SYNDUALITY -ブラックウィドウ・スクワッド- 作:空き缶号
ジンとヒルデがガレージを去った後、エミはレビンと共にシャワー室へ向かった。入浴設備は受刑者とメイガス共用で、本来使用時間は分けられているが、今回2人は一緒に入浴することにした。監督官のアルマンとジュリーはそこまで気にしないだろうし、何より死体を運ぶのを手伝ったので、早く臭いを落としたい。死者への敬意と、屍臭への嫌悪感は別問題だ。
「……レビンちゃんてさ、『死ぬ』ってことをどう思ってる?」
脱衣場で、ふと尋ねるエミ。レビンは「うーん」と少し考えた。
「そうですね……私を含め、メイガスの『死』に対する感覚は、人間とそれほど変わらないと思います。カフカさんのような特殊な死生観を理解するのは難しいですが」
「死ぬのは怖い?」
「多分ですけど、自分が死ぬこと自体への恐怖は人間より薄いと思います。どちらかと言えば、自分が死ぬことでユナイターが不利益を被るのが怖い、だから死にたくない……という感覚でしょうか」
「そういうもんか」
言葉を交わしながら、手早く服を脱いで、洗濯機へ放り込む。エミはジャケットの裏に隠した拳銃とナイフがレビンに気づかれないよう、慎重にジャケットを畳んで籠に入れた。
レビンは黒い制服以外はメイガス用の汎用インナーを着用しており、一般ドリフターのメイガスと違いファッションの自由は無い。
「ユナイターはお兄さんを亡くされたんですよね。他のご家族は?」
「親は顔も見たことが無いね。後はレビンっていう犬が家族だった」
「ああ、それが私の名前の由来だったんですね」
自分の名前が犬の名前だと知っても、レビンは特に驚かなかったし、嫌がりもしない。地下でペットを飼える人間は限られているが、昔飼っていた犬や猫等の名をメイガスに付けるドリフターは一定数いるのだ。
「近所の人の話じゃ、あーしと兄さんは赤ん坊の頃、子犬に混じってレビンのお乳を飲んで育ったんだって」
「本当ですか!?」
「嘘に決まってるでしょーが」
ケラケラと笑いながら、エミはふと、概ね裸になったレビンを見た。
メイガスの体は喉に露出した端子を除けば人間と変わらぬ外見で、戦闘兵器として最適化されたジン・カフカの無骨な肉体とは真逆だ。今は互いに背中を向けて着替えていたが、前面にはアンドロイドの機能上意味の無い『へそ』も再現されている。
強いて人間と違う所を挙げるなら……
「……肌、めっちゃキレイ」
滑らかな背中を見つめ、エミはポツリと呟いた。質感は本物の少女の肌と変わらないが、同時に生物では維持困難な美しさである。体を構成する急過ぎない曲線も芸術的だ。
いたずら心を起こし、その中央を通る背骨のラインを指でなぞると、レビンはゾクっと震えた。
「もう、ユナイターったら」
「ごめんごめん、こういう神経も人間と同じなんだねー。さて、パパッと浴びちゃおう」
エミが先立ってシャワー室に入ったので、レビンもまた彼女の背中を見ることになった。
それはメイガスの体とはまた違った意味で芸術的だった。少女の背中一面が、鮮やかな彫物で彩られていたのだ。東洋の桜の花が咲き乱れ、そこを2羽の白い鳥が羽ばたいている……エミの、先祖の故郷の絵だ。
更生プログラムに参加するにあたり、レビンはこうしたタトゥー文化は反社会的なものと学習していた。体に派手な彩色を施すことで、一般社会の人々から避けられるよう仕向け、「自分の居場所は同じ集団の中にしか無い」と思い込ませる手段であると。
しかしレビンは、エミの背中に広がる光景に見入ってしまった。羽ばたく白い鳥も、桜の花も美しいが、目が留まったのはその鳥たちが嘴に咥えているものだ。
片方は、白地に赤い丸の描かれた旗。もう片方の嘴には、赤・白・緑のストライプの旗。全体からすれば小さな部分だが、レビンは特に3色の旗に心惹かれ……
