虹ヶ咲学園(共学)の御手洗君 作:どこかのSさん
翌日、朝のランニングを終えて家に戻るとキッチンから調理をする音が聞こえてくる。いつも通りならランニングから帰ってきた後に弁当を作り始めるのだが……珍しい事もあるものだと廊下からキッチンへ顔を覗かせる
「あっ、兄ちゃん。おかえりなさい」
「
「あはは、いっつも兄さんにお弁当作ってもらっちゃってるから、たまには僕がと思ってさ」
「気をつかう必要なんざねぇのに、大変なんだろ? 部活」
「確かに大変だけど、僕はマネージャーみたいな立場だから」
キッチンを使って料理をしていたのは弟の御手洗実宙、今年から高校一年生で俺の通ってるニジガクと同じように何年か前に共学になったらしい東雲学院に通っている
ひょんな事からスクールアイドル部でマネージャーをすることになり中々に大変だがやりがいがあると晩飯の時に話してたのを覚えてる
「あっそうだ兄ちゃん、これ、一つどうぞ」
「レモンのはちみつ漬けか……うん、疲れた身体に染みわたるわ」
「よかった、それじゃシャワー浴びてくれば? 兄ちゃんの分のお弁当も僕が作っとくから」
「……それじゃ、その言葉に甘えさせてもらうわ」
ホントに、俺とは似ても似つかぬ良い弟だよ、お前は
そんな心温まる兄と弟のやり取りから時は流れてお昼ごろ、弟お手製の弁当を中庭で食べるために移動していると見慣れた人影が俺の前を通り過ぎ──―てから戻ってきた
「紘陸先輩! 丁度いいところに!」
「中須さん、相変わらず元気だね……と言うか、手に持ってるソレって」
「はい! いじわる生徒会長から取り返してきました! さぁ先輩! 一緒に部室を取り戻しに行きますよー!」
「いや、中須さん、俺これから飯を────って、力強っ!?」
と、言うことがありあれよあれよと部室棟まで同行する羽目になったわけだが────
「わ、私たちの部室が……」
旧スクールアイドル同好会の部室であった場所は、別の部活……ワンダーフォーゲル同好会の部室に変わってしまっていた
「ワンダーフォーゲル部、復活したのか?」
「そこですか!? と言うか先輩はなんでそんなに冷静なんですか!?」
「いやだって廃部になったんだからそりゃ部室も他に回されるでしょ」
「そうですけど! そうなんですけど!」
まぁその何とも言えぬ感情をどこにぶつければいいのかわからないという気持ちは分からなくもない
そんな事を思っていると、背後からローファーの足音が聞こえてくる……そういや中須さん、いじわる生徒会長から取り返してとか言ってたっけ
「普通科一年、中須かすみさん。何を言いたいかは……わかっていますよね?」
中須さんの背後に立った菜々ちゃんは、あんま聞いたことのない底冷えするような声で……中須さんにそう告げた
とまぁ、そんなハプニングもあった所為で昼食を碌に食えなかったわけだが
「あのいじわる生徒会長っ」
「怖かったね。でも、生徒会室に忍び込んだりするからだよ」
何故か現在進行形で食堂の一角に座り、残りの弁当を食していた。対面に座っているのは中須さんとついさっき合流した同好会メンバーの一人、桜坂しずくさん
気の立った猫のようになっている中須さんの頭を桜坂さんが撫でている風景を見ながら、弟の作った弁当を堪能する
「部室、なくなったんだ……」
