ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜   作:miyacchi_novel

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第06話: 鬼神と悪魔の聖域

【状況】東京各地に点在していた「導き手」たちが、フブキの「集結令」に導かれ、浅草とアキバを目指して動き出していた。ホロライブ・アーク(そら、マリン、かなた、クロエ、おかゆ)はお台場に上陸し、かなたの消滅危機を抱えながら浅草の大学病院を目指す。渋谷アライアンス(フブキ、スバル、シオン、ぼたん、いろは、ぺこら)は浅草寺へ。北からのキャラバン(ラミィ、ぐら、ミオ)も浅草へ向かっている。そして、みこ、すいせい、らでんの三人は、浅草での合流を待たずアキバへ先行していた。

 

 

浅草。

崩壊した東京(サイレント・ジャパン)において、その地は二重の意味で「聖域」となっていた。

一つは、浅草寺。

雷門は崩れ落ち、仲見世通りは瓦礫に埋まっている。だが、その中心、本堂と五重塔がそびえる境内は、不可視の「壁」によって守られていた。

 

「ギィ…」「ザアアア…」

 

黒いヒス(Hiss)の群れが、見えない結界にぶつかっては霧散していく。

本堂の前、大香炉の残骸のそばに、百鬼あやめは静かに座していた。

彼女の「鬼哭の結界(オーガ・ウォード)」は、人々が千数百年以上にわたって捧げてきた「祈り」の記憶を依代(よりしろ)に、ノイズの侵入を物理的に許さない、絶対的な聖域(サンクチュアリ)を構築していた。

あやめは、西の方角(渋谷)と南の方角(お台場)を見据えた。

 

「(来る)」

「(フブキたちの『光』と、そら先輩の『光』…。やっと、集まる)」

 

彼女の結界は、仲間たちの合流地点として、その輝きを増していた。

もう一つの聖域。それは、浅草寺からほど近い大学病院の廃墟。

そこは、聖域ではなく「拠点」だった。

 

病院の外観は、大静寂の混乱で半壊していた。エントランスの自動ドアは歪み、ガラスが割れ、救急車の駐車スペースには転倒したストレッチャーが散乱している。壁面には、内側から押し出されたような手形の跡が無数に残り、そこから黒いノイズが滲み出ている。

 

「(メス! 鉗子! 鎮静剤(魔力生成)を急いで!)」

 

癒月ちょこは、悪魔的な速度で患者(ノイズとの戦闘で負傷した生存者)の治療にあたっていた。

 

「悪魔のカルテ(デビルズ・カルテ)」が、患者の身体情報と精神汚染度を瞬時にスキャンし、最適解を導き出す。

 

だが、彼女の額には焦りの汗が浮かんでいた。

 

「(ダメだ…この『汚染』は、切り取れない…!)」

 

彼女が今診ている患者は、スクリーマーの精神攻撃を長時間浴びた結果、脳が「虚無」に焼かれかけていた。

 

「(これ以上の治療には、シオンちゃんの魔力でも作れない『高度な薬剤』…旧世界の『技術』が必要…!)」

 

物資は枯渇していた。

そして、この「拠点」は、常にスクリーマーの群れに包囲されていた。

病院の周囲、エントランスからナースステーション、そして手術室へと続く廊下の各所に、数百体のスクリーマーが巣食っていた。かつて、この場所で救われなかった命の「絶望」と「無念」が、ノイズとして具現化し、医療施設の構造そのものを侵食していたのだ。

 

「(光が、近づいてくる…一つは、衰弱しきってる…!? まさか…!)」

 

ちょこは、お台場方面から迫る、消えかかった「光」――天音かなたの存在を感知し、戦慄した。

 


 

二つの「導き手」の集団が、二つの「聖域」を目指し、最後の進軍を開始していた。

そしてそれとは別に、一足先にアキバを目指した三人がいた。

 

「(みんなが浅草で合流する前に、サンクチュアリの準備を進めるにぇ!)」

 

みこちの「エリートな直感」が、アキバへの最短ルートを導き出していた。

 

「任せなさい。あたしが道を切り開くわ」

 

星街すいせいの「流星の突破」が、青い閃光となってノイズの壁を貫いていく。

 

「(サンクチュアリには、あたしの『審美眼』が必要ですからねぇ)」

 

