藤丸リツカとの通信が途絶えてから四日目のこと。
数分ごとに繰り返される走査に、応答があった。
レイシフトは危険な業だ。
バックアップがなければ、
彼はそこにいると宣言し続けなければ、
世界は存在すら許さない。
特異点P.D.は、平凡な微小特異点であった。
古い時代。欧州の山間に存在する、小さな閉じた領域。
それは確かにそう観測されていた。
レイシフトが敢行されるまでは。
特異点とはその名の通り、
人類史上のどこかに一点。
特定の場所に、
特定の時間座標に生じるものだ。
しかし観測結果は、非連続的な複数を示した。
それは飛び散ったシミのように。
最初に見られた座標から、
果ては現在と並行して存在するデータまで。
観測の強度が上がる度に、それらの点は増加する。
その在り方は点よりも高次元、線に近しく、
しかしその淀み故に断続的な点の集合として観測される。
限りなく連続した点の集合体。
導かれる仮説。
はじめに見つかった一点は、
いわば最も存在確率の高い地点であると。
これは困った。
精度の高い観測のためには、
より高い強度で、何度も観測を行えば良いだろう。
しかしそうすると、逸脱的な値の出現回数も、
また高まる事になる。
もしも事象が確定したとき、
不都合な座標が選ばれてしまったら?
果たして存在証明は、
正常に機能するだろうか?
見つかった反応。
登録された最後のマスター。
彼に紐付けられた気配は、
カルデアのシミュレータ、
その内部に検出された。
ある種の虚構、
幻を生み出す領域。
あるいは現在という時間座標において、
この特異点が存在できる余地は、そこだけだったのかもしれない。
繋がりは縁。
縁とは距離。
どうにせよ、カルデアは今やこの特異点と、
極めて近接した状態にあるらしかった。
暖かな光を帯びた文字列。
強い神秘の気配。
蝋に似た成分でできたそれは、
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大鴉に連れられて、
快適でもない空の旅。
その終点は少し開けた円形の広場。
不死と異邦人が、
ロードランに降り立った。
その中央の篝火は、
他とは違う、不思議な暖かさを感じさせた。
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リツカです。
ここは祭祀場というらしい。
らしい、と言うのもこれは同行者から聞いた話だから。
ミイラ同然の姿をしていた彼は。
何事か焚き火の前で祈るような仕草をとった。
何かが握った手から溢れ、
するとどうか。
瞬く間に人間らしい姿を取り戻した。
干からびた骨と皮は引き締まった肉体に。
暗い影と爛々とした光を宿していた眼窩には美しい翡翠色。
どこか騎士王を彷彿とさせる雰囲気の、気品のある男性。
生憎着ていたのはボロ布一枚だからとても……
とても野生的な格好ではあるけども。
驚きを隠せずにいると、立ち上がった彼は
「……どうかしたのか」
「えっと。その。喋れるんですね」
ずっと唸り声しかあげてなかったから、
「俺はリツカ。藤丸リツカです。あなたの名前は?」
「……さて。なんだったか」
初手、バッドコミュニケーションかもしれない。
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「使命、か」
ここは既にロードラン。
古き神々の地。
先客がひとり。
項垂れる戦士の話によると、
私たちのような不死が時折、祭祀場に降り立つらしい。
そしてその誰もが。
使命を果たせず消え、
あるいは擦り切れ亡者になるという。
目の前の戦士は心折れたのだろう。
何にせよ。
私は不死の使命のなんたるかすら知らない。
無論それがいかに困難であるかなど、知る由もない。
どこか遠くから、
鐘の音が聞こえる。
これが使命だと男は言う。
二つの鐘。
不死教会と、
病み村に。
目覚ましの鐘。
さて。
今、私の隣で存在感を……あまり放ってはいないが。
共に鴉に連れられてきた男。
見慣れない、東方風の顔立ちというのだろうか。
その側には影の従僕が控えている。
名は、リツカ。
カルデアのリツカ。
聖杯を探す青年。
若くして不死になど、不憫なものだ。
そんなリツカ曰く。
この世界は大きな歪みの中にあり、
その中心に、聖杯はある。
聖杯を回収しなければ、
それはいつか致命的な瑕疵となるのだと。
「それを防ぐのが、俺の使命です」
リツカはそう断言した。
「とはいえ聖杯の在処は全く分からないんですがね」
「ならば、どうする」
「聖杯は、大抵大きな事件の渦中で見つかります。経験上の話ですが」
「大事件。であれば不死の出現……は少々昔すぎるか」
だが最近の事件と言われても、不死院に居た身だ。
ロードランに導かれた、
それ以上の事件など預かり知らない。
「ふし。不死ってなんなんですか?」
リツカとて不死だろう。
不死が現れ始めたのは
私の記憶でも何十年も前の事だ。
いくら若かろうと、
知らぬということもあるまい。
「そうではなく、何故不死が出現したか」
訝しんでいると、問いが変わる。
そんな事。それこそ知る筈もあるまい。
「さぁな。不死こそヒトの本性だ、などと嘯く狂人も居るようだが」
無論私はそうは思わない。
あんな亡者が、人間本来の姿であってたまるか。
「俺も、不死なんですか?」
ふむ。
「ならば体験してみるか」
不死院で見た時から人間性を保っていそうだと思っていたが。
もしやリツカは、まだ死んでいないのではないか?