「もともとあの部室が割り当てられるための規定人数に達した部活はいくつもあるからね……一つが開いたら、すぐ埋まる、そんなもんだよ」
「御手洗先輩は、知ってたんですね」
「まぁ、せつ菜の意見を聞いたうえで廃部を生徒会長に進言したのは俺だし……そうなるだろうなとは思ってたよ」
「紘陸先輩が廃部にするよう言ったんですか!?」
「……やっべ、口滑らせた」
「つまり紘陸先輩も……敵ッ!」
わかった途端にガルルルルとこっちに敵愾心を露わにしている中須さんは横に置きつつ、桜坂さんがこっちに視線を向ける
「先輩、どうして廃部を進言したんですか?」
「……俺はせつ菜の意見を尊重しただけ、スクールアイドルをやりたいって言う彼女の背中を押したのは俺だし、申し訳ないとは思ってるけど、そこに関してはせつ菜最優先で決めさせてもらった」
「でも、一言くらい相談して欲しかったです」
「そこに関しては何を言うつもりもないよ。俺は君らから恨まれても仕方ないと思ってるし、君らからの非難に対して何か反論するつもりもない」
結局のところ、この結論を出したのは俺なわけだし……始める時にせつ菜の背中を押したのが俺だとすれば、辞める時に彼女の背中を押したのも俺である……誰がなんと言おうと、俺の中ではそういう認識だ
「むむむぅ……こうなったら徹底抗戦だよ、しず子!」
「へっ?」
「会長の横暴を許すなー! って生徒会室の前でデモだよデモ!」
「あはは、気持ちはわかるけど……せつ菜さんには何か言ったの?」
「ぁっ……い、言うわけないじゃん。そもそも部室以外で会ったことなかったし」
「そうだね……御手洗先輩、せつ菜さんともう一度話をする場を設けられませんか?」
「難しいと思うよ、せつ菜も何かと忙しいし……本人の意思だって固い」
「そう、ですよね……」
と、ここまで言ったタイミングでこちらに歩いてくる人影が一つ
「あっ、御手洗くん。その節はどうも」
「小山さんか、気にしないでいいよ。裏方仕事くらい声かけてくれれば手伝うから」
「じゃあ、その時はまた声をかけさせてもらうね……しずく、行こ?」
「はい。ごめんなさい、演劇部の稽古に行かなくちゃ……かすみさん、後で連絡するね?」
「えっ、あっ、ちょっと!」
まぁ桜坂さんは演劇部と同好会を兼任していた人だから、同好会がなくなった以上演劇部の方に労を割くのは当たり前っちゃ当たり前か
「ごちそうさまでした、流石は実宙。しっかりとした味付けの中にも優しさがあった……そんじゃ中須さん、俺もこれで」
「えっ!? 紘陸先輩も行っちゃうんですか!?」
「まぁ、弁当食べ終わったし」
と言って弁当を片付けてから、席を立ってその場から移動しようとした瞬間、ガシリと中須さんが俺の腕を掴む
「……離して欲しいんだけど」
「紘陸先輩、せつ菜先輩最優先で廃部を決めたって言いましたよね?」
「……言ったね」
「でも、その様子だと……私たちにも負い目を感じてますよね?」
「……まぁね」
「……なら、協力してください」
負い目を感じてると言われたら、流石に断る選択は出来ないよなぁ……
「さぁ、作戦会議ですよ! 先輩!」
「……はぁ、作戦会議って言ったって、何をするの?」
「そりゃあ勿論、同好会存続に向けた作戦会議ですよ! しず子は薄情だし、彼方先輩もエマ先輩も連絡つかないし……だから、私たち二人で作戦会議をするんです!」
この子、俺の事を敵認定してなかったっけ?
