虹ヶ咲学園(共学)の御手洗君   作:どこかのSさん

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第5話

「あっ、紘陸せんぱーい!」

 

 気持ちいつもより穏やかだなと感じるある日の放課後の部室棟、ノートパソコンを片手に部室へ向けて歩いていると背後から見知った声が聞こえてくる

 

「せつ菜……と中須さん、お疲れ様」

 

「お疲れ様です、紘陸さん」

 

「御手洗先輩? かすみんに気づいてませんでしたね?」

 

「声が聞こえなかったからな、気配察知は流石にまだ修得してない」

 

 足を止めて二人に挨拶をしてから、そのまま三人並んで歩き始める────あれ? 

 

「……せつ菜、さっき俺の事なんて呼んだ?」

 

「はい? えっと、紘陸さんと呼びましたが……ダメ、でしたか」

 

「あぁ、いや、ダメって訳じゃないよ。急でビックリしただけ」

 

「そ、そうですか……良かったです」

 

「むぅー。せつ菜先輩も紘陸先輩もかすみんの事ほったらかしにしてイチャイチャしないでください!」

 

「いッ────!?」

 

「別にいちゃいちゃはしてないだろ。ななな後輩」

 

「もう原型残ってないじゃないですか!? かすみんですよ!」

 

「はいはい。ほら、さっさと部室行くか」

 

 未だ顔を赤くしてるせつ菜と未だ少しむくれている中須さんにそう言って一足先に歩き始めた

 

「あっ、待ってください!」

 

「ちょ、ちょっと! 置いていかないでくださいよー!」

 

 歩き始めてからそこまで距離が離れていなかったこともあり、改めて三人で部室へと向かう

 

「そう言えば紘陸先輩、そのノートパソコン何ですか?」

 

「あぁ、これ? 作業用に家から持ってきた」

 

「作業用って……あぁ、この前言ってたMV作業用の」

 

「その通り、完成にはしばらくかかりそうだけど」

 

「かすみんのはとびっきり可愛いのでお願いしますよ?」

 

「私のはとびっきりカッコよく! お願いします!」

 

「はいはい、まぁ試作版が出来たら一旦見せるからブラッシュアップは協力お願いね」

 

 そんな話をしながら歩いているともうすぐ部室だ、少しだけ歩く速度を落として二人が前に出るよう調整をすると、二人は自然と前を歩いて部室のドアを開けた

 

「みなさん、お揃いですね」

 

「よっ、お疲れさん」

 

「遅かったね、二人とも。御手洗先輩も、お疲れ様です」

 

「おう、高咲さんもお疲れさま」

 

 こちらに挨拶の言葉をかけてきた高咲さんに言葉を返しつつ、部室の端の方に置かせてもらっている机にノートパソコンを置いて、電源ケーブルの準備を始める

 

「ふっふっふ」

 

「どうしたの、かすみちゃん?」

 

「ちょっとこれを見てください」

 

 そんな言葉を聞き流しながら電源ケーブルをノートバソコンに接続し準備を終える

 作業を始める前に中須さんが他のメンバーに何を見せたかったのか視線を集まっている方へ向けると、備え付けてあるパソコンの方へ集まって何かしらの動画を確認しているらしい

 

「何見てるんだ?」

 

「前にアップした歩夢の自己紹介動画です」

 

「あぁ、あの時撮ってたやつか」

 

「で、でも、どうしてこれをみんなで?」

 

「実はこれ、最近再生数めちゃめちゃ増えてるんですよ」

 

 そう言われて再生数へ目を凝らしてみると、2095回再生。確かに結構伸びてるな

 

「コメントもたくさん」

 

「あぁ、ホントだ」

 

 天王寺さんの言葉を聞いて、上原さんはさっきまでの恥ずかしそうな表情が一転して嬉しそうなものに変わる……色々と落ち着いてから改めて考えてみて、上原さんは高咲さんの為にスクールアイドルを始めたものだと思っていたが、どうやら思い違いだったらしい

 

「そこで提案なのですが、私たちもプロモーションビデオを作りませんか?」

 

「プロモーションビデオですか?」

 

