SYNDUALITY -ブラックウィドウ・スクワッド-   作:空き缶号

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26.二足歩行メカなんざクソ喰らえ

「……これでよし。お姉ちゃん、起きて」

 

 ジュリーが目を開けた時、体を温もりが包んでいるのを感じた。いつの間にか湯船に浸かっていたのだ。

 

「お姉ちゃん。あたしだよ」

「……ハレルヤ?」

 

 すぐ隣で、自称・妹も湯に浸かっていた。そしてタンヤンとヒルデも。

 

「あれっ、ボクは……!?」

「何故こんな所に……?」

 

 湯煙の漂うその空間は所謂大浴場。清潔なタイルと柔らかな照明、適温の浴槽で構成された癒しの空間だ。

 だがジュリーは手を握ったり開いたりを繰り返し、今の自分を含め、ここが現実の世界ではないと察した。

 

「ここはサイバー空間?」

「そう、仮想現実。でもって、あたしが作ったデータ要塞。お姉ちゃんたちの体はメイガスラボで捕まってて、あたしがお姉ちゃんの意識をここへ避難させたの」

 

 端的な説明を聞き、ジュリーは状況を大体把握できた。

 

「私のユナイターは無事?」

「おじさまは無事で、サイボーグさんは対物ライフルの直撃喰らったって」

「何だと!?」

 

 ヒルデが思わずハレルヤに詰め寄った。

 

「彼はどうなった!?」

「なんか運動機能と重力場の機能が低下してるみたい。でも平気そうだよ」

「ボクのユナイターは? お話できる?」

「できるけど、今時間無いから後でね。とにかくレビンちゃん含めてみんな無事だから」

「良かった。ありがとう、ハレルヤ」

 

 まずは一安心だ。ジュリーにとって、アルマンが生きている限り負けではない。

 

「そうだわ、ハレルヤ。昨日のデータを解読したら、やっぱりアトランティスもアムリタ計画の標的に含まれてる」

「案の定だねー。総長が言った通り、戦争はもう始まってるか」

「それと私の予想だけど、敵にもサイバー戦型メイガスがいるわ」

「っぽいね。今ラボの中にはいないみたいだけど、万一の時は協力して対処しよ」

 

 ハレルヤが細い指をピンと立てると、空中に四角い画面が表示された。誰かが頭に着けているカメラを通して、トランスポーターから降りていく10式戦車の映像が映される。

 

「今おじさまやエミちんたちが、お姉ちゃんたちを助けに行くところだよ」

「……アレを使うの?」

「クレイドル全部ダメにされたんだって。あたしが検問所のスキャナーをハックしたからバレずに持ち込めたワケ。エミちんたちが戦車で大暴れしてる間に、おじさまたちがラボに忍び込むってさ」

「おい、私のユナイターは手負いなのだろう?」

「でも大昔の戦車に乗れて楽しそうだよ」

「フィベリオさんが見たら怒るか喜ぶか……」

「あたしらもここから援護しよ。お姉ちゃんのメイガスシステムも復旧させたから、これでラボの防衛システムをハックして引っ掻き回しちゃおう」

 

 空中に出現させたコンソールを操作しながら、ふとジュリーを見るハレルヤ。

 

「お姉ちゃん、お湯加減はどう?」

「丁度良いけど……何でデータ要塞がお風呂になってるの?」

「好きだから!」

 

 控えめな胸を張って答えるハレルヤ。未だ窮地に変わりは無いが、そんな能天気さが不思議と頼もしく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

《敵襲! 東部ゲートに戦車らしき兵器がーー》

 

 ラボのゲートで警備に当たっていたクレイドルは報告中に倒れた。

 忍び寄っていたアルマンが携行型ロケットランチャーをお見舞いしたのだ。囚人暴動に備え保有していた小型の物だが、脚部に当てれば十分擱座させられる。

 

「突撃!」

 

 号令一下、社会不適合者たちは乗ってきたトランスポーターを自動運転で特攻させた。擱座したクレイドルをその重量で跳ね飛ばす。

 

「敵がビビってる間に、四脚野郎から片づける!」

「了解です!」

「了解!」

 

 トランスポーターは非常用の煙幕発生装置を作動させ、濛々と白煙を上げながら突進する。

 