「まぁいいか。それで、同好会存続だっけ? それなら中須さんが改めて作り直せばいいんじゃない?」
「やっぱりそうですよね!」
「うん、一度廃部になった部活は再度作り直してはならないとは書いてないし、それに同好会だし」
同じ好きを持った人たちの集団が同好会だ、それに部活の種類だけなら山のようにあるのがこの虹ヶ咲でもあるわけだし、正規の手続きを踏んで再設立すれば菜々ちゃんだって文句は言わない
「よっし、それじゃあやりますよ紘陸先輩! 一緒にかわいい溢れるかすみんワンダーランドを作り上げましょう!」
「えっ? 俺は入らないよ?」
「……へっ?」
「いや、そりゃそうでしょう。確かに負い目はあるし協力もするけど、所属するとは言ってないからね」
中須さん含めて同好会のメンバーには負い目もあるし、責任だって感じてる、彼女たちから罵詈雑言を浴びせられるとしても俺はそれを甘んじて受け入れるつもりではある
けど、同好会を再設立するとなれば話は別だ、最初の一歩である部員集めは中須さんがしないといけないものだと思ってるし、俺が所属した所で何かできるってわけでもない
「でも、スクールアイドルってどうやってなるんだろう?」
「スクールって言うくらいだから、部に入らないとダメなんだろうけど……」
少し後ろからそんな会話が聞こえてきた
「ほら、中須さん、ピンポイントでスクールアイドル志望の子が…………って、いないし」
後ろを振り向くと、中須さんは少し前に見たような二人組の元へと駆け寄っていた
「せんぱーい♡スクールアイドルにご興味あるんですかぁ?」
一見すると怪しげなセールスにしか見えないが内容が内容だ、そんな中須さんの出現に対して二人組は目を丸くしていた
「中須後輩、一見すると怪しげなセールスにしか見えないぞ」
「誰が怪しげなセールスですか!? どこからどう見てもかわいいかすみんによる同好会勧誘でしたよね!?」
「あっ、貴方あの時の────」
中須さんが声をかけた二人組のうちの片方、黒髪ツインテールの高咲侑さんが俺の方を見てそんな言葉を漏らす…………成る程、確かにこの二人なら納得感があるな
「少し前ぶりだね、高咲侑さん、それに上原歩夢さん」
「えっ?」
「どうして私たちの名前を…………」
「生徒会長たるもの、当然全校生徒の名前は憶えているもの……ってね」
「その言葉……」
「改めて自己紹介をさせて貰おうか、虹ヶ咲学園情報処理学科三年、御手洗紘陸です」
「た、高咲侑です」
「上原歩夢……です」
「あの、御手洗さんってもしかして」
「うん、菜々ちゃ────中川さんの前の生徒会長だよ」
こっちがそう説明をすると、高咲さんと上原さんの二人は納得したような表情を浮かべる
「まぁ、俺の事はひとまず置いといて……いつまでも立ってるのはアレだし、一旦座ろっか」
説明をするにしても、ひとまず腰を落ち着かせてからの方がいいだろう
二人と遭遇した場所から少しだけ移動して、全員が一息ついた所で中須さんが立ち上がって高咲さんと上原さんの前に出る
「改めまして、スクールアイドル同好会二代目部長のかすみんこと、中須かすみでーす♡」
「スクールアイドル同好会……っ! アタシ、高咲侑です!」
「上原歩夢です……でも、同好会って廃部になったんじゃ……」
「諦めなければ同好会は永遠に続くのですっ!」
「校則的にも、人数が集まれば一度廃部になっても再設立するのは問題ないよ」
と、軽い補足を入れている間に中須さんは自分のスクールバッグからコッペパンを二つ取り出して、高咲さんと上原さんに差し出す
「お近づきの印に、どうぞ」
「いいの?」
「はい!」
「いただきます!」
二人揃って手渡されたコッペパンを食べたわけだが、相も変わらず味は好評らしい
「おいしいっ、これ、あそこのお店の?」
「ちっちっち、このパンはかすみんの手作りですよ」
「へぇ! 流石スクールアイドル! こんなに可愛くて料理まで出来るんだっ」
スクールアイドルと料理にそこまで関連性はないと……いや、料理系スクールアイドルとか探せばいそうだな、それこそ調理系の高校とかでスクールアイドルをやってる場合は料理系スクールアイドルとして分類されるのか
「──じゃあ先輩方、そんな可愛いかすみんとスクールアイドルになりませんか?」
「えっ?」
「大丈夫かな……」