「はい、自己紹介でも特技でも、自分をアピールできるものを動画にしたいと思います」

 

「へぇ、PVね。面白そうじゃん」

 

「ふむ……」

 

「紘陸さん、ダメ……でしょうか?」

 

 ほとんどのメンバーがノリ気な中で少し考えていたのが表情に出てたらしい、せつ菜が少し不安そうな表情でこっちに目線を向けてきている

 

「いや、ダメって訳じゃないよ。全然良いと思う……橙李に頼んでるみんなの曲も、もう少しかかるみたいだし」

 

「そうですか、良かった」

 

 せつ菜の曲はもう完成していて作業にMVの制作作業に入っているが、中須さんと宮下さんが歌っていたものは本人たちからある程度のリズムと歌詞を受け取った後、橙李に外注してる真っ最中だ

 それに、MV一本作るのに結構時間がかかるし、その間なんの動きもないよりは、それぞれの魅力をアピールできるPVを作って動画をアップするのは良い判断だと思う

 

「と言うか、いちいち俺の事は気にしなくていいよ」

 

「そう言う訳にはいきませんよ、紘陸さんだって同好会の仲間なんですから!」

 

「……あぁ、そう」

 

「あれぇ? 紘陸くん、もしかして照れてる?」

 

「照れてねぇし……」

 

「ホントにぃ? 顔、少し赤いよー」

 

「……そうだ、天王寺さん。この前は急に動画の編集任せちゃってごめんね」

 

「あー、ごかましたー」

 

「うっせ」

 

 横から茶々を入れてきた彼方には短く言葉を返して、この前編集を頼んでしまった動画についての謝罪をする。

 と、言うのもついこの前せつ菜が屋上でやったゲリラライブ。それを映像研究部が撮影していたらしく、再始動から少ししてウチに撮影していた旨と謝罪をしに来てくれた……まぁ突発だったしこの同好会以外にも個人で撮影していた人もいるだろうからと最終的にどうするかはせつ菜に任せた結果、謝罪を受け入れるのと同時に撮影した映像をウチで引き取ったわけだ

 それで、編集をある程度まで進めたタイミングで母さんから店の竜台を頼まれてどうしようかと思ってたタイミングで、部室に来た天王寺さんに残りを任せてしまった形だ

 

「気にしないで、紘陸さんがある程度完成させてたから、私は少し手を加えただけ」

 

「それでもだよ、細々としたところも手直ししてくれたみたいだし」

 

「それは、侑さんからたくさんアイデア貰ったから」

 

「そっか、じゃあ高咲さんにも感謝だね、ありがとう」

 

「気にしないでください、アタシは大したこと言ってませんし」

 

「それでも手伝ってくれたんでしょ?」

 

 中須さんがいつの間にか流していたあの時の動画を眺めつつ、編集を任せてしまった天王寺さんとそこにアイデアを出してくれたらしい高咲さんへお礼を伝えたタイミングで、丁度動画内で流れていた曲が終わった

 

「やっぱりカッコいいね、せつ菜ちゃん」

 

「もう、結構再生されてるんだね」

 

「えぇ、おかげさまで」

 

「かすみちゃんのは?」

 

「かもーん、かすみん!」

 

 上原さんの自己紹介動画、せつ菜のライブ動画が順調に再生数を伸ばしているから次は中須さんの自己紹介動画という訳か

 そんな言葉と共に中須さんは自分の自己紹介動画を再生し、流れ始めたわけだが……うん、やっぱ少しあざとい。まぁ自分の事を可愛く見せるってのも大事な要素な要素だし、それが本人の魅力に繋がってるからいいのか

 

「うんうん、かすみちゃんはやっぱりかわいい! だよね」

 

「さすがセンパイ1わかってくれてますね」

 

 高咲さんみたいに、これこそが中須さんって人もいるわけだし

 

「これで知名度を上げれば、私たちのライブも夢じゃありません!」

 

「みなさんもこのかすみんみたいに、アピール度満点のPVをお願いしますね」

 

 それぞれどんなPVを作ろうかと言う話になりそうだし、話し合いの段階なら俺はひとまずお役御免だろう

 

