『うちはシスイ憑依伝』外伝集   作:EKAWARI

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 ばんははろ、EKAWARIです。
 今回の話は18禁板連載完結の『もしもクーデターも何も起きず夫婦になっていたら』なIFルート派生エンドの一つ、木の葉崩しエンドルートです。
 因みに元の話からびみょーに加筆してます。
 それからどうでも良い話、IFルート・ザ・ストーリーから至る4エンドのうち、このエンディングになる確率は2分の1という高さ設定だったりするんだぜ。
 まあ、何はともあれどうぞ。


IFルートエンド集
『うちはシスイ憑依伝』IF派生・木の葉崩しエンドルート・ザ・ストーリー


 

 

 其れが起こることはわかっていたことではあった。

 原作とは違い、うちは一族はクーデターを起こしておらず、木の葉警務部隊が健在とはいえ、この世界でも大蛇丸が木の葉を抜けて音隠れの里を設立している以上、ナルトがアカデミーを卒業し、中忍試験を受けるその年に、砂と組んで……正確には砂隠れの里の長である四代目風影を殺害し成りすましていた大蛇丸が砂隠れの里を操ってのことだが、共同で木の葉隠れの里を強襲するということは。

 なのに、うちはシスイは其れを前にして己が取るべき行動を見失っていた。

 

 

 

『うちはシスイ憑依伝』IF派生・木の葉崩しエンドルート・ザ・ストーリー。

 

 

 大蛇丸による木の葉崩し事件、それは大蛇丸の経歴が変わらない以上、いずれ起こるとわかっていたことであった。何故なら男には前世の記憶があり、その中にはこの世界の知識もあったからだ。

 けれど、この世界は所謂原作NARUTOの世界とは厳密には異なる世界であり、その歴史についても同じ点も多いとは言え、相違点もある以上全く同じになるとも思ってなかったのもまた事実で、またシスイにとって今生で最大の目的と言えば、妻であるイタチが火影になることではあったが、正直どんな大きな事件があっても大抵のものならイタチならなんとかしてしまえるだろうという思いもあった。

 別に自分なんかが何をしなくても、切欠さえあればイタチなら万民に認められる働きを成すだろうと、まあそれは信頼でもあるが確信でもある。それを思えば寧ろこれほどの大事件は不謹慎ではあるが、男の目的からすれば妻が里人に認められるチャンスとさえ言えた。

 それにシスイは自分が決して強いとはいえない人間であることは知っている。

 だからこそ、裏でイタチが火影になるには邪魔となる人間を機会があれば仕留めるべきだとは思うが、こういう大きな事件を前にして何かをしようというのはおこがましいことだとさえ思っていた。

 そのこと自体は昔からの男の思いである。そんな自分の方針がさほど間違っているとも思えない。だけど、……そう思ってられたのは3年までの話だ。

 今のシスイは、表だって手を出さないと決めていたこと自体は以前と変わらずとはいえ、厳密には以前と同じとは言い難い。

 3年と半年ほど前に、イタチと結婚し、2年半ほど前に三代目火影である猿飛ヒルゼンの薦めによってアカデミーの教師として就任し、そして1年半ほど前に子供も授かった。

 幸せな日々だった。それは間違いなく言える。まさか己が家庭を持ち、妻に愛され子を授かる日々が来るなど昔は夢にも思っても見なかったのだ。おまけに教師として働き始めてからは第一線からも遠離り血の臭いがしない日も珍しくなくなった。

 美しい妻と愛くるしい我が子がいて、学校に行けば子供達が自分などを慕ってくれて、これで幸せでないなんて呼べる筈がない。呼んだら罰が当たる。

 幸せで、幸せすぎて……けれど、だからこそ、男は弱くなった。

 元からシスイは別に強かったというわけではない。二点特化に秀でた力は偏りが酷く、得意とするのは仲間のサポートと奇襲に暗殺といったそういったジャンルばかりだ。敵の攻撃は避けるのが常套手段としてきた身は、火力だけでなく防御力や耐久力に関しても著しく欠けており、格下相手だろうと隙を見せればやられるのは自分のほうだと理解していた。だからこそ、戦場では決して隙を見せず、時には逃げることも辞さず、己の弱点を何よりも意識して行動してきた。