と、気づいたら中須さんが二人を勧誘する所まで辿り着いていた。しかし、二人にとっては初めての経験なわけで少し躊躇しているらしい
「大丈夫です! 信じてください! かすみん、最強にかわいいスクールアイドル同好会にしてみせますから!」
「! かわいい……だったら、やろうかな」
「入部決定ですねっ」
中須さんのセールストークはどうやら上原さんの方に刺さったらしい
「あっ、ちなみにアタシはアイドル志望って訳じゃないんだ、歩夢を応援したくて」
「それって、専属マネージャーって事ですか?」
「ん? そうなのかな?」
「ズルいですっ、それならかすみんのサポートもしてください」
「えっ!?」
「スクールアイドルとしては、かすみんが先輩ですからね、部長には絶対服従ですよ♪」
成る程、中須さんが部長になると同好会は彼女の独裁による統治を受ける事になるのか
「わかったよ、中須さん」
「もっと気軽に呼んでくださいよぅ」
「じゃあ、かすかすだね」
「ッ!?」
あぁ、やっぱそうなるんだ
「かすかすじゃなくてかすみんですッ!!」
「中須かすみだから、かすかすかなって……」
「もう、二度も言わないでくださいっ、かすかすって散々アピールしてるんですからそれでお願いしますよぅ」
「まぁ呼び方は色々出しいいんじゃない? かすかすでも」
「紘陸先輩まで! ていうか先輩はわかっていってますよね!?」
「当然」
つつくといい反応するからね、中須さんは
「もうっ、いいです。紘陸先輩は言っても直しませんし……こほんっ、それじゃあ早速同好会を始めますよ、付いてきてくださーい!」
と、そんな彼女の案内で練習場所探しの旅に出かけたわけなのだが……最初の広場ではお爺さんお婆さんがゲートボールをやっていてそれに付き合ったり、二件目は工事中でとても練習できるような場所ではなかったり、三件目は────
「おにいちゃん、こっちー!」
「おー、待てー!」
「わーっ」
子供たちが遊んでた結果、その遊び相手になったりと運が悪いのか何なのか
「ここも無理ですねぇ……」
「なんで、わざわざ学園の外に?」
「かすみんは生徒会に睨まれてますから、校内での活動は厳しいのです……」
「半分……七割くらい自業自得だけどね」
「紘陸先輩は変な茶々入れないでください」
「おっと、こりゃ失敬」
「おにいちゃーんっ!」
軽く足を止めて茶々を入れていたら遊び相手になっていたお子さんからお呼びがかかる。そうして散々遊び相手になった後でようやく高咲さんが思いついた場所に移動をすることができた
「おー! 広いですー!」
「ここなら、迷惑にならないでしょ。どうかな?」
「ばっちりですっ、ここにしましょう」
という訳で辿り着いたのは海岸沿いにある大き目の公園。活動拠点はここに決まったらしい
無事に活動拠点も決まったという訳で次に何をするのかと俺が考えるよりも先に、中須さんは自分のスクールバッグからとあるものを取り出してその上に置く
「じゃーん!」
「あれ? このネームプレートって……」
「かすみんが生徒会から取り戻してきました……無断で」
「一応、一世代前の生徒会長がここにいるんだけど?」
「紘陸先輩なら許してくれますよねっ♪」
「はっはっはっ、そうだねー……」
「せ、先輩? なんで頭を掴むんで────あだっ、あだだだだだだ」
余りにもふざけた事を言ってる後輩の頭を掴んで思い切り拳をぐりぐりする
「御手洗先輩と中須さん、仲良いですね」
「まぁ、そこそこ長い? 付き合いだからね」
「あぁ、そっか、先輩も同好会のメンバーでしたっけ」
「うん、と言っても今は違うよ。こうして一緒に居るのは中須さんの手伝い兼監視」
「へぇ……」
「せ、説明はいいのでぐりぐりやめてくださいっ!」
「おっと」
俺が手を止めると中須さんはささっと離れて距離を取る
「まったく、先輩はかすみんの扱いがいつも雑なんですよ」
「やらかす後輩に対する愛の鞭だと認識して欲しいね」
「そこに愛がなきゃ鞭はただの鞭ですッ! …………まぁ、何はともあれ、しばらくはここが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部室ですよっ!」
その言葉と共に中須さんは軽い動きで石造りの台の上にあがる
「ダンスや歌の練習は追々始めるとして、まずは部員をゲットですっ」
「なんで、部員募集からなの?」
「人がいっぱいい居た方が、可愛いかすみんが引き立つからです!」
