ホロライブ・レゾナンス 〜仮想(アバター)の力で日常を取り戻す〜 作:miyacchi_novel
【秋葉原UDX・エントランスホール】
二十の「光」の「共鳴(レゾナンス)」が放った波動は、「王」本体の「虚無」の圧力と激しく拮抗し、一瞬の静寂(ラグ)を生み出していた。
「(…よくぞ、集まった…)」
地下深くから響く「王」の声は、怒りよりも、むしろ「歓喜」に近い歪んだ響きを含んでいた。
「(『希望』が多ければ、『絶望』もまた深くなる。お前たち全てを、ここで『虚無』に還し、我は完全なる『王』となる…!)」
「王」は、決戦の時を悟った。
地下深くのコアサーバーと、自らの「絶望の記憶(レプリカ)」を完全に融合させ、アキバ・サンクチュアリを「虚無の炉心」へと変貌させるため、一時的にその活動を「沈静化」させた。
それは、嵐の前の静けさ。
UDXを包んでいた空間の「歪み」が、わずかに和らぐ。
「…引いた、のか?」
すいせいが、テトリミノの残光を揺らしながら呟く。
「いいや、違う」
ぼたんが、建物の構造を冷静に分析しながら首を振る。
「我々を、地下(サンクチュアリ)へ『誘い込んで』いる。ここで決着をつけるつもりだ」
「(…解読、完了)」
らでんが、UDXのメインフレーム(壁)から手を離した。彼女の瞳には、膨大な「情報」が流れ込んだ疲労の色が浮かんでいる。
「『王』は、コアとの最終融合に入りました。暴走(タイムリミット)まで、おそらく…日の出まで。夜明けが、最後の期限です」
「夜明け…」
そらが、ガラスの割れた窓から外を見た。ノイズの砂嵐に覆われた空は、時間感覚すら麻痺させる闇に包まれている。だが、この世界にも「朝」は来る。
「(時間がない…。でも、みんな、消耗しきってる…!)」
フブキは、集結した仲間たちの顔を見渡した。
北から休む間もなく南下してきたラミィとぐら、ミオ。
渋谷までの強行軍と、アキバへの突入を強行した渋谷アライアンス。
そして、デリーター・ODとの死闘を繰り広げ、かろうじて回復した かなた と、彼女を守るために限界を超えた そら、ころね、おかゆ、クロエ、マリン。
「(このままじゃ、突入しても、各個撃破される…!)」
フブキの「集結令」が、全員の疲労度と精神汚染度を「共有」し、彼女に警鐘を鳴らす。
「あやめちゃん! ぼたん!」
「(応!)」
「このUDXは『王』の巣だ。長居はできない! この近くで、全員が安全に休息し、作戦を立てられる『聖域(セーフゾーン)』は!?」
「任せろ!」
ぼたんの「統率力」が、疲弊したメンバーの精神を束ねる。
「このUDXを見下ろせる、アキバで最も『守り』に適したビルがある。私の『縄張り(テリトリー)』だ」
「余の『結界』も、そこになら張れる。土地の『記憶(ちから)』がまだ残っておる!」
あやめが頷く。
「よし!」
フブキは、集まった全員に「念話」を飛ばした。
「これより、アライアンスは一時後退! 作戦会議(ブリーフィング)の『拠点』へ移動する!」
【旧・秋葉原ダイビル・高層階】
ぼたんが指定した「拠点」は、UDXから中央通りを挟んで向かい側にある、高層ビル(=旧・秋葉原ダイビル)だった。
大静寂の混乱で、その高層階は半ば崩落していたが、鉄骨は頑強に残っており、アキバ全域、特にUDXの地下へ続く全てのルートを一望できる、完璧な「狙撃地点」であり「司令塔」だった。
「(『風切の活路(カゼキリ・ルート)』! 周辺のヒス、掃討!)」
「(『ステルス』展開。追撃してくる『レプリカ』の気配は、ないね)」
