山菊御一行はトラブルに巻き込まれながらも、《I・アイランド》に到着した。
《I•アイランド》で予定されていた。しかし、昨日の事件のせいで延期されてしまった。山菊御一行はエキスポの一般公開を楽しんだ後に、祖父の住む居住区に向かう予定だったが、祖父の住まう居住区に向かうことにした。
空港からモノレールに乗った。ガラス張りのモノレールの窓からは《I•エキスポ》の展示の一部が見えている。飛鳥と飛瑞はその一部でも見ようと窓から覗き込む。
「すごい、このアトラクション、個性使っても良いやつかな?」
そして、明日菜たちは驚きな光景を目にしたのだ!
「お姉ちゃん、この人電車で寝てるけど、不用心すぎない?」
飛瑞は信じられないものを見るような目で居眠りしている科学者であろう男を見ている。もちろん、周りに聞かれないようにひそひそ声で喋っている。
「おそらく、仕事で疲れているのでしょう。昔の日本でもよく見られた光景…らしいです。」
それを聞いても、飛瑞の頭の中のクエスチョンマークは消えない。
「寝てたら、お財布とか盗まれちゃうかもしれないし、第一、敵犯罪が電車の中で起こったら逃げ遅れちゃうでしょ?」
「ここは、《I•アイランド》敵犯罪ゼロだった島ですよ。まあ、昨日敵犯罪起きた今日居眠りするのは少し不用心な気がしますが。」
選ばれし科学者とその近辺しかいないので、コソ泥をする人もいない。社会的地位のある人にとって、犯罪は割に合わなさすぎる。
「そうだよね?!昨日、敵の襲撃があって、大変なことになってたよね?!」
「大変なことがあってもいつも通り過ごせる、それも人の性です。」
「それを、平和ボケって言うんじゃないかな?」
「そうか、個性黎明期以前の日本は非常に治安が良かったって、お父さん蘊蓄語ってたことあったね。」
「そうですね、当たり前ですが、個性発現前は個性犯罪ゼロですし。」
「でも、動画で個性黎明期以前の校則の動画見たよ。髪ゴムの色まで指定されてさ。あんな窮屈な時代は治安良くてもちょっとやだな。」
「それは極端な例ですね。でも、表面上、個性を認めている今の方がその辺は自由というのはあります。」
「お姉ちゃん、黎明期以前と今どっちが良い?」
「黎明期以前は治安が良くとも、絶対的な支柱もなく、不寛容と中途半端な自由に苦しんでいた時代でもあります。要するに、絶対的な支柱、オールマイトのいる現代に軍杯が上がります。」
聞いていた飛鳥は吹き出す。あまりに明日菜らしいからだ。
「お姉ちゃんらしいね。」
飛瑞もそれにつられて笑う。
そうこうしているうちに、空の住む居住エリアの最寄駅についた。
空の家について、飛鳥がインターフォンを鳴らす。はーい、と言う元気な声、そして嬉しそうな足取りが家の中から聞こえてきた。
「長旅プラストラブルご苦労、疲れただろう、入って入って。」
「ただいま。」「お邪魔します。」「お邪魔します。」
「みんな、ちゃんと挨拶できて偉いぞ。」
「お母さんは?」
「がんの検査入院だよ。」
明日菜達の祖母は癌に3年前になったが、寛解した。今回の入院は再発していないかを調べるものである。早期発見早期治療の賜物である。
「明日、明日菜と朝、面会行ってくるね。」
「僕はインタビュー終わってから行くよ。」
「ヒナも喜ぶだろう。さて、孫達、お小遣いをあげよう。」
「「ありがとうございます!」」
「わざわざ良いのに。」
「いやー、孫は甘やかしたい年頃なのだよ、もう、ジジイだからな。」
そして、2人はお小遣いを受け取る。
「ありがとう、これで、ホークスのフィギュア買えるよ。買ったらメール送るね。」
「私は、『ヴィジランテの盛衰』って本が今月末発売されるのでそれ読んだらメール送ります。」
