ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜 作:miyacchi_novel
【秋葉原UDX・地下深く】
浅草寺に集結した十七の光。
それに対し、秋葉原UDXの地下深くで、一つの「意志」が、不快な「認識」を完了した。
「(…集まった)」
それは、怒りでも、焦りでもない。
ただ、自分以外の「意味」が集結したことに対する、冷たい「拒絶」だった。
秋葉原。
大静寂(グレートサイレンス)が訪れる以前、この街は世界で最も濃密な「情報」と「熱狂」の集積地だった。
夢、希望、情熱、創造性。
だが、光が強ければ、影もまた濃い。
その「熱狂」が失われたことへの「郷愁」。
「好き」が「消費」されていくことへの「諦観」。
コミュニティから取り残されることへの「孤独」。
そして、大静寂によって、それら全てが、愛した文化(サブカルチャー)そのものが、音も無く「消去」されたことへの、巨大な「絶望」と「虚無」。
それら全てが、このアキバの地下、ホロアース開発のために設計された「認識改変シミュレーター(=アキバ・サンクチュアリ)」のコアサーバーに、大静寂の瞬間に流れ込んだ。
「虚無」は、コアの「熱狂の記憶」を喰らい、一つの擬似的な「王」として受肉した。
その名は、「デリーター・レプリカ」。
サンクチュアリの「希望の記憶」を捕食し、自らを「絶望の記憶」で上書きすることで、この世界(ホロ)を「無(null)」に還そうとする、秋葉原の「王」である。
その「王」は、今、自らの「聖域(サンクチュアリ)」の入り口を守る、二つの「異物(=光)」を排除すべく、その力を解き放った。
【秋葉原UDX・エントランスホール】
「(ダメだ! サンクチュアリのコアが…『何か』に喰われてる!)」
みこちは、UDXビルのエントランスホールで、頭を押さえてうずくまっていた。
彼女の「エリートな直感(エリート・センス with 35P)」が、これまでに感じたことのない「最悪」の神託を、脳内に直接叩きつけていた。
らでんは、エントランスの奥で壁面のフレームに触れ、解読に全神経を集中させている。
彼女が「鍵」を開けるまで、みことすいせいが「王」を食い止めなければならない。
「みこち! しっかりしろ!」
すいせいが、テトリミノ状のエネルギーブロックを周囲に展開し、みこちを守るように立ちはだかる。
彼女たちの周囲の空間は、物理的に「歪んで」いた。
UDXの壁や柱が、テレビの砂嵐(ノイズ)のように明滅し、現実の姿を保てなくなっている。
「わかってるにぇ…! でも、こいつ…! アキバの、みんなの『想い』を…喰ってる…!」
彼女たちは、エントランスで「王」の洗礼を受けることとなった。
「(…なぜ、生きている?)」
声ではない。
脳内に直接響く、冷たい「問いかけ」。
「(『ホロライブ』は、我々(アキバ)の『熱狂』の『象徴』だったはずだ)」
「(我々(アキバ)が、こうして『虚無』に沈んだのなら)」
「(お前たち『象徴』もまた、我々と共に『無』に還るべきだったのではないか?)」
「…ふざけんな!」
すいせいが、声の主に向かって叫んだ。
「あんたが勝手に絶望しただけだろ! あたしたちの『日常』を、あたしたちの『夢』を、あんたの『虚無』と一緒にするな!」
「(…そうか。それが、お前たちの『意志』か)」
「王」は、理解した。
「(ならば、その『意志』を、お前たちの『過去』で、上書きしよう)」
UDXの歪んだ空間から、黒いノイズが染み出し、二つの「人影」を形作った。
それは、ヒスでも、スクリーマーでもない。
「(嘘…でしょ…?)」
みこちは、目を見開いた。
そこに立っていたのは、「さくらみこ」と「星街すいせい」だった。
ただし、それは「ノイズ」によって再構成された、「絶望の記憶」のレプリカ。
「(お前は、いつもそうだ)」
レプリカの「みこち」が、本物のみこを指差す。
「(いつもポンコツで、いつも失敗して、みんなに迷惑をかけて…お前なんかが『エリート』であるはずがない)」
「ひっ…」