思わず、指先で触れた。
「うおっ、仕返しされた!」
「あ、えっと、ごめんなさい!」
慌てるレビン。人間的情動や、生物特有の勘や本能を備えているメイガスだが、無意識のうちに行動することはほとんど無い。それではAIのメリットが無いのだ。
今の行動はその、極めて珍しい例だった。
「その……この絵は……」
「ああ、鶴っていう鳥だよ。あーしらの先祖は、この鳥は1000年生きると思ってたらしくてさ。縁起の良い鳥なの」
「この……旗は?」
「旗? ……ああ」
エミは手を背中に回して、その旗が描かれた辺りを指差した。
「こっちが日本、こっちがイタリアの国旗。あーしが入ってるの、ライジングサンズっていう日系人ギャング団なんだけど、イタリア系の人たちと同盟組んでてね」
「イタリア……すみません、何だか、気になったので」
「……レビンちゃん。あんたさぁ」
笑顔を浮かべて話を終わらせようとするレビンを見て、エミは彼女の方を向き直った。前から思っていたことを尋ねようと思ったのだ。
「初陣でエラー吐いたとき、イタリア語っぽいことを口走ってたの、覚えてる?」
「……私が、ですか? あの時のことは、あまり記憶に残っていなくて……」
「あーしの前に組んでた契約者が、イタリアと縁のある人だったんじゃない?」
「え……」
レビンは目を見開き、ピタリと固まった。赤い瞳に裸のエミが映り、唇が微かに動いた。瞬きすらしないその姿に、もしやまたエラー落ちかと心配したが、直後にレビンは頭を横に振った。
「ユナイター。ヒルデと同じように、私にも前の契約者がいるとお考えですか?」
姿勢を正して、全裸なことを除けば真剣な様子で質問するレビン。今日回収されたドリフターの遺体が、ヒルデの前のユナイターだろうということは、ジンから説明されていた。だからエミも運ぶのを手伝ったのだ。
「客観的に見て、そうだと思う。断片的にその記憶が残ってて、それがエラーの原因だって」
「確かにそうかもしれません。けど、今のユナイターは貴女で、貴女こそが最優先すべき人です」
「……けどさぁ。前の相棒のことを無理やり忘れさせられたんでしょ? そんなのって……」
「私はメイガスです」
エミの言葉を遮り、レビンは毅然と言った。
「以前に別のユナイターがいたとしても……ヒルデを悪く言いたくはないですけど……ユナイター、過去のために貴女を危険に晒すくらいなら、全てを忘れた方がいい」
「んな……あーしが死んだら、次の相棒にもそれ言うの?」
しばし流れる、沈黙。レビンは拳を握りしめていた。
「……初出撃の後、私もタンヤンもヒルデも、みんな辛かったです。私たちのエラーのせいで、皆さんを危険に晒した。メイガスとしてこれ以上の恥も苦しみもありません」
「原因を突き止めれば、エラーも防げるかもしれないじゃん!」
「悪化する可能性だってあります! ジュリーさんに定期デバッグの頻度を増やしてもらって、可能であれば残った記憶の消去を試みた方がリスクは少ないです!」
「そんな……」
言いかけた瞬間、エミは顔を歪めた。そして特大のくしゃみが出た。咄嗟に顔を背けたので、目の前にいるレビンに鼻水と唾を直撃させずに済んだ。
「……もう。私は大丈夫ですけど、ユナイターは風邪を引いちゃうじゃないですか」
苦笑しながら、早くシャワーを浴びようと促すレビン。まだまだ言いたいことはあるが、エミも従うことにした。流石にいつまでも全裸で口論するのは女子としてどうかと思うし、シェーフォンやタンヤンが順番待ちをしているのだ。
「ユナイター。貴女はとても優しい人です」
「知ってるよ。だから悪事から足を洗え、って言うんでしょ?」
「預言者さんの言葉で『良き隣人なら隣人の過ちを正すべき』という部分だけは賛成ですから。でも今は言わないでおきます」