山菊家では、お小遣いを貰ったら、お礼のメールと共に何に使ったかを書くのがルールである。
「じゃあ、もう日が暮れたし、ご飯でも食べに行くか。」
「前みたいに、回らないお寿司とかじゃなくても良いのよ?!」
前、明日菜と飛瑞が2人で《I・アイランド》に行った時、そんなことがあった。飛鳥は卒倒して、急いでお礼の電話をした。
「じゃあ、回転寿司にするか。」
「「やったー。」」
そして、山菊御一行は回転寿司に向かった。
翌朝
事件から2日経って安全が確認されたため、《I・エキスポ》が開かれることになった。
明日菜たちは空の家の一室で目を覚まして、ダイニングに降りた。
「おはよう。」
空は本を読んでいた。老人の朝は早い。現在は《I・アイランド》時間は6時である。
「「おはようございます。」」
「おはよう、お父さん。」
「みんな元気そうだな。朝ごはんを出そう。」
明日菜と飛瑞は喜んだ。いつも祖父母の家で食べられる朝ごはんはいつもより豪華だ。飛菜子が作ってくれる、一汁三菜の豪華な朝ごはん…いつものトーストと卵料理の朝ごはんよりもずっと美味しいのだ。
しかし、しばらくして出されたのは、ただのキューブだった。
「よく噛んで、お水も飲みながら食べるんだぞ。」
空は笑顔で言う。明日菜と飛瑞は固まる。楽しみにしていた朝ごはんはどこ?
「お父さん!ふざけないの!科学の王国、マッドサイエンティストの邸宅、ディストピア飯って突っ込んで欲しいんでしょうけど、明日菜にも飛瑞にも出されたものは文句言わずに食べろって教育してるのよ、こっちは!」
飛鳥はカンカンに怒っている。
「ハハハ、悪い冗談だ。飛菜子の料理に比べたら微妙だが、ちゃんとあるぞ!」
そして出されたのは、引っ張るとあったまるハンバーグステーキだった。ちゃんとお野菜もついている。
「後は、引っ張るとあったまるスープと、これは冷凍だが、飛菜子の作っておいてくれた、炊き込みご飯があるぞ。」
「「炊き込みご飯!」」
飛菜子の作る炊き込みご飯は美味しい。薄味だけど、出汁はちゃんと主張しているし、具材の大きさもちょうど良い。
子供達はレンジがなるのを待っている。
「わざわざ置いておいてくれたのかしら、お母さんに後でお礼言わなきゃ。」
「そうだな。」
そう言って、空はキューブを食べる。
「お父さん…これ、美味しいの?」
「うーん、もそもそしたプラスチック?でもちゃんと高カロリー高タンパク高カルシウム。」
「つまりまずいってことね、私もハンバーグステーキもらうわ。」
空は水を勢いよく飲んだ。どうやら相当水分を持っていかれるらしい。そんなの食べて、誤嚥とか大丈夫なのかと飛鳥は心配になる。
「「いただきます。」」
後ろではご飯を温め終わった子供たちがご飯を食べている。
「冬青君の分もあるぞ。」
「冬青は今日も仕事よ。」
「そうか、私はもう、栄養足りてるし…余りは昼ごはんにでもするか。」
「で、なんでまずいキューブ食べてたの?」
空は笑って言う。
「やってみたかったんだよな、孫にディストピア飯出すの。」
「食べ物で遊ばない!」
飛鳥は子供を叱りつけるように怒る。
「じゃあ、飛鳥もご飯食べな。」
「いただくわ。」
そして、朝食が終わった後、明日菜と飛鳥は飛菜子のお見舞いに、飛瑞は伯父、飛竜のインタビューに向かっていった。
明日菜と飛鳥は大学病院に面会に来た。
「「お邪魔します。」」
「いらっしゃい、大変だったわね。飛行機で足止めを食らうなんて、特に飛鳥にとっては。」
「そう、大変だったわよ。というか、そっちは大丈夫だった?お父さんはいつもの感じだけど…全然情報も入ってこなくてさ、どうしたものかと思っちゃったわよ。やっぱり全面封鎖ってことはないわよね?」
「そうよ。」
飛鳥の言葉を飛菜子は肯定する。
