「⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ っ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「なんだ少年!?」
オールマイトがバッと振り返り、ビックリしたのか胸を押えている。
「あ、あぁ...?うっ...」
辺りを見渡す僕に、心配そうな顔を覗かせるオールマイトの顔を見て耐えきれずに嘔吐した。
「ぉえ...っ」
僕は、死んだ。飛んだんだ。
だが、生きている。
「そんなにショックだったか...!すまない、そこまで追い詰めてしまったとは思わなかった。しかしもう行かないといけないんだ少年。こいつを届けに... っ?」
恐怖で震える僕を置いてオールマイトは、何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡す。
⎯⎯⎯⎯ ドォォォン!
その瞬間に鳴り響いた爆発音に僕とオールマイトは顔を合わせる。
「まさかっ...!君はここにいるんだ!ここの階下の方に話をしてくる。私はもう行かなければいけない。頑張るんだぞ、青年。」
そう言ってオールマイトは、僕を置いて走って行く。
(なんだったんだ...?怖い、震えが、止まらない。)
死ぬ瞬間オールマイトと目が合った気がした。
そして死んだはずだ、頭から落ちて一瞬だったけど覚えてる。幻覚?ヴィランの個性か?わからない。
(助けて...)
*
「お゛お゛オ゛ォォォ!!」
(こんなドブに男にぃぃ!俺が呑まれるかぁぁあ!!!)
一方その頃、取り逃したヴィランに襲われていた爆豪勝己の現場は悲惨なものだった。
「すっげぇ!何アイツ!ひょっとして大物ヴィランじゃね!?」
「頑張れヒーロー!」
野次馬が飛び交う中、ヒーロー達の中では焦りが混沌としている。
「状況どーなってんの!?」
「ベトベトで掴めねえし、良い個性の人質こどもが抵抗してもがいてる!」
「おかげで地雷原だ!三重で手ェ出し辛え状況!」
そこに来ていたオールマイトは、今暴れているヴィランが取り逃したヴィランだと気がついた。
(活動時間ばかりに気を取られた!一般人ファンを諭しておいてこんなミスが!)
(情けない...情けない...!!!)
オールマイトは、ただ傍観するしかない事に絶望を感じていた。
「ヒーローなんで棒立ち?」
「手が出せねぇんだよ、中学生が捕まってんだと。もうずっとあのままさ。」
情けない
「つーかあのヴィラン、さっきオールマイトが追いかけてたやつじゃね?」
「オールマイト!?うそ?来てんの!?」
「何か、ちょっと前に見たよ」
「じゃあ何してんだオールマイトは!?」
(っ...情けない!!)
オールマイトが悔しさから俯いたその瞬間、爆豪勝己の希望は、消えた。
(ク、ソがぁ...⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯)
*
「本当に大丈夫?一人で帰れるのかい?」
「は、い...大丈夫です。ありがとうございました...。」
あの後、ビルの階下の人に背中を撫でられ、下まで降りた僕は吐き気を抑えながら歩き出す。
(あの出来事自殺が、さっきのヴィランの幻覚なんだとしたら、厄介な個性だよな...オールマイトに知らせるべき...?)
『「個性力がなくとも成り立つ」とはとてもじゃないがぁ...口にできないね』
「っ...」
(もう...辞めるべきなんだ...)
*
(プロの...トップまで言うんだ...。泣くな!分かってたろ!?現実さ...)
(わかってたから、必死こいてたんじゃないか...)
見ないように、見ないように ⎯⎯⎯⎯⎯⎯ って。
ドォォォン
(ここ...さっきの爆発の...)
「やばくない?!」
「逃げろ!ヴィランに体乗っ取られた奴が暴走してる!!」
「っ...!?」
(かっちゃん...!?)
焦りから口に手を抑える。
(乗っ取られたって...あの時のヴィランの仕業!?オールマイトっ...逃げられたのか!?落とした...!?だとしたら...)
「僕の...せい...!!!」
爆豪に乗り移ったヴィランは、爆豪の個性を使ってヒーローに飛びかかる。
「邪魔ダァ゛!!ヒーロー共ォ゛!!」
いつもの彼と変わらない声に、暴言。
似てるはずなのに、今は全く違う。
(怖い...!)
後ろへ、足が動く。
だが、その足はピタッと止まり、目を見開いた。
「っ ⎯⎯⎯⎯!!」
かっちゃんの目の下には、涙の跡があった。
あの苦しみをかっちゃんは味わったんだ。そして乗り移られて...あれ?
「今だ!!取り押さえろォ!!!」
良い個性と言っても、まだ成長段階の個性。
特に今まで違う個性だったヴィランが、使いこなすには難しすぎる個性だったのだろう。
すぐ様、かっちゃんヴィランは取り押さえられ、かっちゃんの中から最初のヘドロヴィランが出てくる。
「よし!確保!皆さん離れて!」
ヒーローのその一言に、その場は安心の声とヒーローへの感謝や応援がかけられた。
すると野次馬の一人がある事に気づく。
「もう動いてないじゃん、あの子...」
「うわ、本当...中学生だったんでしょ?可哀想...」
「え、死んじゃったの?」
ザワザワと騒がしくなる。
それに気づいたヒーローは、かっちゃんの亡骸が見えないようにと、着ていた服を被せていた。
「はっ...はぁっ...」
鼓動が早くなり、次から次へと思考が巡る。
(ヴィランを逃したのは、僕のせい...オールマイトをひきとめたから、たすけられなかった、ぼくのせい、かっちゃん...かっちゃんが死んだ?ぼくのせいで?)
死んだ?
( ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ぼくのせいだ )
「あっ、ぁあああああ!!!」
その場に踞うずくまる出久の心境は、とてつもなく悲しいものだった。
後悔、絶望、罪悪感、幼馴染が自分のせいで死んでしまったその事実が、酷く心を蝕んでいく。
ギィ...ガチャン
そんな音が上から聞こえ、見上げるももう遅い。
ヒーローがこちらに走ってくるのがスローで見えたが、出久の頭には助けて欲しいという願望は一切無く。
最後に思ったのは
(ごめんなさい)
その一言だけだった。
⎯⎯⎯⎯⎯⎯ドォォォン!!
*
崩れた建物の瓦礫の下に押しつぶされて死んだ。
死んだんだ。
「⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ っ!!!!」
「ああぁぁぁぁぁ!!!!」
「なんだ少年!?」
そこにはオールマイトの姿と、もう随分と前に出たビルの屋上の光景が広がっていた。
「い、意味がわからない、かっちゃんが、ヴィランにころされて、ぼく...!」
「少年、それはどう言う...?」
頭を抱えて踞る僕の言葉を聞いて、オールマイトは無意識に自身のポケットへ目をやる。
そこには、ヴィランペットボトルの姿がなかった。
ドォォォン!
その事に気づいた瞬間、爆発音が鳴り響き、それと共に出久は走り出す。
「君!!どこに行く気だ!」
「僕の幼馴染がいるんです!!助けないと!!」
振り向いている暇はなかった。
死んだはずなのに生きていて、また同じ行動が繰り返されている。誰かの個性かもしれない、でもそんな事よりもあの後悔を繰り返したくない、その一心で出久は走り続けた。
「ヒーローなんで棒立ち?」
「手が出せねぇんだよ、中学生が捕まってんだと。もうずっとあのままさ。」
そんな野次馬を駆け抜けて行く。
「かっちゃん...!」
「はぁっ...!少年!やっと追いついたっ...!
...っ!?あの時に落としたのかっ...!」
オールマイトを横目で見る出久は、自分のせいで動けないことを悟り、どんどん後悔が募ってくる。
(ごめん...ごめんなさい...!)
(情けない...!)
(すぐに助けが...!誰か...!ヒーローがすぐ...!)
「っ...!」
その瞬間、かっちゃんの目を見て僕は走り出した。
「!?」
「馬鹿ヤロー!!止まれ!!止まれ!!!」
(なんで出た!?何してんだ!?何で!!
⎯⎯⎯⎯⎯⎯違う!ヒーローが来なかったからあの時のかっちゃんは死んだ!)
僕が助けないといけないんだ!!
(どうしようどうしよう!こういう時は...!)
「しぇい!!」
向かってくるヴィランにリュックを投げつけ、その隙にヴィランの体を只管に掻き分ける。
「かっち゛ゃん!!!」
「なんで!テメェがァ!!」
「足が勝手に!なんでって...僕のせいだから...ぼくのせいでっ...!」
⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 色々理由はあったと思う。
(『ヴィランを逃したのは、僕のせい...オールマイトをひきとめたから、たすけられなかった、ぼくのせい、かっちゃん...かっちゃんが死んだ?ぼくのせいで?』)
もしあれが幻覚だとしても、あの時の感情は嘘じゃない。後悔、絶望、罪悪感、その全てが今の僕だ。
ただその時は
「君がっ...救たすけを求める顔してた!」
「やめっろぉ...!!!」
色んな感情が混ざり合うその瞬間にも、その光景に感化された人物がいた。
「本当に情けない!」
「っ...!!オールマイト...!」
「君を諭さとしておいて...己が実践しないなんて!!!」
「プロはいつだって命懸け⎯⎯⎯⎯!!!」
Detroit
SMASH!!!!
⎯⎯⎯⎯⎯ブォォォォ!!!
その瞬間に竜巻と暴風が巻き起こり、ヴィランを吹き飛ばしたオールマイトの姿に圧巻され、シンとなるその場に雨がポツリと降ってくる。
「雨?」
「まさか、今の風圧で...」
「おいおいおい!右手一本で天気が変わっちまった!」
「すげえええええオールマイト!!!」
一斉に盛り上がる中、僕はかっちゃんの右手を強く握り締める。
(...脈がある。いきてる。いきてる。)
「かっちゃん...っ」
涙が止まらない。君を救えた。何がどうあれ君が生きている。それだけで僕は救われた。
この後、散ったベトベトヴィランはヒーローら回収され、無事警察に引き取られたみたいだ。
僕はヒーロー達に物凄く怒られ、逆にかっちゃんは称賛された。
「君が危険を冒す必要は全くなかったんだ!」
ヒーローに言われて気づいた。
僕が助けなかったら、未来は変わっていたはずだ。前に見たあの光景かっちゃんが死んだは、不思議と信じて疑わない別の未来だと思った。
(最初は...僕が自殺をしたあの時。
同じあの場所に戻ってきて、次はかっちゃんが死んだあの時。僕も瓦礫に押しつぶされて死んだ。でも同じ所に戻ってきた。これはひょっとすると...)
「あ、あのっ」
「んん?」
僕は、目の前のヒーローに問いかける。
「違うかもしれないし、何言ってるんだって思われるかも、しれないんですけど!あっ、もしかしたらっ、なんですけど!」
「僕、死に戻りをして⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯」
ドクンッ
心臓を押しつぶされるようなそんな感覚。
それはまさに。死への恐怖だ。
「はぁっ!!...はぁっ!」
時間が止まったかのような感覚と恐怖心に、鼓動がドクドクと早まっていく。
「ん?どうした?」
「ぃ...いえ...」
出久はこの真実を言えないことを悟り、首を横に振る。
死に戻りの事を誰にも言えない不安と、それから。
(僕の個性...なのかな...)
少しばかりの高揚感。
2話終了です。
見られるかわかりませんが、ありがとうございました。
多分続きます。