トロフィー『呪祓の王』獲得RTA   作:もちゃもちゃの玉ねぎ

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渋谷事変2《裏》

 

気を失った悠仁を恵のとなりに横たわらせ胸元から煙草を取り出し火をつける。

吸い込み、紫煙を吐く。心なしか若干心が落ち着いた気がする。

 

(……硝子につられて吸い始めたけどいつの間にか手放せないものになっちゃってるなぁ)

無駄に過去を思い返してしまうほど自分が精神的に参っていることを自覚してしまう。

救えた命をあれほど簡単に刈り取られた。宿儺の邪悪さを見落としてしまっていた自分への怒りと失望がふつふつと湧いてくる。

いつの間にかフィルターのみになった吸殻を地面に落とし、2本目に手を伸ばす。

 

「……ぁ」

火をつけた瞬間に悠仁が目を覚ました。

 

「……ぁ、あ、俺は…ッ!!!」

悠仁も俺と同じように、下手したら俺以上にこの件に心をすり減らしている。今俺に出来ることは自分のこの気持ちに蓋をして悠仁の傷を少しでも癒す事だ。

 

「…悠仁、気にするなよ。お前は悪くない、あれをやったのは宿儺でお前じゃない。」

悠仁に言葉をかける、悠仁の瞳はどす黒い闇のように濁っている。世界に絶望したような、自分に失望したようなそんな色。

 

「…おっ俺が、弱かったからッ。何人も死んだ、死ねよ、俺が死ねよッ」

悠仁が何度も何度も地面を殴りつける。自分の不甲斐なさ、自分の身体で何百人の人間が死んだことが痛いようにわかるから、だからこその自分への怒り

 

「違う、悪いのは宿儺と俺だ。俺が殺したんだ。お前は悪くない。」

そんな慰めは悠仁に届かない。誰よりも人のことを考えて行動していることを過ごした時間は短いが俺は理解していた。

 

「……悠仁、その後悔は今すべきことか?まだこの戦いは終わってない。俺もお前も後悔するのは全部終わった後にしよう。」

悠仁の瞳に僅かな光が宿る。

 

「……そうっすね、まだ何も終わってない。全部終わった後に俺の罪を精算する。」

悠仁が俺の顔を見て呟く。未だその顔には後悔と絶望が色濃く残っている。それでも先程よりもマシだった。

 

「俺は恵を硝子のところに置いてくるから、一人で行動できる?」

未だ気を失っている恵の方を見やって悠仁に告げる。

 

「伏黒のこと頼みました、焔瀬さん!」

座り込んでいた悠仁が立ち上がり決意の目でこちらを見る

 

「まかせて。責任も持って送り届けるさ。」

恵の体を持ち上げて悠仁を見やる

 

「オッス!なら俺は行きます!」

悠仁はまだいる敵のところへ走って行った。

悠仁に少し遅れて俺も恵を担いで走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「…硝子」

渋谷付近で救護活動を行っていた場所に到着し硝子に声をかける。

 

「統弥?それと伏黒。」

こちらに気づいた硝子がこちらを見やる。

 

「恵が重症だ。一応反転術式を施したけど俺のは硝子ほど精密じゃないし目を覚まさないから届けに来た。」

恵を地面に優しく起きながら状況を説明する。

 

「なるほどね、わかったよ。」

説明しおわり、俺もまた現場に戻ろうとする。

 

「…待ちなよ統弥。……大丈夫?」

たった一言、そのたった一言で俺の全てを取り繕っていた虚飾の仮面にヒビが入る。

 

「……なにが?」

精一杯の取り繕い。だがそんなものが硝子に通用しないことは俺が1番わかっていた。

 

「はぁ…こういう時の嘘はほんとに下手だよな。どーせまた自分のせいで人が死んだーとか思ってんだろ?」

全て言い当てられる。いつも少しでも傷ついている時、直ぐに硝子にはバレる。どれだけ取り繕っても、その仮面を紙切れのように取り外される。

 

「……実際そうだ、俺が宿儺に隙を与えていなかったらここまでの人死は出なかった。

……俺がもっと強ければ、俺がもっと賢かったら、こんな事にならなかったッ」

誰にも聞かせるつもりの無かった胸の奥に奥に閉じ込めていた弱音を引き出される。

 

「はぁ…相変わらずお前はお人好しだな。いっつも人をおもちゃのように扱うくせに、他人なんてどうでもいいって語るくせにいざその他人が死んだらその責任を自分で背負い込む。

……どんだけ強くても、救える人の数なんてたかが知れてるんだよ。あの五条だって全部は救えないって言ってたろ?

