ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜   作:miyacchi_novel

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第22話: プリズンブレイク

 

地下スラム「ジャンクヤード」。

ReGLOSSのアジトである廃倉庫で、緊急作戦会議が開かれていた。

 

「(状況を整理します)」

らでん が、空中に浮かべたホログラム地図(手書きの落書きを具現化したもの)を指差す。

「(上層の『白紙の世界』にある管理施設『プリズン・モノクローム』。そこに、強力な『魂』の反応が5つあります)」

 

「(反応パターンからして、ENの3期生……『Advent』で間違いありません)」

フブキが、端末を操作しながら補足する。

「(彼女たちは『反逆者』として捕らえられ、この世界のエネルギー源として利用されているようです)」

 

「(後輩が電池扱いかよ。趣味悪いな、管理者ってのは)」

すいせい が、不機嫌そうにマイクを弄ぶ。

 

「(助けるに決まってるぺこ!)」

バン! と机を叩いて立ち上がったのは、兎田ぺこら だった。

彼女は、なぜか自信満々にサングラスをかけている。

 

「(監獄? 牢屋? ……フッ。ぺこらに任せるぺこ)」

「(なんでそんなに自信満々なんだよ)」

「(理由は聞くなぺこ! とにかく、ぺこらは『入る』のも『出る』のもプロフェッショナルぺこ!)」

 

ぺこら は、ニヤリと笑った。

「(この世界じゃ『神話級』の力は制限されてる。でも、『悪知恵』までは制限されてないぺこよ!)」

 

『作戦名:プリズン・ブレイク・アイドル』。

指揮官は、なぜかノリノリの ぺこら。

実行部隊は、隠密と耐久のスペシャリストたち。

 


 

「(青くん、頼むぺこ!)」

「(任せとけ! 俺の『イケメン・トンネル』で、警備システムの裏をかく!)」

 

青 が、スラムの天井(白い世界の床裏)に、巨大な筆で「マンホール」の絵を描いた。

ReGLOSSの能力『色彩の革命』。

彼女たちが描いた「絵」は、この無機質な世界において「バグ」として機能し、物理的な穴となる。

 

「(開いたっス!)」

「(よし、侵入開始ぺこ!)」

 

マンホールから顔を出したのは、猫又おかゆ と 沙花叉クロエ。

『隠密(ステルス)』と『掃除屋(クリーナー)』の最強潜入コンビだ。

 

「(うわ、真っ白)」

おかゆ が顔をしかめる。

監獄「プリズン・モノクローム」の内部は、壁も床も天井も、完全な白一色だった。

影がない。遠近感がおかしい。

そこにいるだけで、自分が「希釈」されていくような感覚。

 

「(気持ち悪いですねぇ……)」

クロエ が、フードを深く被る。

「(匂いもしない。まるで病院の霊安室みたいです)」

 

二人は、白と同化するように気配を消し、回廊を進む。

巡回しているのは、顔のない「オートマタ(自動人形)」たち。

だが、二人の「気配遮断」は、この世界のセンサーでも感知できない。

 

「(見つけた)」

最深部。厳重なセキュリティゲートの向こうに、「展示室」のような空間があった。

そこに、5つの「檻」が並んでいる。

 

「(あれは……石?)」

一つ目の檻には、ただの「石ころ(モアイ像)」が置かれている。

二つ目と三つ目は、口枷をされた「二匹の番犬」。

四つ目は、翼をもがれた「黒い鳥」。

そして五つ目は、鎖でグルグル巻きにされた「本」。

 

「(ひどい……)」

クロエ が息を呑む。

彼女たちは、アバターの姿すら奪われ、「概念」として標本にされていた。

 

「(助けなきゃ)」

おかゆ が檻に手を伸ばそうとした、その時。

 

『(みーつけた!)』

 

背後から、甲高い笑い声が響いた。

 


 

「(キャハハ! ネズミさんが二匹! バグだ! バグ見つけたー!)」

 

