SYNDUALITY -ブラックウィドウ・スクワッド-   作:空き缶号

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14.死神と呼ばれた男

 

 雨が再び降り出した。空から降り注ぐ青い雨、銃口から降り注ぐ鉄の雨。どちらも浴び続ければ死ぬ。

 

「雷神よ! 隻腕の軍神よ!」

 

 赤いトムガーディアンを駆り、盗賊の幹部は猛り狂った。手にしたヘビーリローダー……所謂重機関銃から、湯水のように吐き出される弾と空薬莢。

 

 それらは黒いトムガーディアンにいくらか命中した……と思われるが、致命傷には至らずバンカーの背後へ逃げ込まれる。

 

 しかし直後、バンカーの後ろから爆炎が上がった。

 

「やったか!」

 

 丁度よく、仲間が待ち伏せしていた場所だ。

 

 すぐさまスラスターを吹かして確認へ向かう。……が、そこで大破炎上していたのは味方機の方だった。

 

「くそっ、またか!」

 

 先ほどからこの調子だ。駆動音で接近に気づき部下に待ち伏せさせたのに、尽く見抜かれて先制攻撃を受けた。残っているのは自分だけだ。

 

 そして今度は、背後から衝撃を受けた。

 

「うおっ!?」

《コフィンに被弾。警告、警告》

 

 汎用型メイガスの、無機質な声が聞こえる。

 改造されたトムガーディアンは、一撃で斃れはしなかった。次の射撃の前に背後を振り返り、正面装甲で散弾を受けつつ反撃する。

 

 しかしその瞬間、敵の姿が煙の中に消えた。

 

「くそっ、チャフグレネードか!」

 

 仕留めきれないことを見越して、予め足下に落としてあったのだろう。駆動音が遠ざかる。

 

「これが……シェーフォン・ウーか」

 

 この盗賊もまた元協会員であり、中華系だった。だから相手が誤射防止のため機体に書いた『呉雪風』の名を読めたし、知ってもいた。

 

 あらゆる攻撃が当たらず、伏兵さえ通用しない。クレイドルから降りても、その肌は刃を弾き返す、などという噂まである。

 

 敵に回したら命は無い“追命鬼(死神)”。『伝説のドリフター』と称されるアルバ・クゼに対し、『最強のドリフター』と呼ばれる男、シェーフォン・ウー。

 

 誇張ではなかった。だが、彼は恐れない。ポケットから注射器を取り出し、自分の首に躊躇なく打つ。

 

「英霊の館で語る武勇伝には……丁度良いよなぁ!」

 

 元々心拍数が高まっており、薬の巡りも早い。エンドルフィンの分泌が促され、激しく高揚する。

 

 沸き起こる衝動のままに愛機を加速させ、チャフスモークの中を突っ切った。

 

「逃がさねぇ!」

 

 敵の姿は見えない。しかし雨でぬかるんだ地面には、ブースト走行したクレイドルの轍が残っていた。すでに複数の轍があるが、溜まった青い雨の量で最も新しい轍が判別できる。

 

 彼の接近を察知し、敵も遮蔽物から飛び出した。互いに蛇行しながら銃を撃ち合う。

 装甲を掠めていく散弾の音でさえ、今の彼にはテンションの上がる音楽でしかない。

 

「隻眼の神よ! ご照覧あれぃ!」

 

 ついに弾の切れたヘビーリローダーを放り出し、彼は突撃に転じる。相手もショットガンの弾倉を空にしていた。

 チューブ式マガジンではリロードに時間がかかる。その隙に格闘に持ち込むべく、左腕の多目的チェーンソーを展開。

 

「勝負だ、“追命鬼”……!」

 

 が、その刃は届かなかった。

 

 彼の愛機が泥の上に転倒したからである。死の雨が飛沫を上げるも、彼は何とか機体を起こそうとした。

 自分ともあろう者が、ぬかるみに足を取られたのか?

