも思ってたのか?だとしたら可愛い奴だ。

 

 落ち着け。別にとって食うわけじゃない。

 …腹減ってんだろ?なら俺の生命力を食べていいぞ。

 

「…マ?」

 

 マ。別にお前さんに吸われたところで死にゃしな……嬉しそうにひっついたな。…ただ生命力を吸い取られる感覚は未だに慣れん。全身がゾクゾクして変に気分が悪くなんだよな。

 

 頭にひっつき生命力を堪能するムウマ。

 てか立ち往生してる暇はない。とっとと目的地まで行くとしよう。

 

 ……目的といったがそれはギンガ団に関係する。

 ギンガ団のボスのアカギ。彼がギンガ団を結成した理由がハクタイの森に存在する。

 

 なんつうか…その、知っているんだよな。

 アカギの過去を……。

 

 言い方が悪いけど親ガチャ失敗ってところだろう。

 そんな人生の中でも小さな幸せを持っていた。その幸せを……ポケモンを奪われてしまった。

 

 憶測に過ぎないが…ハクタイの森に……。

 この森の洋館に答えはある。

 

 …アカギはまだ若い。

 過去のトラウマにより感情に嫌悪している。…その気持ちはよく分かる。俺だって…感情なんていらないと思ったことくらいはあるさ。

 

 ただ…どうしようもないから諦めて、気付いたらどうでも良くなったし…感情を持っていて良かったと思えた。

 

 だけどアカギは…ディアルガかパルキアを呼び出して操り世界を作り直す一歩手前までいった。その執念は尊敬に値する。…俺とは大違い。

 

 その行動力を良い事に使おうよ!なんて綺麗事を吐くつもりはない。

 ……俺にそんな資格は、ない。

 

 これは善意でも偽善でもない。…ただの贖罪だ。エゴだ。

 王に対する…そう、贖罪だ。…はぁ…ほんと女々しい男だよな俺。

 

 アカギを止めたところで何も変わらない。自分の心が少しだけ軽くなるだけだ。……アカギは王じゃない。………腐ってんなぁ。

 

 アカギが王と重なるんだよなぁ畜生。

 なんなら規模だけは王以上だ。

 

 自分のことが殺したくなるほど嫌になる。

 ……今のここで首吊っても気がついたらベッドの上だろう。

 

 ショウちゃんに怒られ、ウォロにぶん殴られ、コギトには呆れられる。

 ナナカマド博士にはぶん投げられコウキくんだって助走つけて蹴りぐらい入れるだろう。そんで監視付き監禁生活の始まりだ。

 

 ……なんてな。

 死ぬつもりはない。死なないけど…置いていくことはもうしない。

 知ってしまったから…ショウちゃんやウォロの気持ち。みんなからの思いを…。

 

 だからこそギンガ団を止めたら…世界中を回らなきゃな。

 もう会えない人もいるが…まだ会える人も、いる。

 

 それに………王とフラエッテにも一度は会わなければならない。…ケジメをつけるために。…んでさ、いつまで食べてるの?

 

「…マ…マァ♪」

 

 クッソ笑顔ですわね。

 食いたきゃ好きなだけ食べていい。

 

 だけど用件が終わったら帰るからな?ついてくんなよ?

 

「マ〜♪」

 

 分かってんのかこいつ?

 しっかしここが森の洋館、か。廃館と言われるだけあり年季の入った左右対称の館。

 

 ヒスイにはなかったな。

 もりのヨウカンよりも後に建てられているってことよな。なんのためにこんな場所に洋館なんて建てたんだ他に良い場所があっただろうに…。

 

 それよかなんで明かりが付いてたんだ?

 廃館だろ?電気が通ってるとは思えねえけど…。

 

 初めは火の明かりかと思ったが全体的に広がる眩しい光。

 これはどう見ても電気による明かりだ。

 

 どんな仕掛けになっていんだがな。

 警戒した方がいいか?…お邪魔しますと。

 

 扉を開けて中に入る。

 エントランスがお出迎え。

 

 肌寒くなり四方八方から視線を感じる。

 やっぱゴーストタイプの根城と化してるな。

 

「おや、こんな時間に来客とは」

 

 …渋い風貌の老紳士がお出迎え、ね。

 

 しかも廃館にしては綺麗すぎだ。

 外観と内装が一致しない。

 