 けれど、違うのだ。本当に拙いのは、男の弱さとはそんな表面的なことではない。

 今自分が行動を起こさないのは、妻の力を信じているから、という信頼が問題なのではない。ただ……殺す術を、戦う術を見失っている、というそれだけだ。すべきことが見えていないから何もしないのだ。

 甘やかな日々は遅効性の毒にも等しく、じわじわとこの身を苛んでいる。

 滑稽な話だと思う。

 大蛇丸の木の葉崩しを知っていながらにして、何1つしていないその理由がそんな臆病な理由などと、これでうちはの手練れだと、瞬身のシスイだと言われているのだからもう笑うしかない。

 イタチを火影にするのは10年以上前に立てた夢だ。けれど具体的に何をするかといえば、何も出来ていないし、していない。だけど、けれど、なら何もしなくていい理由にはならない。

 だから、シスイは己の夢のためではなく、今は己に与えられた役目の為に動こうとそう思った。

 

「みんなこっちだ、一カ所に固まれ。慌てるな、先生達がお前達のことはちゃんと守るから」

 アカデミーに集まった生徒達を一カ所に纏め、他の同僚の先生方と話しつつ、子供達を誘導する。

 そうだ、今の己はアカデミーの一教師だ。ならば、子供達を守ることこそが役目と言えた。アカデミーに通う子たちは将来の忍び候補とはいえ、まだまだ幼い。子供を守ることこそが自分たち大人の役目だった。

「先生ェ、怖いよー」

「うわああああん」

 パニックになった下級生の子供が数人泣き出す。そんな子供達の背中をそっと抱き締めながら、シスイは「大丈夫だ、木の葉の忍びはあんな奴らにやられはしない。今は怖いかもしれないが、すぐに終わるよ。それに、お前達は先生が守るから」そう何度も口にして、泣きじゃくる子供を宥めた。

 そうして何度か誘導が済んで、一段落し、これからどうするのかアカデミーの校舎のすぐ外にある校庭で同僚でもあるうみのイルカと話していたその時、それは現れた。

「……! イルカ先生」

 さっと、隣にいたイルカの腕を掴み、瞬身の術で距離を取る。土煙を上げ、現れたのは1人の砂の上忍らしき男と2人の中忍、そして音隠れの額宛を身につけた男。

「瞬身のシスイだな?」

「本当にアカデミー教師なんぞに成り下がってたとはな」

 どこか下卑たような面持ちで確認を取るように名を呼んできたことから、目的が己であったことを知る。そこで脳裏を掠めたのは以前森乃イビキと飲みに行った時に言われた言葉だった。

 なんでも己の名前は他国のビンゴブックに名を連ねていると、だから気をつけろとそう言われたのだ。流石に同じビンゴブックに名を連ねている木の葉の忍びとしてははたけカカシには及ばないが、それでもそれなりに高額の賞金がかけられているのだという。

 それが此処に来て、裏目に出たか……木の葉警務部隊を出し抜いてこんなところまで出るあたりそれなりにやり手のようだが、しかし狙った場所が狙った場所だ。時間をかければおそらく他の人々が来るだろう。多対一の戦いを苦手としている上に、己が目的である以上逃げ出したほうが良いとは思うが、しかし果たして彼らは素直に自分を追いかけてくれるだろうか? と内心でシスイは問う。

 自分たちの裏には子供達が、率いてはその命がある。人相で人を判断するのはどうかとは思うが、どことなく下卑た気配を感じる彼らが己が逃げた腹いせに同僚や子供達相手に乱暴を振る舞わないなんて保障が一体どこにあるのか。それを思えば、男達の目的が己だとしても逃げるわけにもいかなかった。