 

 答えは否だった。クレイドルの脚に何かが絡みついていたのである。

 

「クソっ、何だ……!」

 

 身を起こした愛機の胸部に、再装填を済ませた銃口が押し当てられた。黒いトムガーディアンの不気味なカメラアイ、『追命鬼 呉雪風』の文字が目と鼻の先にある。

 

「……!」

 

 刹那、彼の体は引き裂かれた。

 

 ショットガンの弾は辛うじて貫通こそしなかったものの、至近距離から撃たれた衝撃がスポール破壊を引き起こした。装甲の内側、操縦席前面を覆うモニターが割れて、飛散した破片が人体を襲ったのだ。

 

「……死ぬ、のか」

 

 そう呟いた声は、最早当人にしか聞こえない。

 

 暗闇に覆われた視界の中に、女の姿が浮かんでくる。

 彼は歓喜した。英霊の館から戦女神が迎えに来た……ヴァイク教徒の名誉ある戦死を果たせたのだと。

 

 

 ーーユナイター。

 

 

 しかし彼女の口から聞こえたのは、聞き覚えのある声だった。

 

 彼は思い出した。そうだ、盗賊……メイガスハンターに身を落とす前、自分には相棒がいたのだ、と。いつも自分を励ましてくれて、共に地上を駆け回り、共に戦い。

 

 守ってやれなかった相棒が。

 

 

 ーーユナイター。私はいつも、貴方の側に……

 

 

 差し出された手。それを握ろうと、自分もまた手を伸ばし。

 

 彼の人生は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生命反応消失。無力化を確認」

 

 沈黙した盗賊団幹部のトムガーディアンを見下ろし、タンヤンが冷静にスキャンする。

 

 斃れた赤い機体の脚には、ワイヤーロープが絡まっていた。ただ落ちていたワイヤーに引っかかったのではない。先端に空の燃料タンクが括り付けられており、古代の狩猟具ボーラの形になっていた。

 

「エミちゃんの即席武器か。初出撃以来だな」

 

 ボーラは重石が3つ着いたロープを振り回して遠心力で投げる、極めて原始的な武器だ。しかし脚で移動するクレイドルには確かに有効だった。

 飛来した方向を見ると、エミのジャックボックス、および隣に浮かぶレビンが手を振っていた。作業が済んで救援に来たのだろう。

 

 感心しつつ、シェーフォンは盗賊団幹部の機体へと目を移した。物言わぬ残骸の方に黒く描かれていたのは、世界樹(ユグドラシル)の紋章だった。

 

「これ、ヴァイク教のシンボルだ」

「ジンさんの同門だったか」

 

 そう言ってる側から、“ピシュタラ”ジンのジャックボックスが近くへ来た。ホログラムの姿で浮遊するヒルデ共々、数秒間残骸を見下ろし、背を向けた。

 

《コンテナの回収準備は済んだ。撤収しよう》

 

 ヒルデがメッセージを伝えてきたので、タンヤンに「了解」と返信させる。ジンは同じヴァイク教徒に対し、短い追悼の言葉でも述べたのだろうか。または蛮勇を讃えたのか。

 

「……なあ、意味はあったか?」

 

 横目で残骸を見つめ、シェーフォンもぽつりと呟いた。

 

「アンタも地獄を見たんだろ? 今際の際には何が見えた?」

 

 言い捨てて、シェーフォンは残骸に背を向けた。死体に話かけることもまた無意味だ。

 静かに追従するタンヤンと共に、雨の中を帰路についた。

 

 

 

 その後、ホバー装置を使ってコンテナを運搬し、大きな問題もなく指定されたエレベーターへ辿り着けた。サイズが大きいので、先にコンテナのみをエレベーターへ搬入して地下へ送り、ドリフターらは再度エレベーターを呼ぶ必要がある。

 

「……前のユナイターはさ、ボクを置いて戦いに行っちゃったんだ」

 

 下降して行くエレベーターを見送りながら、タンヤンは語り出す。

 