 当然、敵は発砲してきた。EECのガトリング砲がすぐに多数の弾痕を穿った。非装甲のトランスポーターはあっという間にエンジンを破壊され、最後に搭載していたバーストマインが爆発を起こした。

 

 が、煙幕に紛れて10式戦車も敷地内に入っていた。ジンは煙幕の中でも自前のサーモグラフィーでEECの位置を把握しており、あらかじめ砲塔をそちらへ向けさせていた。

 

「ハンドルそのまま! 行進間射撃で殺るぞ!」

「照準良し!」

「撃て!」

 

 ジンの号令から間髪入れず、レビンが撃った。

 空気を震わせる砲声、オレンジ色の発砲炎と共に徹甲弾が射出される。APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)……120mm砲の内径に合わせた装弾筒が割れて分離し、ダーツ型の芯のみが空気を切り裂く。

 

 弾の速度はマッハ5。それは狙い違わず最優先撃破目標、EECのコフィンへと吸い込まれた。

 

「次! エミちゃん、ジグザグに走れ!」

「之字運動、了解ッス!」

 

 撃破したか確認する前に、砲塔は素早く旋回した。次の敵に照準が合う。

 砲手が最初の目標を狙っている間に、戦車長が次の目標へ照準を合わせておくシステムだ。初弾を撃った後にオーバーライド操作を行えば自動的に次の敵へ狙いが移る。

 

 ベルトコンベアとラマー(装填棒)から成る自動装填装置が作動し、次弾が薬室へ収まる。薬莢は焼尽薬莢のため底部のみが排出される仕組みだ。

 

「撃て!」

 

 再度、砲撃。車体が蛇行中していても、ジャイロスタビライザーによって砲身は常に照準と同期していた。ましてや脚ではなく履帯で走る戦車は、射撃プラットフォームとしてはクレイドルより安定しているのだ。

 丁度こちらへ振り向いた敵クレイドル……ジェスター型の胴へAPFSDSが直撃した。先端部のアルミ合金が敵の装甲へ固着するため、曲面装甲で跳弾させることも不可能。容易く装甲を貫通して動力部まで粉砕し、機体はたちまち大破炎上する。

 

 ジンはキューポラから顔を出し、EECの様子を確認した。コフィンを撃ち抜かれた機体は横転し、ジタバタともがいていた。4本の脚がそれこそ死にかけの昆虫のようで何とも気色悪い。

 しかしジンの機械仕掛けの目は、コフィン内のエンダーズが急速に熱を失っていくのが見えた。コアを破壊できたようだ。やがて小さく爆発すると、それっきりピクリとも動かなくなった。

 

 予想通りだ、とジンは思った。やはりEECは通常のクレイドルと比べ、防御面は強化されていない。エンダーズ由来の生物的な機動力と、それによる近接戦闘の強みを活かすため、無闇な装甲強化はできないだろう。

 

「3時方向へ転換、煙幕の裏へ入れ!」

「ウッス!」

 

 他のクレイドルも発砲する。味方の斜線を遮らぬよう位置を変えながら。

 しかし当たらなかった。彼らとて特殊作戦室の熟練したクレイドル乗りだが、戦車との戦闘経験はほぼ無い。地上探索は言うまでもなく、ネスト内は地下にせよ地上にせよ土地が限られるため、戦車が運用されるケースが少ないのだ。

 

 だから彼らは10式戦車の挙動を予測できなかった。まさか装軌車両にドリフト走行ができるとは思わなかったのだ。

 

「……スゲェな、エミちゃん」

 

 ジンも驚いていた。できることは知っていたが、今日初めて操縦したエミがやってのけるとは。

 

「コレ、クレイドルの操縦よりずっと面白いッスね!」

 

 ハンドルやペダルをガチャガチャと操作しながら、余裕ぶって答えるエミ。何をやっても大体上手く行くという才覚の根源は、何もかも遊びの延長と捉えていることかもしれない。

 

 撃破されたトランスポーターは未だ煙幕を吐き続けている。それを利用して敵の射線を切った。

 

「もうちょい敵の数を減らすぞ」

 

