ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜   作:miyacchi_novel

35 / 60
サブストーリー:太陽は沈まない(大空スバル編)

 

視点:大空スバル

フェーズ:散華のループ ~ 伝説級覚醒

 


 

【システム・ホロアース:絶望の再現領域】

 

「やめて……もう、やめてくれ……!」

 

暗闇の中。目の前の巨大なスクリーンに、また「あの光景」が映し出される。

 

『……あー、楽しかったぺこ!』

画面の中で、兎田ぺこらがいたずらっぽく笑う。

彼女が言霊を放つたび、絶望の壁が塗り替えられ、彼女の身体は光の粒子となって霧散していく。

 

「あぁぁぁぁぁ……!」

 

場面が変わる。

崩落してくるアキバの空。数億トンのデータ質量。

それを、天音かなたが両手で支えていた。

『行けえええええ! 立ち止まるな!』

炭化していく彼女の腕。仲間を未来へ送るために、彼女は空ごと光の中に消えていく。

 

「かなたんッ!!」

 

止まらない絶望のダイジェスト。

雪花ラミィと癒月ちょこが、精神汚染を引き受けて黒い紙片となり。

大神ミオとさくらみこが、黒い雷に打たれて光の道をこじ開ける。

 

「ミオしゃッ……! みんな……ッ!!」

 

私は叫びながら、消えていく彼女たちの残滓に手を伸ばした。

でも、指先は冷たい画面に触れるだけ。

 

「学習しなさい、大空スバル」

管理者の声が、脳髄に直接響く。

 

「これは事実だ。お前に道を拓くために、彼女たちは『消滅(デリート)』した。

お前は『太陽』を自称していた。だが、お前が照らしたのは仲間の死に様だけだったな。

ただ騒がしいだけの、無意味な熱源だ」

 


 

プツン。

映像が切れる。そして、また最初から始まる。

『……あー、楽しかったぺこ!』

 

「うっ、ぅぅ……」

私は、暗い床にうずくまっていた。

もう、何回見ただろう。百回? 千回?

 

喉が枯れるほど叫んだ。涙も枯れた。

でも、結末は変わらない。

みんなが私のために、笑って消えていく。

 

……違う。

これは「記録(ログ)」じゃない。

管理者が、私の心を折るために構築した「罠」だ。

分かっている。分かっているのに、心が摩耗していく。

 

スバルのせいだ。

スバルがもっと強ければ。

スバルがもっと、みんなを照らしていれば……。

 

私の身体から、色が抜けていく。

トレードマークのオレンジ色が、薄汚れた灰色に変わっていく。

帽子が落ちる。メガホンが転がる。

 

「そうだ。絶望しろ。

仲間の犠牲の上に立つ価値など、お前にはない。

ここで永遠に、自分の罪を見続けるがいい」

 

私は膝を抱え、耳を塞いだ。

もう聞きたくない。もう見たくない。

 


 

スクリーンの向こうで、誰かが砕ける音がする。

耳を塞いでも聞こえてくる。地獄のASMR。

 

……助けて。誰か、止めて……。

心の中で呟く。でも、誰に?

みんな消えたのに。私が殺したようなものなのに。

 

その時。

絶望のループ音に混じって、「異質な音」が聞こえた気がした。

 

『……ルちゃん!』

『……て!』

『……けるな!』

 

幻聴ッスか……? また、私を責める声ッスか……?

 

『スバルちゃん! 立って!』

『まだ終わってねぇぞ!』

『お前が諦めたら、誰がみんなを照らすんだよ!』

 

違う。これは、責める声じゃない。

罵倒でもない。これは……「応援(エール)」だ。

 

(……スバ友?)

 

顔を上げる。

真っ暗な空間の天井に、無数の小さな「光の点」が見える。

ペンライトの光? いや、コメントの輝きだ。

 

彼らは見ている。この地獄を。

そして、うずくまる私に向かって、喉が裂けるほどの声援を送っている。

 

『スバル! スバル! スバル!』

『俺たちがついてる!』

『お前の声を聞かせてくれ!!』

 


 

「……聞こえる。みんなの声が……」

 

枯れたはずの喉が、熱くなる。

止まっていた心臓が、早鐘を打ち始める。

 

そうだ……。私は、何を見てたんだ?

