淵源を巡る英雄   作:タキマ2000

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未知の脅威

 何処かのビルの屋上から地上を見下ろしていた。ここは、まるで平和そのものだ。ポップスターまでとはいかないが(あそこも少しおかしい)あまり危険分子がいない。いたとしても自分にとって脅威ではない。そう彼は考える。ここに来て何もかもを聞いた。やはりここは元いた世界とは違うようだ。人種、文明レベル、何もかもが初めて見る。幾度も別世界を見てきたがここまで違うものは初めてだ。いや、一度だけ見たことがある。たしかハルカンドラの科学派の連中がこんな奴らだった気がする。もうだいぶ昔のことだし勝手に滅んだから彼の記憶にはほとんど残っていない。

 

 だがそんな平和な世界でもやはりというべきか避けられぬ出来事がある。それはーー

 

 「ハハハハ!いいな!この体!この世界の連中は良いものだ!」

 

 ()()()()()()()()()()()人物が街中でひたすら暴れていた。男の個性は『空気砲』。掌に空気を集め押し出すシンプルな能力だが圧縮され放たれるそれはまるで大砲のようだ。この個性というのがこの世界では普通なことであるという。それにしてもあの男、なんだか妙な感じがすると彼は感じとる。あの感覚は、そう考えていると

 

 「こんな所にいたの」

 

 ホークスが彼を見つけた。

 

 「全く急にいなくなって困ったよ〜まだ詳しい話を聞いてないのに」

 

 彼はホークスに目をくれずじっと仮面からヴィランを見る。

 

 「最近、ヴィラン犯罪が急に増えたんだよ。あっちこっちでさ。しかも暴れるだけ暴れて後は、ポックリと電池が切れたみたいに動かなくなるんだ」

 

 彼は右手を軽く動かす。

 

 「新しいブースト薬かも知れないと思って身体検査にかけたりしたんだけどなーんも問題なし。原因不明なんだよね〜。……聞いてる?」

 

 彼は屋上から飛び降りた。

 

 「え?!ちょっと!」

 

 ヴィランとヒーローが戦っている間に勢いよく着地する。轟音と激しい煙が両者を襲う。

 

 「グォ!」

 「な、なんだ!」

 

 彼はゆっくりとヴィランに向き合った。まるで見覚えあるけどどこで会ったかを思い出すように顔を見た。そして気づいた。

 

 「キ、キサマ。なぜここに」

 

 どうやら向こうも思い出したようだ。前と姿が違うから分からないと踏んでいたがその必要はなかった。

 

 「こ、ここで終わるわけにはいかん。偉大なる我が一族の為にキサマに構っている暇などないのだー!」

 

 こちらに両手を向けると彼の掌に空気が集まっていくのを感じる。あれほど圧縮させた空気を思い切り放ったら常人では無事では済まない。

最悪、体を一つ残らず消し飛ばしてしまうだろう。しかし、彼は違う。何故ならばーー

 

 「消えろーー!!!」

 

 極限まで圧縮された空気が彼に向かって炸裂した。あまりの威力に彼の背後に立っていたヒーローは、その余波だけではるか後方へ吹き飛んだ。

 

 「ハーッハーッ」

 

 ヴィランは放ったところを見る。煙で上手く見えないが今、思っていることは一つ。殺ったかどうかだった。しかし、その思いはすぐに打ち破られることになる。彼がもっとよく見えるように近づこうとした瞬間、

 

 「ッ!ゴハッ」

 

 すでに自分の腹にパンチが繰り出されたのを一瞬理解して意識を失った。

 


 

 『……何なんだあの子はいったい』

 

 ホークスは現場に駆けつけていた。倒れたヴィランを縛り、被害状況の後始末を片付けながらも考えているのは、あの少年のことだった。

 身長は約145cm前後。ピンク色のロング髪で肩、足に甲冑のような物をつけており、服は司教に似た物だ。それだけでも十分目立つのだが、更にツノと十字の仮面に天使のような翼が生えていた。異形系個性の持ち主だとホークスは推測する。しかし先程のヴィランとの戦いをホークスは見ていた。あの規模の攻撃を正面から受けたにもかかわらず、まるで通用しない様を見せた後、いつの間にかあの少年がヴィランをパンチ一発で倒した所を。

 

 『詳しく調べる必要があるな』

 

 そんなことを考えながら少年に近づくと

 

 「ナゼダ」

 

 強烈な殺気を感じとり発生源に目をやる。それは先程、少年が倒し捕縛したヴィランからだった。だが先程とはまるで違う。いったい何が起こった。ホークスは冷や汗を感じながらヴィランに注意を向けるとゆっくりとヴィランが顔を上げた。しかしその瞬間ホークスは、絶句した。何故なら奴の目が赤くなり血涙を流していたからだ。奴は口を開いた。

 

 「ナゼ……コノセカイニ……ヤツガ…イル………ショウメツ…シタノデハ……ナカッタノカ」

 

 ホークスは困惑した。何だこいつは。何を言っている。錯乱状態とはまるで違う。これはーー

 

 『何かが奴に宿ってるのか!』

 「………マァイイ……アトデ…シュウセイ……スレバイイ…」

 「オイ!お前は誰だ!何者だ!」

 

 ホークスは声を荒げる。こいつの正体を突き止めなければ何か、とてつもないことが起こりそうな、そんな予感を感じ取ったからだ。

 

 「ナニモノカ…イズレワカル……イズレナ」

 

 そしてヴィランはガクンと項垂れる。捕縛していたヒーローがヴィランの様子を伺う。

 

 「オ、オイ」

 

 返答がない。ホークスは急いで指示を出した。

 

 「早くそいつを病院に連れていくんだ!早く!」

 「りょ、了解です!」

 

 ヒーローはヴィランを救急車の方に担いで連れて行った。しかしホークスは先程の正体不明の存在が気がかりだった。

 

 『これはただ事では済まないな。速くエンデヴァーさんや他のヒーローに伝達しないと』

 

 ホークスは思考をまとめ少年に近づきながら

 

 「やぁ。さっきの凄かったね。お手柄じゃ〜ん。でも無闇にヴィランに立ち向かうのは危ないからね。今後は気をつけるように」

 

 少年は黙ったままホークスを見る。仮面越しに光る紫の瞳がホークスに警戒を抱かせる。

 

 「少しだけ時間くれないかな。ちょっと聞きたいことがあって」

 

 少年は頷く。ホークスはこの子が喋った所を見たことがない。反応するが何かの原因で喋らないのか、それとも個性の影響か。

 

 『何にしてもやることありすぎだろ』

 

 そんな倦怠感を持ちながら少年と一緒に会議室へ向かうことにした。

 


 

 本来であればあり得ないことが起こった。アナザーディメンションでこの世界に飛来したことにより正史とは全く別の脅威がこの世界に迫ってしまった。闇の一族。悪夢を見せる者。奇怪な道化師。時空を操る侵略種。

脅威は着々と根付いていた。

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