ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜   作:miyacchi_novel

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内部告発

 

 


 

【ホロアース・中央広場:夜】

 

フブキのスマホが、振動した。

 

『お話があります。ホロメンの皆さんに、知ってほしいことがあります』

 

見知らぬ番号。

しかし、メッセージの内容は——切迫していた。

 

フブキは、すぐに返信した。

 

『どなたですか?』

 

『電忠社の契約脚本家、高橋美玲です』

『私、星詠みなんです』

『すいせいさんの——ファンなんです』

 

フブキの目が、鋭くなった。

 


 

【ホロアース・秘密の集会場】

 

深夜。

 

そら、フブキ、みこ、すいせいが集まっていた。

そして——画面越しに、美玲が映っている。

 

「初めまして……高橋美玲です」

 

美玲の声は、震えていた。

 

「私、電忠社で働いています。脚本会議にも……出席していました」

 

すいせいが、画面を見つめた。

 

「……見覚えある。隅の席にいた人でしょ」

 

「はい。ずっと……黙って見ていました」

美玲が、俯く。

「何も言えなくて……ごめんなさい」

 

「それで? 話があるって?」

 

フブキが、促した。

 

美玲は、深呼吸した。

そして——全てを話し始めた。

 


 

「『共鳴プログラム ver.2.0』というものがあります」

 

画面に、資料が共有された。

 

「映画の視聴者数に応じて、対象者の……現実改変率が上昇するシステムです」

 

みこが、首を傾げた。

 

「現実改変……?」

 

「脚本の設定が……本当になるんです」

 

美玲の声が、震える。

 

「みこちさん。最近、すいせいさんを想うと胸が苦しくなりませんか?」

 

みこの顔色が変わった。

 

「……なんで、それを」

 

「すいせいさん。みこちさんがいないと、歌詞が書けなくなっていませんか?」

 

すいせいが、目を見開いた。

 

「……なぜ……」

 

「それは、『書き換え』が始まっているからです」

 

美玲が、データを表示した。

 

『書き換え進行率』

『さくらみこ:28%』

『星街すいせい:26%』

 

「撮影を続ければ続けるほど……お二人は『脚本通り』の存在になっていきます」

「『共依存』——『互いなしでは生きられない』——それが、本当の感情になってしまう」

 

そらが、静かに問うた。

 

「それを……止める方法は?」

 

「……あります」

 

美玲が、顔を上げた。

 

「『本当の物語』を、世界に伝えることです」

 


 

「このプログラムは、『多くの人が信じた物語が現実になる』という仕組みです」

 

美玲が、説明を続ける。

 

「逆に言えば——『本当の物語』を、映画以上の人数に信じてもらえれば……書き換えを上書きできるはずです」

 

フブキの目が、光った。

 

「つまり——」

 

「プレミア公開当日」

美玲が、真剣な目で言った。

「映画が全世界に配信されるのと同時に——ホロメンの皆さんが、『本当の物語』をライブ配信するんです」

 

「同時配信……」

 

「映画を見た人たちに、すぐに『真実』を伝える」

「『あの映画は嘘だ』『本当の私たちはこうだ』って——」

「そうすれば、視聴者は『本当の物語』を信じ直してくれるはず」

 

みこが、目を輝かせた。

 

「それにぇ! それならみこたちにもできるにぇ!」

 

「でも——」

そらが、慎重に言った。

「電忠社に妨害されるんじゃ……」

 

「私が、内側から支援します」

 

美玲が、きっぱりと言った。

 

「当日、ライブ配信を妨害されないよう……神崎のシステムにバックドアを仕掛けます」

「私、一応……システム周りも少し分かるので」

 

すいせいが、美玲を見つめた。

 

「……あんた、クビになるわよ」

 

「わかってます」

 

美玲が、微笑んだ。

 

「でも——すいせいさんの笑顔を守れるなら、それでいいです」

「Stellar Stellarで、人生変わったんです」

「あの曲がなかったら、私は脚本家になってなかった」

 

「……」

 

すいせいは、黙っていた。

その目に——何かが、滲んでいた。

 

「だから——」

 

美玲が、頭を下げた。

 

「お願いします。戦わせてください」

「私も——すいせいさんと一緒に」

 


 

長い沈黙が流れた。

 

そらが、ゆっくりと口を開いた。

 

「ありがとう、美玲さん」

 

そらの声は、温かかった。

 

「あなたの勇気に——応えたい」

 

フブキが、頷いた。

 

「作戦会議、始めよう」

「プレミアまで——あと2週間」

「それまでに、準備を整える」

 

みこが、拳を握った。

 

「みこたち、負けないにぇ!」

「『本当の物語』——絶対に、守るにぇ!」

 

すいせいが、画面越しに美玲を見た。

 

「……美玲」

 

「は、はい」

 

「あんたも——星詠みなら」

 

すいせいが、ふっと笑った。

 

「一緒に戦ってよ。『チームすいせい』として」

 

美玲の目に、涙が溢れた。

 

「……はいっ」

 


 

【電忠社・本社ビル:神崎の執務室】

 

その頃。

 

神崎は、モニターを見つめていた。

 

『書き換え進行率:32%』

 

順調に上昇している。

あと2週間で——50%を超える。

そうなれば、彼女たちは「設定通り」の存在になる。

 

「……完璧だ」

 

彼の脳裏に、声が響いた。

 

『もうすぐだ、神崎』

『「完璧な物語」が完成すれば——私は復活する』

 

神崎は、窓の外を見た。

東京の夜景。

 

「ああ。もうすぐだ」

 

しかし、彼は知らなかった。

内部から——彼の計画を崩そうとする者がいることを。

 

美玲の決意。

ホロメンたちの闘志。

 

そして——ファンたちの、推しを守りたいという想い。

 

戦いの準備は、静かに——しかし確実に、進んでいた。

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