 あーなるほどなー。

 これ幻覚か幻術だな。

 

 理解してりゃ効果はあってないようなもの。

 ……気づいていないフリをするか。

 

 夜遅くにすみません。道に迷ってしまいまして。

 

「マ〜」

 

 頭から肩に移りコクコクと頷いてくれるムウマ。

 助かるわ。俺一人よりポケモンがいた方が不自然じゃない。

 

「………………」

 

 老紳士は無表情に黙る。

 …足元を見るが影がない。

 

 この老紳士が人ならざるものだと確信できたな。

 

「…フッ…それはお困りでしょう。今夜は当家にお泊まり下さい」

 

 ありがとうございます。良かったなムウマ。

 

「マ♪」

 

 嬉しそうにくるくる回るムウマ。

 ……コイツ意外と頭が回るのかもしれない。

 

「それではどうぞこちらへ」

 

 目の前の階段を指して登っていく老紳士の後に続く。

 階段を1歩、また1歩と登る度に寒気が襲う。枝分かれになった階段の中央には男性の肖像画が飾られている。……っと…目が動いたな。

 

「マ〜」

 

 ムウマは…気づいてないみたいな。

 興味深そうにあちらこちらに視線を向けている。

 

 ゴーストタイプの温床。気に入ればこのまま住み着くだろ。

 

「丁度お食事の用意ができています。是非ご参加ください」

 

 案内されたのは晩餐場。…城にあったダイニングテーブルには劣るがその上には様々な料理と蝋燭。…貴族を思わせる人々が椅子に座り食事を取っていた。…影はない。

 

 言われた通り端っこに座りムウマは頭の上に座る。

 このステーキも幻か…目に見えてはいるが匂いを感じない。

 

 隠れて皿を傾けるが料理は零れることなく皿とドッキングしてやがりますわ。行儀は悪いが指で触れる。…熱は感じず食器のひんやりした感触だけが指を伝っていった。

 

「…マー?」

 

 不思議そうに皿を覗き込むムウマ。

 ……これには気づいているのか。そりゃ同じゴーストタイプだしそうか。

 

「さぁどうぞ。冷めないうちに」

 

 テーブルの奥に座り両肘を付けた老紳士。

 食べる真似をしろってことかよ。…流石に抜けたらバレるよな。

 

 ありがとうございます。いただきます。

 ナイフとフォークを手に取り…幻のステーキを切って食べていく。

 

 うん、食感もねえし味もしねえ。…霞でも食ってる気分だ。てか霞だろ俺は仙人かよ。……パントマイムしてる気分になってくるわ。

 

 …幻で良かったかもな。もし本物ならどんな肉を使ってんのか怖くて仕方ない。

 

 食べる振りをしつつ老紳士の様子を伺う。

 ……この光景が面白いと言わんばかりに口元を歪めている。

 

 こっちがわざわざ付き合ってることも知らずにおめでたい。

 とっとと目的の部屋。テレビのある部屋に行ければそれでいい。

 

 ただ多数に無勢。

 この老紳士がここのボスだと見る。

 

 ならばここで食事を取る人々はその下についている。

 流石に俺とムウマだけじゃ捌ききれないし不老不死擬きとはいえ理由なく生命を吸い取られるのは勘弁願いたいのさ。

 

 次第に人達は食事を取り終えたのか席を立ち部屋から消えていく。

 最後の一人が消えて俺も食べる振りを終えた。

 

 とても美味しかったです。

 

「それは良かった。…部屋に案内致しましょう」

 

 本音は軽い罰ゲームだったよ。あー帰ったら何か食べよ。

 

 老紳士が席を立ち部屋から出ていく。

 両手を合わせ席から立ち上がり後に続いていく。

 

 階段を登って降りて繰り返し両脇に部屋が連なる通路までやってくる。

 ……空間もイカれてるのか。

 

 この部屋のどこかにお目当てのポケモンが潜んでいる。他の階も含めたら相当な数になるな。今すぐ総当りしたいが老紳士が邪魔だ。

 

 不意打ちでもするか?ムウマにシャドーボールを後頭部にぶち当てて貰ったり。ムウマさんよシャドーボール覚えてる?