儒烏風亭らでんも、二人に必死についていく。彼女の能力がなければ、サンクチュアリの起動は不可能だった。

 

三人は、浅草での合流を待たず、アキバへと先行した。

 

【渋谷アライアンス:浅草寺ルート】

 

「いろは! 道(ルート)を開け!」

「承知にて! 『風切の活路(カゼキリ・ルート)』!」

 

風真いろはが、崩れた高速道路の残骸を疾走する。彼女が駆け抜けた軌跡が、ノイズを切り裂く安全な「道」として、一時的に固定された。

 

「スバル、ぺこら! 続くッスよ!」

「おう!」

 

白上フブキ、大空スバル、兎田ぺこら、紫咲シオンが、いろはの作った「活路」を駆け抜ける。

最後尾では、獅白ぼたんが中距離ライフルを構え、追撃してくるスクリーマーの核を正確に撃ち抜きし、沈黙させていた。

 

「(あそこだ! あやめちゃんの『光』が見える!)」

 

フブキの「狐の集結令(フブキ・フレンズコール)」が、浅草寺の強固な「結界」を明確に捉えていた。

 

「あそこが、私たちの合流地点だ!」

 

一行は、浅草寺の境内へと駆け込んだ。

その瞬間だった。

 

「(…あれ?)」

 

フブキが、足を止めた。

雷門の跡地を越え、境内へ一歩踏み入れた瞬間、耳鳴りが止まった。

ノイズが発する「ザアアア」という不快な音が、まるで水が引くように消え去り、代わりに遠くから聞こえてくるのは、本堂の風鈴が揺れる、か細い音だけだった。

 

「(空気が…澄んだ?)」

 

スバルが、息を深く吸い込んだ。

 

「(あたしの『応援』の力が、ここでは自然に回復してる…!)」

 

あやめの結界は、単なる「壁」ではなかった。この空間に踏み入れた者の精神汚染を、ゆっくりと浄化していく、生きた「聖域」だった。

 

「フブキちゃん! こっちだ!」

 

本堂の前から、あやめの声が響いた。

 

「あやめちゃん!」

 

フブキたちが、本堂へと駆け寄る。

あやめは、大香炉の残骸のそばに立ち、疲労で青ざめた顔をしていたが、それでも満面の笑みを浮かべていた。

 

「無事だったんだね!」

「余を誰だと思っておる! それより、シオンちゃん! 魔力が溢れてるぞ!」

「へへ、スバルの『応援(バフ)』がまだ残ってんだよ!」

 

スバルとシオンの「共鳴」は、まだ継続していた。

 

「これで、東京の主力が、ほぼ集結したでござるな」

 

いろはが、刀を納める。

 

「(残るは、そら先輩たちと、ミオたち…)」

 

フブキが、仲間たちの無事を祈った、その時だった。

 

「(待って。結界の外、南西から、巨大なキャラバンが接近)」

 

結界の「壁」の上で見張りをしていた ぼたん が、警戒の声を上げた。

 

「(ノイズじゃない。この気配…ミオ!?)」

 

結界の「門」として、あやめが制御していた一部が開く。

そこに立っていたのは、大神ミオ。

そして、彼女の後ろには――

 

「フブキ先輩!」

「ミオしゃ!」

 

純白の冷気を纏う、雪花ラミィ。

そして、乾パンをかじりながら、キョロキョロしている、がうる・ぐら。

またひとつの集団が、浅草に到着した。

 

「ラミィちゃん! ぐらちゃんも!」

「ミオも! 無事だったんだね!」

 

フブキとスバルが、駆け寄る。

 

「(占いが、ここに『吉兆が集う』と示しとった。間に合ったみたいやね)」

 

ミオが、安堵の息をつく。

ラミィは、合流した仲間たち、そして、あやめの結界の中に避難していた多くの負傷者たちを見渡した。

 

「(みんな、消耗してる…)」

 

彼女は、自らの能力で生成した「聖なる氷」を、結界内の井戸水(奇跡的に汚染を免れていた)に溶かした。

 

「私の作った聖水です。これを飲んでください」

 

ラミィの「聖水」が、人々に配られていく。

一人の老人が、その聖水を手に取った。

 

「(これは…)」

 