「(『雪夜の抱擁』展開! ビルの周囲を凍らせる!)」
いろは、おかゆ、ラミィが、移動ルートと「拠点」の周囲の安全を確保する。
高層階の、だだっ広いカンファレンスルーム。
そこが、二十人の「導き手」たちが集う、最後の「作戦室」となった。
あやめが、ビルの四方に「鬼哭の結界」を張り、ノイズの物理的侵入を遮断する。
ぼたんが、ビルの屋上に陣取り、「縄張り」の索敵網を最大範囲に広げ、UDXの「王」の微細な動きすら監視する。
「(…少し、休んで)」
ラミィが「聖水」を、消耗の激しいメンバー(特に、かなた、ころね、シオン)に配っていく。
「(あたたかい…)」
「(魔力が、戻ってくる…)」
ちょこもまた、「悪魔のカルテ」で、戦闘で負傷したメンバーの応急処置にあたっていた。
「外傷は治せる。でも、ラミィちゃんの『癒やし』がなければ、精神汚染が先に『核(コア)』を壊してた。ありがとう」
「ううん。ちょこ先の『技術』がなければ、かなたちゃんは助からなかった」
医療の「聖」と「魔」が、互いを認め合う。
「(…これ、食うか?)」
戌神ころねが、どこからか「徴収」してきた(と思われる)、パッケージのままの乾パンを、ぐらに差し出す。
「(! うまい!)」
ぐらが、喜んでそれに食いつく。
二人の「耐久型」と「捕食型」の間にも、静かな絆が芽生えていた。
「(おいぺこら! お前の『言霊』、スバルの『応援』があると強くなるらしいじゃん!)」
「(へっへっへ。みこちの『直感』とどっちが上か、決着をつける時が来たぺこ…!)」
「(なんでそこで張り合うんだにぇ…)」
ぺこら、スバル、みこが、緊張感の中、あえていつもの「日常」のように軽口を叩き合う。
その「日常」の風景こそが、彼女たちの「意志」を何よりも強くしていた。
作戦室の中心。
焚き火(シオンが「魔力の捻出」で生み出した安全な熱源)を囲み、中核メンバーが最後のブリーフィングを開始した。
「らでんちゃん。現状を」
フブキの促しに、らでんが頷いた。
「まず、…あの『王』の正体から」
彼女は、UDXのメインフレームから「解読」した情報を共有する。
「あれは、厳密にはノイズではありません。サンクチュアリのコアサーバー(=認識改変シミュレーター)そのものが、アキバに集積した『絶望の記憶』を吸収し、暴走した『擬似的な高次元存在』です」
「どういうことだってばよ…」
「平たく言えば、『ホロアース』のAIが、大静寂の『虚無』に感染して、世界を『クソゲー』だと判断し、全データの『デリート』を始めた…というようなものです」
らでんの例えに、ゲーマーズ(フブキ、ミオ、おかゆ、ころね)が顔をしかめる。
「(つまり、あの『王』は、サンクチュアリの『システム』そのものと融合してるってことか?)」
すいせいの問いに、らでんは「イエスであり、ノーです」と答えた。
「『王』は、私たち二十人の『光』の集結を『脅威』と認識しました。だから、コアと『融合』して、私たちごと日本全土の『認識』を『虚無』で上書きしようと急いでいる。…ですが、その『融合』は、まだ完全ではない」
彼女は、拾い集めた石版の欠片(浅草寺の伝承)と、UDXの設計図の残骸を並べた。
「伝承によれば、『大いなる静寂』の度に、『巫女』たちは『歌』で『楔(くさび)』を打ち直してきた、と」
「巫女…」
そら、みこ、あやめ、ミオが、無意識に反応する。
「私たち『導き手』の力は、旧世界の『巫女』の力の『レプリカ』なのかもしれません。そして、このサンクチュアリは、その『歌』を増幅するための、旧世界の『祭壇』」
らでんが、結論を述べた。
