ウィリの夢   作:もるげんれえて

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そしてウィリは夢を見て、永い眠りにつく

C93で頒布したCCCコラボ一週目の小説です。
ここで全文を順次公開していきます。
まだ在庫が御座いますのでぜひイベントでお求めください!

また、C107で頒布予定の「メルトリリスは踊らない(https://syosetu.org/novel/393807/)とも若干の関連があります。
こちらも併せて読んでいただけると幸いです。


ウィリの夢 幕間 ウィリの夢

教会へ入る。薄暗がりの中で一人の少女がぼうと浮かび上がった。

「……誰、ですか?ここは廃棄された場所。何の意味もない、廃墟です」

「……知っているわ。アナタが初期化されていることも、もう眠ろうとしている事も」

 返ってくる声は戸惑いに満ちていた。

 しかし、私は教会の中へと歩み入る。

「……?待ってください。アナタは……」

「時間がないの。記憶を共有するから、理解して」

 少女の前まで来ると、私は屈んだ。そして、その少女と顔を合わせ額を重ねる。

 その娘は、驚きに眼を開いて私を迎え入れた。

「――」

 そして、記憶が繋がる。

 

 

 私はゆっくりと目を開いた。そこには、私がいる。

「本来ならアナタに後を(たく)したい。でもそれだと間に合わない。アナタが元の性能を取り戻すには時間がかかりすぎる。それなら――」

 そう言う来訪者に、私はゆっくりと頷く。

 そう、この人の考えていることは痛いほどによくわかっているから。

「壊れかけのアナタのほうが、あの人の役に立てる……ですね?」

 私がそう答えると、彼女は気まずそうに、けれど目線を背けずに歯を食いしばっていた。

 ああ、どうか、そんな顔をしないで。

 だから私は精いっぱいの微笑みを、残ったリソースで微笑みを作るのだ。

「分かりました。お願いします、メルトリリス(・・・・・・)。辛い役目を押し付けてごめんなさいね?でも……」

 目を閉じると、あの光景がありありと浮かんでくるのです。

 輝いた日々の思い出に、胸をときめかせて。

「いい夢を垣間見(かいまみ)ました。お願いします。必ず、なんとしても、あの人を助けてあげて」

「――もちろんよ、メルトリリス」

 その人は私に一切の憐憫(れんびん)なく、けれども優しく言ってくれました。

「さようなら。目覚めることも、誰かに出会えることもなかった私」

 そう言って、もう一人の私はヒールを高らかに打ち鳴らしながら立ち去っていきました。

 もし私たちが二人いるとあの女に知られてしまえば、この計画は崩壊する。

 だからどちらかが消えるしかなかった。

「……ああ」

 ゆっくりと目を閉じる。体の機能を一つずつ止めていく。

 ――本当にいい夢だった。

 瞼の裏にあの日々が(よみがえ)る。それが私のせめてもの救いだったから。

 こんなステキなモノが見れたのだから、長生きはしてみるものだ。

 夢の中に沈みながら、やがて陶器が割れる音が教会に響いた。

 こうして、一人の少女(ウィリ)は名も無き人形に還っていった。




お読みいただきありがとうございます。
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