この箱庭に生ける花々よ   作:プニぷに

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プロローグ 絶望の未来

 四月五日。世界が変わる。

 今日は私の誕生日で、私が住む『可憐王国フラワ』の建国記念祭『桜祭り』の当日だ。

 もちろん『世界が変わる』なんて、かなり大げさかもしれない。でも、嘘とも言い切れないと思う。少なくとも、私は。

 

 何せ今までの私が一つ新しくなるのだ。

 それはきっと、建国に伴ってこの国も。国民のみんなだって感じているはず。

 

 だって今日は普段と違って国中で桜が舞い、人々は薔薇を手に笑顔を咲かせ、家族友人と露店なんかで食事をし、この喜びを分かち合う。『フラワ』に生まれ、育ち、これからもこの平和の喜びを先の世代まで……。

 

 ――そういう素敵な日になるはずだった。

 

「やめ……て」

 

 今、私の眼前に舞っているのは桜の花弁ではなく、血と、肉と、炎。

 人を裂いて咲かせて散らせて笑い、私の敵である『アイン教』は実に楽しそうだ。人々から幸福を奪い、命を奪い、もうおかしくなりそうになる。こんな、こんなことになるなんて。

 

 そう、これは地獄だ。地獄なんだと、私は訳も分からず言葉を発して、ただ何もできずに立っている。

 

「やめて!」

 

 さっきまでの世界が一瞬で変わってしまった。

 祭りを喜び笑っていた人々は恐怖に叫び逃げ惑い、『フラワ』を代表する美しい植物達はもちろん、家々や露店なども燃えて崩れていく。

 

 なんの罪もない人々が、私のせいで殺されていく。

 

「私はここ! 花の界法師(かいほうし)リンは私! あなた達『アイン教』の目的は! 私でしょ!」

 

 私の言葉に、黒装束に身を包んだ敵達が一斉にこちらを向く。

 向いて、奴らはにっこりと笑って近くの人々を傷つけていく。

 まるで探し物を見つけたから、もう探す必要もないとばかりに私を放置する。

 

 もう、言葉ではどうしようもない。無意識に悲しみと後悔が徐々に怒りへと転化していく中、それでも私の意識と肉体はただただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

 まさか、たかが自分一人のせいで……こんな。

 

「…………ッ!」

 

 歯を食いしばり、両手で顔を握りつぶすように掴んで隠す。

 アイツらが許せない。自分が許せない。何もかも許せない。自分の行動、判断が結果として国を、ましてや世界を変えてしまうのだと実感させられる。

 

 そんな力、私には無いと思っていたのに。 

 直後、どこかの神話で語られた話を思い出す。曰く、少女は神から開けるなと言われていた禁忌の箱を、好奇心に負けて開けてしまう。すると中から災厄と不幸が溢れ出し、世界に広がってしまったのだとか。

 

「ア、ハハ。ハハ……ぁぁ、ぁあああああ!!!!」

 

 怒りに任せて叫ぶ。

 この場合、私はどっちなのだろう。開けた罪人か、それとも中に入っていた禁忌そのものか。

 

 徐々に私の薔薇色の瞳が暗く濁り、黒く染まっていくのが分かる。

 もう、何がどうなろうと知った事じゃない。敵を、すべてを滅ぼそう。

 

 全部、私のせいなんだから。

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