老人は、恐る恐る口に含んだ。

その瞬間、皮膚が氷菓を握ったようにキュッと引き締まり、次の鼓動で甘い熱が胸へ流れ込んだ。蓄積していた疲労が、雪解けのように消えていく。

 

「(あったかい…)」

 

老人は、涙を流しながら、ラミィに深々と頭を下げた。

それは、ちょこの「外科手術」や、そらの「精神回復」とは違う、蓄積した「疲労」そのものを癒やす、清らかな力だった。

 

「(これが、ラミィちゃんの力…)」

 

フブキは、聖水を手に取り、その冷たさと温かさの両方を感じながら、仲間の無事を確かめた。

 

「へぇ~、すごいぺこじゃん! シオンちゃんはただの水しか出せなかったのにね~?」

 

ぺこらが、ニヤニヤと笑いながらシオンを見る。

 

「はぁ!? うっさいぺこら! あれは緊急の時に応急で出しただけだし! やろうと思えばできるんだからね!?」

「ほんとに~?」

「ほんとだし!」

 

二人のやり取りに、周囲から小さな笑いが漏れた。束の間の、小さな安らぎだった。

 

 

 

【東京湾上陸組:大学病院ルート】

 

一方、お台場に座礁した「ホロライブ・アーク」から、ときのそら、猫又おかゆ、宝鐘マリン、さかまたクロエ、天音かなたの一行は、絶望的な強行軍を行っていた。

 

「(おかゆの……匂いがする!)」

 

そこに、一陣の風のように合流した影があった。

戌神ころね。

彼女は下町で子供たちを避難させた後、本来なら最寄りの拠点(浅草方面)へ向かうはずだった。だが、風に乗って漂ってきた「おかゆの匂い」に反応し、予定を変更してお台場方面へと疾走してきたのだ。

 

「ころさん!」

「おかゆぅ~!」

 

走り寄るなり、ころねは おかゆ に飛びつこうとして――その横に、衰弱しきった かなた がいるのを見て、寸前で踏みとどまった。

けれど、その瞳は潤み、尻尾が千切れんばかりに振られている。

 

「よかったぁ……おかゆの匂い、ずっと探してたんよ。ここで会えて、ほんとに良かった……!」

「ころさん……うん、僕も。来てくれて、ありがとう」

 

二人は一瞬だけ、互いの温もりを確かめ合うように視線を絡ませた。

再会の余韻に浸る時間は、一秒もなかった。だが、その一瞬の「安堵」が、彼女たちに限界を超える力を与えた。

 

「ころさん…お願い…! かなたんを!」

「任せといて! 絶対に守り切るから!」

 

戌神ころねは、その小さな背中に、意識を失い、アバターの輪郭すらノイズのように揺らぎ始めた天音かなたを、布で固く縛り付けていた。

 

「(かなたん…重くない。でも…『命』が、こぼれてく…)」

 

ころねの「不屈の耐久(エンドレス・ガッツ)」は、他者の「苦痛」を肩代わりできる。だが、かなたのそれは「苦痛」ではなく「消滅」の兆候だった。

 

「(フブちゃんが示してくれた座標…病院は、あそこだ!)」

 

そらの「歌声」は、かなたの「消滅」を遅らせるだけで精一杯だった。

 

「(ちょこ先生…! どうか、間に合って…!)」

 

マリンが古い地図を頼りに、おかゆと クロエが、ノイズの気配を警戒しながら、一行を先導する。

そして、彼女たちは、大学病院の「敷地」にたどり着き――絶句した。

 

「(なんだ…これ…)」

 

病院は、巨大な「スクリーマーの巣窟」と化していた。

エントランスの自動ドアは完全に破壊され、その向こうのロビーには、無数のスクリーマーが蠢いていた。ナースステーションのカウンターは倒れ、そこからも黒い影が這い出している。廊下の奥、手術室へと続く道は、スクリーマーの群れで埋め尽くされていた。

 

かつて、この場所で救われなかった命の「絶望」と「無念」が、数百体のスクリーマーを生み出し、病院の周囲を、まるで蟻塚のように覆い尽くしていた。

 

「(ここを、突破する…? かなたんを背負って…?)」

 

そらの顔から、血の気が引いた。

 

 


 

「ギィイイイイイイイイイアアアアア!」

 

侵入者(そらたち)の「希望」と、かなたの「衰弱」という、二つの相反する「気配」に気づき、スクリーマーの群れが一斉に襲いかかってきた。

 