 己などの代わりに子供達が傷つけられるなど、それこそシスイには耐えられないからだ。

 だから、覚悟を決めて同僚に向かいシスイは言った。

「イルカ先生、子供達はお願いします」

 正直、多対一の戦いも正面戦も苦手とするジャンルだ、それでもやるしかないだろう。シスイはその黒き瞳を巴模様の刻まれた赤に変えて、目で追えぬ速度で幻術の印を組んだ。

「馬鹿め、幻術対策をしてないと思うのか!」

 馬鹿はお前だ、と内心で呟く。痛みで正気を取り戻すなんて初歩的な幻術返しでなんとかなると思っているのか。得意げな音隠れの男が幻術を破ろうとした其の刹那に、シスイは其の瞳を男に合わせた。

 それを合図に、男の体がドサリと崩れ落ちる。写輪眼の持つ催眠眼の1つである魔幻・枷杭の術だ。

 これはまるで現実のような痛みを相手へと錯覚させる瞳術だ。痛みなどで解ける代物ではない。しかし、落ちるのを確認するより先に、既に動かねば遅過ぎる。

 瞬身の術で一気に相手の背後から近寄り、シスイは相手が反応しきるよりも早く、頸動脈へとクナイを突き立てた。そしてそのまま返す刀で倒れた男に最も近い位置にいた中忍の男にも特攻をかけ、動揺を見せた男と視線を合わせて幻術に突き落とした後、毒を塗ったクナイを心臓目掛けて突き刺した。

 ……これで2人。血しぶきを上げて倒れるその中忍の男の血が自身にかかるよりも早く、シスイは瞬身の術で距離を取る。本当はこの戦法は多用な毒も併用してこその側面があったが、今は手持ちが少ない。

 普通のクナイが5本に毒付きのクナイが2本、起爆札が3枚だ。口寄せ契約で他に武器を所持していないわけではないが、おそらく口寄せする隙を見せたら逆にやられるだろう。なら、切れるカード内でなんとかするしかない。

 10秒と経たず仲間2人がやられたのに腹が立ったのだろう、部下を殺された上忍の男は「調子に乗るな!」そう怒鳴って、そして人形が襲いかかった。

(この男、傀儡使いか)

 複数の人形が一斉に襲う。それをサポートするように残った砂の中忍の男は風遁の術をメインに駆使して、合間に己に仕掛けてくる。けれど人形のスピード自体はさほど早いとは言えず、回避は容易ではあるし、中忍の男の攻撃も自分にとっては大して対処の難しいものとはいえなかったが、それよりも問題は別の所にあった。

 傀儡には仕掛けがあることが基本だ。それも……毒物である可能性が高い。人形の中には原作のサソリが操っていたように広範囲に毒を振りまくやつもいるのだ。自分の背後には子供達の命があるのだ、こんな場所で毒などを撒かれたらたまったもんじゃない。

 何より、回避は得意だし、多少の耐毒訓練は積んでおいた身ではあるが、火力に欠ける自分は一気に敵を殲滅しえる力を持たない。下手な攻撃をして毒が周囲にばらまかれることになったりしたらそれこそ目もあてられないことになる。

 だからこの状態を改善したければ、待つしかないのだ。異変に気付き木の葉警務部隊がやってくるのを。

 そしてその時、シスイはある最悪を目にした。

「シスイ先生ッ!!」

 二対一……実質傀儡も合わせて考えれば複数に襲いかかられているも同然の状態だ。そんなシスイを前に、思わずといった形で1人の子供がアカデミーの校舎から飛び出し己の元へと向かおうとしていた。

 それは以前から自分に懐いてくれていた生徒の1人で。

 チャンスとばかりに敵の上忍の口元にニタリとイヤな笑みが湧く。傀儡の手が凶器も露わに凶悪に歪んで子供の元へと向かう。

 だから、それを見たシスイは……。

 