ったく、お前は優しすぎるんだよ。

……まあそこが良いところでもあるけどな。」

硝子が語るのは紛れもない事実、出来れば隠していたかった俺の真実、だがその一言一言で俺の心はどんどん軽くなっていく。

 

「お前いっつも考えすぎだ。普段みたいにちゃらんぽらんでいろよ、そっちの方が楽だろ?」

煙草を吸いながら適当なことを言ってくる。そんなこと出来たらやってるよ!と心の中で叫ぶ

 

「……硝子、抱き締めていいか?」

手を大きく広げてハグを強請る。今は無性に誰かを抱き締めたい気分なんた。

 

「…!ばーか」

口では暴言を吐きつつもその頬は少し赤く染っている。そしておずおずと近づいてくる。

 

「ったく、ほら来い。私が抱きしめてやるから。」

あたかもそちらから言い出したように硝子が抱きしめてくる。鼻腔をくすぐる煙草と甘い体臭が混ざった匂い。

 

「…硝子の匂い好きだな。」

優しく、そして固く抱きしめ合いながら硝子に囁く

 

「ッ、嗅ぐな!汗かいてるんだよ!」

硝子は動揺するも抱擁を解く気はないようでその腕は俺の背中から離れない。

 

数秒かはたまた数分かもしかしたら数時間かそういう錯覚をするほど抱きしめあっていた。

 

「…そろそろ行くよ。まだ戦いは終わってないから。」

そう囁きながら抱擁をゆっくりと解く。

 

「ぁ、……そうだな。行ってこい、お前の気の済むように。ただし、死ぬなよ。」

硝子も名残りおしかったようだなと考えながらその言葉に肯定を返す。

 

「統弥さん!!」

後ろから聞きなれた女の声がしたと同時に背中に衝撃が走った。

 

「うおっ!」

 

「……良かった、生きてた。」

安堵の音色の声が背中から聞こえる。

 

「…高木ちゃんも生きてたんだ、良かった!」

 

「はい!運が良かっただけですが。」

たわいもない会話をしながらお互いの生存に安堵する。

………大事なことを忘れて

 

「……いいご身分だな。私にハグをねだっておいて終わったらすぐ別の女か?」

背後からの圧倒的な寒気、先程まで相対していた宿儺を気配を上回る悪寒を背中で感じとった。

 

「違うんだッ彼女は俺の専属の補助監督でだから生きてて嬉しかったんだよ!」

慌てて硝子に弁明する。別に硝子とも付き合ったりしてないんだが弁明しないとまずいと俺の全細胞が告げている。

 

「…え、何度も私の身体を貪ったくせに」

何を言ってるんだこの高木ちゃんは?!今それは悪手も悪手だろ!

 

「ふーん、そうなんだ?統弥」

嫌な汗が滝のように流れ出る。過去今までにないほどの緊張感だ。

 

「いっいや、」

言葉につまる。だって事実だから。

 

「はい、そうですよ?もしや家入さんは統弥さんと寝たことがないんですか?」

なんで火に水を注ぐようなことを言うんだこの補助監督は?!

硝子の瞳から完全にハイライトが消える。怖すぎる、自然と体がブルブルと震える

俺が原因だけど女の喧嘩は怖い。できることなら関わりたくない。コッソリとフェードアウトしよう。

 

「……統弥、終わったら話がある。」

普通にバレた。

 

「あっああ、わかった。」

滝のように汗をかきながら俺は返事をする。

 

「統弥さん、無事に帰ってきて、約束通りデートしましょうね。」

 

「は?」

ひぃいいいい!!なんで地雷を踏み抜いて行くんだ!

聞こえなかったフリをして早くこの場から退散しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

急な修羅場を潜り抜けておれは呪霊の残党を祓っていた。しかしその数は既に少なく、残っているのは2級以下の雑魚と改造人間のみで1級等の上位呪霊は既に殲滅されていた。

 

(特に危険な呪霊はもういないか。日下部さんや健人それに直毘人さんもいれば当然か。)

1級最上位の実力をもつ2人に自慢の後輩もいれば下手な呪霊以外は確実に祓える。

ひとつ心残りなのはツギハギの呪霊を見つけられなかったことだが、一体何処にいるのか検討もつかない。

 

その時、あの忌々しい傑の身体を乗っ取ったナニカの呪力を感じ取った。

 

「…!!クソがッ」

すぐさまその方向に走り出す。なにがあるか詳しくは分からないが、俺の勘が警鐘を鳴らしてる。

 

走る、走る、走る。

すると、傑と白髪の呪詛師、その周りに氷漬けにされている日下部さん達を発見した。

 

(…クソッ!また遅れた!だがまだ誰も死んではいないみたいだ。)

そんな時悠仁が白髪の呪詛師から攻撃を受けようとしていた。

 

(させるかッ!)