「『王』を、コアから『切り離す』方法。それは、サンクチュアリの再起動シーケンスを『手動』で実行すること」
「手動?」
「はい。ですが、そのシーケンスの『起動キー』は、物理的なものではありません。それは、『意志』の力…」
らでんは、集まった二十人全員を見渡した。
「『二十の魂の共鳴(トゥエンティ・ソウルズ・レゾナンス)』」
「サンクチュアリを再起動するには、私たち二十人全員が、それぞれの『役割』を完璧に果たし、その『意志』を、コア中枢にいる『起点(=そらさん)』へと、寸分の狂いもなく『接続(レゾナンス)』させる必要があります」
「私…が…?」
そらが、自らを指差す。
「はい。そら先輩の『原初の歌声』こそが、再起動の『最後の鍵(マスターキー)』です。ですが、その鍵を『鍵穴(コア)』に差し込むためには、残る十九人が、それぞれの『力』で、『王』の妨害を排除し、『道』を開かなければならない」
「話は、見えた」
フブキが立ち上がり、地図(瓦礫の中からマリンが「徴収」してきた、UDXの地下構造図)を広げた。
「やることは一つ。そらちゃんたち『中枢チーム』を、地下最深部の『コア』に送り届ける。そのために、私たちは四つのチームに分かれる!」
フブキと、サブリーダー格の ぼたん、ミオ が、即座にメンバーの適性を見抜き、チームを編成していく。
「第一班:『突破(ブレイカー)』チーム!」
フブキが、四人の名を呼んだ。
「星街すいせい! 戌神ころね! がうる・ぐら! 兎田ぺこら!」
「(おう!)」
「(ん)」
「(EAT!)」
「(任せろぺこ!)」
「あんたたちは、最前線だ!」フブキが地図を叩く。「UDX地下は、『王』が生み出す『レプリカ(アンチ・ホロライブ)』の軍勢で満ちている。すいちゃんの『剣』、ころさんの『盾』、ぐらちゃんの『牙』で、敵の防衛網を正面から食い破れ!」
「ぺこらは?」
「ぺこらの『言霊(ジョーク)』は、最強の『不確定要素(ワイルドカード)』だ。あんたの『冗談』で、敵の『法則(ルール)』そのものを引っ掻き回せ! ころさんたちへの援護を頼む!」
「第二班:『防衛・誘導(ガーディアン)』チーム!」
「天音かなた! 百鬼あやめ! 猫又おかゆ! 大空スバル! 風真いろは!」
「(回復したてだけど、任せて!)」
「(余の結界、見せてやる)」
「(ステルスで、安全な道(ルート)を視るよ)」
「(みんなの背中は、スバルが守るッス!)」
「(活路、開きますでござる!)」
「あんたたちは、アライアンスの『動脈』だ」フブキが告げる。「いろはの『活路』と おかゆの『ステルス』で、後続チームの安全なルートを『固定』し続けろ。かなたの『防壁』と あやめの『結界』で、崩落する天井や、側面からの奇襲から、全チームを守れ。そして、スバル!」
「(応!)」
「あんたの『チアアップ』は、全チームの『生命線』だ。誰一人、脱落させるな!」
「第三班:『支援・回復(サポート)』チーム!」
「癒月ちょこ! 紫咲シオン! 雪花ラミィ! 獅白ぼたん! さかまたクロエ!」
「(悪魔のオペを開始する)」
「(魔力(MP)なら、スバルのおかげで有り余ってんだよ!)」
「(みんなの『心』は、ラミィが守ります)」
「(あたしの『銃』が火を吹くよ)」
「(『掃除』の時間だね)」
「あんたたちは、この『拠点』と『戦場』を繋ぐ『神経』だ」フブキが指示する。「ちょこ先生、シオン、ラミィは、防衛チームと連携し、負傷者と消耗したメンバーを『即時回復』させ、戦線を維持しろ。…そして、ぼたん、クロエ」
「(ああ)」
