ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜   作:miyacchi_novel

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第18話: 神話の交点

世界が、一つの「箱」に納まったようだった。

 


【アーク:メインデッキ(ドリーム・ステージ)】

 

「(……すごい。本当に、みんな揃ったんだね)」

 

 JP、ID、そしてCouncilの面々。

 さらに。

 

「(Yo, Reaper, 調子はどうだ?)」

 星街すいせい が、デッキの手すりに腰掛けて、不敵な笑みを向ける。

 

「(……悪くない。地獄の入口(ヘル・ゲート)よりは、いくらか騒がしいがな)」

 

 カリオペ が、肩をすくめて応えた。

 彼女の背後には、キアラ、イナニス、ぐら、アメリア。

 『神話(Myth)』の5人が、ついにアークへと正式に足を踏み入れた。

 

 これで、ホロライブ・アライアンスの主要メンバーが、物理的にも、魂のレベルでも完全に一つになった。

 アークのエンジンルームでは、彼女たちの『共鳴(レゾナンス)』が臨界点を超え、船体全体が黄金の粒子を放ちながら、夜の海を太陽のごとく照らしている。

 


【アーク:船上パーティ会場】

 

「(マリン、飲み過ぎぺこ! 酒代は自腹ぺこよ!)」

 ぺこら が、ジョッキを片手に暴走する マリン の襟首を掴んで引き止める。

 

「(いいじゃないのぉ〜! 今日はキアラちゃんと、どっちが真の『限界オタク』か決着をつける日なんだからぁ!)」

 「(Yeah! Marine, Let's go! I'm ready to bottom-left!)」

 キアラ が、マリンに負けないテンションで応戦し、周囲を一気に自分たちの色に染め上げていく。

 

 あちこちで、夢のような共演が繰り広げられていた。

 一伊那爾栖(イナニス)の描く幻想的なグラフィティに、らでん が「(解釈が深すぎる……っ!)」と感涙。

 ぐら と ころね が、野生の勘だけで会話を成立させながら、甲板を駆け回る。

 アメリア が、アークの精密機器を弄り回し、それを スバル が「(ちょ、壊さないでね!?)」と必死に制止する。

 

 言語も、文化も、あるいは種族さえも。

 このアークの上では、すべてが「ホロライブ」という一つの共通言語に統合されていた。

 絶望の影など一欠片もない。

 ここにあるのは、純粋な、無敵の、そして永遠のような祝祭だった。

 


 

 夜風が。

 アークの甲板を吹き抜けた。

 

「(……ん?)」

 

 カリオペ が、ふと鼻先を動かした。

 彼女は『死神』の弟子だ。命の終わり、魂の腐朽、そして血の匂いには、誰よりも敏感なはずだった。

 

「(どうかした、カリちゃん?)」

 すいせい が、カリオペの表情の微妙な変化を逃さず尋ねる。

 

「(……いや。妙だと思ってな)」

 カリオペ は、デッキから暗い海を見つめた。

 「(このアークの上……匂いが『無さすぎる』んだ)」

 

「(匂いがない?)」

 

「(ああ。人間の生活臭も、海の磯臭さも……あるいは、あたしが嗅ぎ慣れている『死の予感』さえも。……あまりにも、清潔(クリーン)すぎる。まるで、病院の消毒液か……あるいは、一度も使われていない『新品の箱』の中みたいな匂いだ)」

 

 すいせい は、一瞬きょとんとした後、楽しげに笑った。

 「(あはは、失礼だなぁ! それは、あやめちゃんが結界を張って、ラミィちゃんが空気を清浄してるからだよ。清潔なのはいいことじゃない)」

 

「(……ならいいんだがな)」

 

 カリオペ は、自身の巨大な鎌(リッパー)の柄を強く握った。

 彼女の五感が、本能が。

 祝祭の影に潜む、あまりにも「秩序立ちすぎた」静寂を警告している。

 だが、その警告も、今まさに始まった全員合唱(レゾナンス)の、力強い第一音にかき消されていった。

 


 

 アークの影。

 祝祭の光が届かない、海面のすぐ上。

 

 マリンが前日に見た、左右対称の空。

 そして、イオフィたちが見た氷の下の白い箱。

 

 そのすべてが収束するように。

 アークを追いかける波の紋様さえ、数秒ごとに同じ形を繰り返す「ループ」を描き始めていた。

 だが、アライアンスの誰も、その『世界の不具合(バグ)』に気づく余地はなかった。

 

 彼女たちは、自分たちが作り上げた伝説の熱狂の中に、深く、深く、陶酔していた。

 

 





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第二部も佳境です。
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