エミはふと考えた。メイガスとて所詮は人間モドキのAIであり、人間の幸いとAIの幸いは違うのだろうか、と。自分がレビンのためにやろうとしていることも、所詮はエゴなのかも知れない。
だが。
「ちょっ、ユナイター! いきなりどこ触ってるんですか!?」
「いやあ。ジュリーさんほどじゃないけど、羨ましいなー、って」
「もうっ、そんなことするなら触り返しますよっ。このっ、このっ」
こんな彼女を機械として扱えというのは無理だ。犬のレビンが、エミにとってはただの動物ではなかったのと同じように。
それに、スラムでイタリア系の人々と交流してきたエミは、彼らが旧アメイジア時代をどう生き抜いてきたのか知っている。
地中海は最初に青い雨が降り出した地域のため、生存者は特に少なかった。だからアメイジア建国後も、イタリア系住民は自分たちの文化を後世に残すべく必死だった。
だが全体主義のアメイジア政府はそうした『民族性』が害になると見做し、反発した彼らは地上へ帰るか、スラムへ落ち延びたのである。他の民族の文化を受け継ぐ人々もそれに続き、エミの故郷たるアトランティス・ネストはどんどん大きくなっていったのだ。
そんな街で育ったエミは、レビンのかつてのユナイターが他人とは思えなかった。例え会ったことが無くても。
あの日、レビンから聞いた言葉……「自分を見放した時が敗北の時だ」という言葉がその人の物ならば、きっと最期まで戦い続けたのだろう。
その生きた証は、最早レビンの中に残った記憶の断片しかないのだ。
「……サイカさんたち、遅いね」
「まー、女の子たちはこういうの時間かかるでしょ。日系人は風呂好きらしいし」
ガレージのリビングスペースでは、残されたシェーフォンらがシャワー室の順番を待っていた。
タンヤンは普段から、他2人と比べてユナイターとの距離が近い。流石にベタベタし過ぎだとヒルデに指摘されているが、改める気は無いようだ。今回は悲劇的なものを見たせいか、尚更シェーフォンに密着し、その腕に抱きついている。
「ね、ユナイターは今、ボクのこと女の子だと思う? 男の子だと思う?」
近距離から囁くように尋ねるタンヤン。Eine型には性別が決まっておらず、その点は契約者が好きなように扱って良いことになっている。タンヤンの容姿も、服装や髪型次第で男女どちらにも見える中性的なものだ。
シェーフォンは少し考えた。
「……どっちかと言うと、女の子かな」
「そっか。男同士なら、ハダカの付き合いで一緒にシャワー浴びれたのになー」
「まじか。じゃあシャワー室でだけ男の子扱いするわ」
「へへ、やった」
嬉しそうに甘えてくる彼女……あるいは彼の頭を、シェーフォンは優しく撫でた。どことなく懐かしそうな目をして。
やがて、タンヤンは鼻歌を口ずさみ始めた。ゆったりとしたメロディーだ。聞き覚えがあるな、と思ったが、すぐにエミがハーモニカで吹いていた曲だと気づく。彼女は確か、『あめふり』と呼んでいた。まだ雨に死の毒が混ざる前、余程のことが無ければ傘一つで出歩けた時代の歌だ。
気に入ったんだな、と思いながら、ふと以前組んでいたメイガスを思い出す。彼女もよく歌を口ずさんでいた。大抵は少し前に流行ったアイドルメイガスの曲で、よく感想を聞かれた。
自分がどんな目に遭っても、彼女さえ生きていてくれたら、あんなことはしなかったかもしれない。復讐なんて彼女は喜ばないだろう、とても優しい子だったから。
しかしそれでも……まだ復讐は終わっていないし、終わりにはしない。
その時。
メイガスの心地よい鼻歌を遮って、ガレージの隅の通信端末が鳴った。
「あ、ボクが見てくる」
素早く立ち上がって、端末へ向かうタンヤン。こうした切り替えの速さはやはりアンドロイドと言ったところか。
