鉄血のオルフェンズ 鬼と悪魔 作:二重の極み
ガゴォォォォォォォンン
「オラオラオラァ!!どうだ三日月ィ!!」
「うん。上達したね、シノ」
火星の荒野のような不毛な大地。野生動物による激しい生存競争など行える程の自然もない荒れている大地の上で、激しく土煙をかき鳴らし、甲高い金属音の響かせ、走りぬけながら打ち合いをしているある。戦車と作業機械を掛け合わせたかのような車両、
三本足のローラーを駆使しながら地形に合わせて激しい動きをしながら砲等を動かし、目の前の敵目掛けてペイント弾を発射する。
「当たり前だァ!!何回も負けっぱなしじゃいらねえぜ!!」
「じゃあ、こっちも本気で――『シノ、ミカ聞こえるか?悪いが訓練を中止してくれ。』
浅黒い肌と白髪が特徴的な少年――オルガが2人に通信を飛ばしてきた。
「あぁ⁉なんだよオルガ!今良いとこだったんだぞ」
「どうしたの?オルガ。」
『2人共ワリいな、マルバの奴が今日は訓練を中止しろって言ってきたんだよ。』
「なんでマルバの奴が言ってきたことを素直に聞かなきゃならねえんだよ。」
『そう言うなシノ。マルバ曰く、最近ここら辺で地割れが多発してるらしいからな、それにMWが巻き込まれたらたまったもんじゃないってよ。』
「けっ!俺らの命よりMWの修理代が勿体無いからかよ。」
『納得してくれたか?』
「まっ一応な。」
『そうかよ。あぁ、もうひとつあったんだ。2人共、ワリいがユージンとビスケットを呼んで来てくれねえか?』
「いいよ。何処に呼べばいいの?オルガ。」
『社長室に向かうよう伝えてくれ。俺は先に行ってからよ。』
そう言いながらオルガは通信を終了した。
「俺は昭弘をビスケットを呼んで来るよ。シノはユージンをお願い。」
「おう、任せとけ!」
☆☆☆
「まさか、俺達があんなお嬢様の護衛をすることになるとはな。」
そう言うのは、金髪碧眼の少年――ユージンの発言に皆が口には出さずとも同意する。
この食堂に集まった面々、オルガ・ユージン・シノ・ビスケット・昭弘達は数時間前に社長室でマルバに革命の乙女――クーデリア・藍那・バーンスタインの地球までの護衛を言い渡されたのだ。
「でもさ――ガォォォォォォォンン
「「「「「!?」」」」」
「なんだ!?一体何が起きたんだ!?」
突如としてCGS近くに轟いた轟音は皆のいる建物自体を揺さぶり、皆を混乱に落とし入れた。
皆が食堂から勢いのまま飛び出すと、辺り一帯をギャラルホルンのマークが付いたMWが取り囲んでいた。
「ッ!何なんだよ…これ。」
「皆ッー!!」
「ッ⁉ライドか⁉」
「ライド、他の皆は。壱番隊の奴らはどうした?」
「他の皆は無事です。…壱番隊の奴らは敵に――ギャラルホルンの奴らに奇襲をかけるとか言ってどっか行きました。」
「クソッ!!あいつら逃げやがったな!!」
この状況に対する困惑と焦り、そしてギャラルホルンから告げられた言葉が彼らを更に混乱の渦に落とし入れた。
『大人しくクーデリア・藍那・バーンスタインの身柄をこちらに引き渡せ!!さもなければ実力行使にでる。』
端的に言えば、それは脅しだった。
「どうするんだ?オルガ。」
ユージンが声に出して問いかけてくる。他の皆も声には出さず、オルガに問いかける。
「……戦うしかねえな。今あるだけのMWを全部出せ!!おやっさんにあれの準備も急がせろ!!」
オルガは皆に檄を飛ばし、自らも迎撃の準備を進める。
☆☆☆
「なんだってんだよ!クソッ!!」
オルガは悪態をつきながら、皆に指示を飛ばす。
戦闘が始まって約1時間、最初の方こそ阿頼耶識を搭載しているMWを駆るオルガ達が優勢だったが、突如として戦場に現れた鉄の巨人――
「おやっさん。"あれ"はあとどの位で準備できる?」
『最低でも10分はかかるぞ。』
「5分で済まし――
オルガが言い終わろうとした瞬間、MS――グレイズによって放たれた弾丸はオルガが駆るMWの近くを掠めたが、
ゴゴゴゴゴゴゴ
地面に向けて放たれた弾丸の影響か、突如として地割れが発生した。
「ッ⁉ヌウァァァァァァ!!」
オルガは、地割れに巻き込まれた。
☆☆☆
「……ここは……。」
オルガが落ちた先、そこには謎の空間が広がっていた。
周りにあるのは壊れたMWと謎の――CGSの地下に安置されていた"あれ"に少し似ている――大きさだけで言えばオルガが見た中で一番巨大なMSと謎の棺。
(……渡りに船ってやつか。)
オルガは体を引きずりながら目の前にある謎のMSに向けて歩を進めていた。この空間に対する疑問は大量に浮かんだが、それを頭の隅においやる。
(……俺に操縦できるのか?)
