TS転生ウマ娘、才能が空っぽだったので歴代競走馬の魂を借りて伝説を作る 作:雅媛
7月下旬。
宝塚記念での激闘を終え、ボクたちはトレセン学園恒例の夏合宿へとやってきていた。
場所は海沿いの避暑地。
照りつける太陽、青い海、そして蝉時雨。
厳しいトレーニングの合間に設けられた、「完全休養日」。
ボク、ロールフィヨルテは、寮の鏡の前で硬直していた。
「……これ、本当に大丈夫なのかな?」
鏡に映っているのは、見慣れた自分の肉体だ。
170cmの長身、バスト96、ヒップ100超えの豊満かつ鋼のように鍛え上げられた筋肉の鎧。
だが、問題なのはその肉体を覆っている――いや、覆い隠せていない「布」だった。
黒い、紐。
そう表現するしかない。
「ストリング・ビキニ」と呼ばれるそれは、面積があまりにも少なすぎた。
胸元は僅かな三角形の布で乳房の頂点を隠しているだけで、その重量を支えるのは心許ない極細の紐。
下も同様で、腰骨の位置で紐を結んでいるだけ。動けば際どいラインまで食い込み、少しでもズレれば「大事故」になりかねない代物だ。
『……すごいわね。布の面積と表面積の比率がバグってるわ』
脳内で、アーモンドアイが呆れたように呟く。
(で、でも! これ、アルダンさんが選んでくれたんですよ!?)
事の発端は数日前。
メジロアルダンさんに、ドーベルとの仲直りデートの話をした時だ。
『あら、素敵ですね。それなら、私が特別な水着を用意して差し上げますわ』と、微笑みながらプレゼントしてくれたのがこれだった。
『ロールさんのようなダイナミックな体には、これくらい大胆なカッティングの方が映えますのよ。海外では流行っておりますし、ドーベルちゃんもきっと喜びますわ』
あの清楚で儚げなアルダンさんが言うのだから、間違いないはずだ。彼女がそんな破廉恥な罠を仕掛けるはずがない。
『……ま、あの腹黒令嬢のことだ。面白がってるだけだと思うけどな』
ゴルシがゲラゲラ笑っているが、もう着てしまったものは仕方がない。
ボクはパーカーを羽織り、意を決して部屋を出た。
待ち合わせ場所の浜辺の入り口。
そこには、すでにメジロドーベルが待っていた。
「……遅いわよ、ロール」
彼女は麦わら帽子を被り、白を基調としたフリルのついたワンピースタイプの水着を着ていた。
清楚で、可愛らしい。
彼女のクールな雰囲気と、少女趣味な水着のギャップがたまらない。
「ごめんごめん。ちょっと着替えに手間取って」
「もう……。せっかくの休養日なんだから、時間は有効に使わないと」
ドーベルは少し拗ねたように頬を膨らませたが、すぐにボクの姿を見て首を傾げた。
「……なにその恰好。暑くないの?」
「え? ああ、このパーカー?」
「海に来てまで厚着して……。ほら、早く脱ぎなさいよ。泳ぐんでしょ?」
ドーベルがボクのパーカーの裾を掴み、強引に脱がそうとしてくる。
「ちょ、待ってドーベル! 心の準備が!」
「往生際が悪いわね! ……えいっ!」
スポンッ。
抵抗むなしく、パーカーが剥ぎ取られた。
真夏の太陽の下、ボクの「紐水着姿」が白日の下に晒される。
「……え?」
ドーベルの動きが止まった。
彼女の瞳が点になり、視線がボクの胸元、くびれ、そして際どい腰回りへと移動していく。
そして、顔が一瞬で沸騰したやかんのように真っ赤に染まった。
「な、ななな、なっ……!?」
「……ど、どうかな? アルダンさんが選んでくれたんだけど」
ボクが恥ずかしそうに尋ねると、ドーベルはパクパクと口を開閉させ、悲鳴のような声を上げた。