「そんじゃせつ菜、俺は俺の作業に戻るから。なにかあったら声かけてくれ」

 

「あっ、はい。わかりました」

 

 他のみんなの会話を邪魔しないように、せつ菜にだけそう伝えてから準備を終わらせたノートパソコンを立ち上げてせつ菜のMV制作を始めた

 

 

 

 

 

 話合いを続けている同好会のメンバーの横目に見つつイヤホンでせつ菜の曲を聴き作業を続ける

 こんな感じの方向性で問題ないのか? と言う疑問は頭の中にずっと残ってはいるが……今はまだ基礎の部分、大雑把にどんな感じにするかを決めてから曲の構成に合わせて映像を作っていく

 とはいえ、こういう分野に関しては素人だし、こういった創作関係に特筆した才能を持ってる訳でもない、素人だけど、素人なりに作れる最高のモノを目指して頑張りますか────

 

「──ん?」

 

 と、改めて気合いを入れ直したタイミングで肩を叩かれる。何か用件でもあるのかと肩を叩いた人物の方へ顔を動かすとせつ菜が近くまでやってきていた

 

「何か用事か?」

 

「はい、実はPV作りの一環で服飾同好会まで行くことになったのですが、先輩もご一緒にどうでしょう?」

 

「……それ、俺が着いてっても大丈夫な奴なのか?」

 

「うん、着替え用のブースもあるって果林ちゃんが言ってたから、大丈夫だと思うよ」

 

「成る程……それなら、ご同伴に預からせて貰おうかな」

 

 可能性の話だけど、これ以上続けて煮詰まって作業ストップも怖いし

 

 

 

 

 

 という訳で、やってきました服飾同好会

 実を言うとスクールアイドル同好会設立前からちょくちょくお世話になってる同好会でもあり、せつ菜のステージ衣装に関する相談などで世話になってたりもする

 

「どう? エマさん」

 

 そんな同好会の部室で俺は何をしているのかと言うと、現在借りた衣装を試着しているエマさんの事を高咲さん、天王寺さん、宮下さんと共に待っている最中だ

 

「うん、ぴったりー」

 

 試着室の中からエマさんの返事が聞こえてきてから程なく、カーテンがからりと音を立てて開き、中からクラシカルなメイド服を身に纏ったエマさんが出てきた

 

「「「「おぉー」」」」

 

「お嬢様、お坊ちゃま。おかえりなさいませ……なんて」

 

「ぐぬぬー……かわいい……」

 

 お坊ちゃま呼びに一瞬ドキッとした……慣れない呼ばれ方ってのはなんかこう、違和感が凄いな

 

「他にも試してみてもいい?」

 

「もちろん!」

 

 ぐぬぬってる中須さんは横に置いておいて、もう少し色々な衣装を着てみたいらしいエマさんはその後も、浴衣、チア服、クマの着ぐるみと色々な衣装を試着していく……クマの着ぐるみ? 

 

「……まぁ、似合ってるからいいか」

 

 この表現が正しいのかわからないけど、エマさんの持ってる大自然的な雰囲気とクマの着ぐるみが絶妙にマッチしてる……気もするし

 

「ねぇ、こっちはどうかしら? エマに似合うと思うんだけど」

 

「おっ、流石現役モデル! センス良いーっ!」

 

「ねぇエマさん! 次の衣装に入る前に一緒に写真撮らせて!」

 

「もちろん!」

 

 よっぽどクマの着ぐるみ衣装のエマさんが気に入ったらしい高咲さんがそんなことを言い出し、上原さんとせつ菜も一緒にト立候補何だかんだ全員で写真を撮る流れになりそうだ

 

「そんじゃ、俺が写真撮るからスマホをぉぉぉ?」

 

「なーに言ってるの? 紘陸くんも入るんだよー」

 

「そうですよ! 紘陸さん!」

 

「いや、俺は写真撮るから別に────」

 

「ほーら、早く撮ろ? りなりーはカメラ置いたらここら辺ね?」

 

「うん、わかった」

 

 あれよあれよと話は進み、いつの間にかスマホの用意が準備万端だった天王寺さんが撮影の準備をバッチリ整えて宮下さんの近くまで移動していた

 