「(ここまで来て…!)」

 

そらが歌おうとした瞬間。

 

「そら先輩。歌は、かなたんの『精神(こころ)』を守るためだけに使って」

 

ころねが、かなたを背負ったまま、一歩前に出た。

 

「ここは、ころねたちがやる」

 

作戦は、瞬時に決まった。

おかゆが、そっと ころね(と、背負われた かなた)の手に触れる。

 

「『気ままな潜伏(もぐもぐステルス)』。ころさんとかなたんの『存在』を、薄くする」

「(ありがとう、おかゆん…!)」

 

ころねは、大きく息を吸い込んだ。

 

「『不屈の耐久(エンドレス・ガッツ)』――最大展開!」

 

彼女の痛覚が麻痺し、精神が鋼鉄の「盾」と化す。

 

「(ころねが『道』を作る。みんな、ついてきて!)」

 

ころねが、弾丸のように突撃した。

彼女は、スクリーマーの群れに、あえて「自分」を認識させた。

 

「ギイイ!?」

 

ステルスで薄まっていたはずの気配が、突如として強靭な「盾」として立ちはだかったことに、スクリーマーが混乱する。

スクリーマーの「爪」が、ころねの腕を切り裂く。

 

「ベリッ」

 

皮膚が裂ける音が響く。だが、ころねは一歩も引かない。背負った かなた には、一切の攻撃を通さない。

 

「(痛くない、痛くない、痛くない…!)」

 

彼女の身体(アバター)が黒いスクリーマーに切り裂かれる。だが、彼女は一歩も引かない。

 

「(核が、多すぎる…!)」

 

クロエが、病院の壁を影のように駆け上がる。

 

「(『掃除屋』の仕事だ)」

 

彼女は、スクリーマーの群れの中で、指揮官格として他の個体を操っている「中核」を瞬時に見抜き出す。

 

「(静寂の掃除屋(サイレント・クリーナー))」

 

クロエの姿が闇に溶け、次の瞬間、指揮官格のスクリーマーの背後に現れ、その核を漆黒のダガーで貫いていた。

 

一体、また一体と、ノイズの統率が崩れていく。

 

「(ころねちゃんが、受けすぎてる!)」

 

そらは、かなたを背負う ころね に、全神経を集中させた。

 

「(私の歌(ひかり)で、ころねちゃんの『心』を守る!)」

 

そらの「歌声」が、攻撃的な「浄化」ではなく、優しく包み込む「鎮静」の波動となって、ころね を覆う。

ころね の精神に流れ込もうとしていたノイズの汚染が、歌声によって洗い流されていく。

 

「(今だ! 病院の入り口まで、あと少し!)」

 

マリンが、残った生存者を守りながら、ころね が切り開いた「血路」を突き進む。

 

「(ころね! おかゆ! クロエ! そら先輩!)」

「(これこそが、私たちの『繋がり(レゾナンス)』…!)」

 

ころね の「盾」、おかゆ の「ステルス」、クロエ の「掃除」、そら の「守護」、そして マリン の「指揮」。

五人の力が完璧に共鳴し、絶望的だったスクリーマーの包囲網を、強行突破した。

 

「ガシャアアアアン!」

 

ころねが、破壊された自動ドアの残骸を体当たりで突き破る。

エントランスのロビー。蠢いていたスクリーマーたちが、侵入者に気づいて一斉に振り向く。

 

「ギィイイイ!!」

 

だが、ころねは止まらない。おかゆのステルスで「薄く」なった存在が、突如として「盾」として顕現する矛盾に、スクリーマーたちの認識が追いつかない。

その隙に、クロエが天井から降り立ち、ロビーを統率していた指揮官格の核を一閃で断つ。

 

「(次!)」

 

倒れたナースステーションのカウンター。そこから這い出してきた黒い影を、マリンが古い消火器で薙ぎ払う。

 

「船乗りナメんな!」

 

廊下の奥、手術室へと続く道。最後の障壁となっていたスクリーマーの群れが、そらの「歌声」に怯み、一瞬だけ道を開けた。

ころねは、その隙を逃さなかった。

その瞬間、病院特有の匂いが鼻を突いた。

消毒液のアルコール臭、血の鉄臭、そして長く放置されたカビの湿った匂い。それらが混ざり合い、死と生の境界線のような、不気味な空気が漂っている。

 