「ば、バカじゃないの!? なによその紐!? ていうか、は、はみ出てる! いろいろ溢れそうになってるじゃない!」
「えっ、嘘!?」
「嘘じゃないわよ! アルダンさん、何考えてんのよ……!」
ドーベルは慌てて自分のパレオを広げ、ボクの体を隠そうとした。
だが、時すでに遅し。
周囲の海水浴客(一般人や他のウマ娘たち)の視線が、一斉にボクに突き刺さっていた。
「おい見ろよ、すげぇ体……」
「あの筋肉、芸術品か?」
「ていうか水着エッッッ!」
ざわめきが広がる。
ボクの鍛え上げられた肉体と、それをギリギリで繋ぎ止める黒い紐のコントラストは、あまりにも刺激が強すぎたようだ。
「……見ないで! こっち見ないでよ!」
ドーベルが涙目になってボクの前に立ちふさがる。
可愛い。
ボクは彼女の背中を抱きしめた。
「ドーベル、守ってくれるの?」
「当たり前でしょ! ……アンタは私のなんだから、他の奴らに1ミリだって見せたくないのよ!」
彼女の独占欲が心地よい。
ボクたちは周囲の視線から逃げるように、波打ち際へと向かった。
だが、海に入ってからも受難は続いた。
というか、ここからが本番だった。
「ひゃっ!?」
少し高めの波が来た瞬間、ボクは足を取られてバランスを崩した。
ドサッ!
水しぶきを上げて転倒する。
その拍子に、水の抵抗を受けた極小のブラトップが、あわやという位置までズレた。
「ロール! 大丈夫!?」
ドーベルが駆け寄ってきて、ボクを抱き起こそうとする。
その瞬間。
ボクの豊かな胸部が、重力と遠心力に従って、ドーベルの顔面にムギュッと押し付けられた。
「むぐっ!?」
「あ、ごめんドーベル!」
慌てて離れようとするが、足元がぬかるんでいて上手くいかない。
むしろ、もがけばもがくほど、濡れた肌と肌が密着し、擦れ合う。
紐水着の露出度の高さが仇となり、ほぼ素肌同士が絡み合っているような状態だ。
ドーベルの白い肌の感触。柔らかい肢体。
それがダイレクトに伝わってくる。
「んっ……ロール、近い……!」
「ご、ごめん! 紐が! 紐が解けそう!」
「動かないで! 私が直すから!」
ドーベルは顔を真っ赤にしながら、水中でボクの腰紐を結び直してくれた。
その指先が、ボクの太ももの付け根や、下腹部に触れる。
わざとではない。事故だ。
だが、その背徳的なシチュエーションに、ボクの体温は急上昇していた。
「……ふぅ。これでよし」
「ありがとう、助かったよ」
「もう……。本当に手がかかるんだから」
ドーベルは呆れたように言ったが、その瞳は潤んでいて、どこか熱っぽかった。
彼女もまた、この過剰なスキンシップに当てられているようだ。
「ねえ、ロール。……あっちに行こ」
彼女が指差したのは、岩場に隠れた人気のない入江だった。
人目を避けるため。
そして、二人きりになるため。
岩場の陰は、静かだった。
波の音だけが響く、天然の個室。
ボクたちは砂浜にレジャーシートを敷き、並んで座った。
「……背中、サンオイル塗ってくれる?」
ドーベルが、上目遣いでオイルのボトルを差し出してきた。
ボクはゴクリと喉を鳴らし、それを受け取った。
「いいよ。……失礼するね」
彼女の白い背中にオイルを垂らす。
手のひらで伸ばすと、滑らかな肌の感触が伝わってくる。
ティアラ三冠を制した彼女の筋肉は、しなやかで美しい。
肩甲骨のライン、くびれの曲線。
指先でなぞるたびに、ドーベルがビクッと反応する。
「ん……くすぐったい」
「ごめん。……でも、すごく綺麗だよ」
「……お世辞はいらないわ」
「お世辞じゃない。……世界で一番、魅力的な体だ」
