ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜 作:miyacchi_novel
世界が、一つの「箱」に納まったようだった。
【アーク:メインデッキ(ドリーム・ステージ)】
「(……すごい。本当に、みんな揃ったんだね)」
JP、ID、そしてCouncilの面々。
さらに。
「(Yo, Reaper, 調子はどうだ?)」
星街すいせい が、デッキの手すりに腰掛けて、不敵な笑みを向ける。
「(……悪くない。地獄の入口(ヘル・ゲート)よりは、いくらか騒がしいがな)」
カリオペ が、肩をすくめて応えた。
彼女の背後には、キアラ、イナニス、ぐら、アメリア。
『神話(Myth)』の5人が、ついにアークへと正式に足を踏み入れた。
これで、ホロライブ・アライアンスの主要メンバーが、物理的にも、魂のレベルでも完全に一つになった。
アークのエンジンルームでは、彼女たちの『共鳴(レゾナンス)』が臨界点を超え、船体全体が黄金の粒子を放ちながら、夜の海を太陽のごとく照らしている。
【アーク:船上パーティ会場】
「(マリン、飲み過ぎぺこ! 酒代は自腹ぺこよ!)」
ぺこら が、ジョッキを片手に暴走する マリン の襟首を掴んで引き止める。
「(いいじゃないのぉ〜! 今日はキアラちゃんと、どっちが真の『限界オタク』か決着をつける日なんだからぁ!)」
「(Yeah! Marine, Let's go! I'm ready to bottom-left!)」
キアラ が、マリンに負けないテンションで応戦し、周囲を一気に自分たちの色に染め上げていく。
あちこちで、夢のような共演が繰り広げられていた。
一伊那爾栖(イナニス)の描く幻想的なグラフィティに、らでん が「(解釈が深すぎる……っ!)」と感涙。
ぐら と ころね が、野生の勘だけで会話を成立させながら、甲板を駆け回る。
アメリア が、アークの精密機器を弄り回し、それを スバル が「(ちょ、壊さないでね!?)」と必死に制止する。
言語も、文化も、あるいは種族さえも。
このアークの上では、すべてが「ホロライブ」という一つの共通言語に統合されていた。
絶望の影など一欠片もない。
ここにあるのは、純粋な、無敵の、そして永遠のような祝祭だった。
夜風が。
アークの甲板を吹き抜けた。
「(……ん?)」
カリオペ が、ふと鼻先を動かした。
彼女は『死神』の弟子だ。命の終わり、魂の腐朽、そして血の匂いには、誰よりも敏感なはずだった。
「(どうかした、カリちゃん?)」
すいせい が、カリオペの表情の微妙な変化を逃さず尋ねる。
「(……いや。妙だと思ってな)」
カリオペ は、デッキから暗い海を見つめた。
「(このアークの上……匂いが『無さすぎる』んだ)」
「(匂いがない?)」
「(ああ。人間の生活臭も、海の磯臭さも……あるいは、あたしが嗅ぎ慣れている『死の予感』さえも。……あまりにも、清潔(クリーン)すぎる。まるで、病院の消毒液か……あるいは、一度も使われていない『新品の箱』の中みたいな匂いだ)」
すいせい は、一瞬きょとんとした後、楽しげに笑った。
「(あはは、失礼だなぁ! それは、あやめちゃんが結界を張って、ラミィちゃんが空気を清浄してるからだよ。清潔なのはいいことじゃない)」
「(……ならいいんだがな)」
カリオペ は、自身の巨大な鎌(リッパー)の柄を強く握った。
彼女の五感が、本能が。
祝祭の影に潜む、あまりにも「秩序立ちすぎた」静寂を警告している。
だが、その警告も、今まさに始まった全員合唱(レゾナンス)の、力強い第一音にかき消されていった。
アークの影。
祝祭の光が届かない、海面のすぐ上。
マリンが前日に見た、左右対称の空。
そして、イオフィたちが見た氷の下の白い箱。
そのすべてが収束するように。
アークを追いかける波の紋様さえ、数秒ごとに同じ形を繰り返す「ループ」を描き始めていた。
だが、アライアンスの誰も、その『世界の不具合(バグ)』に気づく余地はなかった。
彼女たちは、自分たちが作り上げた伝説の熱狂の中に、深く、深く、陶酔していた。
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第二部も佳境です。