「もうメイガスを失うことに耐えられない、ごめんね、って」

「……きっと、優しい人だったんだろうね」

「うん」

 

 切なげに笑うタンヤン。シェーフォンにはそのドリフターの気持ちが分かった。彼はメイガスと人間を明確に区別しているが、それは普段隠している人間不信からで、友人としてはメイガスの方を信用している。

 それを失う辛さも、嫌というほど知っている。

 

「ユナイター。復讐なんかしても大事な人は帰ってこない。そして今度は自分が誰かから怨まれる。非合理的な行為だと思う」

「そうだね。分かってはいるよ」

「辛くてもそれを飲み込んで、前向きに生きて、って……あなたに言うのが、僕の役目だと思うんだけど」

「うん」

「けど、前のユナイターのことを思い出してから……あの人を殺したのがエンダーズか人間かは分からないけど、そいつらがもし幸せに生きていたら、って思うと……」

 

 白く華奢な手が、小刻みに震える。

 

「これが『憎悪』っていう感情、なのかな……? もしあなたが、シィユェの仇を討てれば前を向けるなら」

「……タンヤン」

「ボク、どうやってもシィユェの代わりにはなれないと思う。しかもバグを抱えた不良品だし。でも、あなたのために……」

「タンヤン」

 

 シェーフォンは相棒に笑顔を見せた。どこか悲しげな。

 

「気持ちは嬉しいけど、君の役目はオレの監視でしょ」

「……そうだけど。どうせ、もうおかしくなってるんだ、ボクは」

「シィユェの仇はオレの憎しみだ。キミのじゃない」

 

 優しく告げるシェーフォンに対し、タンヤンは口を尖らせて俯く。

 

「……じゃあ、ユナイターもボクを置いて行くんだ?」

「まさか。君が言ったように、もし前向きに生きられるようになったら、その時力を貸してくれよ」

 

 そう言って、彼はタンヤンの胸を指先でつついた。ホログラムなので触感は無いが、タンヤンはその手を掴む仕草をして、にこりと微笑む。

 

「もう、えっち」

 

 そんなことを言っている間に、エレベーターが再使用可能になった。レビンが先に帰還申請を送信したらしく、『上昇開始』の報せが地下から届く。

 

 同時に雨脚が強まってきた。耐候性の維持に不安が出てくる。

 

「タンヤン、メイガススキル使って。目立つけど、3人で警戒してれば大丈夫だ」

「……了解。シェイドフィールド!」

 

 広がった紫色の光が膜となり、雨を弾くドームを形成する。雨以外の物は透過するため、2番機、3番機も内側に入り、3機背中あわせて周囲を警戒した。

 

「もう一つ注文。さっきの歌、続き歌える?」

「いいよ。ボクの声、気に入ってくれた?」

「ああ。好きだよ」

 

 タンヤンは嬉しそうに笑い、雨雲を見上げて歌い始めた。遥か彼方、極東の童謡だ。

 

 

 ―あらあら あの子は ずぶぬれだー

 

 ーやなぎの ねかたで 泣いているー

 

 ーピッチピッチ チャップチャップー

 

 ーランランランー

 

 

 透き通った声の響く操縦席で、シェーフォンはふと、かつての相棒……むしろ、恋人だったメイガスの言葉を思い出した。

 「何処か遠くへ逃げ延びて、お友達を作って、お菓子屋さんを始めてください。幸せになってください」と。最期の瞬間、そう言っていた。

 

 彼女は報復よりも、シェーフォンの幸せを願っていた。だが、無理だ。

 

 

 ―母さん ぼくのを かしましょかー

 

 ーきみきみ このかさ さしたまえー

 

 ーピッチピッチ チャップチャップー

 

 ーランランランー

 

 

「……ごめん、シィユェ。オレが欲しかった幸せは、君と一緒にいることだったんだ」

 

 誰にも聞こえない声で、恋人に謝罪する。幸福はとっくに奪われていた。そして復讐を果たさなくてはならない。

 何故なら、手を下した人間に目星はついているのだから。

 