術式を発動し、一気にその場へと接近する。

ドゴゴーンという轟音と共に悠仁の前へと着地した。

 

「悠仁!無事か?」

 

「焔瀬さん!はい、助かったす!」

元気よく返事をしてくれる。良かった、少しはメンタルが回復してるみたいだ。

 

「良かったよ。それに由基先生!お久しぶりです。」

久方ぶりの師匠との会合に心が弾む。

 

「統弥ー!久しぶりだねっ相も変わらず君はかっこいいね、流石は我が愛弟子!!」

由基先生もテンションが上がっているのが感じ取れる。いつまでも変わらない先生が俺は好きだ。

 

「それに久しぶりだね〜夏油くん。以前聞きそびれた質問の答えを教えてくれたまえよ。どんな女がタイプだい?」

そんなこと聞いてたんだ、知らなかった。

 

「…九十九由基ッ!それに焔瀬統弥、面倒だね。しかし焔瀬統弥、君は連戦に次ぐ連戦だろう、流石の君でも疲労が見えているよ。」

ナニカが話しかけてくる。傑の声だが吐き気を催す。喋りかけるな、その顔と声を我が物顔で使うんじゃねぇ

 

「……殺す」

威圧感を込めて威嚇する

 

「怖いね。殺意がマシマシだよ。でも今の君ならそう簡単に負ける気はしないかな?」

舐めたことを言いやがって、やってやるよ。生まれたことを後悔させてやる。

 

「統弥、君の気持ちも痛いほどわかるけどここは私にまかせてくれないかな?」

由基先生がコソコソ話で話してくる

 

「…分かりました由基先生が言うなら。」

由基先生に頼まれたなら仕方ない。ここは我慢だ。

そう決意して静かになった時、左方なら冷気を感じた。

氷の攻撃を焔で封じる

 

「…なんだお前」

皆を氷漬けにしていた呪詛師が俺に攻撃してきていた。

 

「…焔瀬統弥、貴様…誰のお身体に傷をつけたと思っているッ!!万死に値するッ!」

そいつは切れていた。

意味が分からない。何に切れているのかそしてこんな雑魚が俺に喧嘩を売る意味も

 

「ぎゃーぎゃーとうるせぇんだよ。折角こっちはあの糞殺すのを我慢しようとしてんのにイラつかせるんじゃねぇ。」

呪力を放出し白髪に向ける

 

「知るか、死ね 氷凝呪法 『直瀑』ッ!!」

氷の奔流が俺に向けて顕現する。

 

「温いんだよ、お前の氷。術式反転『氷終理』」

白髪の氷を俺の氷で凍らせる。俺の方が圧倒的に強い。紛れもない事実を嫌になるほど教えてやる。

 

「なッ!」

 

「テメェ浮いてんだよ、消えてろ」

一瞬で白髪の懐に入り込み蹴りを入れて後方へ吹き飛ばす。吹き飛んだ先に移動し更に追撃を加える。

 

そんな時由基先生の声が聞こえる

 

「……これは、術式の遠隔発動ッ!」

戦闘を中断し直ぐに戻る

 

「礼を言うよ、虎杖悠仁。取り込んだ呪霊の術式の精度は、取り込んだ時点でその成長を止める。君との戦いで真人は成長した。本当は漏瑚も欲しかったけど、まあ仕方ないね。」

ツギハギの呪霊は既にこの男に取り込まれていたようだ。いや、この事件がそもそもツギハギを取り込む為に引き起こしたものだった訳か、何処までも舐めてくれる。

直ぐに走り出し男を殴りつける

 

「止めとけよ、大事な仲間が私の間合いだぞ。」

数多の呪霊が付近に集まっていた術師達を取り囲んでいる。

 

「…クソが」

悪態をつき離れる。つくづく計算高い野郎だ。

 

「…何をした?」

由基先生が問いかける

 

「マーキング済みの2種類の非術師に遠隔で『無為転変』を施した。虎杖悠仁のように呪物を取り込ませた者、吉野順平のように術式を所持しているか脳の構造が非術師の者。それぞれの脳を術師の形に整えたんだ。前者は器としての強度を、後者は術式を発揮する仕様に手を入れた。

……そして、今その呪物の封印を解いた。彼らにはこれから呪力への理解を深める為に殺し合いをしてもらう。」

何を言っているんだこの男は、つまりは自分の目的のために数多の人命を弄んだと?

 

「……つくづく、糞な奴だお前は。」

男を睨みつける。

 

「怖いね。でも私は見たいんだよ。混沌の中から生まれる、予想外なものが。」

何処までも自分本位、自分の知的欲求の為にその他を捨て去る、悪魔の所業だ。

 

「今にも殴りかかってきそうで怖いね。じゃー私たちはここで失礼するよ。」

 

「逃がすと思うか?」

呪力を奮起させ、威嚇する。

 

「あーそうそう、私が契約したのは過去の術師だけじゃなくてね、まあそっちの契約はこの身体が手に入った時破棄したんだけども。」

 

「「まさか!」」

由基先生と言葉が重なる。

 

「これが、これからの世界だよ。」

その言葉と同時に辺りを囲んでいた呪霊の数倍の呪霊が湧き出る。

 

「じゃあね虎杖悠仁、君には期待しているよ。」

そう言い奴は嫌がらせのように獄門疆を見せる。

 

「クソがッ」

怒りにまかせて呪霊を祓う。

 

……祓い終わった後に残るのは虚しさと悔しさだけだった。




死滅回遊見直して来るので投稿遅れると思います。長い目でお待ちください!
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