 目的はあくまでもメイガス救出までの時間稼ぎ。戦車がクレイドルに有利なわけではない。

 クレイドルは運用される地形の都合もあり、交戦距離はメイガスが敵機の駆動音を感知できる500m以下を想定している。対して10式戦車は2000m先の敵も余裕で狙えるが、ラボの敷地内で戦う以上交戦距離は短くなり射程が活かせない。

 

「停止。砲塔右38度、仰角5度」

 

 煙幕の向こうにいる敵影を熱源で探知し、目検討で指示を出す。目検討と言っても脳の半分を電子化されたジンだけに正確だった。そしてメイガスたるレビンも素早く正確に指示を実行した。

 

「撃て!」

 

 発砲。APFSDSが煙の壁に穴を空け、その向こうにいたジェスターを貫く。

 

 だがジンにも1つ誤算があった。その背後にもう1機が重なっていたのだ。仲間の残骸とトランスポーターを飛び越え、スラスターを吹かして間近に迫る。

 

 戦車にとって、距離さえあれば前方投影面積の大きいクレイドルは良い的だ。しかし詰められると話が変わってくる。

 

「敵の脚へ突っ込め! 砲塔6時方向!」

 

 が、ジンは敢えて突撃を選択した。

 

「ウッス!」

 

 エミが敵機目掛けてアクセルを踏み込む。レビンは素早く砲塔を旋回させ、砲身を真後ろでピタリと止めた。

 

 敵機のショットガンの銃口が間近に迫る。たかが散弾、第3世代MBTの正面装甲なら苦もなく耐えられるだろう。しかし戦車とクレイドルには全高の差があり、至近距離であれば相手は10式戦車の上面……最も装甲が脆弱な部分を狙える。

 

 しかし砲塔の上に躍り出たジンがその銃口へアッパーカットを食らわせた。ピシュタラ計画で生み出された機械仕掛けの腕はクレイドル以上の膂力で、ショットガンの重心を大きく跳ね上げる。

 散弾が空に向けて放たれた直後、戦車はクレイドルの足へ衝突した。バランスを崩すクレイドル。10式戦車への衝撃も大きかったが、ジンは辛うじてまだ機能している重力場発生装置で砲塔に張り付いた。

 

「撃て!」

 

 地面に手を着いたクレイドル……その股間部を狙う形で4発目が放たれた。砲声から間髪入れずに敵機は爆発炎上。

 

 同時に、ジンの肩からも火花が散った。今ので腕にもガタが来たようだ。

 

 いい加減に死ぬかもしれない。10式戦車……英霊の館へ乗り付けるのに丁度良い棺桶を得た。だがエミとレビンを道連れにする気はないし、アルマンが敵の計画を叩き潰す瞬間も、シェーフォンが父親殺しを成し遂げるのも見届けたい。

 

 それに、もう一度くらいヒルデの顔を見ておきたい。メイガスは嫌いだ。どうせ彼女も自分を理解してはくれないだろうが、それでも彼女は命を張るに足る女だ。

 

 脳へ送られる痛覚信号を遮断し、ジンは車長席へ身を収めた。

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 ドリフター振興協会とて一枚岩ではない。冷酷な者も慈悲深い者もいるし、有能も無能もいる。

 特殊作戦室は決して無能ではない。無能なのは、超人狂人を同じブタ箱へ詰め込んだ社会福祉課である。

 

 ラボ内の分析室。多くの機材とコンピュータが並ぶ中、専用のポッドに詰め込まれたメイガスがいた。ジュリー、タンヤン、ヒルデ。いずれも目を閉じ、呼吸も無く、人間で言うところの仮死状態となっていた。

 実のところ意識はすでに目覚めてサイバー空間へ移されており、今は『狸寝入り』の状態だ。もっと言えば、すでに施設内のネットワークが掌握されていることに誰も気づいていない。

 

「班長、クレイドル隊が次々にやられていきます!」

 

 外の様子をモニタリングする兵士が叫んだ。ここへメイガス3名を搬入した、特殊作戦室の兵だ。そのリーダーは舌打ちし、近くでコンピュータを操作する研究員に目を向けた。

 

「記憶の抽出はまだ終わらないのか!?」

「急に駆け込んできて急かすんじゃないわよ!」

 

 怒鳴られた中年女性が、我慢の限界に達して怒鳴りかえした。このラボの研究主任だ。

 