「はい?」
背後から鋭い気配。
いつの間にか、黒い影が私の背後を取っていた。
「やめたまえ。別に私がどうこうしようという話ではない」
影は引かない。
降参だと、背後を取られたまま両手を振って見せる。
まだ動かない。
「……分かった。教育に悪いようなことも言わない。貴公の主人は、未だヒトのつもりのようだからな」
そうするとやっと、影の気配は霧散した。
「随分な忠臣じゃないか。せいぜい大事にしたまえ」
「そうでしょうか。言うことは聞いてくれるけど、シャドウサーヴァントじゃなぁ……」
渋い顔。どうにも魔術師には魔術師なりの悩みがあるらしい。
「話を戻そう。私は、不死街へ向かうつもりだ。そこに居る男が教えてくれたのでな」
「目覚めの鐘、でしたっけ」
なんだ。聞いていたのか。
「そうだな。リツカのいう聖杯とやらも、一応は気に留めておこう」
「で、だ。知らないようだから教えておく。リツカにも見えるだろう。己のダークリングが。もしも窮地に陥ったなら。他になければそれを使うことだ」
流石にこの程度、知っておくべきだろう。
いざという時に死ねるかどうか。
不死人にとって、命は数ある手札の一つなのだから。
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別に印象を悪くした訳では無さそうだけど。
結局おじさんの名前は分からなかった。
仕方がないので『オルファ』さんとしておこう。
こういう時に早めに呼び方を決めておかないと、
レポートを書く時に苦労することになると俺は学んだんだ。
本人に了承も貰ったし。
それで今後のこと。
なんだか小難しい話になってきたけど。
要はいつも通り。
手に届きそうな所から地道に調べるしか無さそうだ。
こういう方針。
普段は管制室の皆や、
英霊たちと一緒になって考えるんだけど。
「やっぱり通信はウンともスンとも……?」
通信礼装を引っ叩く。
角度が大事だって、
「あれ? ちょっと動いた?」
もっと激しく叩いてみる。
反応なし。
「もう一度っ」
大きく手刀を振り上げ、
ピッ
繋がった。
篝火が一際強く燃え上がる。
半透明の映像越しに、
何かを火に焚べたオルファさんがいた。
映像の向こうは大変な騒ぎのようだ。
ひっきりなしに人物が入れ替わり立ち替わり、
何事かこちらに話している。
話しているけど……。
「聞こえないなぁ」
マイクの故障?
向こうの声も、
こちらの声も聞こえていないようだった。
一先ず健康アピールのためにも、
ガッツポーズでもしておこう……。
再び鳴り響いた鐘の音をバックに、
力強い筈のガッツポーズはどこか、
頼りなさげに感じられたのだった。
遠い異国の星見台、カルデアは
ヒトの営み、その記録者であるという。
だがいずれの伝承にも、
その名が見られることはない。
・オルファさん
直剣の柄は自分で折った訳ではない。
風評被害である。
プーサー、かっこいいですよね。
そういうわけでもう一回り歳食ったプーサーって感じで。
どうでしょう。
アーサーといえばそう、奴ですね。果たして彼が登場するまで話を進められるかどうか……。
ダクソ本編から大きく逸脱したエピソードン
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ほんへに組み込んでいいよ
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外伝でやれ
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どっちでもいいよ