「………………大丈夫、か」

「シ……スイせんせ……」

 その敵の刃を身に受けた。

 ゴフリと、口元から真っ赤な血を吐き出す。腹に開けられた大穴から血が滴り、それが庇って抱き込んだ子供を赤く染め上げていた。

 ……あの刹那、冷静な思考を欠いたシスイは瞬身の術で傀儡と子供の間に割って入った。そして子供を庇う形で敵の刃を受けた。想定はしていたが、やはり毒を仕込まれていたのだろう。痺れた一瞬の隙をついて、2撃目がシスイの腹部を抉った。しかしこの身には救うべき子供の命がある。むざむざただやられるわけにも行かない、だからシスイは痛みを耐えて、子供を抱きかかえたまま、瞬身の術で一気に距離を離して3撃目からは逃れた。けれど、動いたことによって益々毒が回ったのだろうか、それが限界だった。

 そんなシスイを前に助けられた子供は「シスイ先生ッ!」そう悲痛な叫び声を上げる。

「は、終わりだな、瞬身のシスイ!!」

 そう下卑た男の声が聞こえるが、フラフラとする頭のまま、シスイは子供の頭を安心させようとだろう、撫でてそれから血だらけの青い顔のまま微笑み言った。

「大丈夫……守る、から」

 けれど、そんな風に笑って言うシスイに対して子供はボロボロと泣き出して、立ち上がろうとしているシスイに手を伸ばした。けれど、無情にもシスイはもう振り返りもしなかった。

 ……聞こえるのは知っている足音。木の葉警務部隊だ。ならもうあの子は大丈夫だろうと、散漫な頭のまま男は考える。もう自分の命が保たないのは明白だ。ならば……使う予定はなかったけど、最期の一仕事をしよう。

 シスイはそうそのまま、再び瞬身の術を駆使して、敵の大親玉である砂の上忍の目の前へと現れ、その万華鏡模様へと変えた瞳で、命じた。

「自害しろ」

 気力だけで動いていた。元よりタフなほうではない。だから、己が命じたその結末を見届けるよりも先に、シスイは事切れた。

 

「シスイ先生、しっかりして、ねぇ、先生。イヤだよ、ほら、起きて」

 子供の泣き叫ぶ声が響く、それを聞きながらうちはフガクと彼が率いる警務部隊は敵の襲撃を受けた現場であるアカデミーへと到着した。アカデミーへかけられた襲撃から5分も経っていないことを思えば優秀すぎるほどの迅速さではあったが、しかしそれでも遅かった。

 現場に残されたのは3人の敵の忍びの死体と、地面に倒れたシスイの姿、そしてそれに縋り付いて泣き叫ぶ子供と、その子供の隣で苦い顔をしているアカデミー教師が1人。逃げだそうとしていた敵の中忍については警務部隊が先ほど確保した。

 うちはフガクはゆっくりと娘婿の元へと歩み寄る。濃厚な血の臭いに紛れて毒の匂いも僅かに漂う。其の肌は変色を来している。其の体をそっと表に返して、ポツリとフガクは呟きを漏らした。

「シスイくん……」

 意外にも穏やかな顔を浮かべたまま、それでも其の命は既にもう亡い。

「シスイ……」

 己の隊長の言葉だけで其れを悟ったのだろう、他の警務部隊員もよく知った男の死を前に苦しげにその名を呼んだ。

 それを辛そうな表情で見ながら、うみのイルカは、シスイの死体に縋り付く子供を前にそれを告げた。

「……シスイ先生は死んだんだ」

「イヤ、イヤイヤ、イヤ!! そんなのイヤ」

 認めたくないと顔を横に振りながら子供はいつまでも泣き叫んでいた。

「シスイせんせ……死んじゃヤダ……」

 

 そしてその日、木の葉警務部隊とうちはイタチの働きにより正史よりも被害を出すことはなく大蛇丸による木の葉崩し事件は収束を迎えた。

 しかし後日、慰霊碑に刻まれた殉職した英雄の名の中には、かつて瞬身のシスイと呼ばれたイタチの夫である男の名もあったという。

 幼い子供と若き妻を残して、子供を庇い、戦い死んでいった彼が幸せだったのか否か死者は黙して語らず、其の答えは誰も知らない。

 

 

 了

 

 

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