 だが、それに全てカタがついたら。

 

 

 ―ぼくなら いいんだ 母さんのー

 

 ーおおきな じゃのめに はいってくー

 

 ーピッチピッチ チャップチャップー

 

 ーランランランー

 

 

 この子の幸せのために生きることは、できるかもしれない。タンヤンの横顔に、“追命鬼”(死神)と呼ばれた男は微かな希望を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 コンテナは無事、収容所まで届けられた。受刑者たちのガレージとは別の倉庫へ搬入され、アルマン監督官はいつも通り「ご苦労だった。休んで良し」と言葉をかけた。さらに、この任務は極秘事項で他言無用、とも。

 

 その後、メイガスたちは調整室へ向かい、社会不適合者たちはエミ宛の荷物の山を整理しなくてはならなかった。

 危険を冒して回収されたコンテナの中身を見たのは、収容所で待っていたアルマンとジュリーだけだ。

 

「……フィベリオの奴め」

 

 アルマンは苦笑するしかなかった。コンテナの中には、彼の欲していた重要情報がちゃんとあった。

 しかしそのオマケとして、かなり貴重な、だが少々始末に困る歴史的遺物(アーティファクト)が本当に入っていたのだ。

 

「『新月の涙』以前、21世紀初期の物よね。すぐ動かせるくらいに整備されてる。燃料も……砲弾はわざわざ新造したのかしら?」

「あいつなら、やりかねない」

 

 奇跡よ、とジュリーは感歎の声を漏らした。入念にスキャンを行い、ネットから得たデータと照らし合わせている。レビンなどより『大人の女性』といった印象の彼女も、好奇心は強い。

 

「あいつの日本趣味は知っていたが、キモノやカタナでは飽き足らず、こんな物まで……」

「『物の価値が分からない馬鹿よりは君に託したい』……とのことだけど、どうする?」

 

 『新月の涙』以前の遺物となれば、博物館から引き手数多だろう。しかし公にすれば、囚人ドリフターたちの任務を偽装して回収に行かせたことが明るみに出る。

 

「一先ずはここで保管するしかない。親友にして恋敵だった男からの、最後の頼みだ」

「分かったわ。それじゃ、計画について話しましょ」

 

 コンテナから出てきたジュリーが、地図の表示された端末を見せる。ドリフターが普段活動している場所より東、エンダーズの大群によって崩壊したネストの周辺地域。

 

 通称、禁足地77。

 協会とダークマーケット双方で立ち入り禁止としている、危険地帯だ。

 

「ああ。フィベリオの提示したルートは突飛だが、それ故に気づかれず『畑』へ侵入できる」

「ええ。けど私の計算だと、使用できない確率が28.2パーセント。事前に下見をすべきね」

「連中に偵察させよう。必要なクレイドルも鹵獲させ、他はこちらで用意する」

「そして貴方が言った通り、侵入するまでは気づかれない。でも少し派手な到着になるから、その後の戦闘は避けられない。成功率と生還率を確保するには……」

「アトランティスの武器が欲しい。明日、サイカに話してみるか」

 

 あれこれと論じつつ、アルマンは無意識のうちに自分の左胸に手をやっていた。

 そこに着けられたメダル……エンダーズ討伐徽章、アメイジア十字勲章、柏葉剣付ドリフター功労章と言った勲章の数々を、昔は誇りに思っていた。だが今は、これを投げ捨てたくて仕方ない。

 

「ユナイター。まだ早いわ」

 

 彼の厳つい手の上に自分の掌を被せ、微笑むジュリー。彼女にだけは全て打ち明けてある。

 

「……はは。そうだな」

 

 今はまだ、忠実な協会員でいなくてはならない。

 

 世界を敵に回す、その日までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなもんでいいか」

「そうっスね。2人ともありがとうございます」

「ったく、メイガス共も手伝ってくれりゃいいのに」

「しょうがないよ、調整の日なんだから」

 