傍に寄り添っていた温もりが無くなり、シェーフォンは小さく溜め息を吐いた。が、その後通信端末から聞こえた声で、不快感は数倍に増した。
「はい、こちらドリフター振興協会社会福祉……」
《シェーフォン・ウーはいるか?》
「はい、おります」
《協会特殊作戦室のライフォン・ウーからだと伝えろ。彼の弟だ》
「……受刑者との通話には、監督官の許可が……」
《黙れ。僕の父は特殊作戦室の室長だぞ。さっさと取り次げ》
若い、傲岸な男だった。ホログラムで投影された顔は一見、アジア系の優男と言った風貌だが、その口調は明らかにメイガスを物として扱っている。実際のところ、そうした人間は一定数いるのだ。
「
古い言葉で悪態を吐きながら、シェーフォンは通信端末へ向かった。
「……何の用?」
忌々しげなシェーフォンに対し、ライフォン……彼の弟は嬉しそうに笑顔を浮かべる。
《兄上! 開口一番にそれは無いだろ。時間ができてようやく連絡できたんだ》
「用は?」
《様子を知りたかったんだよ。ずっと僕にも父上にも連絡しなかったじゃないか。心配していたんだ》
先ほどまでとはガラリと態度が変わっている。そのことが、尚更シェーフォンを苛立たせる。
「ならもう様子は分かっただろ。消えろ」
《そう言うなよ。できれば直接、面会に……》
「来たらぶん殴……ぶっ殺す。お前だろうとクソ親父だろうと」
《……兄上。腹違いとはいえ、昔はいつも一緒に遊んだじゃないか。あの頃の兄上じゃない》
ライフォンの顔から笑顔が消えた。ゆっくりと言い聞かせるような口調で話を続ける。
《メイガスを壊されたくらいで、幹部を殺すなんて……きっと、今までのドリフター活動でPTSDになってるんだよ。治療が必要……》
「精神鑑定では正常だと判断されたよ。彼女は……シィユェは親兄弟より大事な家族だった」
普段の飄々とした様子はどこへ消えたのか。その言葉と眼差しには、明らかな憎悪と嫌悪が渦巻いていた。
「オレの女が殺されたんだ。仇を討てないなら、ナニを切り取って男を辞めた方がマシさ」
《兄上……》
「誰にでも股を開く売女の腹から生まれたお前には、分からないだろうよ」
ライフォンの目が見開かれた。唇がわなわなと震え出す。
《……兄上、今何て言った?》
「言うまでもなく知ってるはずだ。お前の母親はオレの母上から亭主を寝取った売女だろうが」
《なら兄上は何なんだ、メイガス相手に『自分の女』だなんて……》
「人間の女より遥かにマシだ。お前の母親に肉体関係を迫られてから、ずっとそう思ってる」
《な……!? う、嘘だ、母上がそんな……!》
愕然とする弟を、シェーフォンは鼻で笑った。
「それともう1つ。オレとシィユェを捨て駒にしたジジイは殺ったが、直接手を下した奴がまだだ」
《……まだウー家の名を穢すのか?》
「ああ、それも目的だよ。草の根分けてでも奴を見つけ出して殺す。既に死んでいたら墓を暴いて、骨を便所にバラ撒いてやる。覚えておけ」
その言葉を最後に、端末の終了ボタンを殴るように押す。ホログラムと音声は消え、シェーフォンはふーっと息を吐いた。再び側へ寄り添ってくる現在の相棒に、笑顔を作ってみせる。
「怖い思いさせちゃってごめん。ぶっ殺……ぶん殴りたい相手のホログラムって一番ムカつくんだよねぇ」
「……ふふっ」
再び腕に抱きついて甘えるタンヤン。だがふと物憂いげな眼差しを見せ、それを隠すかのように俯く。
「ね、ユネイター」
「ん?」
「シィユェ、だっけ。前に組んでたメイガス」
独特の発音でも、メイガスはすぐに理解して模倣できる。懐かしそうな、しかし少し気まずそうな目をして、「そうだよ」と答えるシェーフォン。
「どんな子だった?」
「うーん、Grau型だったけど、レビンちゃんより君に似てたな。悪戯好きで、甘えん坊で」