目の前のMSは跪ずき、右手の甲を地面に置いている。 全体的に白く、コックピット周りは赤く、ブレードアンテナを黄色で塗り、足元は濃蒼が差し込まれるというカラーリングが特徴的なMSを見ながら感想をこぼす。そのまま、MSに登ろうとすると――
『センサーニ反応アリ。センサーニ反応アリ。コールドスリープヲ解除シマス。』
「ッ⁉」
この空間全体に響き渡るような大きさで機械音声が鳴り響く。そして、オルガの真横にある棺が白い煙をあげながら開いていく。
白い煙の中で、影が動いていた。煙の中にいたのは―女だった。己の体の状態を確かめるように機械的に自分の手足を動かし、一通りの確認が済むと、オルガの方に頭を向ける。
「儂を起こしたのは…おぬしか?」
外見に合わない老人のような話し方をする女――背丈はオルガとさほど変わらず、顔は整っており、髪は黒に近い紫、肌は日に焼かれたオリーブ色、目は蛇のように妖しく光る金色――は長い脚を組み、扇情的なポーズを取りながらオルガに質問を投げかける。
「あぁ…多分な…。」
「なるほどな…。起こしてもらった礼じゃ。何かおぬしの頼みを聞いてやろう。」
「…!? 本当か!?」
「嘘は言わんよ。それで何か頼みはあるかの?」
オルガは迷わずに答える。
「俺を地上に連れて行ってくれ。」
「分かった。その頼み、叶えてやろう。」
女は腰に手を当て、笑いながらその頼みを了承する。
「ではついてこい。コイツを使っておぬしを地上まで送り届ける。」
女はそう言いながらオルガを巨大なMSのコックピットに招く。
「そういや…あんた名前は?」
「儂か?儂の名前は羅刹じゃ。」
「そうか…そんじゃあ、頼んだぜ!羅刹さん!」
「ASW-G-02 アガレス!飛翔する!」
羅刹の檄と共に、かつて英雄に仕えた鬼が解き放たれた。
☆☆☆
轟音が戦場に轟く。金属が岩石を砕く音が、岩が土を掘り返す音が響き渡る。
音の発生源から現れたのは、全身が白く、ところどころに赤・黄・青の色が差し込まれた巨大なMSは緩やかに下降しながらCGS基地に向かう。
基地に着陸したMSのコックピットから現れたのは、浅黒い肌と銀髪を携えた少年――オルガだった。
「皆無事か!?」
「オルガ!大丈夫だったの!?」
「おう、ビスケット。俺はそう簡単には死なねえよ。」
「それもそうだね。アハハ。」
ビスケットと自分の安否を確かめていると、背後から声がかけられる。
「感動の再会を果たしている時に悪いが、オルガ、頼みがある。」
「なんだ?羅刹さん。」
「あのMS。儂が倒しても良いか?」
「!?い…良いのか?」
「寝起きの準備運動みたいなものじゃ。して、答えは?」
「やってくれ!」
その答えを聞き、羅刹がコックピットを閉めようとしたが――
「ちょっと待ってくれ!」
そう言いながらオルガが投げてきたのは、丸めたジャケットだった。
「流石にマッパじゃ格好つかねえだろ。」
「フフッ面白い男じゃ。良いじゃろうこのジャケットは貰っておこう。」
そう言い、渡されたジャケットの袖に腕を通し、そのままコックピットを閉め、アガレスを起動する。
この時代の技術では再現不可能とされる技術――全天周囲モニターに写された戦闘態勢3体のグレイズを見て、羅刹は嗤う。
「そんな枯れ枝のようなMSで儂を倒せると思っておるのか?」
相手を嗤った瞬間、アガレスは急加速し相手が反応できない速度で隊長機相手に距離を詰める。
右肩に装備されている大太刀を両腕で横に寝かせるに構えて腕を振る。
「アッ…ウヴァ」
「やはり枯れ枝……いや、雑草の間違いが…。」
コックピットの部分を横一文字に切断し、パイロットの悲鳴とも認識できないようなうめき声を聞き流し、残りの2機のグレイズを睥睨し、直ぐ様斬りかかろうとするが――
「……ん?」
操縦桿を動かし、アガレスをグレイズ達のいる方向に向けようとしても動かない。
理由は単純、燃料(推進剤)切れだ。
(ヤバいヤバいヤバい。どどどどうする!?)
グレイズ達が何故動かないのかと困惑していると、戦場に爆発音が轟いた――
音の発生源を見ると、純白に金の1対の大角を携えたMS――ASW-G-08 ガンダム・バルバトスが地下格納庫から射出され、弾丸のように両手で握り締めたメイスを振りかぶりながらこちらに迫っていた。
(ッ!?バルバトス……!?何故ここに!?)
