雨が降る路地裏、一人の少年と少女はボロボロなダンボールを羽織りながらで互いに寄り添い身体を温めていた。
どちらも肉体のどこかしらに殴られたようなアザや切り傷があった。
そんな二人の肉体はつま先から徐々に冷たくなっていった。お互いすでに相手を励ます声を発するほどの体力もなくただただ衰弱していくだけであった。
「おやこれは‥‥‥」
「「?」」
その時だった、傘を天高らかに広げ二人を見下ろす不気味な男性が現れ二人の頭上に傘をかざした。
「君たち親はいないのかい」
「「‥‥‥」」コクッ
男の言葉に二人は首をゆっくりと震えさせながらも縦に振った。
「なら俺の家にでも来るか? 今ちょうど誰もいなくなったし」
軽口で話を続ける男の言葉に再度頷こうとしたら二人の子供の体力は力尽きて硬いアスファルトの上に無気力に倒れてしまった。
「あらら、じゃまあ連れて行きますか」
男は傘を閉じ二人を背負ってどこかに歩いてった。
幸か不幸かその男__酸賀研造に拾われたことで少年と少女の運命は大きく変動した。
それから15年の時が経つ。
◇◇◇__酢賀家地下室
俺の名はベータ。目の前の椅子に座りパソコンを眺めている暗めの茶髪にマル眼鏡をかけている男__酸賀研造に小さいころ救われた拾い子だ。
年齢は多分23‥‥‥のはず。黒のぼさぼさ髪に真っ黒な瞳だと酸賀とバカに言われるがどうでもいい。
自分達を救ってくれた酢賀に精一杯恩を返し母さんの仇を取る‥‥‥それだけだ。
「ベータくん、最近どうよなんかいいことあった?」
「特にない。それとコーヒー淹れたぞ」
「つれないなー最近の子供ってのは。コーヒーはありがと、おおうちょうどいい温度。流石だね」
持ってきたコーヒーを淹れたマグカップのうちの一つを酸賀にわたした。酸賀は食い入るようにパソコンを見ながらコーヒーを一口すすった。
「やっほー酢賀さんガンマが帰って来たよー! あっベータもいんじゃん」
バカがおつかいから帰って来た。このバカで明るい茶髪の前髪に白メッシュの女の名前はガンマ、俺より一歳年下で一回り小さいバカだ。
勉強ができないとかのバカではないのだがいつも前に出たがる危険を確認できないタイプのバカだ。あいや勉強の方も‥‥‥。
「おー早かったねーガンマちゃん」
「えへへ」
持っていた袋を置いてガンマは酸賀に近づき頭を撫でてもらって頬を赤らめていた。その様子を俺はソファに座りコーヒーを口に運びながら眺めて一言つぶやいた。
「‥‥‥ガキかよ」
「なんだとこのやろベータ野郎!」
うるさいうるさいバカが騒いでやがる。耳だけはいっちょ前にいいんだよなこいつ。
あーにしてもこのコーヒーうまいな、さすがだ俺。
「そんなんだからモテないんだよ、ベータのバカ!」
「は? ぶち飛ばすぞお前」
モテるモテないとか心底どうでもいいがお前にだけはバカとは呼ばれたくねぇ!!
「え? 何? 嫉妬? ごめんねぇわたしモテすぎちゃって!」
「そんなことじゃねぇ。お前が俺をバカっていったことだバカ野郎」
「はあ!?」
「まあまあふたりともそう喧嘩しないしない」
「うっ分かった、ごめんなさい」
「‥‥‥あんたがいうなら」
恩人にそこまで言われたこれ以上あんたの前では喧嘩できない。恐らくガンマも同じことを思ってるはず。
だから俺等二人は肩を落としながらも互いに離れ俺は元々座っていたソファにガンマは部屋の片隅に立ててあったパイプ椅子を広げて座った。
飲みかけのコーヒーを再び手に取り一つの資料を読み込む。
その資料の内容はグラニュートの生態についてだった。特段代わり映えのしない内容ただ酸賀の目的のために少しでも力になるためには何度も見る価値は十分あった。
「あっそうだ、酸賀さーん。最近話題のグラニュートについて知ってる?」
「話題のグラニュート? あああの赤いガヴの子でしょ」
「そうそう!」
赤いガヴ、耳に入ってきた言葉について考える。確か最近巷でグラニュートを倒してるっていう詳細不明のグラニュートか?