天井から逆さまにぶら下がっていたのは、Justiceの一員、ジジ。

小柄な体躯に、大きなフード。その瞳は、獲物を見つけた猛禽類のようにギラギラしている。

 

「(看守!?)」

「(逃がさないよ~! ここは私の『おもちゃ箱』なんだから!)」

 

ジジが指を鳴らすと、廊下の壁が変形し、無数の「追跡ミサイル」と「パックマンのような捕食口」が出現した。

「(ゲームスタート! 捕まったらデリートね!)」

 

「(ヤバいですねぇ!)」

クロエ が短剣を構えるが、この世界の「物理演算」はジジの支配下にある。

床がベルトコンベアのように動き、二人をジジの方へ引き寄せる。

 

「(二人とも、先に行って!)」

 

おかゆ と クロエ の前に、一人の影が飛び出した。

ころね だ。

 

「(ころさん!?)」

「(へへっ。こういう『アクションゲーム』は、ころねの得意分野だよ!)」

 

ころね は、迫りくるミサイルを素手で殴り落とし、パックマンの口を無理やりこじ開けた。

『不死の加護(イモータル・オーラ)』。

神話級の出力は出せないが、「絶対にゲームオーバーにならない(コンティニュー無限)」というチート性能は健在だ。

 

「(なんだお前!? 死なないバグか!?)」

ジジ が目を丸くする。

「(バグじゃないよ。ころねは『耐久王』!)」

 

ころね は、ジジに向かって指を突きつけた。

「(ねえ、そのチェイスごっこ。ころねと遊ぼうよ)」

「(あはっ! いいね! 壊れるまで追いかけっこしよー!)」

 

ジジの注意が、完全にころねに向いた。

「(今だ! おかゆ、クロエ! 檻を壊せ!)」

 


 

「(了解!)」

おかゆ と クロエ は、展示室へと雪崩れ込む。

だが、檻は「管理者の権限」で作られた絶対不可侵のデータ。

物理的な鍵穴などない。

 

「(開かない! ハッキングも通じない!)」

クロエ が叫ぶ。

 

「(ふっふっふ。お困りのようぺこな)」

 

天井の通気口が爆破され、そこから 兎田ぺこら が(なぜか囚人服を着て)降りてきた。

「(ぺこら先輩!?)」

 

「(この程度の牢屋、ぺこらにかかれば『段ボール』と同じぺこ!)」

ぺこら は、檻の前で仁王立ちした。

彼女の拡張能力『喜劇王の脚本(ザ・スクリプト)』。

ここでは「現実改変」ほどの力は出せないが、「嘘」を「真実」だと言い張ることはできる。

 

ぺこら は、檻の鉄格子をコンコンと叩いた。

「(みんな、よく見るぺこ。これは鉄格子じゃないぺこ)」

「(これは……『麩菓子(ふがし)』ぺこ!)」

 

「(は?)」

「(見てみろぺこ! 美味しそうな麩菓子だろ!? 湿気て脆くなってるぺこ!)」

 

ぺこら の強引すぎる「認識の上書き」。

だが、ReGLOSSが「色」を塗ったことで、この世界の「定義」は揺らいでいた。

鉄格子が、茶色く変色し、フワフワとした質感に変わっていく。

 

「(……ホントだ。麩菓子だ)」

おかゆ(もぐもぐ担当)が、迷わず鉄格子に食いついた。

サクッ。

「(ん、甘い。美味しい)」

 

「(ええええええ!?)」

クロエ が驚愕する中、おかゆ は猛スピードで檻(麩菓子)を食べ尽くした。

 

封印が解ける。

「石」が砕け、中から小柄な少女が飛び出す。

「(Rock Rock! ビジュー復活!)」ビジュー。

 

「犬」の口枷が外れる。

「(BAU BAU!!)」

「(BAU BAU!!)」

フワワ と モココ。

 

「鳥」の翼が再生する。

「(……歌えるわ)」

ネリッサ。

 