羅刹からすれば見知ったMSが(少し装いが変わっているが)こちらに迫ってきている状況、この戦場で一番困惑していた。
『そこの白いMSに乗ってる人、聞こえる?』
『あぁ…聞こえるぞ。』
『どう?動けそう?』
『スマンな…。あんなに息巻いていたのじゃが…燃料を切らしてしまっての。後は頼めるか?』
『うん。任せて。』
そう言い一方的に通信を切った三日月は残りグレイズ相手に向かい、近くにグレイズを破壊して更に追撃を加えようとしたが――
『アイン!撤退だ!』
『…ッ!分かりました!クランク二尉!』
そうして残りグレイズは撤退し、それを見た三日月は追撃を加えようとしたが、羅刹から通信が入る。
『やめておいた方が良いぞ、少年。』
『何で? アイツら、今潰しておいた方が良いと思うけど。』
『…さっきの獅子奮迅の活躍は見せてもらったが、その様子じゃと、もう時期燃料も尽きるのではないか?それこそ彼奴らの思う壺よ。』
『…そうだね。追撃はやめておくよ。』
『ではその旨、オルガ達に伝えて補給の準備をさせておいてくれ。君もコックピットから出たらどうじゃ?周辺の警戒はしていた方が良いじゃろう。』
そう言って、コックピットを開け、羅刹はコックピットから出てきた三日月を見下ろす。
羅刹は苦虫を噛み潰したような顔で言葉を漏らす。
「……アグニカよ、お前が望んだ世界は実現していないようだな。」
眼下に佇む少年を見て、少しばかり落ち込みながら羅刹は……悪鬼は、かつての友が掲げた理想が果たされていないのを確認し、哀しげ表情を浮かべながら補給を待つ。
☆☆☆
補給も終わり、CGSに三日月と共に戻ってきた羅刹はオルガ含む数人に取り囲まれていた。
「まずは礼を言わせてくれ。ホントに助かった。」
「オルガを助けてくれてありがとうございます。え〜と…」
「羅刹だ。せっちゃんでも構わんぞ。」
「ブハッ!せっ、せっちゃん!?」
「おいシノ!失礼だろうが!」
馬鹿みたいなあだ名に堪えられずに吹き出したシノをユージンが諌め、その光景をオルガ達は微妙な表情で眺めていた。
「済まねえ。内はこんなんばっかだからよ。」
「構わんよ。こういう騒がしさは儂も好きだ。」
「そうか…。それなら良い。……あんたに1つ聞きたい事がある。あんた…これからどうするつもりだ?」
オルガの問いに先程まで爆笑していたシノやそれを注意していたユージン、何も言わずに静観していた明弘も羅刹に対して鋭い視線を向けた。
「…願わくば、ここで働かせて欲しいのじゃか…どうかの?」
その申し出を聞いた皆の反応は三者三様。喜ぶ者もいれば、羅刹を警戒する者もいる。
「…俺達は見ての通りガキの集まりだ……。それでも良いのか?」
「問題無いわい、お前達のような子供の面倒を見るのも大人の役目じゃ。儂は、5つの時から戦場を駆け回っておったんじゃ、そのくらいなんとでもないわい。」
オルガはその言葉を聞いて驚き、そして納得したように笑みを浮かべる。
「内に籍を置く以上働いてもらうが…、あんた何ができるんだ?」
「ふむ。事務作業やMSの整備・簡単な怪我の治療くらいならできるぞ。」
その言葉を聞いた皆は驚き、有能な人材が入った事に歓喜した。
「てか、何であんた裸なんだ?」
率直な疑問を発したのは、明弘だった。その言葉を聞いた皆ハッとした様に羅刹の今の装いに目を向ける。
スラッとしたスレンダーな体型。胸は控えめではあるが、代わりに栄養が注がれた安産型のプリ尻、それに連なる様に成長した太腿。そして股間に陰毛を貯えたている。
「まずは儂の服をどうにかせねばな。女用の制服はあるかの?」
「ないな…。下着はお嬢さんから何枚か借りれば問題ないが…服は俺らと同じのを着てもらうが…問題ないか?」
「それに加えてここの案内も頼んだぞ。」
「あぁ、任せてくれ。」
そう言いながら羅刹はオルガ達と共にCGSの建物に向かう。悪魔と鬼が加わった彼らの行き着く先は、一体どこにあるのだろうか。
主人公の機体アガレスについて
本機は厄災戦末期に開発された72機のガンダムフレームの2番目の機体である。
他の1桁ナンバーの機体達(バエルを除く)が汎用性を重視しているのに対し、アガレスは羅刹専用の機体としてチューンされている。
アガレスは大気圏内の飛行に関する試験機であったが飛行をメインとするMAの登場によって羅刹と共に2つ目のガンダムフレームとして配備された。
機体データ
・型式番号 ASW-G-02
・全高約24.5m
・本体重量約50t
武装
アガレス・ブレード:全長約15mのレアアロイ製の大太刀。切れ味が凄く良い。
デザイン
小説版Ξガンダムに酷似しているが、頭部に関してはバエルやバルバトスに近い形状をしている。全体的なフォルムとしてはΞをよりシャープにし、関節部分のアーマや出っ張りを無くして可動範囲を大幅に増やしている。