ボクは本心からそう告げた。
ドーベルは耳まで赤くして、ボクの方へ振り返った。
「……アンタも。塗ってあげる」
今度は彼女の番だ。
ドーベルは手にたっぷりとオイルを取り、ボクの体に触れてきた。
紐水着のおかげで、塗る面積は広大だ。
大胸筋、腹直筋、そして太もも。
彼女の手は、マッサージするように、愛おしむように、ボクの筋肉の溝を這う。
「……やっぱり、凄い体」
ドーベルの吐息が熱い。
「春の間……アンタが苦しんで、削ぎ落として、また作り直した体。……全部、私のものなのよね」
「ああ。全部、君のものだ」
彼女の指が、際どい腰紐のラインをなぞる。
ゾクゾクとした感覚が背筋を駆け上がる。
「ねえ、ロール。……甘えさせて」
ドーベルが、ボクの首に腕を回し、その身を預けてきた。
紐水着でほぼ裸同然のボクの胸に、彼女の水着越しの柔らかい胸が押し付けられる。
「最近、ずっと張り詰めてたから。……今日は、アンタの匂いを嗅いで、体温を感じて……トロトロになるまで甘やかされたいの」
普段はクールで、しっかり者の彼女が、こんな風に無防備に甘えてくる。
その破壊力に、ボクの理性はあっさりと白旗を上げた。
「……いいよ。今日はとことん、ダメにしてあげる」
ボクは彼女を抱きしめ、砂浜に押し倒すようにしてキスをした。
太陽の下での口づけ。
オイルのココナッツの香りと、潮の香り。そして彼女自身の甘い匂い。
「んんっ……ロール……」
ドーベルが舌を絡めてくる。
人目がないことをいいことに、ボクたちは貪るように求め合った。
ボクの手が彼女の太ももを撫で、彼女の手がボクの背中を引っ掻く。
紐水着の心許なさが、逆に興奮を煽る。
肌と肌の間に、余計なものは何もない。
「好き……大好きよ、ロール」
「ボクもだ、ドーベル。……愛してる」
波音が、二人の甘い囁きと、水音をかき消してくれた。
春の連敗の苦しみも、世間の喧騒も、今は遠い世界のことだ。
ここには、ただ愛し合う二人のウマ娘がいるだけ。
ボクは彼女を抱きしめながら、この幸せな時間が永遠に続けばいいと願った。
夕暮れ時。
ボクたちは手を繋いで寮へと戻った。
結局、海にはほとんど入らず、岩陰でイチャイチャしていただけだったが、心身ともに満たされていた。
ドーベルの顔は、朝よりも血色が良く、憑き物が落ちたように穏やかだった。
「……楽しかったわね」
「うん。最高の休日だったよ」
ボクが答えると、ドーベルは恥ずかしそうに、でも嬉しそうに微笑んだ。
「その水着……最初は驚いたけど」
「うん」
「……脱がせやすくて、よかったかも」
爆弾発言を落とし、彼女は顔を真っ赤にして走り出した。
「ちょ、ドーベル!?」
ボクが慌てて追いかけようとすると、宿舎の入り口で、優雅に日傘を差したウマ娘とすれ違った。
メジロアルダンさんだ。
彼女はボクの姿――パーカーの下からチラ見えする紐水着と、首筋に残るドーベルのキスマークを見て、扇子で口元を隠し、ふふっと笑った。
「あらあら。……ぴったりだったようですわね?」
その瞳は、すべてを計算づくで楽しんでいる策士のものだった。
ボクは悟った。
この人は、間違いなく「分かって」やっていたのだ。
(……敵わないなぁ、メジロのお嬢様方には)
ボクは苦笑しながら、愛しい恋人の背中を追いかけた。
ラモーヌ「裸でいいんじゃない?」
アルダン「姉さん、それやってルドルフさんにドン引きされてたじゃないですか」
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