飯炊系隊員の憂鬱   作:アルピ交通事務局

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飯炊系隊員の憂鬱 その4

 

「合格しました」

 

「おめでとさん……ああ、言いたいことは分かるから。去年も似た流れをしてるから」

 

 烏丸が三門第一高校に合格した事について報告に来てくれる。

 なにが言いたいのかは直ぐに分かる……合格したから美味しいご飯を作ってくれと言う意味だ。

 

 別にそれに関しては文句はない。

 ボーダー隊員は学校を途中で早退してまで防衛任務を受けていてその上で受験をしている。ボーダー推薦枠と言う闇の枠を使った太刀川?知らんな。

 

「秀信さん!三門第一高校に自力で入れました!なんか作ってくださいよ!」

 

「安心しろ、その為にここに来ている……誰がどういう状況だ?」

 

 ボーダー本部に足を運べば佐鳥に掴まった。

 決してバカではないものの成績優秀じゃない佐鳥はボーダー推薦枠でなく自力で受験して合格をしたと言った。ついでにだからと佐鳥に聞いた。

 

「烏丸以外は?」

 

「俺とトッキーと日佐人と……めっちゃ居ますね」

 

「じゃあ、無しって事は?」

 

「いやいや、それは無しですよ……折角受験勉強頑張ったんですからご褒美ください!」

 

 なんだかんだ言いながらも欲張りな男である。隣に居る時枝も口にはしないが俺が飯を作ってくれるのを期待している。

 烏丸だけをやれば後でなんか言われるのは確実だろうなと思いつつもなにを作るのかを考える。

 

「佐鳥はなにが好きだっけ?」

 

「ハンバーガーです」

 

「時枝は?」

 

「みかんです」

 

「……烏丸の奴は絶対にとんかつを要求してくるし、他に食いたいって奴は居るかの確認しといて」

 

「了解っす」

 

 今回合格した奴で飯が食べたいという奴を確認してもらう。今年受験だったのは結構居る。

 全員が食べたい物を言ってそれに合わせて作るなんて基本的には無理がある。いや、それ以前にめんどくさい。

 

「月見に弓場に嵐山に柿崎に生駒に藤丸にって……大学生組もかよ……」

 

「秀信さんが奢ってくれるって言ったら話聞きつけて来て」

 

「…………どさくさに迅が紛れ込んでやがるな」

 

 あの野郎、ボーダーの職員としても働かずボーダーのS級隊員として暗躍している。

 事務仕事するよりも現場に出て色々と見るのが迅の性に合っているのは分かっているが、今回は受験合格者の回だぞ。

 

「秀信さん、なんか手伝うことありますか?」

 

「いやいや、いいよ。今回はお前等が主役なんだからさ」

 

「いやでも、20人以上居るんすからあたしも」

 

「構わない」

 

 藤丸の奴がなにか手伝うことが無いのかを聞きに来た。

 手伝う事があるかと聞かれても特に無い……と言うか今からの仕込みが大変である。

 

 烏丸が祝いの飯を作ってくださいと言うので好物のとんかつにする。

 烏丸だけならばそれでいいが佐鳥や時枝達も食べたいと言う……最終的には20人ぐらいは集まったので軽い立食になる。

 

 そうなると下手な物は作れない。

 懐石料理の様な凝った料理はあまり好みじゃないのでやることは1つ、最初に顔を合わせた3人の要望を答える。

 

 佐鳥の好物はハンバーガー、時枝の好物はみかん、烏丸の好物はとんかつだ。ここから上手く纏めて出来たのはサンドイッチだ。

 老麺法で熟成させた生地を練り込み極上のパンを作り上げる。一応はホットプレスの機械があるのでそれは後でご自由にだ。

 

 まずはハンバーガーの主役であるハンバーグ。

 豚肉6と牛肉4の割合でミンチ肉を用意し、繋ぎにはタマネギでなくパンを牛乳に浸した物を使う。香辛料はナツメグ、そして一番手っ取り早いカレー粉だ。カレー粉は色々な香辛料が混ざっているので色々とコクが出る。

 

 ハンバーグを作る過程でひき肉を作った別の物も作る。

 みじん切りのジャガイモとタマネギとひき肉を炒めた後に固形のコンソメを溶いた物とカレー粉を入れて弱火で煮込む。みじん切りなので火の通りは良くその上で味も染み込みやすい。味が大分染み込んだなと思えば煮込むのを止めて強火にして一気に水分を飛ばす。