「全面封鎖!?」
「まるで牢獄みたいだったわ。」
《I・アイランド》のセキュリティは監獄・タルタロス並みである。そのセキュリティが厳重警戒となると、確かに監獄の中にいる気分にはなるだろう。
「今までは、ずっと、敵犯罪もなかった。でも、一旦爆発物が設置されたとなればこれよ。」
本当にそうか?いくらなんでも爆発物が設置されただけにしてはやりすぎな気がする。もしかしたら、公にしてない所で何か大きな大きなトラブルがあったのかもしれない。と明日菜は考えた。
「安全だけど機密保護のために旅行も行けない。科学者の楽園にして牢獄…」
ただ、飛菜子にしてみれば、追放された夫と共に流れ着いたこの地では、故郷にすら中々帰れないことに、やりきれない感情を覚えているのだろう。
「ところで、朝ご飯はちゃんと食べた?ゲテモノ出されたりしなかった?」
飛菜子の空への信頼はゼロである。
「変なキューブ出されたけど、ちゃんとした朝ごはんも食べられたわ。」
飛菜子は呆れる。
「全く、あの人、どこか、いつまでもいたずらっ子な小学生の気分なのよ。」
「わかるー。」
「だからね、遺してなんて逝けないのよ。」
明日菜はぐるりと見渡してみる。最新鋭のナノマシンの示す数値が今も輝いている。それを瞬時にAIか判断しているようだ。
「この病室にはね、最新鋭の技術が使われてる…治験だと思って行ってこいって空は言った。科学の発展のために尽くしてこいって。」
だが、飛菜子も飛鳥も明日菜でさえも気づいている。この病室には空の飛菜子を神様にだろうと渡したくない、そんな執念が詰まっている。
「なんで、そうなのかしらね。理想ばかり見て研究に没頭してるように見えて、神様だって怖くないって顔しているのに、帰る場所が亡くなるのが何よりも怖いのよ。」
3人は沈黙する。でも、明日菜は知らない。祖父の空の理想とはなんなのだろうか?遺伝子操作の技術なんてものに手を出してまで叶えたいものなのだろうか?
「あら、次の検査が近いみたい。」
飛菜子が時計を確認する。
「じゃあお暇させていただくわ。」
「お邪魔しました。」
明日菜と飛鳥は挨拶をする。
「そうね、じゃあ最後に一つだけ、飛鳥、冬青を大事にしなさいね。あと、明日菜は青春を楽しむのよ。」
そして、飛菜子はウィンクした。
「ばあちゃんからの、お説教タイムは終了、またねー。」
そうして面会時間は終わった。
飛鳥と明日菜は水瀬操介とその母初音と合流した。お楽しみの《I・エキスポ》見学だ。
を引いて走り出した。
着いた先にあったのは一つの漁船だった。
「これさ、実は父さんがプロジェクトリーダーで作ったんだ!」
展示盤には、どんな荒波にだって飲まれない、揺れを軽減した世界最高峰の技術を誇る漁船、と書いてある。
「すごいですね。」
「だろ?!どんな波にでも飲まれないところ、父さんらしさが出てるよな。」
確かに、乗務員の安全を第一に考えている。漁村の漁師の家で育った操介の父親らしさがよく表れている。
「うちの父さん、ぶっきらぼうでちょっとが雑なところあるけど、凄いんだよ…でも、ぶっきらぼうなところムカつくから、超えたいんだ。」
父親を超えたいという感覚、明日菜にはあまりピンとこなかった。
「有名なヒーローになれば叶うんですかね。」
明日菜は適当に返してしまった。
「いや、どうなんだろうな…父さんたちの作った船に命を預けても良いって思ってる人たちがたくさんいるんだ。」
「そんなこと言ったら、私の父も警察官として治安を保っているので、並大抵の努力では超えられませんね。まあ、たまに学歴自慢してくるのはうざいけど。」
中学生2人は考え込む。
「すごい大人になるのって、難しいな。」
「そうですね。」
その様子を飛鳥と初音は嬉しそうに見ていた。