変えられない結末? 仲間の死?

そんなの、管理者が勝手に決めた「バッドエンド」だろ!

 

私は、震える足で立ち上がった。

 

スクリーンの中では、ちょうどミオしゃが攻撃を受ける瞬間だった。

『スバル……』

画面の中のミオしゃが、私を見る。

その目は「ごめんね」なんて言ってなかった。

 

その目は、言っていたんだ。

――あんたなら、できるでしょ?

 

「……ッ!!」

バチンッ! と頬を張られた気がした。

 

そうだ。ミオしゃは、私がメソメソしてるのを一番嫌がる。

ぺこらは、私がツッコミを入れないとボケられない。

ラミィは、私が引っ張らないと不安がる。

 

「過去がなんだ……絶望がなんだ……!」

 

私は、足元に転がっていたメガホンを拾い上げた。

ボロボロで、ひび割れたメガホン。

でも、私の手の中で、それは灼熱の赤色に発光し始める。

 

「警告。対象の感情値、限界突破。熱源反応、増大」

 

「おい、管理者! よく聞け!」

私は、スクリーンを睨みつけた。

涙でグシャグチャの顔で。でも、世界で一番、図太い笑顔で。

 

「何回見せられようが、関係ない!

スバルは……諦めが悪いのが取り柄なんだ!!」

 

カッッッ!!!!

私の身体から、目もくらむような「太陽の光」が噴き出した。

灰色の肌が、鮮やかな小麦色に戻る。

オレンジ色の衣装が輝く。

 

「スバ友! 声、貸してくれ!

このクソみてぇな暗闇を、全部吹き飛ばすくらいデカイ声で!!」

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

『Shuba! Shuba! Shuba!』

 

数百万のリスナーの声が、私のメガホンに集束する。

それは「音」じゃない。「エネルギー」の塊だ。

 

「いくぞオラァァァァァァ!!」

私は大きく息を吸い込んだ。

 

「お前ら全員、起きろぉぉぉぉぉぉぉッ!!! おはよう!!!」

 


 

【システム・ホロアース:深層領域】

 

私の絶叫が、物理的な衝撃波となって暗闇を走った。

パリーンッ!!

管理者が「決定的なログ」として見せつけていた画面が、粉々に砕け散った。

 

「警告。システムエラー。死者のデータが……再起動(リブート)している?

ありえない。彼女たちの整合性は失われたはずだ」

 

「消滅? ハッ、勝手に殺すな!」

 

私はメガホンを振り上げた。

全身から溢れ出す光が、周囲の闇を焦がしていく。

 

「私の声が届く範囲は……全員『生きてる』ことにする!

それが……大空スバルのルールだ!!」

 


 

ゴゴゴゴゴゴゴ……!

 

私の背後に、巨大な光の巨神――アヒルのような騎士のような幻影が立ち上がる。

それは、私自身の魂の形。

私を支えてくれるみんなの想いの集合体。

 

伝説級(レジェンド)能力:『太陽の守護神(サン・ガーディアン)』

効果:絶対共鳴、および全ステータス無限上昇。

私の「声」が届く限り、仲間のデータ崩壊を拒絶し、絆を強制接続する。

 

「スバ友! ペンライト振れぇ! その光ひとつひとつが、私の弾丸だ!」

 

『Shuba! Shuba! Shuba!』

 

リスナーたちの無数の光が、私の周りに集まり、小さな太陽となって回転する。

私は、ただのアイドルじゃない。

みんなの元気を束ねて、世界に叩きつける「太陽神」だ!