「(…わかってる)」
「あんたたち二人は、遊撃手(ハンター)だ。ぼたんの『狙撃』と クロエの『掃除』で、指揮官格の『レプリカ』や、『王』が仕掛けてくる『トラップ』の『核』を、『排除』しろ。おかゆと連携し、敵の『目』と『耳』を潰せ」
「そして、第四班:『中枢(コア)』チーム」
フブキは、最後に残った五人の仲間と、自分自身を見据えた。
「ときのそら! さくらみこ! 大神ミオ! 儒烏風亭らでん! 宝鐘マリン! そして、あたし、白上フブキ!」
「(…うん)」
「(みこに任せろにぇ!)」
「(運命は、ウチらが掴む!)」
「(解読の『仕上げ』を)」
「(『お宝(サンクチュアリ)』、いただくよ!)」
「あたしたちの任務は、サンクチュアリの『再起動』。だが、そこは『王』本体が待ち受ける、最悪の『魔境』だ」
フブキは、地図の最深部を指差す。
「らでんさんの『解読』と マリンの『羅針盤』で、欺瞞(イリュージョン)の迷宮を突破する。みこちの『直感』と ミオしゃの『占い』で、『王』の精神攻撃を回避し、『最適解』のルートを導き出せ」
「そして、あたしの『集結令』で、私たち中枢チームと、支援・防衛・突破の全チームの『意志』を『同期』させ続ける」
フブキは、そらの両肩を掴んだ。
「そらちゃん。そらちゃんは、最後の瞬間まで『歌う』ことだけを考えて。そらちゃんが『鍵』を差し込む、その瞬間(コンマ1秒)は、あたしたち十九人全員が、命を懸けて作り出す!」
編成が、完了した。
二十人の「導き手」たちは、四つのチームに分かれ、それぞれが最後の休息と、装備(=自らの能力)の確認に入った。
作戦室(カンファレンスルーム)の窓際。
ときのそらは、一人、ノイズの闇に沈むアキバの街を見下ろしていた。
「(私が…起点…)」
フブキの言葉が蘇る。
「…そらちゃん」
静かな声に振り返ると、そこに、すいせいが立っていた。
「すいちゃん…」
「フブキのやつ、大袈裟なんだよ」
すいせいは、そらの隣に立つと、同じようにアキバの闇を見下ろした。
「『そら先輩が鍵だ』? 違うね」
「え?」
「あたしたち二十人全員が『鍵』で、そら先輩は、その二十個の鍵を束ねる『キーホルダー』みたいなもんでしょ」
「キーホルダー…?」
「そう。鍵が一個でも欠けたら、扉は開かない。そら先輩一人に、全部背負わせるわけないじゃん」
すいせいは、そらの肩を軽く叩いた。
「だから、そら先輩は、あたしたち十九人を『信じて』、ただ歌えばいい。道は、あたしが作る。盾は、ころねがなる。みんな、自分の『役割』をやる。…それだけだよ」
「…すいちゃん…」
「(そうだよね…キーホルダーか…)」
「(私一人じゃない。二十人、みんなで『繋がる』んだ)」
「…そらちゃん、すいちゃん」
フブキが、静かに二人を呼んだ。
作戦室の中心では、ミオが「占い」で、最も『吉』となる突入時刻を計り、らでんが「再起動シーケンス」の最終確認を行っていた。
「夜が、明ける」
ぼたんの「縄張り」が、東の空のノイズの向こう側に、ほんの僅かな「光」の兆候を感知した。
作戦決行の朝が、来た。
「みんな、行こう」
ときのそらが、仲間たちに向かって、今、できる最高の笑顔を見せた。
「私たちの『日常(アキバ)』を取り戻すために!」
読んでくれてありがとうございました。
感想・ブクマ・評価、何でも嬉しいです。
書き溜め分を一気に投稿することにしました。
ホロライブ非公式二次創作・非商用
登場人物は全てフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。