 

「ゥーマッ」

 

 首を横に振るってこたぁ覚えてないのね。

 そりゃ推定産まれたてのムウマが覚えてるわけないか。

 

 俺が殴ったところですり抜けそうだしなぁ。

 どうしたもんかねえと考えつつ老紳士が消えた突き当たりを左に曲がる。

 

 ……消えた?…と思ったら背後にいる。

 無言で通り抜け再度先導していく。

 

 遊び始めたな。隙を突くなら今がチャンスか?

 

「さぁ参りましょう」

 

 …ええ、行きましょう。

 

「では」

 

 老紳士は歩き出す。

 …変な音と腐臭が漂う。少しずつ老紳士は廊下へ沈んでいき最後にはヘドロを残して消えていく。

 

 ……ヘドロ?これは…。

 …背後から笑い声…。

 

「マ!」

 

 ムウマが警戒する。

 振り返れば奥への両通路から煙が炊き出されていく。

 

 姿を変えていきこっちに向かってくる。

 ……ヘドロの臭いと同じだな。これだけの幻術を使役できるってことはコイツの正体は──

 

「マッ!…ムゥマ!」

 

 ゴースト/どくタイプの──

 

「ガブリアス!ドラゴンダイブ!」

 

 ゲン…!?

 背後からえげつない足音。あっという間に俺を通り過ぎたカブリアスが煙に向けて腕を振り下ろす。

 

 馬鹿みたいな轟音と土煙が舞い…床には大穴が空いていた。

 

「…マ、マァ…」

 

 …う、うわぁ…。

 

 顔を引きつらせるムウマと俺を他所に──

 

「先生!大丈夫ですか!?」

 

 我らがショウちゃんの登場でございます。

 ……なんでここにいるんですかねえ?…聞いてもよろし?

 

「…えっと、その…先生が心配だったので」

 

 あーうん、でもさぁ。夜遅いから危ないしお母さんや妹ちゃんが心配するでしょう?

 

「それは、大丈夫です。お母さんにいったら笑顔で見送られました」

 

 お母様!?幾らショウちゃんが強くても最恐心霊スポット(仮名)に娘を送り込むのはいかんでしょ!?

 

「妹も…少しは声を抑えろと言うだけでしたし」

 

 頬を赤らめ流し目をするショウちゃん。

 ……本当にごめんなさい。今度美味いスイーツご馳走しますのでショウちゃんを煽るのは勘弁してくれませんでしょうか?

 

「それで…このムウマは」

 

 ああ、こいつ?なんかハクタイの森で出会って成行きで一緒にいる感じ?

 

「マァ!」

 

「元気なムウマですね。…あ、ガブリアス」

 

「…グルァ」

 

 ガブリアス…やっぱでかいっすね。

 んで…煙は飛散して…奥には…気絶したゲンガー。

 

 やっぱゲンガーだったのか。…と、とりあえず探すことができるようになったな。

 

「…ロト?」

 

「探すって…確か()()()ですよね?」

 

 そうだよ。森の洋館に住んでいるロトムがギンガ団の今後の鍵を握るからなるはやで確保しときたいんだ。この沢山ある部屋から探すのは骨が折れるけどね。

 

「マー」

 

「ロトロト」

 

「そうなんですね。…その、先生1ついいですか?」

 

 …どうしたのショウちゃん?

 

「…ムウマの隣にいるポケモンってロトム、ですよね?」

 

 ん?ムウマの隣に…?

 …ムウマを見る。

 

「マ?」

 

「ロトロトー」

 

 ……いたァ!?!?

 

 このあと直ぐにロトムを確保した。

 ショウちゃんに捕まえて貰いついでにムウマも捕まえてもらった。

 

 そんでポケモンを持った方が良いとショウちゃんに半ば無理やりムウマを押し付けられたのだ。

 …確かにその通りでゴーストタイプなら大体なんとかなるけど他のポケモンとなれば話が変わってくるしショウちゃんに頼りっぱなしは申し訳ない。

 

 本人は最優先で駆けつけると仰られますが…アフターがね。

 ……別の意味で死ぬかもしれないんですよ。比喩じゃなくてガチで。

 

 取り敢えずロトムは確保できた。

 ガブリアスもありがとう。だけどハグは勘弁。

 

 事も終わったし帰ろうかと思ったけど…ね。ショウちゃんを送ることになるでしょう?…そういう事なんですよ、はい。

 

 …起きたらお母様と妹君に何かご馳走…いや献上しないとな。

 ……布団の中で目を閉じながらそう思った。

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