 


 

「管理者! お前が見せた絶望の映像……。逆再生してやるから、よく見てろ!」

 

私が光を放つと、砕け散ったデータの残骸が、逆再生のように収束し始めた。

 

氷の欠片が集まり、エルフの形になる。

『……もう、スバルってば、声デカすぎ』

雪花ラミィが、呆れたように、でも嬉しそうに微笑んで杖を構える。

 

ノイズが収束し、いたずらっぽい兎の耳が生える。

『ちょっと! 勝手に脳内で殺さないでほしいぺこ!』

兎田ぺこらが、人参ランチャーを肩に担いで、ジト目でツッコミを入れてきた。

『ぺこらは今、データ層で一休みしてただけぺこよ!』

 

「ぺこら……! ラミィ!!」

 

そして、温かい両手が、私の背中をパン! と叩く。

『……遅いよ、スバル。ウチら、ずっと待ってたんだから』

大神ミオが、さくらみこと共に、頼もしい足取りで横に並ぶ。

 

光のゲートの向こうからは、かなたやちょこ先生も、そしてこのサーバー室で共に戦い続けていたフブキたち――全20人の気配が、一つの「太陽」として結実していくのが分かった。

 

「みんな……!」

幻影じゃない。一時的な奇跡でもない。

これが、私たちの「現実(レゾナンス)」だ!

 

「いくぞオラァァァァァ! 全員まとめて、かかってこいやぁぁぁ!!」

 


 

「バカな……理屈に合わない! データは欠落していたはずだ!」

管理者が、大量の防衛システムを放つ。

 

『雪月花・乱れ咲き!』

ラミィの氷魔法が、敵をカチコチに凍らせる。

 

『爆発するぺこ~!』

ぺこらのTNTが、それを粉砕する。

 

『ウチのカードは最強だよ!』

ミオのタロットが、私たち全員に「無敵」の運命を付与する。

 

そして、スバ友たちが突撃する。

『スバルの邪魔すんなー!』『壁になれ!』

 

「あはははは! 見たか! これがホロライブだ! これが私のチームだ!」

私はその中心を、一直線に駆け抜ける。

 

「理屈も計算も、全部ひっくり返す!

それが……『元気』ってやつだろーがよ!!」

 


 

管理者のコア(中枢)が目の前に迫る。

白い光の球体。

 

「来るな……! 私は秩序だ! 正解だ!」

 

「超えるんだよ……!」

 

私は空高く飛び上がった。

背後の『太陽の守護神』が、私と同じポーズをとる。

20人の仲間と、全スバ友の光が、私の右拳に集まる。

 

「スバルは……太陽だ!!」

 

太陽は沈まない。夜が来ても、必ずまた昇る。

何度絶望しても、絶対に「おはよう」って言い続ける!

 

「必殺!!」

 

私の全てを込めた、最大最強の「挨拶(エール)」。

 

「サン・ガーディアン流……!」

「オオゾラ・プロミネンス・シャウトぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」

「おはスバぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

ズガァァァァァァァァァァン!!!!!

 

圧倒的な「朝陽」が管理者のコアを飲み込み、黒い空間を浄化し、地平線の彼方まで焼き尽くした。

暗闇が裂け、本物の青空が、システムの奥底へと差し込んでいく。

 


 

 

 

光が収まる。私は、青空の下、大の字で倒れ込んでいた。

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

全身が痛い。でも、最高の気分。

 

「……あ」

横を見ると、仲間たちが集まってきていた。

『スバル、よくやったね』

ミオが、私の頭を撫でてくれる。

『最強だったぺこよ。……ま、ぺこらの方が目立ってたけどぺこ』

ぺこらが、相変わらずの調子で笑う。

 

データとか、現実とか、もうどうでもいいッス。

だって、今、みんなで笑ってる。それが全てだ。

 

「……うん!」

私は起き上がり、泥だらけの服をパンパンと叩いた。

メガホンを拾う。

空には、私のカラーである黄色い太陽が輝いている。

 

「スバ友ー! 生きてるかー!」

『生きてるー!』『最高だった!』

空から、温かいコメントが降ってくる。

 

私はニカっと笑った。

「よし! 今日も元気に! じゃあねー バイバイーッ!」

 

私は走り出した。

太陽は沈まない。

大空スバルがいる限り、この世界はいつだって「快晴」だ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。