「この子たちの量子脳にわけわからない攻勢防壁が仕掛けられてるの! 下手をすればここの機材が全部焼かれる! あんたの給料何年分の損害になると思う!?」

「貴様……!」

「大体、連れて来た時のサイバー戦メイガスちゃんは何で帰ったの!? あの子に手伝ってもらえればもっとスムーズに行くのに!」

「つべこべ言うな! こっちにはこっちの事情がある!」

「そもそもうちの敷地にEECを持ってくるなんてどういうつもり!? ここで試験した後、危険だから採用するなってちゃんと言ったわよね!」

「知るか! 俺は兵器の採用担当じゃない! いいから早くしろ!」

 

 とうとう研究主任に銃を突きつける兵士。流石に見かねた他の研究員やメイガスが割って入ろうとした瞬間、突然部屋のドアが開いた。

 

「敵……!」

 

 叫んだ若い兵士が凶弾に倒れた。立て続けにセミオートで撃たれたライフル弾が、次々に兵士の頭に穴を空ける。

 そして飛び込んで来た東洋人が別の兵士の首をへし折り、指で額を貫いた。アルマンとシェーフォン。10式戦車が施設外の敵を惹きつけている間、ハレルヤとジュリーの援護を受けてまんまと潜入していたのだ。

 

 兵士たちの班長は辛うじて銃弾から逃れ、ポッドに収まったジュリーへサブマシンガンを突きつけた。

 

「止めろ、動くな! 動いたらこいつを破壊するぞ!」

 

 メイガスの救出が目的なら、メイガスは人質として機能する……班長はそう考えていた。

 それ自体は間違いでも無かったが、1つ誤算があった。背後で他のポッドが静かに開いたのだ。カッと目を開けたEine型メイガス……タンヤンが即座に飛び出す。

 

()ーッ!」

 

 班長が気づいた時にはもう遅かった。渾身の叫び、そして震脚と同時に、顔面へ肘打ちをお見舞いされたのだ。目出し帽の下で鼻血を出しながら、彼は壁へ叩きつけられ、そのまま崩れ落ちた。

 

 契約者直伝の八極拳。タンヤンはゆっくりとシェーフォンの方を向き、ニコリと笑う。

 

「……キマッた?」

「キマッた!」

 

 親指を立てるシェーフォン。アルマンが「全員、両手を上げろ」と告げると、研究員たちはあっさりと従った。

 

「降伏するわ。あー、清々した」

「お久しぶりですな、主任」

 

 アルマンは研究主任へ銃を向けたまま会釈した。メイガスラボはよく協会員へ依頼を持ち込むため、ドリフター時代から付き合いがあったのだ。

 同時にジュリーとヒルデもポッドから出た。屈伸したり肩を回したり、体の感覚を取り戻す。

 

「待たせたな、ジュリー」

「大して待ってないわよ、ユナイター」

 

 ハレルヤのおかげで彼女たちは既に意識を取り戻しており、ジュリーがラボの防衛システムをハックしていた。そのお陰で施設にさえ入ってしまえば後は楽だった。

 研究主任が溜息を吐く。

 

「貴方たちの方が特殊作戦室より数枚上手だったようね」

「どうやら貴女方は、彼らの計画に加担していた訳ではないようですな」

「何の計画かは知らないけどね、私たちは急にメイガスの記憶を抜き出せと言われただけよ。その子たちが変異型AIの可能性があるから、色々調べてみたかったのは事実だけれど」

「変異型AI?」

 

 聞き慣れない言葉だった。横暴な兵士たちから解放された反動か、主任は若干早口になっている。

 

「最近たまに観測されている、本来の行動規範から外れたメイガスよ。例えばメイガス三原則を否定したり逸脱したり……」

「三原則なんて契約律以外いくらでも解釈の余地あるじゃん。逸脱してるなんて何を基準に判断するの?」

 

 タンヤンの頭を撫でながら尋ねるシェーフォン。相変わらずジャケットを返してくれる気配は無い。

 

「それは……素人には説明が難しいのだけど」

「まあ今はどうでもいい。彼女たちは連れて帰りますが、構いませんね?」

「そうして頂戴、殺されたくないからね。ただ念のため、私の顔を痣ができる程度に殴ってもらえる? 抵抗したって言い訳するために」

「……手加減は苦手なので。ジュリー、頼む」

「了解よ」

 