それは、みこちが心の奥底で恐れていた「自己否定」の具現だった。
「(お前も、そうだ)」
レプリカの「すいせい」が、本物のすいせいに冷たい視線を向ける。
「(お前がどれだけ歌っても、誰も見ていなかった。お前は、あの時、一人だった。今も、そうだ。お前は、いつだって『孤独』だ)」
「…っ!」
すいせいの手が、微かに震える。デビュー前に抱えていた、焦燥と孤独の記憶。
「王」は、秋葉原に蓄積された「人々の記憶(=ネットのアーカイブ、配信のログ)」から、彼女たちの「最も暗い記憶」を読み取り、それを核とした「アンチ・ホロライブ」を生み出したのだ。
「うるさい、うるさい、うるさい!」
すいせいの怒りが、恐怖を上回った。
「あたしは、もう一人じゃない!」
「『流星の突破(ステラ・ブレイカー)』!」
青い流星と化したすいせいが、レプリカの「すいせい」に突撃し、テトリミノブロックの連打で粉砕する。
「みこち! 一緒に戦うぞ!」
「に、にぇ!」
みこも、恐怖を振り払い、足元の瓦礫を掴む。
しかし、粉砕されたレプリカの「すいせい」は、瞬時に元の姿に再構成される。
「(我々は『記憶』だ。物理的な破壊に、『意味』は無い)」
レプリカの「みこ」が、みこの直感を「上書き」し、無効化する。
「(お前の『直感』も、所詮は『まぐれ』だ)」
「あ…」
みこの力が、封じられる。
「(終わりだ。お前たちの『光』は、ここで消える)」
二体のレプリカが、絶望のオーラを放ちながら、本物の二人に迫る。
すいせいの「剣」も、みこの「直感」も、自らの「絶望の記憶」を核とした「アンチ」には、決定的なダメージを与えられない。
「(ヤバい、ヤバい、ヤバい!)」
みこちの「直感」が、別の「最悪」を感知する。
「(コアだ! レプリカが、あたしたちを足止めしてる間に、コアとの『融合』を加速させてる!)」
「(このままじゃ、サンクチュアリが…アキバごと、消し飛ぶ!)」
万事休す。
みこちは、浅草寺にいるはずの仲間たちに向け、最後の「祈り」であり「警報」である「念話」を放った。
「ダメだ! サンクチュアリのコアが…『何か』に喰われてる!」
「(ここまで、か…!)」
すいせいが、消耗しきったみこちを背後にかばい、最後の力を振り絞ろうとする。
二体の「レプリカ」が、二人を「虚無」に還そうと、手を伸ばした。
その瞬間。
「――そうは、させないッスよ!!」
UDXの巨大なガラス窓を突き破り、黄金の「オーラ」を纏った「誰か」が飛び込んできた。
「(スバル!?)」
大空スバルだった。
「『不屈のチアアップ(サニー・エール)』!」
スバルの「応援」の波動が、みことすいせいの「絶望の記憶」を、強引に「希望」で上書きしていく。
「(え…? 身体が、軽い…!)」
「(『孤独』の記憶が…消えてく…?)」
すいせいとみこちの力が、瞬時に回復していく。
「遅くなってごめん! アキバ、制圧!」
続いて、UDXのエントランスに、十七の「光」が雪崩を打って突入してきた。
「風真、活路確保!」
いろはが、ノイズの空間を切り裂き、安全な「道」を固定する。
「クロエ、おかゆ、敵の『核』は!?」
フブキが集結令で指示を飛ばす。
「(多すぎる! けど、あの『レプリカ』二体は、他とは『味』が違う!)」
おかゆが、ステルスで敵の性質を見抜く。
「(みこちとすいせいの『記憶』が核…なら、『掃除』はできない。本人たちの『意志』が必要だ)」
クロエが、そう結論づける。
「フブキちゃん! みんな!」
みこちが、涙声で叫ぶ。
「(邪魔を…するな…!)」
「王」が、UDXの広場全体に、無数の「アンチ・ホロライブ(レプリカの群れ)」を生成し始めた。
「ラミィちゃん! ぐらちゃん!」
「(はい! 『雪夜の抱擁』!)」
ラミィが、広範囲に雪を降らせ、仲間の精神汚染を防ぐ。
「(EAT!)」
ぐらが、雑魚のレプリカを片っ端から「捕食」し、エネルギーに変えていく。
「シオン! あやめ! かなた! ぼたん!」
スバルの「チアアップ」を受け、シオンの魔力が爆発する。
「『魔力の障壁』! みんなを守れ!」