 

 カレーパンの中身であるカレーあんっぽいのが出来る。それを耳をそぎ落とした食パンに牛乳を付けた物で挟んでフォークで固定し揚げる。春巻っぽい見た目になるが比較的に簡単ななんちゃってカレーパンだ。

 

 これだけではまだ終わらない。手作りのミートソースも作る。

 トマトの皮を軽く剥いてから茹でて裏漉ししてトマトのペーストを作る。茹でている間にニンニク、セロリ、ニンジン、タマネギをみじん切りにして炒める。あめ色になったらひき肉も炒める。ひき肉に火が入ったら小麦粉を少し混ぜて赤ワインを入れる。

 水気が無くなるまで煮込んだら固形スープのもとを割ったスープ、すりおろしたりんご、トマトのペーストを入れる。後は煮込んで灰汁を取る。ここで重要なのは水、軟水を使わずに硬水を使うことで味が良くなる。

 

 輪切りにしたトマトとモッツァレラチーズを用意し細かく刻んだバジルをオリーブオイルと混ぜた物を用意する。

 カッペリーニ、ジョジョのトニオさんの料理で有名なアレであり今回これは焼いたパンの上に乗せて食べるようにする。

 

 烏丸待望のとんかつは一口カツにする。

 一口カツなので王道を行くロース肉でなくヒレ肉でのトンカツになる。パン粉は転生特典の貪狼壺を使ってきめ細かなパン粉を使う。

 小麦粉、卵とつけて揚げるが揚げる油はサラダ油でもオリーブオイルでもなく豚の脂身から作ったラードの脂を使いカラッと揚げる。

 

 主食ばかりだといけないのでさっぱり目もいく。

 時枝が好物であるみかん、搾ってみかんジュースを作るが100%のみかんジュースじゃない。水を使って薄める。決してケチるわけでなく、100%のジュースは水で割った方が意外と飲みやすくて美味しいんだ。

 

 みかんだけでは物足りないのは重々承知している。

 潰していないみかんを生クリームと混ぜ合わせる。みかんだけだと物足りないのは分かるのでバナナとイチゴを生クリームと混ぜ合わせた。

 

「さぁ、出来たぞ」

 

「お、そう来たか……皆、好きなのを作ってくれってさ」

 

 高校及び大学合格記念の料理を作り上げた。

 迅は待ってましたと満面の笑みを浮かべながらなにをどういう風にすればいいのかが分かっているとサイドエフェクトで見た。

 

「うまっ!え、っちょ、とりまる!このカツサンド、すっごい美味いんだけど!特にとんかつが!」

 

「秀信さんが作るとんかつ、スゴい贅沢なとんかつだからな……美味い……秀信さん」

 

「ダメ」

 

 弟達にも食べさせてあげたいという立派なお兄ちゃんな考えをするが、今回は高校及び大学受験の合格祝いで作っているから持ち帰りは禁止だ。少しぐらいと視線で訴えかけてくるが、無理な物は無理なのだと睨み返せば諦めた。

 

「なんだよ、合格祝いって言うから期待したのにサンドイッチパーティって……」

 

「菊地原……すみません、秀信さん」

 

「いやいや……文句を言いながらも色々と作ってるぞ」

 

「誰も食べないなんて言ってないんですけど?」

 

 豪華な焼肉的なのが出てくるかと思ったが、出てきたのはサンドイッチパーティだった。

 自分が大嫌いなトマトがあるのが不服なのか菊地原が文句を言ってくる。その菊地原の態度に歌川が注意を入れるが、菊地原は文句を言いながらも色々なサンドイッチを作ろうとしている。

 

「こら!トマトだけ避けちゃダメだよ!」

 

「……」

 

 色々なサンドイッチを作っているが、意図的にトマトを避けている。

 その事を三上に注意を受けるが嫌いなものは嫌いだから食べたくないと言うのを顔で見てくるので俺はトマトを手に取った。

 

「食え」

 

「むぐ!?……ちょっと、なにを…………ふーん……」

 

「菊地原がトマトを食べているだと……」

 

「はっはっは、このトマトはフルーツ並みの糖度と酸味なんだよ」

 

 俺がなんでもない食材を用意すると思ったら大間違いだ。

 フルーツ並みの糖度と酸味を持っている今まで食べたどのトマトよりも極上のトマト。流石のトマト嫌いの菊地原もコメントは無いが黙々と食べている。

 