「あはは……」
「ホントにこの子は……」
「ともかく、手っ取り早く部員を集めるなら……これでしょ!」
「「???」」
「自己紹介動画か」
「紘陸先輩そのとーり! ますはかすみんがお手本を見せるので、見ててくださいっ。それじゃ、カメラお願いしますね」
「はいはい」
中須さんからカメラを受け取って正面に構える
「そんじゃ、録画ボタン押すよー。三、二──―」
一を指で合図してから録画ボタンを押す
「やっほー、みーんなのアイドル、かすみんだよー♪ かすみん、スクールアイドル同好会の部長になったんだけどぉ、そんな大役が務まるかとっても不安、でもぉ、応援してくれるみーんなの為に、日本一可愛いスクールアイドル目指して頑張るよっ♡」
とりあえず終わったらしいから録画停止ボタンを押す
「はい、オッケー」
「……は?」
俺の左右に分かれて画面外で見ていた上原さんと高咲さんだったわけだが……上原さんの方からすんごい冷めた声が聞こえた気がする
「ふわぁぁぁっ! スクールアイドルの自己紹介初めて生で見たっ! ときめいたよかすみちゃんッ!」
「えっ!?」
「えへへぇ、侑せんぱーい、さすがぁわかってますねぇ、これを動画サイトに投稿して部員募集をしますっ! 今みたいな感じでお願いしますねっ」
「え? えぇぇぇぇぇっ!? 無理無理無理だよっ、恥ずかしいよぉっ!」
「何が恥ずかしいですか、自己紹介はスクールアイドルの第一歩ですよ」
「目が怖いよかすみちゃん……」
「大丈夫です、かすみん程じゃないですけど、歩夢先輩も十分可愛いですから、張り切っていきましょー!」
その様子を高咲さんと共に眺めていたわけだが……そう言えばまだ鞄の中に入れてたアレ、まだそのままにしてたよな。自己紹介動画を横目に撮り始めた上原さんの様子を横目に見つつ、離れた場所に置いてあった鞄からノートを探す
「あれ、確か入れっぱなしにしてたよな……ってか、さっきから聞こえるアレは一体何なんだ?」
すんごいぴょんぴょん聞こえるんだけど、アレで自己紹介になるのか本当に
「……練習終わったら、飲み物でも奢ってやるか」
そんな練習も終わり、時刻は夕暮れ、自販機で人数分の飲み物を買ってからジョイポリス前のベンチに座っている三人の元に戻る
「はい、三人ともお疲れ様」
「あっ、ありがとうございます」
「ありがとうございます、紘陸先輩」
「……あ、ありがとう……ございます」
上原さんは、やっぱりダメージ大きそうだな
「っとそうだ、高咲さん」
「なんですか?」
「はい、これ」
そう言って俺はさっき鞄の中で見つけたノートを高咲さんに差し出す
「ノート?」
「同好会時代の練習メニューをメモったノート、俺はもう使わないから、参考になればと思って」
「いいんですか?」
「もちろん」
「紘陸先輩、やっぱり同好会には入ってくれないんですか?」
中須さんは少しだけシュンとした表情を見せるけど、今のところはもう一度同好会に入る気はない
「ごめんね、中須さん……これからも何か言ってくれたら協力はするから」
そう言ってから、スマホを取り出して今の時間を確認する
「それじゃ、俺は帰るね」
「えっ? もう帰っちゃうんですか?」
「うん、こう見えても高三で色々と忙しいからね……それじゃ」
別れの挨拶だけして、その場から三人と別れた
新スクールアイドル同好会の結成を見た翌日の夕方、いつものように帰り支度をしているとスマホに一件メッセージが入る
「……彼方?」
内容を確認すると、何やら同好会関連で話があるから会えないかとの事だった
「了解、すぐ向かうっと」
幸い帰り支度も終わらせてたし、残りの筆記用具を全部を片付けてから言われた場所まで向かう
教室から出て歩いていると、かすみちゃん以外の三人ともう一人の姿が見えた
「あっ、紘陸くーん、こっちー」
「すまん、待たせたか?」
「ううん、丁度集まった所だよ」
「そか、なら良かった……エマさんは、久々だね」
「うん、あんまり久しぶりって感じはしないけどね」
「そりゃあね……それで、そっちは────」
「朝香果林よ……って、自己紹介しなくてもわかってるか」
「一応生徒会長だったからね……それで、今日集めたのは君って認識で合ってる?」
「えぇ、それじゃあ行きましょうか……優木せつ菜さんに会いに」
そう言った朝加さんは、ゆっくりと、生徒会室へ向けて歩き出した