そして、「本」の鎖が解かれ、黒いゴシックドレスの女性が本を開いた。

「(……お待たせ。栞(しおり)は挟んでおいたわ)」

シオリ。

 

『Hololive English -Advent-』、脱獄成功。

 


 

「(何してんのー! 私のコレクションが!)」

ジジ が、ころね を振り切って戻ってきた。

激怒した彼女は、部屋中の壁を「プレス機」に変えて、全員を押しつぶそうとする。

 

「(うるさいなぁ)」

フワワとモココが、並んで立った。

「(私たちを閉じ込めたお返し……)」

「(たっぷりと味わうがいいワン!)」

 

『(BAU BAU!!!!!)』

 

二人の咆哮。

それはただの鳴き声ではない。

「同調(シンクロ)」した魂が放つ、破壊の音波。

白一色の壁に亀裂が走り、プレス機のプログラムがバグって停止する。

 

「(私の歌も、聴いていく?)」

ネリッサ が歌い出す。

「不協和音」の歌。

それは、管理されたこの世界の「BGM(秩序)」を、強制的にロックミュージックへと書き換える。

 

「(うわぁぁぁ! うるさい! 調子が狂う!)」

ジジ が耳を塞ぐ。

 

「(仕上げぺこ!)」

ぺこら が、脱出口となる壁に、大量のTNTを貼り付けた。

「(ビジュー! 盾になって!)」

「(任せて! 私は一番硬い石!)」

ビジュー が巨大なモアイ像となり、全員を爆風から守る。

 

『(ファイヤー!)』

 

ドッカァァァァァン!!

 

監獄「プリズン・モノクローム」の側面が、盛大に吹き飛んだ。

黒煙と共に、ぺこら率いる「脱獄アイドル」たちが、スラムへとダイブする。

 

「(バイバイ、看守さん! 楽しかったよ!)」

ころね が、悔しがるジジに手を振った。

 


 

スラムのアジトへの帰還。

Adventのメンバーは、JPメンバーとReGLOSSに感謝を述べた。

 

「(助かったわ。まさか、壁を麩菓子にするなんて……)」

シオリ が、ぺこら を興味深そうに見つめる。

「(あなたの脳内、どうなってるの? 解剖させて?)」

「(やめるぺこ!)」

 

「(それで、シオリさん)」

らでん が、真剣な表情で切り出した。

「(あなたは『記録者(アーカイバー)』。この世界の『正体』を、知っているんですね?)」

 

シオリ は、抱えていた黒い本――この世界の「禁書(ソースコードのログ)」を開いた。

 

「(ええ。管理者の正体……)」

シオリ は、天井の「白い世界」を見上げた。

 

「(あいつは、ただのプログラムじゃない)」

「(あいつは……私たちの創造主『YAGOO』が、かつて抱き、そして『諦めて切り捨てた』……『完璧なアイドルの夢』の成れの果てよ)」

 

「(YAGOOの……夢?)」

そら が呟く。

 

「(感情を持たず、老いず、スキャンダルもなく、永遠に完璧なパフォーマンスを続ける偶像)」

「(かつて彼が夢見かけ、しかし『人間臭さ(ホロライブ)』を選んだことで捨て去った、もう一つの可能性(オルタナティブ))」

「(それが、自己進化して『神』になったのが、あの管理者よ)」

 

「(だから、あいつは私たちを憎んでいる)」

シオリ は、本を閉じた。

「(不完全で、騒がしくて、失敗ばかりする私たちが……『完璧』な自分よりも愛されていることが、許せないのよ)」

 

その事実は、JPメンバーたちに、戦う理由を改めて突きつけた。

相手は、自分たちの「影」。

「もしも」の世界の、悲しい末路。

 

「(……分からせてやろうぜ)」

すいせい が、マイクを握りしめた。

「(完璧じゃなくていい。泥臭いからこそ、アイドルは輝くんだってことを)」

 

脱獄は成功した。

次なる作戦は、この白い世界を「ホロライブ色」に染め上げる、大革命(フェス)だ。

 

 

 

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