遅れまして、第一話です。
構想だと長編なのに、進みが遅い!
この調子だと年単位になる!?
速度上げていきます。
苦しい。
全身が、意識が、重くて仕方がない。
瓦礫の下、隙間から雲に覆われた空が見える。瓦礫の所々に火が着いていて、焼打ちにあったことを理解する。
何もない、平和な村だった。
今年は不作だったから、朝廷への税を納めるのが辛い。でも少々の蓄えと、保存食があるからどうにか冬を越せそうだなっという会話を大人がしていたことを覚えている。
近所の兄妹も成長していて、もうすぐ田畑の手伝いをさせられるっと子供たちの年長である僕は考えていた矢先だった。
突然の盗賊たちの襲撃。
父さんも母さんも、近所のおばさんも、守りたかったこの兄妹も。この生まれた村でさえ。
守れなかった。
兄妹は俺の手の中で冷たくなっていた。
抱えて、瓦礫から庇って、炎の熱だろうか? 息苦しくなった三人とも気を失ってしまった。
そうして、目が覚めたら僕だけが生き残っていた。
二人よりほんの少し長生きしていたから、体が丈夫に成長していたから、助かった。
「まも……れ……なかった……」
全焼した家と曇天が重苦しい。
息苦しい。
どうして、僕なのだろうか? 天は後悔しろと言っているのか? 死んでしまう一瞬の時まで、村を守れず、両親を守れず、僕を慕ってくれた兄妹を守れず、後悔して悔やんで、苦しんで泣いて、そうして僕は、僕の命は終わるのだろう。
「数多の物語じゃ、そうだったがね。この村が全滅するのは、正史の流れなのかもなぁ」
聞き覚えのない声だ。
この村で聞いたことがない。
「まぁ、オレがお前の人生を貰い受けるぜ。どうせここで終わるんだ。その人生、
ポツッと頬に冷たいものが当たる。
雲は雨を降らせる。
その雨を遮るように男が目の前に現れた。
「オレはフールってんだ。末永く、楽しませてもらうぜ? 英雄候補」
その日、僕の終わったはずの人生は再び動き出した。
不思議な恩人は、僕に多くのことを教え……、いや文字通り叩き込んでくれた。
そして、僕の生まれた15年目の年にフールは再び旅立ってしまった。
僕に多くのことを残して。
**********
黄巾党が天下を騒がせ、その後に董卓が漢王朝の実権を握った。
世が乱れている証拠であると、識者が言うのだから僕や仲間たちは余計にそれを感じている。
「団長、今回は袁紹軍の顔良将軍から依頼がありますよ」
放浪軍『風影の団』。
所属兵数約200名ほどの集団で、それぞれの太守の依頼で戦に参加する。傭兵稼業をずっとやってきた。 だから、世界の情勢にはみんな敏感なのだ。
「袁紹軍は報奨金の払いが良いからね。無茶させられるだろうけど、それ以上の資金が手に入るか。どう思う? 副長」
「そうですね。現状、駆り出されるのは反董卓連合の戦。名を上げる絶好の機会です。名のある諸侯が一堂に集まるこの戦で、我々『風影の団』の実力を知らしめれば、この後にあるであろう乱世に必ずや役立ちます。あと、副長ではなく、影紗と呼んでください」
彼女は、僕が傭兵稼業を始めた頃からずっと補佐をしてくれている司馬懿、真名を影紗(エイシャ)だ。
200名の内、50名が彼女が従える隠密たちだ。僕が実働部隊、影紗が隠密を仕切ることで、この『風影の団』は成り立っている。
「なるほど。団員の生活も考えれば袁紹軍の依頼は是が非でも受けなくちゃいけないね。それが、乱世に一石を投じられるのならなおさら……か。依頼を受けることにしよう。影紗、顔良将軍に使いを出してくれ」
「了解です、団長……いえ、秀護」
姓を海、名を央、字を史楚、真名を秀護。小さな村で命を救われた僕は、こうして乱世を駆けている。フールが多くの戦い方、様々な学を文字通り叩き込んでくれたおかげでこうして団長として生きている。