いやグラニュートかどうかまではまだ分かってないが十中八九グラニュートなんだろう。
「で赤ガヴがどうしたんだガンマ?」
「ちょっ今ベータは関係ないでしょ! まあいいけど‥‥‥でさでさほら目撃情報! 出てるよ!」
酸賀と俺の二人に見せつけるようにスマホをガンマは見せてきた。スマホの画面には怪物が二人映し出されていた。
一つは刺々しいというかトゲだらけの見た目のグラニュート、もう一つは腹に機械的な赤いガヴをつけたグラニュートであった。
「へぇガンマちゃーん帰ってきてそうそうだけどまたでかけるよ。接触は俺がするからガンマちゃんとベータくんは周辺の調査ってことで」
「分かった‥‥‥」
それをみていち早く酢賀は立ち上がり帽子を被り杖を持った。俺もすぐにコーヒーを飲みきり出かける準備をする。
「ずるい! わたしも会いたい!」
「ジャンポンケン!」
「なぁっ!?」
ガンマが駄々をこねるとすぐさま酸賀はガンマとの間でじゃんけんを仕掛けた。
その勝負は酸賀はパー、ガンマはグーと完全なるガンマの敗北に終わった。
「じゃそういうことで‥‥‥なんかあったら報告よろしくねふたりとも」
「ぐぬぬ、これで915戦0敗‥‥‥おかしい三分の一の確率で勝てるはずなのにどうしてわたしは勝てないんだあああ!!」
酸賀は勝ったことを確認せずにそのままさっていった。恐らくというか確実にこの
ガンマは酸賀が去っていた部屋の中で顔を膨らませ手帳に先程の勝負の結果を真面目に記録していた。というか915戦ってよくそんなに数えられるな。
バカなのかただの負けず嫌いなだけのか判断に迷う。
「おい、いくぞガンマ」
「分かってるって! うぅ」
しょんぼりと肩を落としているガンマを横目に俺も酸賀の後を追うように部屋を後にしていく。
◇◇◇
「はぁっ!!」
「ぐはっ!?」
「あれか‥‥‥」
目的情報があった現場へとつくと水色の巨腕をグラニュートにぶつけていた赤ガヴがいた。その様子を俺らはひっそりと建物の裏から観察している。
「ねぇベータ、ベータってば‥‥‥」
「なんだよ、ガンマ」
後ろの裾をうざったらしく突っついてくるガンマに嫌気がさし振り返る、ガンマは透明な瓶に四角い赤いチョコのようなデザインの生物?をいれていた。
なにそれ?
心の底からそう思った。意思があるかのように瓶を出ようと動いているから生きてはいるんだよな?
「ガンマそれはなんだ」
「知らなーい。なんか可愛かったから一応捕まえておいた。どうすごいでしょわたし!」
「別に胸を張ることじゃないだろ」
まあ酸賀のやくには立てそうだな。見たところ‥‥‥。
《パンチグミパーンチ!》
「はぁっ!!」
「ぐああああ!!」
赤いガヴのグラニュートがトゲのグラニュートを倒した。
「あれは人プレスか」
赤ガヴは一つの人がアクリル板となり赤い舌でぐるぐる巻きとなっている人プレスを拾い持っている両刃剣で開放してすぐにその場から去っていた。
一応スマホで撮っておくか。
パシャリと写真を撮り赤ガヴの後を追おうとしたその時だった。持っていたスマホがなりすぐに電話に出た。
『ベータくんー君たちの周りに小さいお菓子みたいな生物いない?』
『いるが、どうした』
お菓子の生物、多分ガンマが捕まえたやつのことだろう。
『こっちで一人、家に案内することになったからしばらく帰って来ないでってことと赤ガヴのグラニュートくんにバレない程度にそれをなるべく多くの種類を捕まえておいて、であとね闇市で色々機械の部品を‥‥‥』
『買っておけばいいんだろ、金はあとで請求するぞ』
『がめついねーまったくガンマちゃんはそんなこといわないよー』
『知るか』
その言葉を告げて電話を切った。ガンマは優しいというかそこまで頭が回ってないだけだろ。ため息をつきながらも後ろを振り返る。
「おおーいろんな子がいるーグミにポテチにクッキー? みんな可愛いー!」
俺の視界には新しい見た目のお菓子の生物を見つけるたび次々に捕まえていくガンマの様子が写っていた。
あの調子なら問題なさそうだな。
「ガンマ、闇市に行くぞ」
「へ? 分かったけどちょっとまってあと一体だけ‥‥‥!」
「先行ってるぞ」
「それは駄目!」
俺が闇市に向かおうとしたらすぐにガンマが隣に立ってくる。捕まえた奴らはそれぞれの別の瓶に詰めてぶら下げてるバッグに入れていた。
「で、闇市いって何買うの? もしかしてお菓子?」
「違う、機械の部品を買って来いだけだ。早く終わらせるぞ」
「はいはーい。‥‥‥けどこれで一歩近づけるといいね」
「だな」
ガンマの言葉で思い出すのはまだ俺等が幼かった頃の記憶––
まだ寒い冬の時期、今日一日を生きるかどうかも怪しいほど貧しくても楽しかった時期、とある一人のグラニュートに俺等二人の母さんが連れられていったいくら寝ても騒いでも記憶の底にこびりついているあの記憶。
『ほらスマイル、スマイル。辛いときこそ笑うんだよ』
そして、太陽にも負けないくらい眩しかった母さんの笑顔––
あれだけは確かに覚えている。母さんの名前、自分たちの本来の名前を忘れたとしてもそのことだけは今も鮮明に覚えていた。
「母さんの仇、確実にこの手で倒す‥‥‥!」
静かに拳を力強く握りながら闇市へとガンマと共に向かっていく。
酸賀さんの口調こんな感じでいいでしょうか? ほんとは戦闘シーンも書きたかったんですけど別にいっかなと思い省きました。
早めに次も投稿できるよう頑張らせてもらいます。
◇
酸賀さんの苗字修正完了!