「えー? ボクそんなに甘えて……いるか」
「頭撫でると喜ぶところとかも、ね」
実際に撫でてもらい、タンヤンは幸せそうな笑みを浮かべた。
「よく歌を歌ってた。知ってる? アイリス・マイっていう、アイドルメイガスがいてさ」
「うん、名前は知ってる。アメイジア崩壊の後、地上開拓運動のPRもしてたんだよね。でも突然引退しちゃったって」
「そうそう。その時に移住者を募ってたネストもエンダーズの襲撃で壊滅して、今は立ち入り禁止だし……何があったのか、よく気にしてたよ。好きだったからね、彼女の歌」
「他に好きだったものは?」
「ああ、食べ物だとチョコレートが好きだったな。よく一緒に食べたっけ。オレが、ドリフターなんか辞めて菓子屋を始めたいって言ったとき、彼女だけは本気だと分かってくれて……」
「……一緒に来てくれる、って?」
シェーフォンはタンヤンの青い瞳を見て、ふと息を吐いた。そして胸の内を語る。
「うん。かなり稼いでたからね。協会から彼女を買い取っても、開業資金は十分あるくらいだったから。協会には引き止められたけどさ、あの作戦を最後に……ナントカ・モンスターだとか、クルーエル・ナントカとか、ダサい二つ名の盗賊を何人か殺れば……」
……引退できるはずだった。
しかし夜襲用に搭載されたサーチライトは急造品で消灯すらできず、協会情報部の杜撰な索敵のせいでいくら探しても標的は見つからなかった。慣れない夜戦、しかも消灯できないライトのせいで、昼間以上に敵から発見されやすい状況に、凄腕のシェーフォンとて神経はすり減っていった。
そして、何者かによるコフィンへの狙撃をかわす余力も失っていた。
「二度とクレイドルなんか乗らないで……何処か遠くで、2人で幸せに暮らそうって、約束してたのに……」
彼が嬲り殺しにした協会幹部は、その無茶な討伐作戦の立案者だった。その辺りはすでに取り調べ記録や、当人との交流の中でタンヤンも知っている。
本来、憎しみに囚われた彼に更生を促すのが、タンヤンの任務のはずだが。
「ねえ、ユナイター。もし、ボクが……」
その言葉はドアの開く音に遮られた。先にシャワーを浴びていたエミとレビンが、問答やじゃれ合いの末に戻ってきたのだ。
「お待たせしました。シャワー室、空きました!」
「……よし」
シェーフォンはタンヤンの体をひょいっと抱き上げた。背中と膝裏を支える、所謂『お姫様抱っこ』というやつだ。タンヤンは小柄とはいえ、メイガスは人間より重いはずだが、鍛えているだけあってシェーフォンは涼しい顔だ。
「……一緒に入るんですか?」
「これから男同士になるからいいの~」
男同士と言いつつお姫様扱いに喜び、筋肉質な肩へ手を回すタンヤン。
メイガスは人間ほど衛生に気を使う必要は無いし、その心もAI故に、不潔に耐えなくてはならないときは耐えられる。しかし人間との交流が必要である以上、清潔さへの関心も当然持ち合わせている。
脱衣所へ入ったとき。しばらく幸せそうな顔をしていたタンヤンが、ふとシェーフォンの耳元に口を寄せた。
「あのね、ユナイター」
「ん?」
「もし犯人が見つかったらさ。シィユェの仇討つの、手伝うよ」
タンヤンを下ろそうとしたシェーフォンは、ふと動きを止めて耳を疑った。一般のドリフターとメイガスの関係なら分かる。しかし、受刑者の監視及び更生という任務を与えられたメイガスが、そんなことを言えるはず無いのだ。
シェーフォンの驚きを察したのか、タンヤンは「うん、分かってる」と苦笑した。どこか、悲しげに。
「ボクはきっと、頭のおかしいメイガスなんだ」
お読みいただきありがとうございます。
クリスマスイブですね。
もし今日の時点で終盤まで書き上げていたら、「メリークリスマス! アメイジアに死を!」というセリフを入れていたのですが。