「(ちょこ先生…!)」

「待ってた! こっちへ!」

 

白衣(アバターの姿)をスクリーマーの返り血で汚した ちょこ が、彼女たちを出迎えた。

 

 


 

病院の地下、かろうじて無菌状態が保たれた手術室。

そこに、かなたが運び込まれた。

 

「(『悪魔のカルテ』展開…!)」

 

ちょこは、かなたのアバターの「輪郭」が、砂のように崩れかけているのを見て、息を呑んだ。

 

「(能力中核(コア)の直接汚染…! ギリギリだ…!)」

「お願い、ちょこ先生!」

 

そらが、祈るように見つめる。

その「祈り」は、現場にいるマリン、おかゆ、クロエ、そして意識を失ったころねの想いと重なり、一つの強大な「共鳴(レゾナンス)」となって、手術室を満たしていく。

 

「(…感じる。みんなの想いが、私の『手』を導いてくれる…!)」

 

ちょこは、仲間たちからの信頼と魔力の供給(パス)を受け取り、深く息を吐いた。

 

「…悪魔の『手術(オペ)』、開始」

 

ちょこの指が、個人の限界を超えて加速する。

それは、物理的なメスではない。集まった仲間たちの「絆」を触媒として、かなたの「存在定義」そのものに干渉する、奇跡の術式。

 

「(虚無の浸食を…みんなの『光』で押し返す! そこを切り取る!)」

「汚染部位、切除…! コア、再縫合…完了!」

 

数分後。

砂嵐のように揺らいでいた かなた の輪郭が、ゆっくりと実体を取り戻していく。

 

「…ん…」

 

かなたが、薄く目を開けた。

 

「…そら、せんぱい…? ちょこ、せん…?」

「かなたちゃん!!」

 

そらが、泣きながら かなた に抱きついた。

 

「(やったわ…みんなのおかげよ…)」

 

ころねは、その光景を壁に寄りかかりながら見つめ、静かに笑うと、そのまま意識を失った。彼女の「耐久」も、限界だったのだ。

 

 


 

浅草寺・本堂。

渋谷アライアンス、キャラバン、そして病院の仲間たち。

ラミィの聖水によって負傷者たちが癒され、そらたちも、かなたを連れて合流を果たしていた。

負傷していた ころね も、その聖水で目を覚ました。

残るは、秋葉原に先行した、みこち、すいせい、らでん……。

 

「(みこちたち、大丈夫かな……)」

 

フブキは、アキバの方角の空を見上げた。

 

「(よし!)」

 

フブキが、「集結令」でアキバのみこちに、合流の報を伝えようとした、その瞬間。

 

 


 

「(――ダメだ!)」

 

みこの、絶叫にも近い「念話」が、フブキの「集結令」を逆流し、その場にいた「導き手」全員の脳内に、直接響き渡った。

 

「ダメだ! サンクチュアリのコアが…『何か』に喰われてる!」

 

フブキが、顔面蒼白になる。

 

「(みこち!? どういうこと!?)」

 

「『王』だと思ってたヤツ…デリーターじゃない! あたしたちの『絶望』を喰って、コアと融合しようとしてる!」

 

みこの「直感」が、アキバの地下で起きている「最悪」の事態を、リアルタイムでフブキたちに伝えてくる。

 

「早く来て! らでんちゃんが、今『正体』を解析してるけど、サンクチュアリの再起動(リブート)ができない!」

「あいつが、コアを完全に『捕食』したら、アキバごと、全部『無(null)』に還るにぇ!!」

 

その場にいた全員が、アキバの方角から、これまで感じたこともないほどの、強大な「虚無」の脈動が放たれたのを、肌で感じ取った。

 

「(…解読、完了しました!)」

 

アキバからの念話。らでん の切迫した声が、フブキたちの脳内にも届く。

 

「(データ照合……伝承と一致。あれは『虚無の王』です。そして…あれを止めるには、『巫女たちの共鳴』…二十人全員の『繋がり』が、必要です!)」

 

アキバ・サンクチュアリの、暴走(タイムリミット)が、始まった。

 

 






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ホロライブ非公式二次創作・非商用
登場人物は全てフィクションであり実在の人物とは一切関係ありません。
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