 社会不適合者トリオはどうにかこうにか、荷物の山を片付けた。一部はエミの独房へ搬入し、一部は分解して捨て、シェーフォンとジンが欲しがる物は譲った。麻雀卓はガレージの隅に設置して、後で遊ぶつもりだ。

 

「で、シェーフォンさん。タンヤンちゃんのことなんスけど」

 

 片付けをしている間に、今日起きたことについて聞いていた。タンヤンの記憶が戻ったことも、そのきっかけも。

 

「あーしのハーモニカがきっかけって、確かにそう言ったんスね?」

「うん。間違い無い」

「……ヒルデはケーキ作ってたら思い出したらしいが、音楽の方が効果あるのか……それともただの個体差か」

 

 ジンもこの件には興味があるらしい。ヒルデは極めて断片的な記憶しか戻らないようだが、前契約者の遺体を回収できたことで、当人としては肩の荷が降りたようだ。

 前より元気そうに見える、とジンは言う。

 

「レビンちゃんも記憶を取り戻せるかもしれない、って?」

「ッス。レビンちゃん自身は、全部忘れた方が良いって言ってたんスけどね。あーしとしては釈然としないから」

「お前が脱走しない理由はアイツか?」

 

 ジンが不意に尋ねた。

 

「あのモテようなら、お前が声かければアトランティスの連中が助けに乗り込んで来るだろ。1個中隊くらいは」

「あー、捕まったすぐ後に何とか連絡ついて、その時は1個大隊分の戦力送るって言われたんスけどね。流石に戦争になったらヤバいから今は止めろって言ったんスよ」

「アトランティス人てガッツあるね。行ってみたくなってきた」

 

 シェーフォンも『地下最大の魔境』に興味が湧いてきたらしい。「その時はガイドしますよ」と返して、エミは続けた。

 

「でも3年間お務めする気は無い。かと言って、確かにレビンちゃんを置いていく気も無いッスね。あーしのこと忘れて他のヤツに仕えるのは癪に触るし、悪けりゃスクラップっしょ」

「俺もだ。ヒルデがそういう目に遭うと分かってて置いて行くのは、あんま名誉ある行為じゃない」

 

 ジンはメイガスが好きになったわけではない。馴れ合う気も無い。しかしまた初期化されて、外れた枷を付け直す羽目になるなど……そう思う程度にはヒルデに敬意を持っている。

 

「つっても、逃げるから一緒に来いと言ったところで……」

「彼女が乗ってくるとは思えない。それに監視プログラムもあるしね」

 

 協会から離反したドリフターは大抵、支給されたメイガスを『持ち逃げ』する。協会の管理体制の酷さの一例だ。

 

 しかし囚人ドリフターに支給されたメイガスは、彼らの監視・更生のためのプログラムをインストールされている。同時に、メイガス自身の脱走を防ぐ安全装置も含まれている。

 

 例えメイガス自身と合意の上でも、連れて逃げるのは容易ではない。だからシェーフォンもタンヤンと一緒に逃げはしない。

 

「何にせよ、まずはレビンちゃんに何があったのか知りたいんスよ。あの子の前のユナイターのことも、妙に気になって」

「いいんじゃねーか。やれることをやってみろよ」

「じゃ、そろそろオレらも独房に戻ろうか。エミちゃんは新曲の練習に……アレの組み立てもあるし」

 

 シェーフォンが横目で見たのは、エミの独房へ放り込まれた機械部品の数々だった。捨てた贈り物を分解して取り出した物である。

 

 協会の検閲が本当にガバガバで助かった。贈り物の1つ1つは人畜無害なオモチャに見えても、部品を組み合わせればそれなりの物を作れる。アトランティスではよく使う手だ。

 

「そうっスね。じゃ、お疲れ様っした」

「お疲れ様ー」

「おう」

 

 受刑者3名は解散した。実は既に自由を得るチャンスが迫っているのだが、当然知る由もない。

 

 そして自由には、代償が伴うものだ。

 





明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
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