「そういや、秀信さんって何処の学部なんだ?」

 

「え、俺、大学生じゃないぞ?」

 

「……え?」

 

 全員がそれぞれの食材を取ってオリジナルのサンドイッチを作る中で藤丸が俺が大学の何処の学部なのかを聞いてきた。

 何処かの学部に所属しているのだろうと思っているのだろうが……俺は大学生じゃないぞ。

 

「いや、秀信さんは太刀川さん達とタメで」

 

「俺は調理師専門学校に通ってんだよ」

 

「はぁ!?初耳なんすけど!!」

 

「そりゃ、誰にも言ってないからな」

 

 調理師専門学校に通って調理師免許を手に入れて河豚を捌く資格を手に入れる。

 大学に通える学力とか経済力とかはあるにはあったけれども、どうあがいてもボーダーを辞めれそうにないのでもう調理師免許でも取ってやろうかと調理師専門学校に通っている。

 

「な、なんで……」

 

「藤丸さ……俺はさ、無いんだよ、才能が。弓場みたいに何百回と戦っても尚、トップクラスの実力を持っているとかそういうのが。だから俺は色々と考えた……どうせ俺は足手まといになっているから、俺の出来ることをしようって」

 

 この前の黒江との戦いでやっぱり俺って才能が無いなと熟知している。

 習い事をしながらボーダーNo.1になった小南なんかを見ていれば分かるよ。つくづく自分が持っていない人間なのを。

 

「出来ることって……飯炊きを!?」

 

「そう。今も昔も変わらず俺は飯炊き係……だから上は目指さないからな」

 

「秀信さんさ、そうやって自分を卑下するのはよくないと思うよ……秀信さんが居たからあの時、助かったんだから」

 

 上は目指さないと言えば迅が俺が自分を卑下していることについて言ってくる。

 確かに三輪のお姉さんは助けたがホントに危ないとしか言えないし助かったとも言えない。今も後遺症を抱えて杖をつかないと歩けない。完全な治療は出来なかった。

 

「まぁまぁ、秀信さんのご飯が食べたいって言うなら玉狛支部に来いよ……」

 

「毎日毎日俺が当番じゃないからな……俺的には小南の料理がな」

 

 小南、カレーしか作れないのはホントにどうかと思うんだ。

 子供はカレーが大好きなのよ!と自慢気にしているしカレー嫌いは居ないからいいけれども、1回自作したカレー粉でカレーを作ったら大好評だったけど小南が滅茶苦茶拗ねたの覚えている。チキンカレーだから攻めてクリームシチュー辺りを覚えてほしい。

 

「小南の料理を食ってるんすか?」

 

「食ってるぞ……美少女女子高生の手料理よ!って言ってた事もあったが、出てくるの毎回カレーだからな」

 

「そんなにすか!?」

 

「余ったカレーをカレーコロッケとかにしたら無駄に拗ねたりした事もあったし、玉狛支部ではカレー=小南だからカレー料理が出来ないんだ」

 

 カレーパンとかカレーうどんとか麻婆カレーとか色々と作りたいんだが作るに作れない。

 

「……ぼんち揚げ一箱」

 

「一袋で充分だろ」

 

「オレは布教をしたいんだ!……秀信さん、またその内向こうに行くっぽいから今の間に料理のレパートリー増やしたりしといた方がいいよ。試食は藤丸がしてくれるから」

 

「あたしにやらせてください」

 

 迅と藤丸がなにか密会をしたかと思えば料理のレパートリーを増やした方がいいと言い出す。

 既にメジャーな料理ならば大体は作れるのにまだレパートリーを増やせって鬼畜すぎないかと思ったが藤丸が試食してくれると言った。

 

「まぁ、いいけどさ……太っても俺のせいにすんなよ?」

 

「…………女の前でそれを言うな!!」

 

 料理のレパートリーが増えるのはいいことだが、太る可能性が非常に高い。

 太ったとしても俺のせいにされたらそれはそれで困る。その事を言えば周りから白けた視線を向けられる。女性の前で太るとか言ったので普通に怒られた。

 

「大丈夫だ。藤丸の抜群のスタイルを維持する料理も作れるから!」

 

「いや、だから……ああ、もう!それも食べるっすよ!」

 

 その爆乳をデブになって0にするのはいけないこと。

 ダイエット食とかも考えないといけないから……でも、ダイエット食って極端な話無限豚もやし辺りで充分なんだよな。

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