「あっ、ねぇ。果林ちゃんも一緒に入ろ?」

 

「えっ? 私はいいわよ……」

 

「えっ、一緒に撮ろうよ」

 

 エマさんの言葉を聞いた朝香さんは少しだけ迷うような表情を見せ、何か言葉を発する……より前に鳴ったにスマホの着信音で会話が遮られる

 鳴ったのは朝香さんのスマホらしく彼女は画面を確認してから改めてエマさんの方へ視線を向けた

 

「悪いけど、行くわね」

 

 あの様子を見ると何かしらの連絡だったようで彼女はスタスタと歩いて服飾同好会の部室を後にした

 

「あっ! みなさん、カメラカメラ!」

 

 全員少なからず朝香さんの事が気になっている様子だったが、カメラのタイマーが後僅かだったことに気づいた中須さんがそう言うと、改めてカメラの方を向き、それと同時にカメラのシャッター音が部室に響いた

 

 

 

 

 

 翌日、他のメンバーは今日も今日とてエマさんのPV撮影の為に出払っている。俺は俺で機能に引き続きMVの作成作業に勤しんでいるわけなのだが今日は部室ではなく食堂で作業をと思ってノートパソコン片手にやってきたのだが、日当たりのいい席で何やら物憂げな表情をしてる朝香さんの姿が目に入った

 

「失礼、相席良いですか?」

 

「えぇ、どうぞ……って、あなた────」

 

「どうも、そんじゃ失礼して」

 

 まさかここに居るとは思わなかったのか朝香さんは驚いたような表情を浮かべているが相席OKは出たわけだし有難く彼女の体面に座らせてもらいノートパソコンを開く

 

「……今日、同好会はいいの?」

 

「俺以外はエマさんのPV撮影の真っ最中。俺は別途仕事があるからそっちには参加しないで作業中」

 

「そう」

 

「それで、朝香さんは少し浮かない顔してたけど悩み事?」

 

「別に、悩みなんてないわよ」

 

「ふーん、それならいいけどさ。俺はてっきりスクールアイドルの事で悩んでるもんだと思ってたんだけど」

 

「見当違いも良いところね」

 

「見当違いだったか……そいつは失礼」

 

 そんなに続くこともない会話のキャッチボールをここで終わらせてもいいが、思えば少し前に結構お節介で色々と引っ張りまわされたことを思い出した……意趣返しって訳でもないが、もう少しだけ会話を続けても良いか

 

「そう言えば、エマさんが少し沈んでたんだけど何か心当たりとかある?」

 

「エマが?」

 

「そ、撮影に移動する前に少し様子を見ただけだけで話した訳じゃないけどね。表情がそんな感じだったから」

 

「……勘違いじゃないの?」

 

「朝香さん程じゃないにしろ、俺だってエマさんとそこそこの付き合いなわけだし。それくらい察せるよ」

 

 こちらの言葉を聞いた朝香さんは少しだけ考えるような表情を浮かべたが……それ以上何を言う訳でもなかった

 

「朝香さんはさ、迷ってるんじゃないの?」

 

「別に迷ってなんかないわ、スクールアイドルならエマに誘われたけど断ったし」

 

「……そっか、けどそう言う割には悩んでるようにも見えるけど」

 

「ただの気のせいよ……と言うかあなた、そんなに絡んでくるキャラだった?」

 

「一時期は思い悩んでウジウジしてただけで、元々お節介な生徒会長で名を知られてた男だよ。だからこうしてお節介にも首を突っ込んでるわけだし」

 

「そう言うの、余計なお世話とも言うのよ」

 

「お節介ってそう言うもんでしょ……それに、エマさんのためとは言えちょっと前に周りの事情を引っかき回されたばっかりだし」

 

「つまり意趣返しってわけ、良い性格してるわね」

 

「それはお互い様でしょ……ま、変に遠回りな言い方をするのもアレだし、率直に────変に意地張ってないで、興味あるならチャレンジしてもいいんじゃない? 意固地になると大変だし」

 

「貴方みたいに?」

 

「そう、俺みたいに────って、やかましいわ」

 