彼が残してくれたのはそれだけじゃない。
宝具:闘信牙。
信じ、闘う牙の名を持つこの刀はフールが去る時に渡してくれた武器だ。
丈夫で、切れ味が良いというまさに宝物に匹敵する刀。
「さて、僕たちが仕える主は見つかるかな?」
「私は秀護に仕えることができました。最高の主だと思ってますよ。他の団員もそうでしょう。貴方が選ぶ主に我々が命を懸けることに何らためらいはありません。どうか、焦って軽率な判断をしない様に」
「当然。僕が仕えるのは支える人だ。誰かを支え、誰かのために動く人間。そんな人を主として仕えられることが僕の夢さ。中途半端なことはしない」
そりゃ、君主や太守に比べれば日陰だけどそれでいい。
晴れ舞台は主やその周りに任せる。だから僕らは裏方、裏舞台で活躍させてもらう。
それは主が知っていてくれればいい。
(なんて、少し夢見すぎかな。今のご時世、そんな人間は希少種だよなぁ)
群雄割拠のこの時代、力がすべて、下克上・裏切り上等の世界だ。
現に反董卓連合だって、袁紹が気に入らない董卓を追い出したいという私利私欲だ。帝を傀儡とする董卓を打つべしなんて大義名分を並べているが、要は気に入らないし、これを機に大陸に覇を唱える布石が欲しいのだろう。
そんな時代に、支える人間なんて本当に少ないだろう。だが、そういう人間だからこそ良き主に仕えていれば大勢力へ成長させられる。
(できれば、大勢力に成長する前にお仕えしたいものだ)
**********
「斗詩さん、この前雇った『風枷の団』という傭兵は本当に使えますの?」
尊大な態度で、玉座の上から長い髪をロールに整えた女性が気怠そうに目の前の二人の女性に問う。
斗詩と呼ばれた黒髪を短めにまとめた女性は、困ったような表情で答える。
「麗羽さま、『風影の団』です。その筋じゃ有名ですよ? 200名ほどの義勇兵で黄巾党相手に幾度も勝利しています」
手元の資料を見ながら説明している。これは彼女が麗羽に説明する必要があると考えて準備していたものだ。
「おお、それあたいも聞いたことあるぜ? あの呂布が黄巾党三万を一人で撃破したって有名な話じゃないっすか」
「ええ、私も知っていますわ。飛将軍と呼ばれる所以でしたわね」
「たった200名の傭兵団で、三万以上の大軍を籠城戦でしのぎ切り、援軍到着の際には隊長格がすぐさま出陣、援軍との挟撃でこれを撃破だっけか? 同じ三万ってこともあってそれなりに有名っすよ」
印象が残るという点でいえば、圧倒的に呂布の方に軍配が上がるのだが、その呂布の知名度に乗っかる形で傭兵団の風評も民の間で広がっていた。敵兵が三万であるという点の共通項、個人の武と集団での統率力である種の対比がこの二つの風評を抱き合わせのような形で広げていったのだ。
「へぇ。でも顔良さん。我が袁家の軍勢に加えるにしても、それぐらいの評判はあって当然ですわ。むしろ、なぜ我々の側から頼むような形で、彼らの参戦を依頼したかですわ」
「それは、前も説明しましたよ~。董卓軍は都を守るための堅牢な軍勢です。それを突破するには同じく守戦に長けている将を取り入れて、なおかつ前線に立ってもらうことでわが軍の被害を抑えましょうって……」
「……そんなことも言いってましたっけ?」
袁紹には顔良自身もあまり期待はしていなかった。
いくら説明しても彼女に興味のない事柄はすぐに忘れてしまうのだから、こうして二度三度と説明することもある種、いつもの事として受け入れられるぐらいの付き合いの長さはある。
「……麗羽様、朝に説明しましたよ~」
しかし、まさか数時間前の事すら忘れられるとは思ってなかった彼女は日課になってしまっているため息をつくのだった。
いかがでしたでしょうか?
質問、感想等々ありましたら気軽にお願いします。