あやめが、UDXのエントランスに「鬼哭の結界」を張り、敵の増援を遮断する。
かなたが「天圧の防壁」で瓦礫の盾を作り、ぼたんが「狙撃」で、指揮官格のノイズを正確に排除していく。
「ちょこ先生! ころさん! マリン船長! ぺこら!」
「(全員のバイタル、スキャン! 消耗してる子を優先して!)」
「(ぺこらの『冗談』、スバルの『バフ』で強化されてる! 『お前ら全員、動くなぺこ!』)」
「(よし、宝の匂い(=コアの入口)は、あの地下だ!)」
「(ころねは、そら先輩の盾になる!)」
十七人の「導きの力」が、みこちとすいせいを守るように展開される。
「王」が生み出した「アンチ・ホロライブ」の群れは、圧倒的な「本物」の光の「共鳴」の前に、為すすべもなく浄化されていった。
ついに、アキバUDXの広場に、二十名の「導きの手」が、一堂に会した。
レプリカの「みこち」と「すいせい」は、スバルたちの援護を受けた「本物」の二人の前に、後ずさっていた。
「あんたの言う通りだよ」
すいせいが、レプリカの「すいせい」に向かって、静かに言った。
「あたしは、怖かった。ずっと孤独だった。…でも!」
彼女は、隣に立つみこ、そして、集まった十八人の仲間たちを見渡した。
「今は、一人じゃない!」
すいせいの「流星の突破」が、かつてないほどの輝きを放つ。
「みこも、ポンだにぇ!」
みこちが、ノイズの「みこち」に向かって、胸を張った。
「いっぱい失敗する! でも、その度に、みんなが助けてくれた! だから、みこはここにいる!」
みこちの「エリートな直感」が、ノイズの「核」の、その先にある「サンクチュアリの最適解」を、はっきりと捉えた。
二人の「本物の意志」が、「絶望の記憶(レプリカ)」を上回った瞬間、二体のレプリカは、光となって消滅した。
「(…解読、完了しました)」
らでんが、UDXの地下へ続く、シミュレーターのメインフレーム(壁)に触れ、仲間たちに告げた。
「みこさんの直感通り、コアは『融合』の最終段階です。ですが、レプリカもまた、私たち二十人の『光』の集結を『予測』していなかった。コアは、今、最大の『拒絶反応』を起こしています」
「どういうことだにぇ?」
「このままでは、暴走します。ですが、この『拒絶反応』こそが、私たちがあの『王』を、コアから『切り離す』、唯一のチャンスです」
「(…よく、ぞ、集まっ、た…)」
地下の奥深くから、「王」本体の、憎悪に満ちた「声」が響き渡る。
「(だが、手遅れだ。この『聖地』は、お前たちの『墓場』となる…!)」
広場全体が、凄まじい「虚無」の圧力に包まれる。
だが、二十人の「導きの手」たちは、一歩も引かなかった。
ときのそらが、仲間たちの中心に立つ。
彼女は、みことすいせいの手を握り、そして、集まった全員の顔を、一人ひとり、確かめるように見渡した。
「全員、揃ったね」
その言葉を合図に、二十人の「導きの力」が、一つの巨大な「光の柱」となって共鳴(レゾナンス)した。
そらの「歌声」、フブキの「集結」、みこちの「直感」、すいせいの「突破」、あやめの「結界」、シオンの「魔力」、スバルの「応援」、ちょこの「医療」、ミオの「占い」、おかゆの「隠密」、ころねの「耐久」、ぺこらの「言霊」、マリンの「羅針盤」、かなたの「防壁」、ラミィの「聖域」、ぼたんの「統率」、クロエの「掃除」、いろはの「活路」、ぐらの「捕食」、らでんの「解読」。
二十の光が一つに重なり、アキバの「虚無」を、一時的に吹き飛ばした。
その輝きは、地下深くに眠る「王」への、明確な宣戦布告だった。
読んでくれてありがとうございました。
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書き溜め分を一気に投稿することにしました。
第1部はここで一旦完結です。
(第2部・第3部はまた改めて……と考えています)ホロライブ非公式二次創作・非商用
登場人物は全てフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。