「ふふっ、けど、そうね。参考にさせて貰うわ。それじゃ」

 

 そう言って朝香さんは席を立って、どこかに歩いて行ってしまった

 

「さてと、そんじゃ俺も作業を……ってしまった、折角声をかけたんだから途中まででも参考意見聞くべきだったな」

 

 多少の後悔に頭を抱えつつ、ノートパソコンにイヤホンを挿して作業を始める、これからどうなるのかは……まぁ、神のみぞ知るってやつか

 

 

 

 

 

 そこから少しだけ時間が経ったある日の放課後、エマさんのPV撮影も問題なく終了、動画は公式チャンネルへの投稿も終了し俺は俺でせつ菜のMV制作が同じく終了、現在は宮下さんの曲のMVを制作に取り掛かっている最中だ

 

「……映像研に制作手伝ってもらった方がよかったかもな」

 

「紘陸くん、大丈夫?」

 

「ん? あぁ、大丈夫。やってて楽しいし……先輩として情けないけど、天王寺さんにも少し手伝ってもらってるから」

 

 そう言いつつ天王寺さんの方に少し顔を向けると、彼女はこっちにグッドサインを返してきたからこちらもグッドサインを返す。表情だけだと判別しずらいが相変わらず感情豊かだな

 誰かと話して少し頭がすっきりしたのと同じタイミングで部室扉が開きエマさんと朝香さんが入ってくる

 

「あっ、エマさん。お疲れ様です」

 

「侑ちゃん、お疲れ様」

 

「果林さんも、お疲れ様です。もしかして今日もお手伝いに来てくれたんですか?」

 

「いいえ、今日は違うわ」

 

 そう言った朝香さんは目線をエマさんの方へ向けると、彼女は朝香さんに笑顔を返す

 

「私もスクールアイドルを始めてみることにしたの、よろしくね」

 

「えぇぇぇぇぇ!? 果林先輩もスクールアイドルに!?」

 

「うん、果林ちゃんが居れば、もっともっと楽しくなるよ」

 

 驚いた表情からすぐにキラキラした表情に変わる高咲さんと、わかりやすく驚いてくれた中須さんのお陰で俺は新しい部員が増えたなぁ……くらいで済んだ、サンキュー二人とも

 

「また応援する楽しみが増えちゃうっ」

 

「ようこそ、スクールアイドル同好会ヘ」

 

「ありがとう」

 

「でもぉ、モデルもやってるのに同好会に入って大丈夫ですかぁ?」

 

「えぇ、モデルでもスクールアイドルでも、トップを取って見せるわ」

 

 なんとも負けん気の強い言葉をぶん投げた朝香さんに対して、中須さんは少し気圧され気味だけど……まぁ、中須さんにもいい刺激になるだろ

 

「今度は同じ同好会員として、よろしく朝香さん」

 

「果林で良いわ、私もあなたの事は紘陸って呼ぶから」

 

「了解……けど、なんで急に?」

 

「同じ同好会の部員だもの、それくらい普通でしょ?」

 

「そこに関しては、人によるな……けどまぁ、良いか。そんじゃ、改めてよろしく、果林さん」

 

「えぇ、よろしくね」

 

「センパイセンパイ、かすみんの事もかすみんって呼んでくれていいんですよ?」

 

「考えておくよ、中須さん」

 

「あっ、エマさんのPV、再生数もコメントも凄い伸びてる」

 

 こちらに対して若干不満そうな表情を向けている中須さんの視線をいなしつつ朝香さ────果林さんへの挨拶も済んだタイミングで備え付けのPCを使ってエマさんのPVを確認したらしい天王寺さんの言葉がこっちにも聞こえてきた

 

「ほんとっ」

 

「凄い、エマさん」

 

「スイスの家族からも電話があってね、凄い喜んでくれてたの」

 

「大成功だね」

 

「当然よ、私が撮ったんだもの」

 

「果林ちゃんのは私が撮るね」

 

「えぇ、お願いねエマ」

 

「うんっ」

 

 この伸びは当たり前、と言った様子で果林さんはエマさんの方に腕を置き、二人はお互いに視線を送り合いながらそんな言葉を送り合った

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