 ジュリーはすっと進み出て、言われた通り主任の顔へ一撃喰らわせた。

 よろめいてデスクへ手を付く彼女へ、助手らしきメイガスが即座に駆け寄る。

 

「主任!」

「……平気」

「では、これにて失礼します。警備員には何人か眠ってもらいましたが、特殊作戦室の人員以外は殺害していませんので、悪しからず」

 

 長居は無用だ。人間2名とメイガス3名はそそくさと撤収にかかった。シェーフォンがしんがりを固めて部屋を出る。

 

「……頑張りなさいよ」

 

 彼らの背に向けてポツリと呟くと、主任は助手に怪我の処置を頼んだ。

 

 

《そのまま来た道を戻った後、左へ曲がって非常口へ向かって。迎えは後5分で着くから》

「了解した!」

 

 ハレルヤのオペレートに従いつつ、5人は廊下を駆ける。ジュリーのハッキングで防火扉を閉めており、敵の通行は制限できていた。

 

「タンヤン、何かされてない?」

「平気。ジュリーさんとハレルヤがチェックしてくれたから、マルウェアとかも入れられてないよ」

 

 微笑むタンヤンに、安堵の表情を見せるシェーフォン。今度は失わずに済んだ。

 

「それで、この後どうするの?」

「迎えが来てくれるから、とりあえず脱出だ。詳しくはその後で」

「急ごう。ユナイターが心配だ」

 

 ヒルデがそう言うのも無理はない。例え手負いであってもジンは平気で無茶をするだろう。

 

《今の所まだ戦車で大暴れしてるよ。メッチャイキイキしてる》

「……そうか」

 

 クレイドルに乗っている時はすぐ降りたがるのに。やはり彼はクレイドルが嫌いなのか……自分に対しては敬意を払ってくれるとはいえ、今までコフィンに収まり共に出撃してきたヒルデとしては、少し寂しい気持ちになった。

 

 もっともジンに限ったことではない。本来ならドリフターを引退するはずだったシェーフォンも、できることなら二度とクレイドルに乗りたくないと思っている。

 そしてエミもとっくに飽きていた。だからレビンを連れてとっとと故郷へ帰りたかったのだ。

 

 

 

 

 

「ヒャッホォォォウ! 最高だぜぇぇぇ!」

 

 撃破したジェスターの脇を駆け抜ける10式戦車。そのハンドルを握るエミはすっかりテンションが上がっていた。ジュリーらが無事救出されたことと、すぐに迎えが着くという報せを聞いたからだ。

 あらかじめ故郷の仲間に連絡をつけて迎えを手配していた。つまり撤退する先は故郷アトランティス。もうすぐ帰れるのだ……仲間を誰も見捨てずに。

 

「砲弾、残り5発!」

 

 レビンが報告した。戦車がクレイドルに劣る部分の1つは携行弾数の少なさだ。自動装填装置内の弾を使い切れば、予備弾を装填するには手間がかかる。とても戦闘中には無理だろう。

 

「大丈夫! もう迎えが来るって!」

「ああ、それまで粘ればいい! 3時方向へ旋回!」

 

 すでに辺りには残骸と化したクレイドルが多数倒れ、良い遮蔽物になっていた。建物の近くから歩兵が携行型ミサイルを放ったが、砲塔上のアクティブ防御システムで撃墜される。まさか旧時代の兵器がここまで手強いとは誰も思わなかっただろうが、乗っている3人の能力故でもあるだろう。

 

 しかし。

 

「! 駆動音接近!」

 

 レビンが叫ぶ。戦車のエンジン音をフィルタリングすることで、敵機の音を鋭敏に聞きつけることができた。

 その駆動音は因縁の相手の物……EECがもう1機いたのだ。

 

「上です!」

 

 刹那、頭上から高周波ブレードが振り下ろされた。

 

 

 

 

 






お読みいただきありがとうございます。
ぶっちゃけ本作で一番書きたかった回です。
10式のアクティブ防御システムは将来的に実装予定らしいので、装備されたタイプということで登場させています。
前回から時間が空いたのは相変わらず仁王3が面白いからです。
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